【完結】監督生が二人いる?!
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「それじゃあ、また」
「はい、また」
「またね、ユウちゃん!」
「うん、またね」
ユウは、着せてもらった浴衣を身につけたまま戻っていった。
その顔は少しだけ悲しみを携えており、どうしたものかとアズールの顔を見たゆうは、更に驚いたのであった。
「アズール…先輩、」
「…」
今ここでない遠くを見つめて、何かを渇望するような、縋るものを求めるような。そんな眼差し。
ゆうは悟る。会わせてはいけない人に出会わせてしまったと。
それを思えば、あちらのジェイドとて同じなのだろうが。
しかし、そんなことを言ったところでこの記憶は消えるわけでもない。
スゥッと息を吸い込むと、できる限りの明るい声で、ゆうはアズールの背を叩き、もう一度声をかける。
「アズール先輩っ!」
「うわ!、な、なんです突然」
「大丈夫!先輩の周りには、私も、ジェイド先輩も、フロイド先輩も、それから寮生たちだっていますから!」
「そうですよ」
「だよ〜アズール、そんな寂しそうな顔すんなって!また来」
「アズールがそんな気持ちになるくらいなら破壊してしまえばいいんですよ。そうすればゆうさんだってあちらに行けなくなる」
「「「は??」」」
バリン!
「「「えーーーーーーッ?!??!」」」
思い切りよく鏡に拳を振るったジェイドのその手を掴める者がいるはずもなく。
あっけなく割れてしまった鏡には、もう何も映ることはなかった。
*
同時刻。
元の世界に戻ったユウは、その足でオクタヴィネルに向かっていたのでその異変に気付くことはなかった。
すなわち、自分の鏡にもヒビが入っていたことには。
動転していたユウではあったが、頭のどこかで、寮の扉が開いているはずはないことは危惧していた。
けれどその危惧もなんのその。それを見越したように鏡舎にいたのは、アズールだった。
「!!」
「お帰りなさい、ユウ」
「アズ、ル…せんぱッ…!」
「今そちらに向かおうとしていたんですが、足音がしたの、でっ!?」
「っ…!」
勢い、アズールに抱きついたユウは、ぎゅぅ、と縋り付くようにその背に手を回した。
瞬間に固まったアズールではあったが、切羽詰まった様子に違和感を覚えて、とにかく中に入ってください、とその頭を撫でたのだった。
「どうぞ、ハーブティーです」
「…ぁ、りがとうございます…すみません…」
「いいんですよ。さぁ、温かいうちに。きっと落ち着きますから」
「…はい…」
寮内に通されて、そのままモストロ・ラウンジのソファーに腰を下ろした二人。
しばしの沈黙の後、訥々と向こうの世界であったことを素直に話し始めたユウを見つめながら、アズールは内心でため息をついた。
『やっぱりこうなったか』という気持ちだったから。
「…すみません…こんな話、アズール先輩にしても…きっと嫌な気分にさせるだろうと思ったんですけど…でも黙っておけなくて…ごめんなさい…」
「いえ、よく打ち明けてくれましたよ。貴女だって葛藤があったでしょう。それに…いつか、こんなことになるんじゃないかと思っていました」
「…え?」
「だってそうでしょう。いくらパラレルワールドといえど、僕は僕だ。僕が見染めた人を、僕が気にしないわけがない」
「…そ…れは…でも…一緒に過ごした時間も違いますし…私は…私は、貴方が好きなのに…ッ」
「その気持ちは有り難いですが、頭で思い描くのと本物を目の前にするのとでは、どうしても仕方のないことでしょう。僕は僕で間違い無いのだから」
