【完結】監督生が二人いる?!
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山。そこはジェイドにとって神聖な場所であり、今最もアツイスポットだった。
自分が生まれ育った海とは対照的に「未知」という点で好奇心がくすぐられる。
でもその気持ちは、誰もわかってくれなかった。別にわかってもらえなかったからといって、山を嫌いになったり落胆したりはしなかったが、「誰かと分かち合いたい」という気持ちがなくなることもなかった。それは、生きるものなら誰だって持っている感情だ。
そんなところに幸運にもやってきたゆう。このチャンスを楽しまないわけにはいかない。
本心か同情かはわからない。でも、その言葉を発した彼女が悪いのだ。
「昨日の今日でお疲れでしょうけれど、今日は山の中腹辺りを目指して登山しながら、植物を観察したり採取しようと思っています。何かあればすぐに声をかけてくださいね」
「はいジェイド先輩!よろしくお願いします!」
昨日と変わらず元気の良いゆうはペコ、とお辞儀をして微笑んだ。
それから雑談をしつつ、山に入る。
小さなゆうと背の高いジェイドでは、歩幅が違いすぎるので、いつもと違ってゆっくりな足取りになる。
そのせいか、普段目に入れることのない木や空が、ジェイドの目に新鮮に映った。
ああ、やはり山は、自然は、神秘的で、素晴らしい。一人感動するもひとしお。
「ジェイド先輩!これ!」
「あぁそれは」
「スジオチバタケですね!」
「え?」
ゆうは続けて独り言のように「食べるのには向かないって聞きましたけど、どうなんだろう」と難しい顔をしながら観察をしていたが、正直ジェイドの脳はピタリと止まっていた。
(僕が答える前に、答えが返ってきた?)
その間にも、あっちやこっちに移動しては、キノコのみならず色々な植物を指差してその名前などを次々に挙げていく。
そんなことが?とともすれば武者震いを起こしそうな身体をなんとか支えたジェイドは、足元に別の小さなキノコを見つけ、手を伸ばそうとする。
「おや、これは初めて見る…」
「ジェイド先輩!触っちゃダメです!それはヒカゲシビレタケだから強い幻覚症状が出ます!」
「!?」
「あ、でもこっちは食べられますね、ニオウシメジです!本物は大きいですねぇ!」
「あ、あな、あなた…」
(これはもう疑いようがない。この子は、僕よりも知っている。山のことを。キノコのことを。)
その事実に気づいたジェイドは、その場に座り込んで体操座りになって、心が高揚することを抑えられなくなっていた。
身長190mの大きな男が山の、特に休憩スポットではない草の上で体操座りをする姿は奇妙以外の何物でもないが、そんなことには構っていられない。
嬉しい。
ジェイドは素直にそう思った。自分の話が通じるどころか、それ以上の知識が返ってくる。
「…っ」
「で、こっちは…ってジェイド先輩?!ど、どうしたんですか!?大丈夫ですか?触っちゃったんですかさっきの?!あわわっ、ど、どうし」
「違います」
「えっじゃあどうしたんですか!?」
「違うんです…っ…理由は言います、が、こちらを、見ないでくださいっ」
「へ?あっ、はい、」
言われた通り、ジェイドに背を向けてしゃがんだゆうは、ジェイドの言葉を待った。
「…はぁ…。僕としたことが…取り乱して申し訳ありません」
「えっとどこがですか…?今、ジェイド先輩が取り乱したところありましたっけ?」
「嬉しかったんです」
「山に来れたことですか?」
「それもありますが、あなたとこうして、山やキノコの話ができることが、です。前にも言いましたが、こっちの世界の監督生さんは僕のすることに興味がありませんし、アズールやフロイドももう…」
「なるほどぉ」
「どうしてもっと早くに来てくださらなかったのですか」
その、ジェイドにしては少し強い言葉に反応してゆうが振り向けば、ジェイドの目にはうっすら涙が溜まっている。
あの完璧なジェイド先輩の目に涙!目を見開いたゆうは、それから込み上げてくる微笑みを抑えることができなかった。
