【完結】監督生が二人いる?!
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一方こちらは、阿鼻叫喚なゆうの元の世界である。
「止めないでください!」
「いくらなんでも無理です!やめなさい!」
「じゃあ変身薬を今すぐください!」
「ジェイドまじで落ち着けよ!!」
ジェイドが穴をくぐるのを止めるのに全力なのは、アズールとフロイド。
下半身に縋りつき足を引っ張りの大変な騒ぎである。
ジェイドにとってゆうがどれだけ大切なのかが伝わるのはいいのだが、事情を知らないものがみたらシュール以外の何物でもない。
もうあと少しでその穴に顔が入ってしまう。
ちょうどそんな時だった。
「ぴー」
「へ?」
「よぉぉお!!!!」
「?!」
ぽこぽこぽこ!とでも音がしそうなほどに勢いよく穴から飛び出してきた変なうさぎが二匹。そのあとを歩いて転がり出てきたものが一匹。
それらを顔で抱きとめて、ジェイドが「ぶふっ」と声をあげた。
「あ?何こいつら」
「ぴょんちゃんっ、たちっ、もう少しゆっくりっ、」
「!」
穴の奥から聞こえた声に、皆が耳を疑った。
そうしてちょうど十秒後。そこから出てきた顔に呆けたのである。
「やっと、つい、た…え?!」
「…ゆう、さん、?」
「あー!ジェイド先輩っ!」
「ほんも、の?」
「はい!帰ってきました!」
「っ…!よかった…!」
「わ!?」
「もう離しません、絶対に…!」
ジェイドの大きな身体にぎゅむっと抱きしめられたゆうは、一瞬きょとんとしてから、嬉しそうにジェイドの背中に腕を回したのだった。
フロイドは拍子抜けしたような顔をしながら地面に尻もちをついて笑っている。
「あーっほんっとやばかった!ほんっとよかったねぇ~!」
「ゆうさん、今後は勝手にいなくならないでくださいね。ジェイドの気が振れて大変だったんですよ」
「はぁい。本当に、すみませんでした…」
「ま、小エビちゃんが無事だったんなら、別にいーよ!」
「ありがとうございます、フロイド先輩も」
「ところで、」
そう言ったのはアズールだった。
そのセリフにゆうたちがぴたりと停止する。
「この、うさぎ?は何ですか?貴女を連れてきてくれたみたいですが…」
「あ!そう!ぴょんちゃん!」
「ぴょんちゃん?」
「あっちとこっちの世界を繋いでくれる妖精さんです!」
「…これが?妖精?本当か?使い魔の間違いでは?」
「ひどい!こんなにかわいいのに!!」
「ぴょんちゃん!いく!あっち、あまい!」
ゆうの近くに来て制服の裾を引っ張るぴょんちゃんは「甘い」と連呼していることから、どうやらご褒美を求めているようだ。ご褒美をくれないならあちらに戻るということか。
だがそれよりも。
「わ!すごい!また新しい言葉しゃべってる!」
「すげぇ!このウサギ、しゃべんのー?!」
「ぴょんちゃん!ぴょんちゃん!」
「ふふ!すっかり自分の名前『ぴょんちゃん』だって思ってるんだ!かわいいー!」
「ああ、このネーミングはゆうさんが?」
「はい!最初は『ぴょ!』ってしか話さなかったんですけど、数時間一緒にいただけで、こんなに話せるようになったんですよ。すごいですよね!」
「ほぅ?」
その言葉に、じっとぴょんちゃんたちを見つめたアズールは、向こうのアズールと同じように『言葉を話せるなら連れて帰って働かせられないだろうか』とつぶやいている。
さすがの支配人、根本には寸分の違いもない。
「あまい!ぴょんちゃん!あまい、すき!」
「あまい?」
「そうなんです。ぴょんちゃんは飴とかそういう…砂糖菓子が大好きみたいで」
「ああ、甘い、ね。身体に悪そうなものを食べる生き物なんですね…」
「あまい、さとう?」