パラレルワールドというものは、一歩間違うとその世界に影響を残しすぎて、破滅への一途を辿るとはよく言われることだ。
たかが数度の行き来ではあったが、すでに『情』を持ってしまったこちらのジェイドとあちらのアズール、そしてユウとゆうがいる限り、その侵食は始まっていると思った方がいいだろう、とアズールは考える。
あちらの自分には悪いが、今後はユウはあちらに行かせるわけにはいかない。もちろんゆうをこちらに寄越すようなことも避けなければならない。
「とにかく今日はもう遅い。貴女は休んだ方が良いでしょう。今後のことは明日以降にまた考えましょう。オンボロ寮までお送りしますから」
「、先輩…」
「はい?」
お茶を飲み終えたタイミングを見計らって、ユウに手を差し出して立ち上がらせようとした。
が、その手を擦りぬけたユウはまたもやアズールに抱きついた。
なんだか今日は頭がおかしくなりそうな日だ、と、アズールは意識の奥でめまいを覚えた。
「あ、あの、ユウ、どうしたんですか!?」
「せ…んぱい…今日、朝まで、一緒にいてくれませんか…」
「はぁ?!?!」
「おねがい、します…ッ、対価なら、払いますからっ」
「…ッ僕をなんだと思っているんですか!貴女の彼氏ですよ!!対価なんてなくても一緒にいますから!!」
売り言葉に買い言葉ではないけれど、紳士に振舞おうとした直後に理性を崩されるようなことを言われてはたまったものじゃない。
とりあえず離れて、と肩を掴んで柔く押し返せば、うるりとユウの瞳が揺れた。
「…怒って、ませんか…?」
「貴女に対して僕が怒るとでも思ってるんですか?…大丈夫ですよ、少し驚いただけです」
「よかったぁ…」
彼女の前ではなるべくスマートでいたいと思うものの、そううまくはいかない現実に苦笑しながらも、この一言だけは伝えなければ、と喝を入れてゴホンと咳払い。
「それと」
「?」
「その服、とてもお似合いですよ」
「…!あ、ありがとう、ござい、ます…浴衣って、いうんですけど、その、」
「ゆかた、ですか。いいですね。この間した花火に似合いそうだ」
「そうなんです!私が元いた世界でも花火を見るときはよく浴衣を着て歩いて…」
取り留めのない話をしながら、向かったオンボロ寮への道のりは、一人で歩くよりも足取り軽く。
そこで悲劇が待っているとも知らずに。
「はい、また」
「またね、ユウちゃん!」
「うん、またね」
ユウは、着せてもらった浴衣を身につけたまま戻っていった。
その顔は少しだけ悲しみを携えており、どうしたものかとアズールの顔を見たゆうは、更に驚いたのであった。
「アズール…先輩、」
「…」
今ここでない遠くを見つめて、何かを渇望するような、縋るものを求めるような。そんな眼差し。
ゆうは悟る。会わせてはいけない人に出会わせてしまったと。
それを思えば、あちらのジェイドとて同じなのだろうが。
しかし、そんなことを言ったところでこの記憶は消えるわけでもない。
スゥッと息を吸い込むと、できる限りの明るい声で、ゆうはアズールの背を叩き、もう一度声をかける。
「アズール先輩っ!」
「うわ!、な、なんです突然」
「大丈夫!先輩の周りには、私も、ジェイド先輩も、フロイド先輩も、それから寮生たちだっていますから!」
「そうですよ」
「だよ〜アズール、そんな寂しそうな顔すんなって!また来」
「アズールがそんな気持ちになるくらいなら破壊してしまえばいいんですよ。そうすればゆうさんだってあちらに行けなくなる」
「「「は??」」」
バリン!
