【完結】監督生が二人いる?!
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「一日なんてあっという間ですねぇ」
夕食の片付けを終えてユウが談話室へ戻ってくると、何故か談話室前で手持ち無沙汰に立っているアズールがおり、目線で「どうしました?」と尋ねれば、これまた目線で「中に入りづらい」と返された。
その時談話室では、ゆうがしみじみとジェイドと話をしており、その、あっという間という言葉に反応して、ジェイドが眉を下げて寂しそうな顔をしたところだった。
「このままこちらにいてくださっても構わないのですけれど」
「魅力的なお誘いですが、ジェイド先輩が寂しがってしまうので…」
「…僕もジェイドですよ」
「アッ!えっと、そうですよね、そう…」
「ふふ…困らせてしまってすみません。頭ではわかっているんですが。一時の夢物語がこんなにも楽しいなんて思ってもいなかったもので、つい」
この世界で予定調和から外れたことが起こるなんてよくある話だ。ただ、そのイレギュラーが楽しければ楽しいほど、手離し難くなるのも無理のないことですね、そうジェイドは言った。
「また、来ます。きっと」
「そうですね…」
いつものジェイドらしくない雰囲気に、少し同情したユウは、アズールに小さな声で語りかける。
「私が、悪かったんですかね…」
「…ですが、貴女がジェイドを選んでいたら、僕はどうなるんです?」
「それは……すみません。そうですよね」
「そもそもあり得ないことが起こったからこうなったものの、本来ならジェイドがこんな気持ちを覚えることはなかったのですから、貴女が気にする必要はありませんよ」
「…アズール先輩…」
ね、とアズールはユウの髪をそっと撫でる。
「…っありがとうございます…。でも、私は、別の世界にいたってアズール先輩を選んだと思います」
「っ…な、なんですか、急に…」
「へへ…先輩が好きだなって、思ったので」
「…貴女…そういうことは、もう少しムードを考えて言ってもらわないと…」
口を覆って目を逸らしたアズールだったが、見えている耳は真っ赤に染まっており可愛らしいことこの上ない。くすりと笑ったユウだったが、あ!と声を上げて手を打った。
「花火しましょう!」
「突然何を言うかと思えば…花火…とは、あの、打ち上げる?」
「あっ、打ち上げ以外にもあるんですよ。手で持ってやるのが…0時までまだ少し時間もありますし」
何より、綺麗なものは思い出の一ページにもってこいですから!、と、元気に言って、そのまま談話室に駆け込むユウを見て、今度はアズールが苦笑する番だ。なんでも一直線な人だ、と。
*
そんなわけで、いつかのために買っておいた花火セットを持ち出して、オンボロ寮の閑散とした庭に出た四人と一匹。
せっかくなので、フロイドも呼び出して、プチ花火大会の始まりである。
「小エビちゃ〜ん、小々エビちゃ〜ん!!見て見て!」
「わ!!すご〜い!!」
「こ、こわ!あぶな!!」
見れば、ぐるぐるぐる、とフロイドがたくさんの花火に火をつけて、トーチトワリングのように手を振り回していた。
その横ではグリムがねずみ花火に追いかけ回されていたり、あぶない方向を向けたまま手筒花火に光をつけようとするジェイドを止めようとするアズールがいたり大騒ぎだ。
元いた世界では夏にやることが前提とされていた遊びも、ここではいつだってやれるのも背徳感のようなものがあって気分を高揚させるスパイスだ。打ち上げ花火がなくたって、なんだかんだで楽しい遊び。
パチパチ燃える炎と、キラキラ光る星と。
楽しい記憶として残ってくれたら、それでいい。
「ユウちゃん」
「ん?」
「楽しいね」
「うん、すっごく楽しい!」
「でもさ、楽しい時間って、怖くもあったりしてさ」
「…うん、わかるよ…」
「当たり前の日常がいつなくなるか、って考えるとさ、やっぱり、どうしようもなくなっちゃうんだよね」
「考えるだけ、無駄なんだけどね」、と笑って、ゆうは線香花火に火を点けた。
ユウもゆうも、この日常をいくら楽しく、幸せなものに感じても、この世界において異質なものであることには変わりない。その意識は、いつだって抜けないもので。
ふとした瞬間に恐怖に足を掬われそうになるのだ。
「ジェイド先輩のことも、心配だし」
「私も。アズール先輩のこと、心配」
「自分のこともわからないのにね」
「でも、相手のことのが心配になっちゃうの」
「恋だね」
「ふふっ、愛かもよ?」
夜空を滑る星に願いをかけたところで、叶わないことは誰もが知っている。
けれどそれをやめられないのもまた、仕方のないことだろう。
「ゆうちゃんは、帰りたいの?」
「…ユウちゃんこそ…」