ゆうが言った台詞を繰り返し、三匹一緒に首を傾げる姿は、ただただ可愛い。
「そうだよー。甘いのは、お砂糖。さっき食べたのは、あめと、かくざとうと、こんぺいとう」
「あめ、かくざと、こんぺと」
「そうそう!えらいねー!でもごめんね、もう飴は持ってないんだ…。オンボロ寮まで来てくれるならお礼ができるんだけど…」
「おんぼょ、いく、ぴょんちゃん」
「え?きてくれるの?」
「う!いく!ぴょんちゃん!いく!あまい!あめ!」
もう一度ゆうの制服を引っ張ると、ぴょんちゃんたちは行こう行こうと騒ぎ出す。
「じゃあ、皆で帰ろうか!我が寮に!」
「かえる!あまい!」
「はぁーあ!今から仕事かよぉ〜…」
「アズール、今日は休みになりませんか。僕はゆうさんと過ごしたいです」
「なるわけないだろう!」
ワイワイしながら、戻ってきた日常を噛み締める、その中で。
ふと、アズールがゆうの背を突いた。
「あの、」
「?なんですか、アズール先輩」
「…あの、あちらの…監督生さんは…」
「へ?」
「ユウさんは、お元気でしたか」
「っ、!」
夕陽をバックにして陰ってしまった表情は、見えるようで、でもうまく捉えられない。
ゆうはハッと呼吸が止まる気持ちだったが、嘘をついても仕方がない。ありのままを伝えるのが最善だろうと、悲しそうに笑った。
「ユウちゃん、とっても元気でした!心配いりませんよ」
「そう、ですか…。心配、ないですか、」
「はい。多分彼女はもうこちらには来ないと思います。だって、あっちのアズール先輩も、嫉妬深そうだもの」
「っ…何を、」
「根本的には、同じなんだから」
「べ、つに…僕はなんとも」
「いつも通りが、一番です。きっと。誰も傷つかないから…」
「…そう、ですね…」
いつのまにか足を止めて話していた二人を、二、三歩先からフロイドが呼ぶ。
歩き始めたころには、何もなかったかのように。
淡い恋心に、蓋をして。
オンボロ寮での甘いものパーティーに、無理矢理頭を切り替えるのだった。
「止めないでください!」
「いくらなんでも無理です!やめなさい!」
「じゃあ変身薬を今すぐください!」
「ジェイドまじで落ち着けよ!!」
ジェイドが穴をくぐるのを止めるのに全力なのは、アズールとフロイド。
下半身に縋りつき足を引っ張りの大変な騒ぎである。
ジェイドにとってゆうがどれだけ大切なのかが伝わるのはいいのだが、事情を知らないものがみたらシュール以外の何物でもない。
もうあと少しでその穴に顔が入ってしまう。
ちょうどそんな時だった。
「ぴー」
「へ?」
「よぉぉお!!!!」
「?!」
ぽこぽこぽこ!とでも音がしそうなほどに勢いよく穴から飛び出してきた変なうさぎが二匹。そのあとを歩いて転がり出てきたものが一匹。
それらを顔で抱きとめて、ジェイドが「ぶふっ」と声をあげた。
「あ?何こいつら」
「ぴょんちゃんっ、たちっ、もう少しゆっくりっ、」
「!」
穴の奥から聞こえた声に、皆が耳を疑った。
そうしてちょうど十秒後。そこから出てきた顔に呆けたのである。
「やっと、つい、た…え?!」
「…ゆう、さん、?」
「あー!ジェイド先輩っ!」
「ほんも、の?」
「はい!帰ってきました!」
「っ…!よかった…!」
「わ!?」
「もう離しません、絶対に…!」
ジェイドの大きな身体にぎゅむっと抱きしめられたゆうは、一瞬きょとんとしてから、嬉しそうにジェイドの背中に腕を回したのだった。
フロイドは拍子抜けしたような顔をしながら地面に尻もちをついて笑っている。
「あーっほんっとやばかった!ほんっとよかったねぇ~!」
「ゆうさん、今後は勝手にいなくならないでくださいね。ジェイドの気が振れて大変だったんですよ」
「はぁい。本当に、すみませんでした…」