「「「えーーーーーーッ?!??!」」」
思い切りよく鏡に拳を振るったジェイドのその手を掴める者がいるはずもなく。
あっけなく割れてしまった鏡には、もう何も映ることはなかった。
*
同時刻。
元の世界に戻ったユウは、その足でオクタヴィネルに向かっていたのでその異変に気付くことはなかった。
すなわち、自分の鏡にもヒビが入っていたことには。
動転していたユウではあったが、頭のどこかで、寮の扉が開いているはずはないことは危惧していた。
けれどその危惧もなんのその。それを見越したように鏡舎にいたのは、アズールだった。
「!!」
「お帰りなさい、ユウ」
「アズ、ル…せんぱッ…!」
「今そちらに向かおうとしていたんですが、足音がしたの、でっ!?」
「っ…!」
勢い、アズールに抱きついたユウは、ぎゅぅ、と縋り付くようにその背に手を回した。
瞬間に固まったアズールではあったが、切羽詰まった様子に違和感を覚えて、とにかく中に入ってください、とその頭を撫でたのだった。
「どうぞ、ハーブティーです」
「…ぁ、りがとうございます…すみません…」
「いいんですよ。さぁ、温かいうちに。きっと落ち着きますから」
「…はい…」
寮内に通されて、そのままモストロ・ラウンジのソファーに腰を下ろした二人。
しばしの沈黙の後、訥々と向こうの世界であったことを素直に話し始めたユウを見つめながら、アズールは内心でため息をついた。
『やっぱりこうなったか』という気持ちだったから。
「…すみません…こんな話、アズール先輩にしても…きっと嫌な気分にさせるだろうと思ったんですけど…でも黙っておけなくて…ごめんなさい…」
「いえ、よく打ち明けてくれましたよ。貴女だって葛藤があったでしょう。それに…いつか、こんなことになるんじゃないかと思っていました」
「…え?」
「だってそうでしょう。いくらパラレルワールドといえど、僕は僕だ。僕が見染めた人を、僕が気にしないわけがない」
「…そ…れは…でも…一緒に過ごした時間も違いますし…私は…私は、貴方が好きなのに…ッ」
「その気持ちは有り難いですが、頭で思い描くのと本物を目の前にするのとでは、どうしても仕方のないことでしょう。僕は僕で間違い無いのだから」
パラレルワールドというものは、一歩間違うとその世界に影響を残しすぎて、破滅への一途を辿るとはよく言われることだ。
たかが数度の行き来ではあったが、すでに『情』を持ってしまったこちらのジェイドとあちらのアズール、そしてユウとゆうがいる限り、その侵食は始まっていると思った方がいいだろう、とアズールは考える。
あちらの自分には悪いが、今後はユウはあちらに行かせるわけにはいかない。もちろんゆうをこちらに寄越すようなことも避けなければならない。
「とにかく今日はもう遅い。貴女は休んだ方が良いでしょう。今後のことは明日以降にまた考えましょう。オンボロ寮までお送りしますから」
「、先輩…」
「はい?」
お茶を飲み終えたタイミングを見計らって、ユウに手を差し出して立ち上がらせようとした。
が、その手を擦りぬけたユウはまたもやアズールに抱きついた。
なんだか今日は頭がおかしくなりそうな日だ、と、アズールは意識の奥でめまいを覚えた。
「あ、あの、ユウ、どうしたんですか!?」
「せ…んぱい…今日、朝まで、一緒にいてくれませんか…」
「はぁ?!?!」
「おねがい、します…ッ、対価なら、払いますからっ」
「…ッ僕をなんだと思っているんですか!貴女の彼氏ですよ!!対価なんてなくても一緒にいますから!!」
売り言葉に買い言葉ではないけれど、紳士に振舞おうとした直後に理性を崩されるようなことを言われてはたまったものじゃない。
とりあえず離れて、と肩を掴んで柔く押し返せば、うるりとユウの瞳が揺れた。
「…怒って、ませんか…?」
「貴女に対して僕が怒るとでも思ってるんですか?…大丈夫ですよ、少し驚いただけです」
「よかったぁ…」
彼女の前ではなるべくスマートでいたいと思うものの、そううまくはいかない現実に苦笑しながらも、この一言だけは伝えなければ、と喝を入れてゴホンと咳払い。
「それと」
「?」
「その服、とてもお似合いですよ」
「…!あ、ありがとう、ござい、ます…浴衣って、いうんですけど、その、」
「ゆかた、ですか。いいですね。この間した花火に似合いそうだ」
「そうなんです!私が元いた世界でも花火を見るときはよく浴衣を着て歩いて…」
取り留めのない話をしながら、向かったオンボロ寮への道のりは、一人で歩くよりも足取り軽く。
そこで悲劇が待っているとも知らずに。