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『はい、アズール先輩。』そう言って彼女が僕に渡してきたのは、氷菓。ぱきりと半分で割られたそれは水色だからソーダ味かと予想ができた。
僕は絶対のカロリー制限を敷いて入るけれど、このうだるような暑さの中で氷菓を前にしてはその決意が少し揺らいでしまうのも仕方ないだろう。
オンボロ寮は、暑すぎる。
「あ…ぼ、くは…」
「ふふ、ですよね。ごめんなさい。大丈夫です。でも、せっかく二つに割れるタイプだったので…何も聞かずに独り占めはできないでしょう?」
わかっていますから、という言葉の通り、理由を察した彼女は差し出したそれをすぐに引っ込めた。
「はー!アズール先輩って本当にすごい!ソーダアイスなんて乳製品も入ってないし、ほんの30kcalくらいじゃないですか。この暑い中で汗をかいてればゼロみたいなものだっていろんな理由をつけて、私なら食べちゃいます!」
しゃりしゃり。音を立てながら、氷菓はどんどん彼女の口の中に消えていく。一本なくなり、二本めもすでに半分が消えていた。
溶けるスピードも速いのでどんどん腹に収めなければならないこともあるだろうが、そんなに急いだら体調不良になりそうだなとぼんやり考えた。
冷たいものが口に入っているというのに『あつーい!』と太陽に向かって目を細める貴女は向日葵のようだ。
「わざわざ陽の方に顔を向けるなんて…。そんなこと、しなければいいんですよ。」
「え?」
その言葉と同時に立ち上がって、シャッとカーテンを引いた。
遮られた太陽光は、それでもカーテンの周りから存在を主張するように淡く光を漏らす。
「…暑かったです?オクタヴィネル寮みたいに空調が整ってませんから、」
「それもありますが、一番は外から見えないようにするため、ですかね」
「…?それってどういう、」
ベッドに腰掛ける彼女の前に立つと、淡く僕の影が彼女に重なる。
彼女が言葉を発する前に、とん、とその肩を柔く押して、二人分の体重でベッドのスプリングを軋ませる。
ポタリと汗が一滴、彼女の額に垂れたのがわかった。
暗がりでも赤く染まる彼女の顔は鮮明に捉えることができ、にこ、と自然に口角が上がってしまう。
流れるようにして唇を塞いだ。氷菓によって冷やされていた彼女の咥内は僕の舌も冷やしてくれて、若干体温が下がった気がする。
「ンン…は、ぁず、ンぅ!」
「っはぁ、ふ…ン、」
しかしそれもつかの間のことで。
徐々に深くなる口付けとともにせっかく冷えた身体も、二人分の熱が混ざり合うことですぐに本来の温度に戻っていく。
このままではのぼせてしまうと、名残惜しくも唇を離した。
ちゅ、とリップノイズを鳴らすと、それを合図にうっすらと瞼が開かれる。
「い、きなり、何を、」
「…貴女が、」
「わたし?」
「貴女が、一緒に食べたそうな顔をしていたから。少し、味見を。」
美味しかったですよ、とそう笑って彼女の上から退こうとしたが、それは許されなかった。
グッと引かれるままに彼女を潰してしまいそうになるも、すんでのところで前膊 をついて身体を支える。
「っちょ!潰してしまうでしょう!気をつけてくださ」
「味見するならっ」
「え」
「ちゅ、中途半端に食べ残さないでくださいっ…!」
「…その言葉の意味、わかって発してます?」
ぎゅ、と僕を抱きしめるその身体を突き放すことなんてできるわけもなく、そっと髪を撫でたら首筋にすり寄ってくるものだから、合意と見なすことにしましょうか。
「出された食事は最後まで、余す所なくいただきますがよろしいですか?」
「と、当店の食事はカロリーなしの上に、消費カロリーもあるので、ご心配なく!」
