【完結】監督生が二人いる?!
名前変換設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
フロイドを置いたままオンボロ寮へ戻ってきた四人は、鏡の調査もそこそこに、こんな時間であることを思い出す。あーでもないこーでもないと、埒のあかない話し合いをするには、夜が更け過ぎていたことを悟り、一旦眠ろうということになる。
しかし、当の部屋のベッドでは、グリムが一匹でど真ん中を陣取っているので、使えそうにもない。
仕方がない。
「えっと…すみません、今日は一旦、他の掃除済みの部屋で寝よっか…ゆうちゃん」
「うん!私はどこでもいいよ、ありがとう」
「ちょっと待ってください、なんで貴女とゆうさんが一緒の部屋前提なんですか」
「え?だってジェイド先輩たちはこんなオンボロ寮なんかで寝たくないでしょう?」
その言葉を聞いて、ジェイドは「はぁ〜」と大げさにため息をついた。
「僕たちは、貴女のために力を貸しているんですよ」
「ジェイド先輩、なんて?」
「オクタヴィネル寮生として、慈悲の心で助けて差し上げようとしているのに、追い出すというのですか」
「そ、そういうわけではなくて!!」
「少しくらい見返りをいただかなければ、ねぇアズール」
「え?あ、はぁ…?」
「僕は、ゆうさんと一緒に寝ますから。アズールはユウさんとよろしくしてください。では行きましょうか」
「え、あ、はい、じゃあおやすみ、ユウちゃん」
にっこり。それはそれはいい笑顔でトンデモナイことを言ったジェイドは「それでは隣の部屋を失礼しますね」とゆうの腰を取って部屋を出て行った。
確かに道すがら、つもる話があるだのもっと深い話がしたいだの、きのこが、山が、どうだのとゆうに詰め寄っていたジェイドだったが、まさかこんなことをさらりと言って退けるとは。一応ここは自分の寮だが?いや、ゆうちゃんの寮ともいうのか?それよりもその子はここのジェイド先輩の彼女ではないのだから二人きりにするのはまずいのでは、と、ユウは混乱してきた頭を抱えていた。
「ジェイド先輩…行っちゃった…」
「よほど嬉しかったんでしょう…山の話ができることが…」
「コアですもんね、話が」
「そうですね…正直あの話を毎日聞かされる側の気持ちも察して欲しいですけれど」
そこまで言って、ふふ、と苦笑まじりにアズールがユウの方を向くと、パッと顔を逸らされて、あ、と気づく。
「そうだった、ジェイドと彼女が一緒に出て行ったということは、つまりはこちらも二人きりと、そういうことだ」と。
気づいてしまえば、意識しないことは不可能だ。
「っ…あの…掃除済みの、部屋、が、あの、あと一つしかなくて、」
「そ、そうですか、」
「だから、私、談話室のソファーで寝ますから!お客様だから、アズール先輩はベッドを使ってください!、この先突き当たりのお部屋なので!それではおやすみなさッ、!」
「待って」
矢継ぎ早にそう言って出て行こうとしたユウの腕をパシ、と反射的に掴んだアズールだったが、こういうハプニングには慣れているわけではない。そもそも綿密に計画を練って物事に当たることは得意でも、初めてぶつかる、それも予想外のことに強いわけではないのだ。
それでも
それでも言わなければいけないことは、ある。
スッと深呼吸の上、その一言を。
「僕は、」
「…ッ」
「貴女と一緒でも、構いません、よ」
「で、でも」
「女性をソファーで寝かせるなどできませんし、それに、僕と貴女は、お付き合い、している、の、ですよ」
「そう、ですけど、」
「ほら、行きますよ」
「!」
手を引かれて二人向かった先の部屋。
掃除してあるとはいえ普段は使わないそこは、自室よりも冷たく、心なしか静かな気がするとユウは思った。
しかしながら、繋がれた手は熱くて、なんでこんなに意識してしまうのかと辟易もする。
そもそも一緒に布団に入るだけなのだから。それに他にも客人がいる。何も無い、何も無い、落ち着けと、煩い心臓に語りかける。
それはアズールも同じことで、もはや落ち着くというのは毛頭無理。頭は、寮服では眠りたくないと明後日のことを考えるばかりだ。
ベッドを目の前に、二人して立ち尽くすも、そうしていると余計に気まずいので、意を決したユウが先にベッドに入り込んだ。
「わ、私、寝相が悪いので!!壁側で、いいですかね?!」
