【完結】監督生が二人いる?!
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鏡を通過したゆうは行きと同じく、しかし今度は自分の世界のジェイドに手を引かれて鏡を抜けた。
「ただいま帰りました!」
「お帰りなさい、ゆうさん」
ギュウと抱きしめられて、ゆうは満足そうに笑った。
「うん!やっぱりジェイド先輩はジェイド先輩だ!」
「ふふ、どういう意味でしょう?」
「内緒ですっ!おむすびは美味しかったですか?」
「えぇ、とても」
「また作りますね!」
「楽しみにしていますよ」
へへ、と恥ずかしそうに頬を染めたゆうをうにうにと指で弄びながら、ジェイドも二日ぶりに破顔したのだった。
時間も時間なのでこのまま眠りましょう、というジェイドの提案に乗ってゆうはその腕に抱かれたままベッドに横になる。
ジェイドと一緒にいるとすぐに眠気がやってくる。それは嬉しくもあり、惜しくもある感情。
口には出さないまま、すでに微睡みの中。
「おやすみなさい、ジェイド…先輩…」
「はい。お休みなさい。お疲れでしょう、ゆっくり眠ってくださいね」
月の光は優しく二人を包み込み、静寂がオンボロ寮を満たした。
次の日。
調査メモをもってVIPルームを訪れたゆうは、向こうの世界で見聞きしたことをアズールに報告していた。
「そういうわけで、あちらでやっているのは、コロンの販売だけみたいです。ただ、新しく思いついたお弁当案についてはこちらでもできるかなって思いました」
「なるほど…。調香は知識がないと難しいので、こちらでやるにはハードルが高いかもしれませんね。お弁当は今すぐにでも始められそうです。案を詰めてみましょう」
「はい!あっ、あと」
「?なんでしょう」
『花火大会をしたらどうでしょうか』、そんなゆうの発言から想起されたビジネスチャンス。アズールにとっては、やらない手はなかった。定期的に開けそうなイベントは、早めに着手するに越したことはない、と頭をフル回転させる。
持ち歩きやすい食べ物と、それから給仕者側の『浴衣』とよばれる服。これさえ揃えば、あとは花火を打ち上げる場所だけの問題だが、これは、オクタヴィネル寮の地理を生かして、海上でやれば大事にはならないだろうと予測した。
早速手配した浴衣は、数日もしないうちに手元に届く。
それをゆうに指導されながら着付けてみれば、皆、予想外に着こなしており、なんだかそれだけでも成功の香りが漂う。
「なるほど。この服は、制服などより数段着やすいですね」
「ホントにねー!オレはこれ、気に入ったぁ〜!」
「それはよかったです!浴衣は割と窮屈な感じがしないから、皆さんにとっては良いかもですね!」
「でもさ、小エビちゃんは着ねぇの?」
「え…あーいや、私は」
「そうですよ。発案者の貴女にはぜひ着ていただかないと」
双子に詰め寄られては、ゆうも着ないわけにはいかず。そうやって皆でワイワイする姿であふれると、いつものモストロ・ラウンジよりも年相応の雰囲気が漂ってくる。
それを一歩引いた場所から見つめながら、アズールはふと思った。
(ユウさんも、きっと似合うだろうな)
「……!?」
その無意識の思いに気付いて理解した段階で、何を考えているんだと一人顔を赤らめつつ。しかし、たまにはプレゼントも悪くない。ゆうと同じタイプの浴衣をもう一着手配しておこう、と画策したのであった。
儲け話と色恋沙汰。
もちろん自分にとって大事なのは前者であるし、後者は自分が相談されて金儲けに利用する、それだけのものに過ぎなかったわけだが、つまるところ、パラレルワールドとはいえ、アズール・アーシェングロットはアズール・アーシェングロットでしかないのかもしれない、なんて苦笑しながら。
「アズール先輩、どうしました?」
「いいえ、どうもしませんよ」
「もしかして、こういうの嫌いでした?アズール先輩、うるさいの苦手そうですもんね」
「そんなことはありませんよ。僕はお客様を喜ばせられることならなんでも試すつもりです。それに、こういう雰囲気も嫌いではありませんし」
「ふふ…!経営者の鏡ってやつですね」
「そう思っていただければ幸いですよ」
「で、ですね、ちょっと、お耳を拝借していいですかアズール先輩」
「?」
背の小さめなゆうに合わせて、腰をかがめると、こんなことを囁かれた。
ユウちゃん、着たことないって言ってましたよ、浴衣。
「!!」
「プレゼントしたら、喜んじゃうかもしれないですね!」
「ッ、べ、別に僕は」
「下心、とかじゃなくて、アズール先輩も学生としてこういう雰囲気を思う存分楽しむの、いいと思います」
「…そう、ですね。たまには、」
自分だって、年相応に、この環境を楽しむのも悪くないのか。
