小噺色々
(アズールさんと、シてしまった…)
まだ夜も明けない暗い中、目が覚めて一番、そんな言葉が頭に浮かぶ。
するのが嫌だったなんてことは全然なくて、むしろ嬉しかったし幸せだったんだけれど、あんなに甘くて溶けるような時間は初めてで、その片鱗が頭を掠めるだけで身体も頬もまた熱を帯びてしまう。
恥ずかしい。ただそれにつきる。
あんなふうに泣いて、啼いて。
よがってイってはまた求めて。
心臓が悲鳴をあげる経験なんて、自分ができるとは思ってもいなかった。
でも、下半身に残る強烈な違和感は行為の名残のはずだから、あれは現実。まだ胸の頂きも主張していてむず痒いし、早々にブラジャーをつけないと、と寝返りを打って自分の衣服に手を伸ばした刹那。
お腹の上を手が這って、くんっと引かれた。その先は、もちろんアズールさんの腕の中だ。
「ひゃ!」
「どこ、行くんですか」
「お、起きてたんですか…!」
「貴女の気配がなくなりそうだったので起きました」
「っ、ぁ、あの!まだ夜も明けてないですからっ、せっかくのお休みに起こしてしまってすみません」
「問題ありませんよ」
緊張からこの状況と全く関係のないことを口走ろうとする私に、そんなことは許さないとぴったりくっつくアズールさん。私の背中とアズールさんの胸板。素肌の感触がわかって意識せずともドキドキしてしまい、それ以上言葉が出なくなって、ただただ硬直するしかない。
すると、とても小さな声で『こっちを向いてほしいんですが』とお願いされたので、意を決して、ゆっくりと方向転換。
そっと視線をアズールさんに向けると、双眸がふにゃっと細められた。普段見られないその表情に、トクリと心臓が波打つ。
「あ…ッ、!」
「ン、っ、」
「ふ、は…ァん、」
柔らかい表情に反して重なった唇を貪る力は強く、息も続かなくなってクラクラする。
やっぱりアイドルは肺活量がすごいなぁとか、ああそれよりも人魚はもともと息が長続きするのかなとか、今この状況で考えることでもないようなことを思い浮かべると、それが伝わったかのようにもっと深く舌が絡みついてきて。私はだらしなく口の端から唾液を溢して、アズールさんの舌に翻弄されるオモチャになるしかなかった。
漸く唇が離れたときには、はぁはぁと呼吸をするので精一杯だ。
「ンッ、は、はぅ、はふ…ッハ、ぁ」
「ハァッ…っ、キスの合間に別のことを考えるなんて、全くっ…」
「わ、わた、しっ、」
「でも、その目を見れば…僕の勘違いでしたね…」
「ふぇ…?」
「貴女、今ここにいない僕のことを考えていたでしょう」
「は…ふ、」
「ほら、当たり。貴女がステージ上の僕を見るときの瞳です」
言われた通りだった。ふとした瞬間に瞼の裏に浮かぶのはステージ上で輝く眩しいアズールさんの姿。
「稀に、アズール、さんが…幻みたいに見えるから、でも、でも今は」
それとは全然違う色っぽさを浮かべるアズールさんは、ちゃんとここにいる。そして私の目に映るのは、このアズールさんの瞳の奥に揺れるたった一つの感情。それはきっと、たくさんの稚魚ちゃんたちの中から選んでもらった、私だけが見せてもらえるもの。
綺麗、美しい、かっこいい、神々しい、尊い…どんな言葉でも足りなくて、その感情にただ焦がれてしまう。
そっと伸ばした手で、つ、とアズールさんの頬を撫でたら、その手を捉えられて掌にチュッとキスされた。
驚くほど素直に溢れた私の心は貴方だけにあげる。
「アズールさん…私まだ、夢から覚めたくない…」
「この愛は夢ではないので、覚めることはありませんよ」
「ほんと?それなら…もう一度と お願いしても?」
「…そんな風に言われては、応えるしかありませんね。存分に聴かせて下さい、貴女の応援 もね」
舞台は整った。