「あっ、はい、どうぞ、」
「というか、アズール先輩、その服で眠るんですか…?何か服…」
「あ、あぁ、そうですね…、ええと、その、あちらを、向いていてもらえますか」
「?」
壁側を向いて眠る体制になったユウの耳に、すぐに衣擦れの音だけが聞こえてきて、ん?!、と余計なことを考える脳みそが憎らしい。そりゃああのピチピチしたスーツで眠るわけないとは思ったけど、そんな、まさか、あの紳士で純粋なアズール先輩が?!、などと視界がぐるぐると回る。
しかしそのような邪な考えは不要中の不要であった。
しばらく、ゆっくりと布団が捲られる感触がして、ついでもぞもぞと人が入り込んだのがわかった。
「…ッ!あ、あず、」
「すみません、失礼だとは思ったのですが、スーツをシワにするわけにもいかないので、」
「えっ、まさか服」
「上だけ脱がせてもらいました。インナーだけなので…心許ないですね。ヒトとは大変だ…」
「あっ、なんだ」
「なんだ、とはなんですか。」
「え?!な、なんでもないですよ?!」
「全く何を想像されたんだか」
素っ頓狂な声に、少しだけ空気が和らいだのか、ふっと息を吐いたアズールは思い切ってユウを背中から抱き寄せた。
突然の体温にびくりと強張る身体を、逃すまいとホールドして、「大丈夫です、何もしません」と呟いたアズールの声はだいぶ眠そうだ。
「あ…ごめんなさい、夜遅くに押しかけた挙句、こんなことになってしまって…」
「いいんですよ。貴女はそんなこと、気にしなくても。彼女の力になるのは彼氏の役目、という、もの、です」
「!…ふふ…アズール先輩は、すごく頼れる彼氏で…とっても頼もしいです。ありがとうございます」
「さ、明日のためにも、眠りましょう。正直なところ、僕は普段時間通りに眠るタイプなので、猛烈に眠くなってきました…貴女、暖かいですし…」
「はい、そうですね。おやすみなさい、アズール先輩」
部屋に小さな二つの吐息がこだまするころ、長い長い夜が、終わりを告げようとしていた。
なお、それから数時間後にすぐにやってきた朝。
早くから起きてきたゆうとジェイド二人に部屋を覗かれた上、「アズール・アーシェングロット!ユウちゃんとイイコトした?!」と尋ねられたアズールが布団から出てこなくなったことも予想の範疇外。
爆弾を放り投げたまま、なぜかフル装備の登山グッズに身を包んだ二人は意気揚々と山へと旅立った。
しかし、当の部屋のベッドでは、グリムが一匹でど真ん中を陣取っているので、使えそうにもない。
仕方がない。
「えっと…すみません、今日は一旦、他の掃除済みの部屋で寝よっか…ゆうちゃん」
「うん!私はどこでもいいよ、ありがとう」
「ちょっと待ってください、なんで貴女とゆうさんが一緒の部屋前提なんですか」
「え?だってジェイド先輩たちはこんなオンボロ寮なんかで寝たくないでしょう?」
その言葉を聞いて、ジェイドは「はぁ〜」と大げさにため息をついた。
「僕たちは、貴女のために力を貸しているんですよ」
「ジェイド先輩、なんて?」
「オクタヴィネル寮生として、慈悲の心で助けて差し上げようとしているのに、追い出すというのですか」
「そ、そういうわけではなくて!!」
「少しくらい見返りをいただかなければ、ねぇアズール」
「え?あ、はぁ…?」
「僕は、ゆうさんと一緒に寝ますから。アズールはユウさんとよろしくしてください。では行きましょうか」
「え、あ、はい、じゃあおやすみ、ユウちゃん」
にっこり。それはそれはいい笑顔でトンデモナイことを言ったジェイドは「それでは隣の部屋を失礼しますね」とゆうの腰を取って部屋を出て行った。
確かに道すがら、つもる話があるだのもっと深い話がしたいだの、きのこが、山が、どうだのとゆうに詰め寄っていたジェイドだったが、まさかこんなことをさらりと言って退けるとは。一応ここは自分の寮だが?いや、ゆうちゃんの寮ともいうのか?それよりもその子はここのジェイド先輩の彼女ではないのだから二人きりにするのはまずいのでは、と、ユウは混乱してきた頭を抱えていた。
「ジェイド先輩…行っちゃった…」
「よほど嬉しかったんでしょう…山の話ができることが…」
「コアですもんね、話が」
「そうですね…正直あの話を毎日聞かされる側の気持ちも察して欲しいですけれど」
そこまで言って、ふふ、と苦笑まじりにアズールがユウの方を向くと、パッと顔を逸らされて、あ、と気づく。