「ふ、ふふふっ…!ジェイド先輩、可愛いです」
「っ僕は本当に、」
「私のとこのジェイド先輩と同じなんだもの」
「!」
「ジェイド先輩も、好きなものの話、したいですよね。いつも凛としているし、掴めないところがあるからどうしたらいいかわからない人もいるかもしれませんが、そんなに嬉しかったというか取り乱していたのかと思うと、お誘いしてよかったです!」
「…なんで僕の世界にはゆうさんがいないんでしょう」
眉尻を下げて、困ったような顔をするジェイドは、いつもの目ではなく、本当に哀しげな感情を湛えていて、少しだけ誘ったことを後悔したゆうだった。知らなかったならば、今後も求めることもなかっただろうに、と。
「ごめんなさい…、気軽に、誘ってしまって」
謝ってどうにかなる問題ではないのだけれど、言葉をかけずにはいられなかった。
それに対して、ジェイドは緩く首を振ってから立ち上がって、ゆうに手を伸ばす。
「いいえ。ありがとうございました。山に登ることが…誰かと楽しさを共有することが、楽しいんだと知れて、本当に良かったです。感謝しています。」
「ジェイド先輩…」
「さぁ、行きましょう。目的地まではまだまだ遠いですよ。もっとたくさんのことを、教えていただけませんか」
「っ、はい!」
知らなければ良かった、などと思いたくない。この感情は大切にしたい、と。
繋いだ手は、そのままに。
二人の山登りは夕刻まで続いた。
それから。
オンボロ寮に戻ってきた二人の手にはたくさんのキノコと山菜。
満足そうな二人を見て、アズールとユウが苦笑を漏らしたのは言うまでもない。
寮にはすでに夕食が用意されていた。
「アズール・アーシェングロット!ユウちゃんとラブラブクッキングしたんだ!」
「貴女はだから僕をからかってそんなに楽しいんですか!?」
「これは〜俺が作ったの〜」
「!」
談話室の入り口を見れば、もう一つ、大きなお皿を手に持った長身の男が立っている。
「あっ!フロイド先輩だぁ!」
「おぉ。この子が違う世界の小エビちゃん?そう、俺、こっちの世界のフロイド〜。よろしく〜。」
「フロイド先輩!フロイド先輩!」
「元気いいんだねぇ小エビちゃん…って小エビちゃんが二人じゃん。どーすりゃいいの」
「フロイドもいい加減、名前で呼んで差し上げればどうです?」
「い〜や。小エビちゃんは小エビちゃんだから〜…まぁそのうち考える〜。」
オンボロ寮は、暖かい空気に包まれて。
また月が空に現れるまで、しばしの歓談タイムとなった。
自分が生まれ育った海とは対照的に「未知」という点で好奇心がくすぐられる。
でもその気持ちは、誰もわかってくれなかった。別にわかってもらえなかったからといって、山を嫌いになったり落胆したりはしなかったが、「誰かと分かち合いたい」という気持ちがなくなることもなかった。それは、生きるものなら誰だって持っている感情だ。
そんなところに幸運にもやってきたゆう。このチャンスを楽しまないわけにはいかない。
本心か同情かはわからない。でも、その言葉を発した彼女が悪いのだ。
「昨日の今日でお疲れでしょうけれど、今日は山の中腹辺りを目指して登山しながら、植物を観察したり採取しようと思っています。何かあればすぐに声をかけてくださいね」
「はいジェイド先輩!よろしくお願いします!」
昨日と変わらず元気の良いゆうはペコ、とお辞儀をして微笑んだ。
それから雑談をしつつ、山に入る。
小さなゆうと背の高いジェイドでは、歩幅が違いすぎるので、いつもと違ってゆっくりな足取りになる。
そのせいか、普段目に入れることのない木や空が、ジェイドの目に新鮮に映った。
ああ、やはり山は、自然は、神秘的で、素晴らしい。一人感動するもひとしお。
「ジェイド先輩!これ!」
「あぁそれは」
「スジオチバタケですね!」
「え?」
ゆうは続けて独り言のように「食べるのには向かないって聞きましたけど、どうなんだろう」と難しい顔をしながら観察をしていたが、正直ジェイドの脳はピタリと止まっていた。
(僕が答える前に、答えが返ってきた?)
