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晩夏の夕べはとても賑やかだ。セミの声、こおろぎの音、そして時折吹く風の騒めき。
でも
今この場所で聞こえるのは、波の寄せ返すメロディーと私の鼓動のみ。
『テスト期間中だから、今日からモストロ・ラウンジもお休みなんですよ。』という分かりづらいお誘いに乗って、散歩という名のデート中。
連れてきてくれた場所が海辺で、時間帯が夕方ときたものだからロマンチックなことこの上ない。
先輩でも恋人気分に浸りたいと思ってくれるんだろうかと考えるとお腹のあたりがむず痒い。
先輩は、キザだ。でもそんなところも嫌いじゃない。憧れのシチュエーションを手探りながらに実現してくれるのだ。嬉しくないわけがない。
こうして連れ出してくれるのに手を繋ぎましょうとは言わず、一歩だけ先をゆく姿が愛おしい。好きだなぁ、と思う。
「アズール先輩」と呼べば絶対にこっちに視線を向けてくれるところも。
何の脈絡もなく言葉をかけても意図を掴んでくれるところも。
直接的な言葉には、ちょっと詰まってしまうところも。好き。
「先輩、好きです」
「…突然、なんですか」
「先輩の背中が、言って欲しそうにしてたから。つい。」
「何を、言っているんだか…まったくっ…」
海岸に来たころはそれはそれは綺麗な赤に染まっていた空も、今では紺色に浸食され始めている。
と、その時。
砂浜に、ぽわ、と青く光るものを見つけて、咄嗟にわ!と声を上げてしまった。瞬間、良い雰囲気が崩れ去ったことに、アズール先輩は苦笑した。
「貴女本当に忙しい人ですねぇ…」
「だってっ、あそこ!何か光ってます…っあっちも!え!?いっぱい!?」
「どこです…?ん…ああ、あれはウミホタルじゃないですか?」
「ウミホタル?」
「はい、貝の仲間ですよ。彼らは確か…威嚇…などのときに光るんじゃなかったでしたっけ。貴女、威嚇されてます?」
「そんな!私何もしてない!っていうかそれならアズール先輩も威嚇されてるんじゃないですか?」
「僕が威嚇されるわけないじゃないですか。仮にも本体は人魚ですよ?」
「でも今はヒトだからわからないのかも…って、あ…す、すみません!」
あまりに綺麗な青い光に興奮し、先輩の腕にしがみついていた私は、正気に戻った刹那パッとそれから手を離す。あ、あはは、と誤魔化すように笑って見せれば、何を思ったのかぐいと手を引かれて。その腕の中に収められてしまった。
「…」
「………」
「あの…?」
「ウミホタルですが」
「はい?」
「求愛のときにも光るんですよ。雄が。」
「…そ、そうなん、です?」
生憎私はカンが良くないのでアズール先輩が私のことを理解してくれるみたいには先輩の心の内を読むことができない。どう言うことだろうと必死で考えていると、私を抱きしめる腕がさらにギュッと私を引き寄せた。とたん、バクバクと聞こえる心臓の音。
「分かりやすい求愛の形があるのは、少し羨ましいです。ヒトは、言葉を発したり行動をしてもうまく伝わらないときもあるのに。」
少し拗ねたような声色に、ああこれはもしかして、と思い当たる。
そっとアズール先輩の背中に腕を回してみると、少しだけ力が緩められた。
「私は、先輩がこうやって抱きしめてくれるだけで、十分愛情を感じてますよ。」
「求愛とそれは少し違います。愛情を求めるんですから。」
「あっ、私からの愛情表現が足りなかったと言うことですか!?また文脈を読み間違えてしまいました…すみません…」
「別に謝ることはありません。ただ、気付いたのなら、与えてほしいのですけれど。」
その言葉に少し上を向けば、優し気に細められた瞳とそれに不釣り合いなニヤリとした口角が目に留まる。逃げ場など、あるわけもない。