「そうだった、ジェイドと彼女が一緒に出て行ったということは、つまりはこちらも二人きりと、そういうことだ」と。
気づいてしまえば、意識しないことは不可能だ。
「っ…あの…掃除済みの、部屋、が、あの、あと一つしかなくて、」
「そ、そうですか、」
「だから、私、談話室のソファーで寝ますから!お客様だから、アズール先輩はベッドを使ってください!、この先突き当たりのお部屋なので!それではおやすみなさッ、!」
「待って」
矢継ぎ早にそう言って出て行こうとしたユウの腕をパシ、と反射的に掴んだアズールだったが、こういうハプニングには慣れているわけではない。そもそも綿密に計画を練って物事に当たることは得意でも、初めてぶつかる、それも予想外のことに強いわけではないのだ。
それでも
それでも言わなければいけないことは、ある。
スッと深呼吸の上、その一言を。
「僕は、」
「…ッ」
「貴女と一緒でも、構いません、よ」
「で、でも」
「女性をソファーで寝かせるなどできませんし、それに、僕と貴女は、お付き合い、している、の、ですよ」
「そう、ですけど、」
「ほら、行きますよ」
「!」
手を引かれて二人向かった先の部屋。
掃除してあるとはいえ普段は使わないそこは、自室よりも冷たく、心なしか静かな気がするとユウは思った。
しかしながら、繋がれた手は熱くて、なんでこんなに意識してしまうのかと辟易もする。
そもそも一緒に布団に入るだけなのだから。それに他にも客人がいる。何も無い、何も無い、落ち着けと、煩い心臓に語りかける。
それはアズールも同じことで、もはや落ち着くというのは毛頭無理。頭は、寮服では眠りたくないと明後日のことを考えるばかりだ。
ベッドを目の前に、二人して立ち尽くすも、そうしていると余計に気まずいので、意を決したユウが先にベッドに入り込んだ。
「わ、私、寝相が悪いので!!壁側で、いいですかね?!」
「あっ、はい、どうぞ、」
「というか、アズール先輩、その服で眠るんですか…?何か服…」
「あ、あぁ、そうですね…、ええと、その、あちらを、向いていてもらえますか」
「?」
壁側を向いて眠る体制になったユウの耳に、すぐに衣擦れの音だけが聞こえてきて、ん?!、と余計なことを考える脳みそが憎らしい。そりゃああのピチピチしたスーツで眠るわけないとは思ったけど、そんな、まさか、あの紳士で純粋なアズール先輩が?!、などと視界がぐるぐると回る。
しかしそのような邪な考えは不要中の不要であった。
しばらく、ゆっくりと布団が捲られる感触がして、ついでもぞもぞと人が入り込んだのがわかった。
「…ッ!あ、あず、」
「すみません、失礼だとは思ったのですが、スーツをシワにするわけにもいかないので、」
「えっ、まさか服」
「上だけ脱がせてもらいました。インナーだけなので…心許ないですね。ヒトとは大変だ…」
「あっ、なんだ」
「なんだ、とはなんですか。」
「え?!な、なんでもないですよ?!」
「全く何を想像されたんだか」
素っ頓狂な声に、少しだけ空気が和らいだのか、ふっと息を吐いたアズールは思い切ってユウを背中から抱き寄せた。
突然の体温にびくりと強張る身体を、逃すまいとホールドして、「大丈夫です、何もしません」と呟いたアズールの声はだいぶ眠そうだ。
「あ…ごめんなさい、夜遅くに押しかけた挙句、こんなことになってしまって…」
「いいんですよ。貴女はそんなこと、気にしなくても。彼女の力になるのは彼氏の役目、という、もの、です」
「!…ふふ…アズール先輩は、すごく頼れる彼氏で…とっても頼もしいです。ありがとうございます」
「さ、明日のためにも、眠りましょう。正直なところ、僕は普段時間通りに眠るタイプなので、猛烈に眠くなってきました…貴女、暖かいですし…」
「はい、そうですね。おやすみなさい、アズール先輩」
部屋に小さな二つの吐息がこだまするころ、長い長い夜が、終わりを告げようとしていた。
なお、それから数時間後にすぐにやってきた朝。
早くから起きてきたゆうとジェイド二人に部屋を覗かれた上、「アズール・アーシェングロット!ユウちゃんとイイコトした?!」と尋ねられたアズールが布団から出てこなくなったことも予想の範疇外。
爆弾を放り投げたまま、なぜかフル装備の登山グッズに身を包んだ二人は意気揚々と山へと旅立った。