「おや、それは新しい。それでは問題なく、いただきますね。」
真夏のこんな時間に食事なんて。
イケナイことだと思いながらも、それに溺れる。
僕は絶対のカロリー制限を敷いて入るけれど、このうだるような暑さの中で氷菓を前にしてはその決意が少し揺らいでしまうのも仕方ないだろう。
オンボロ寮は、暑すぎる。
「あ…ぼ、くは…」
「ふふ、ですよね。ごめんなさい。大丈夫です。でも、せっかく二つに割れるタイプだったので…何も聞かずに独り占めはできないでしょう?」
わかっていますから、という言葉の通り、理由を察した彼女は差し出したそれをすぐに引っ込めた。
「はー!アズール先輩って本当にすごい!ソーダアイスなんて乳製品も入ってないし、ほんの30kcalくらいじゃないですか。この暑い中で汗をかいてればゼロみたいなものだっていろんな理由をつけて、私なら食べちゃいます!」
しゃりしゃり。音を立てながら、氷菓はどんどん彼女の口の中に消えていく。一本なくなり、二本めもすでに半分が消えていた。
溶けるスピードも速いのでどんどん腹に収めなければならないこともあるだろうが、そんなに急いだら体調不良になりそうだなとぼんやり考えた。
冷たいものが口に入っているというのに『あつーい!』と太陽に向かって目を細める貴女は向日葵のようだ。
「わざわざ陽の方に顔を向けるなんて…。そんなこと、しなければいいんですよ。」
「え?」
その言葉と同時に立ち上がって、シャッとカーテンを引いた。
遮られた太陽光は、それでもカーテンの周りから存在を主張するように淡く光を漏らす。
「…暑かったです?オクタヴィネル寮みたいに空調が整ってませんから、」
「それもありますが、一番は外から見えないようにするため、ですかね」
「…?それってどういう、」
ベッドに腰掛ける彼女の前に立つと、淡く僕の影が彼女に重なる。
彼女が言葉を発する前に、とん、とその肩を柔く押して、二人分の体重でベッドのスプリングを軋ませる。
ポタリと汗が一滴、彼女の額に垂れたのがわかった。
暗がりでも赤く染まる彼女の顔は鮮明に捉えることができ、にこ、と自然に口角が上がってしまう。
流れるようにして唇を塞いだ。氷菓によって冷やされていた彼女の咥内は僕の舌も冷やしてくれて、若干体温が下がった気がする。
「ンン…は、ぁず、ンぅ!」
「っはぁ、ふ…ン、」
しかしそれもつかの間のことで。
徐々に深くなる口付けとともにせっかく冷えた身体も、二人分の熱が混ざり合うことですぐに本来の温度に戻っていく。
このままではのぼせてしまうと、名残惜しくも唇を離した。
ちゅ、とリップノイズを鳴らすと、それを合図にうっすらと瞼が開かれる。
「い、きなり、何を、」
「…貴女が、」
「わたし?」
「貴女が、一緒に食べたそうな顔をしていたから。少し、味見を。」
美味しかったですよ、とそう笑って彼女の上から退こうとしたが、それは許されなかった。
グッと引かれるままに彼女を潰してしまいそうになるも、すんでのところで
「っちょ!潰してしまうでしょう!気をつけてくださ」
「味見するならっ」
「え」
「ちゅ、中途半端に食べ残さないでくださいっ…!」
「…その言葉の意味、わかって発してます?」
ぎゅ、と僕を抱きしめるその身体を突き放すことなんてできるわけもなく、そっと髪を撫でたら首筋にすり寄ってくるものだから、合意と見なすことにしましょうか。
「出された食事は最後まで、余す所なくいただきますがよろしいですか?」
「と、当店の食事はカロリーなしの上に、消費カロリーもあるので、ご心配なく!」
「おや、それは新しい。それでは問題なく、いただきますね。」
真夏のこんな時間に食事なんて。
イケナイことだと思いながらも、それに溺れる。