「ま、小エビちゃんが無事だったんなら、別にいーよ!」
「ありがとうございます、フロイド先輩も」
「ところで、」
そう言ったのはアズールだった。
そのセリフにゆうたちがぴたりと停止する。
「この、うさぎ?は何ですか?貴女を連れてきてくれたみたいですが…」
「あ!そう!ぴょんちゃん!」
「ぴょんちゃん?」
「あっちとこっちの世界を繋いでくれる妖精さんです!」
「…これが?妖精?本当か?使い魔の間違いでは?」
「ひどい!こんなにかわいいのに!!」
「ぴょんちゃん!いく!あっち、あまい!」
ゆうの近くに来て制服の裾を引っ張るぴょんちゃんは「甘い」と連呼していることから、どうやらご褒美を求めているようだ。ご褒美をくれないならあちらに戻るということか。
だがそれよりも。
「わ!すごい!また新しい言葉しゃべってる!」
「すげぇ!このウサギ、しゃべんのー?!」
「ぴょんちゃん!ぴょんちゃん!」
「ふふ!すっかり自分の名前『ぴょんちゃん』だって思ってるんだ!かわいいー!」
「ああ、このネーミングはゆうさんが?」
「はい!最初は『ぴょ!』ってしか話さなかったんですけど、数時間一緒にいただけで、こんなに話せるようになったんですよ。すごいですよね!」
「ほぅ?」
その言葉に、じっとぴょんちゃんたちを見つめたアズールは、向こうのアズールと同じように『言葉を話せるなら連れて帰って働かせられないだろうか』とつぶやいている。
さすがの支配人、根本には寸分の違いもない。
「あまい!ぴょんちゃん!あまい、すき!」
「あまい?」
「そうなんです。ぴょんちゃんは飴とかそういう…砂糖菓子が大好きみたいで」
「ああ、甘い、ね。身体に悪そうなものを食べる生き物なんですね…」
「あまい、さとう?」
ゆうが言った台詞を繰り返し、三匹一緒に首を傾げる姿は、ただただ可愛い。
「そうだよー。甘いのは、お砂糖。さっき食べたのは、あめと、かくざとうと、こんぺいとう」
「あめ、かくざと、こんぺと」
「そうそう!えらいねー!でもごめんね、もう飴は持ってないんだ…。オンボロ寮まで来てくれるならお礼ができるんだけど…」
「おんぼょ、いく、ぴょんちゃん」
「え?きてくれるの?」
「う!いく!ぴょんちゃん!いく!あまい!あめ!」
もう一度ゆうの制服を引っ張ると、ぴょんちゃんたちは行こう行こうと騒ぎ出す。
「じゃあ、皆で帰ろうか!我が寮に!」
「かえる!あまい!」
「はぁーあ!今から仕事かよぉ〜…」
「アズール、今日は休みになりませんか。僕はゆうさんと過ごしたいです」
「なるわけないだろう!」
ワイワイしながら、戻ってきた日常を噛み締める、その中で。
ふと、アズールがゆうの背を突いた。
「あの、」
「?なんですか、アズール先輩」
「…あの、あちらの…監督生さんは…」
「へ?」
「ユウさんは、お元気でしたか」
「っ、!」
夕陽をバックにして陰ってしまった表情は、見えるようで、でもうまく捉えられない。
ゆうはハッと呼吸が止まる気持ちだったが、嘘をついても仕方がない。ありのままを伝えるのが最善だろうと、悲しそうに笑った。
「ユウちゃん、とっても元気でした!心配いりませんよ」
「そう、ですか…。心配、ないですか、」
「はい。多分彼女はもうこちらには来ないと思います。だって、あっちのアズール先輩も、嫉妬深そうだもの」
「っ…何を、」
「根本的には、同じなんだから」
「べ、つに…僕はなんとも」
「いつも通りが、一番です。きっと。誰も傷つかないから…」
「…そう、ですね…」
いつのまにか足を止めて話していた二人を、二、三歩先からフロイドが呼ぶ。
歩き始めたころには、何もなかったかのように。
淡い恋心に、蓋をして。
オンボロ寮での甘いものパーティーに、無理矢理頭を切り替えるのだった。