その間にも、あっちやこっちに移動しては、キノコのみならず色々な植物を指差してその名前などを次々に挙げていく。
そんなことが?とともすれば武者震いを起こしそうな身体をなんとか支えたジェイドは、足元に別の小さなキノコを見つけ、手を伸ばそうとする。
「おや、これは初めて見る…」
「ジェイド先輩!触っちゃダメです!それはヒカゲシビレタケだから強い幻覚症状が出ます!」
「!?」
「あ、でもこっちは食べられますね、ニオウシメジです!本物は大きいですねぇ!」
「あ、あな、あなた…」
(これはもう疑いようがない。この子は、僕よりも知っている。山のことを。キノコのことを。)
その事実に気づいたジェイドは、その場に座り込んで体操座りになって、心が高揚することを抑えられなくなっていた。
身長190mの大きな男が山の、特に休憩スポットではない草の上で体操座りをする姿は奇妙以外の何物でもないが、そんなことには構っていられない。
嬉しい。
ジェイドは素直にそう思った。自分の話が通じるどころか、それ以上の知識が返ってくる。
「…っ」
「で、こっちは…ってジェイド先輩?!ど、どうしたんですか!?大丈夫ですか?触っちゃったんですかさっきの?!あわわっ、ど、どうし」
「違います」
「えっじゃあどうしたんですか!?」
「違うんです…っ…理由は言います、が、こちらを、見ないでくださいっ」
「へ?あっ、はい、」
言われた通り、ジェイドに背を向けてしゃがんだゆうは、ジェイドの言葉を待った。
「…はぁ…。僕としたことが…取り乱して申し訳ありません」
「えっとどこがですか…?今、ジェイド先輩が取り乱したところありましたっけ?」
「嬉しかったんです」
「山に来れたことですか?」
「それもありますが、あなたとこうして、山やキノコの話ができることが、です。前にも言いましたが、こっちの世界の監督生さんは僕のすることに興味がありませんし、アズールやフロイドももう…」
「なるほどぉ」
「どうしてもっと早くに来てくださらなかったのですか」
その、ジェイドにしては少し強い言葉に反応してゆうが振り向けば、ジェイドの目にはうっすら涙が溜まっている。
あの完璧なジェイド先輩の目に涙!目を見開いたゆうは、それから込み上げてくる微笑みを抑えることができなかった。
「ふ、ふふふっ…!ジェイド先輩、可愛いです」
「っ僕は本当に、」
「私のとこのジェイド先輩と同じなんだもの」
「!」
「ジェイド先輩も、好きなものの話、したいですよね。いつも凛としているし、掴めないところがあるからどうしたらいいかわからない人もいるかもしれませんが、そんなに嬉しかったというか取り乱していたのかと思うと、お誘いしてよかったです!」
「…なんで僕の世界にはゆうさんがいないんでしょう」
眉尻を下げて、困ったような顔をするジェイドは、いつもの目ではなく、本当に哀しげな感情を湛えていて、少しだけ誘ったことを後悔したゆうだった。知らなかったならば、今後も求めることもなかっただろうに、と。
「ごめんなさい…、気軽に、誘ってしまって」
謝ってどうにかなる問題ではないのだけれど、言葉をかけずにはいられなかった。
それに対して、ジェイドは緩く首を振ってから立ち上がって、ゆうに手を伸ばす。
「いいえ。ありがとうございました。山に登ることが…誰かと楽しさを共有することが、楽しいんだと知れて、本当に良かったです。感謝しています。」
「ジェイド先輩…」
「さぁ、行きましょう。目的地まではまだまだ遠いですよ。もっとたくさんのことを、教えていただけませんか」
「っ、はい!」
知らなければ良かった、などと思いたくない。この感情は大切にしたい、と。
繋いだ手は、そのままに。
二人の山登りは夕刻まで続いた。
それから。
オンボロ寮に戻ってきた二人の手にはたくさんのキノコと山菜。
満足そうな二人を見て、アズールとユウが苦笑を漏らしたのは言うまでもない。
寮にはすでに夕食が用意されていた。
「アズール・アーシェングロット!ユウちゃんとラブラブクッキングしたんだ!」
「貴女はだから僕をからかってそんなに楽しいんですか!?」
「これは〜俺が作ったの〜」
「!」
談話室の入り口を見れば、もう一つ、大きなお皿を手に持った長身の男が立っている。
「あっ!フロイド先輩だぁ!」
「おぉ。この子が違う世界の小エビちゃん?そう、俺、こっちの世界のフロイド〜。よろしく〜。」
「フロイド先輩!フロイド先輩!」
「元気いいんだねぇ小エビちゃん…って小エビちゃんが二人じゃん。どーすりゃいいの」
「フロイドもいい加減、名前で呼んで差し上げればどうです?」
「い〜や。小エビちゃんは小エビちゃんだから〜…まぁそのうち考える〜。」
オンボロ寮は、暖かい空気に包まれて。
また月が空に現れるまで、しばしの歓談タイムとなった。