あとは私と貴方で、愛を語り合う、それだけ。
まだ夜も明けない暗い中、目が覚めて一番、そんな言葉が頭に浮かぶ。
するのが嫌だったなんてことは全然なくて、むしろ嬉しかったし幸せだったんだけれど、あんなに甘くて溶けるような時間は初めてで、その片鱗が頭を掠めるだけで身体も頬もまた熱を帯びてしまう。
恥ずかしい。ただそれにつきる。
あんなふうに泣いて、啼いて。
よがってイってはまた求めて。
心臓が悲鳴をあげる経験なんて、自分ができるとは思ってもいなかった。
でも、下半身に残る強烈な違和感は行為の名残のはずだから、あれは現実。まだ胸の頂きも主張していてむず痒いし、早々にブラジャーをつけないと、と寝返りを打って自分の衣服に手を伸ばした刹那。
お腹の上を手が這って、くんっと引かれた。その先は、もちろんアズールさんの腕の中だ。
「ひゃ!」
「どこ、行くんですか」
「お、起きてたんですか…!」
「貴女の気配がなくなりそうだったので起きました」
「っ、ぁ、あの!まだ夜も明けてないですからっ、せっかくのお休みに起こしてしまってすみません」
「問題ありませんよ」
緊張からこの状況と全く関係のないことを口走ろうとする私に、そんなことは許さないとぴったりくっつくアズールさん。私の背中とアズールさんの胸板。素肌の感触がわかって意識せずともドキドキしてしまい、それ以上言葉が出なくなって、ただただ硬直するしかない。
すると、とても小さな声で『こっちを向いてほしいんですが』とお願いされたので、意を決して、ゆっくりと方向転換。
そっと視線をアズールさんに向けると、双眸がふにゃっと細められた。普段見られないその表情に、トクリと心臓が波打つ。
「あ…ッ、!」
「ン、っ、」
「ふ、は…ァん、」
柔らかい表情に反して重なった唇を貪る力は強く、息も続かなくなってクラクラする。
やっぱりアイドルは肺活量がすごいなぁとか、ああそれよりも人魚はもともと息が長続きするのかなとか、今この状況で考えることでもないようなことを思い浮かべると、それが伝わったかのようにもっと深く舌が絡みついてきて。私はだらしなく口の端から唾液を溢して、アズールさんの舌に翻弄されるオモチャになるしかなかった。
漸く唇が離れたときには、はぁはぁと呼吸をするので精一杯だ。
「ンッ、は、はぅ、はふ…ッハ、ぁ」
「ハァッ…っ、キスの合間に別のことを考えるなんて、全くっ…」
「わ、わた、しっ、」
「でも、その目を見れば…僕の勘違いでしたね…」
「ふぇ…?」
「貴女、今ここにいない僕のことを考えていたでしょう」
「は…ふ、」
「ほら、当たり。貴女がステージ上の僕を見るときの瞳です」
言われた通りだった。ふとした瞬間に瞼の裏に浮かぶのはステージ上で輝く眩しいアズールさんの姿。
「稀に、アズール、さんが…幻みたいに見えるから、でも、でも今は」
それとは全然違う色っぽさを浮かべるアズールさんは、ちゃんとここにいる。そして私の目に映るのは、このアズールさんの瞳の奥に揺れるたった一つの感情。それはきっと、たくさんの稚魚ちゃんたちの中から選んでもらった、私だけが見せてもらえるもの。
綺麗、美しい、かっこいい、神々しい、尊い…どんな言葉でも足りなくて、その感情にただ焦がれてしまう。
そっと伸ばした手で、つ、とアズールさんの頬を撫でたら、その手を捉えられて掌にチュッとキスされた。
驚くほど素直に溢れた私の心は貴方だけにあげる。
「アズールさん…私まだ、夢から覚めたくない…」
「この愛は夢ではないので、覚めることはありませんよ」
「ほんと?それなら…
「…そんな風に言われては、応えるしかありませんね。存分に聴かせて下さい、貴女の
舞台は整った。
あとは私と貴方で、愛を語り合う、それだけ。