複雑な表情を浮かべたアズールではあったが、その脳裏に浮かぶのは、もしかしたら見ることができるかもしれない彼女の笑顔だった。
「ただいま帰りました!」
「お帰りなさい、ゆうさん」
ギュウと抱きしめられて、ゆうは満足そうに笑った。
「うん!やっぱりジェイド先輩はジェイド先輩だ!」
「ふふ、どういう意味でしょう?」
「内緒ですっ!おむすびは美味しかったですか?」
「えぇ、とても」
「また作りますね!」
「楽しみにしていますよ」
へへ、と恥ずかしそうに頬を染めたゆうをうにうにと指で弄びながら、ジェイドも二日ぶりに破顔したのだった。
時間も時間なのでこのまま眠りましょう、というジェイドの提案に乗ってゆうはその腕に抱かれたままベッドに横になる。
ジェイドと一緒にいるとすぐに眠気がやってくる。それは嬉しくもあり、惜しくもある感情。
口には出さないまま、すでに微睡みの中。
「おやすみなさい、ジェイド…先輩…」
「はい。お休みなさい。お疲れでしょう、ゆっくり眠ってくださいね」
月の光は優しく二人を包み込み、静寂がオンボロ寮を満たした。
次の日。
調査メモをもってVIPルームを訪れたゆうは、向こうの世界で見聞きしたことをアズールに報告していた。
「そういうわけで、あちらでやっているのは、コロンの販売だけみたいです。ただ、新しく思いついたお弁当案についてはこちらでもできるかなって思いました」
「なるほど…。調香は知識がないと難しいので、こちらでやるにはハードルが高いかもしれませんね。お弁当は今すぐにでも始められそうです。案を詰めてみましょう」
「はい!あっ、あと」
「?なんでしょう」
『花火大会をしたらどうでしょうか』、そんなゆうの発言から想起されたビジネスチャンス。アズールにとっては、やらない手はなかった。定期的に開けそうなイベントは、早めに着手するに越したことはない、と頭をフル回転させる。
持ち歩きやすい食べ物と、それから給仕者側の『浴衣』とよばれる服。これさえ揃えば、あとは花火を打ち上げる場所だけの問題だが、これは、オクタヴィネル寮の地理を生かして、海上でやれば大事にはならないだろうと予測した。
早速手配した浴衣は、数日もしないうちに手元に届く。
それをゆうに指導されながら着付けてみれば、皆、予想外に着こなしており、なんだかそれだけでも成功の香りが漂う。
「なるほど。この服は、制服などより数段着やすいですね」
「ホントにねー!オレはこれ、気に入ったぁ〜!」
「それはよかったです!浴衣は割と窮屈な感じがしないから、皆さんにとっては良いかもですね!」
「でもさ、小エビちゃんは着ねぇの?」
「え…あーいや、私は」
「そうですよ。発案者の貴女にはぜひ着ていただかないと」
双子に詰め寄られては、ゆうも着ないわけにはいかず。そうやって皆でワイワイする姿であふれると、いつものモストロ・ラウンジよりも年相応の雰囲気が漂ってくる。
それを一歩引いた場所から見つめながら、アズールはふと思った。
(ユウさんも、きっと似合うだろうな)
「……!?」
その無意識の思いに気付いて理解した段階で、何を考えているんだと一人顔を赤らめつつ。しかし、たまにはプレゼントも悪くない。ゆうと同じタイプの浴衣をもう一着手配しておこう、と画策したのであった。
儲け話と色恋沙汰。
もちろん自分にとって大事なのは前者であるし、後者は自分が相談されて金儲けに利用する、それだけのものに過ぎなかったわけだが、つまるところ、パラレルワールドとはいえ、アズール・アーシェングロットはアズール・アーシェングロットでしかないのかもしれない、なんて苦笑しながら。
「アズール先輩、どうしました?」
「いいえ、どうもしませんよ」
「もしかして、こういうの嫌いでした?アズール先輩、うるさいの苦手そうですもんね」
「そんなことはありませんよ。僕はお客様を喜ばせられることならなんでも試すつもりです。それに、こういう雰囲気も嫌いではありませんし」
「ふふ…!経営者の鏡ってやつですね」
「そう思っていただければ幸いですよ」
「で、ですね、ちょっと、お耳を拝借していいですかアズール先輩」
「?」
背の小さめなゆうに合わせて、腰をかがめると、こんなことを囁かれた。
ユウちゃん、着たことないって言ってましたよ、浴衣。
「!!」
「プレゼントしたら、喜んじゃうかもしれないですね!」
「ッ、べ、別に僕は」
「下心、とかじゃなくて、アズール先輩も学生としてこういう雰囲気を思う存分楽しむの、いいと思います」
「…そう、ですね。たまには、」
自分だって、年相応に、この環境を楽しむのも悪くないのか。
複雑な表情を浮かべたアズールではあったが、その脳裏に浮かぶのは、もしかしたら見ることができるかもしれない彼女の笑顔だった。