ふふっと笑う先輩にかける言葉は、一つだけ。
「愛情がほしいなら、瞳は閉じてくださいね」
でも
今この場所で聞こえるのは、波の寄せ返すメロディーと私の鼓動のみ。
『テスト期間中だから、今日からモストロ・ラウンジもお休みなんですよ。』という分かりづらいお誘いに乗って、散歩という名のデート中。
連れてきてくれた場所が海辺で、時間帯が夕方ときたものだからロマンチックなことこの上ない。
先輩でも恋人気分に浸りたいと思ってくれるんだろうかと考えるとお腹のあたりがむず痒い。
先輩は、キザだ。でもそんなところも嫌いじゃない。憧れのシチュエーションを手探りながらに実現してくれるのだ。嬉しくないわけがない。
こうして連れ出してくれるのに手を繋ぎましょうとは言わず、一歩だけ先をゆく姿が愛おしい。好きだなぁ、と思う。
「アズール先輩」と呼べば絶対にこっちに視線を向けてくれるところも。
何の脈絡もなく言葉をかけても意図を掴んでくれるところも。
直接的な言葉には、ちょっと詰まってしまうところも。好き。
「先輩、好きです」
「…突然、なんですか」
「先輩の背中が、言って欲しそうにしてたから。つい。」
「何を、言っているんだか…まったくっ…」
海岸に来たころはそれはそれは綺麗な赤に染まっていた空も、今では紺色に浸食され始めている。
と、その時。
砂浜に、ぽわ、と青く光るものを見つけて、咄嗟にわ!と声を上げてしまった。瞬間、良い雰囲気が崩れ去ったことに、アズール先輩は苦笑した。
「貴女本当に忙しい人ですねぇ…」
「だってっ、あそこ!何か光ってます…っあっちも!え!?いっぱい!?」
「どこです…?ん…ああ、あれはウミホタルじゃないですか?」
「ウミホタル?」
「はい、貝の仲間ですよ。彼らは確か…威嚇…などのときに光るんじゃなかったでしたっけ。貴女、威嚇されてます?」
「そんな!私何もしてない!っていうかそれならアズール先輩も威嚇されてるんじゃないですか?」
「僕が威嚇されるわけないじゃないですか。仮にも本体は人魚ですよ?」
「でも今はヒトだからわからないのかも…って、あ…す、すみません!」
あまりに綺麗な青い光に興奮し、先輩の腕にしがみついていた私は、正気に戻った刹那パッとそれから手を離す。あ、あはは、と誤魔化すように笑って見せれば、何を思ったのかぐいと手を引かれて。その腕の中に収められてしまった。
「…」
「………」
「あの…?」
「ウミホタルですが」
「はい?」
「求愛のときにも光るんですよ。雄が。」
「…そ、そうなん、です?」
生憎私はカンが良くないのでアズール先輩が私のことを理解してくれるみたいには先輩の心の内を読むことができない。どう言うことだろうと必死で考えていると、私を抱きしめる腕がさらにギュッと私を引き寄せた。とたん、バクバクと聞こえる心臓の音。
「分かりやすい求愛の形があるのは、少し羨ましいです。ヒトは、言葉を発したり行動をしてもうまく伝わらないときもあるのに。」
少し拗ねたような声色に、ああこれはもしかして、と思い当たる。
そっとアズール先輩の背中に腕を回してみると、少しだけ力が緩められた。
「私は、先輩がこうやって抱きしめてくれるだけで、十分愛情を感じてますよ。」
「求愛とそれは少し違います。愛情を求めるんですから。」
「あっ、私からの愛情表現が足りなかったと言うことですか!?また文脈を読み間違えてしまいました…すみません…」
「別に謝ることはありません。ただ、気付いたのなら、与えてほしいのですけれど。」
その言葉に少し上を向けば、優し気に細められた瞳とそれに不釣り合いなニヤリとした口角が目に留まる。逃げ場など、あるわけもない。
ふふっと笑う先輩にかける言葉は、一つだけ。
「愛情がほしいなら、瞳は閉じてくださいね」