「…私…私は…」
「ストップ」
「「え?」」
気持ちを口にしようとしたところで、後ろから伸びてきた手によって、口を塞がれてしまったユウ。
んっ!?とそちらの方向を見れば、いつの間にこちらにきたのか、アズールが複雑な表情で立っていた。
「今はまだ、聞きません」
「ユウちゃんだったら、帰るって言わないと思いますけど」
「それでも…何れにせよ、選択をさせるというのは、酷なことです。言葉は、呪いですよ?」
「それをアズール・アーシェングロットが言うとなんだかなぁ」
「貴女ねぇ…」
「まぁでも。その手、いい加減に離してあげたほうがいいんじゃないですか?」
「!!すみません!!」
「っぷは!い、いえ…大丈夫ですっ…」
「ふふっ…ユウちゃん、やっぱり、愛、かもね」
「っ!」
暗闇に紛れてユウの顔はよくは見えなかったけれど、きっと朱が差していたことだろう。
そうして、煌めく思い出を胸に抱いて、ゆうはあちらの世界へ帰っていった。
夕食の片付けを終えてユウが談話室へ戻ってくると、何故か談話室前で手持ち無沙汰に立っているアズールがおり、目線で「どうしました?」と尋ねれば、これまた目線で「中に入りづらい」と返された。
その時談話室では、ゆうがしみじみとジェイドと話をしており、その、あっという間という言葉に反応して、ジェイドが眉を下げて寂しそうな顔をしたところだった。
「このままこちらにいてくださっても構わないのですけれど」
「魅力的なお誘いですが、ジェイド先輩が寂しがってしまうので…」
「…僕もジェイドですよ」
「アッ!えっと、そうですよね、そう…」
「ふふ…困らせてしまってすみません。頭ではわかっているんですが。一時の夢物語がこんなにも楽しいなんて思ってもいなかったもので、つい」
この世界で予定調和から外れたことが起こるなんてよくある話だ。ただ、そのイレギュラーが楽しければ楽しいほど、手離し難くなるのも無理のないことですね、そうジェイドは言った。
「また、来ます。きっと」
「そうですね…」
いつものジェイドらしくない雰囲気に、少し同情したユウは、アズールに小さな声で語りかける。
「私が、悪かったんですかね…」
「…ですが、貴女がジェイドを選んでいたら、僕はどうなるんです?」
「それは……すみません。そうですよね」
「そもそもあり得ないことが起こったからこうなったものの、本来ならジェイドがこんな気持ちを覚えることはなかったのですから、貴女が気にする必要はありませんよ」
「…アズール先輩…」
ね、とアズールはユウの髪をそっと撫でる。
「…っありがとうございます…。でも、私は、別の世界にいたってアズール先輩を選んだと思います」
「っ…な、なんですか、急に…」
「へへ…先輩が好きだなって、思ったので」
「…貴女…そういうことは、もう少しムードを考えて言ってもらわないと…」
口を覆って目を逸らしたアズールだったが、見えている耳は真っ赤に染まっており可愛らしいことこの上ない。くすりと笑ったユウだったが、あ!と声を上げて手を打った。
「花火しましょう!」
「突然何を言うかと思えば…花火…とは、あの、打ち上げる?」
「あっ、打ち上げ以外にもあるんですよ。手で持ってやるのが…0時までまだ少し時間もありますし」
何より、綺麗なものは思い出の一ページにもってこいですから!、と、元気に言って、そのまま談話室に駆け込むユウを見て、今度はアズールが苦笑する番だ。なんでも一直線な人だ、と。
*
そんなわけで、いつかのために買っておいた花火セットを持ち出して、オンボロ寮の閑散とした庭に出た四人と一匹。
せっかくなので、フロイドも呼び出して、プチ花火大会の始まりである。
「小エビちゃ〜ん、小々エビちゃ〜ん!!見て見て!」
「わ!!すご〜い!!」
「こ、こわ!あぶな!!」
見れば、ぐるぐるぐる、とフロイドがたくさんの花火に火をつけて、トーチトワリングのように手を振り回していた。
その横ではグリムがねずみ花火に追いかけ回されていたり、あぶない方向を向けたまま手筒花火に光をつけようとするジェイドを止めようとするアズールがいたり大騒ぎだ。
元いた世界では夏にやることが前提とされていた遊びも、ここではいつだってやれるのも背徳感のようなものがあって気分を高揚させるスパイスだ。打ち上げ花火がなくたって、なんだかんだで楽しい遊び。
パチパチ燃える炎と、キラキラ光る星と。
楽しい記憶として残ってくれたら、それでいい。
「ユウちゃん」
「ん?」
「楽しいね」
「うん、すっごく楽しい!」
「でもさ、楽しい時間って、怖くもあったりしてさ」
「…うん、わかるよ…」
「当たり前の日常がいつなくなるか、って考えるとさ、やっぱり、どうしようもなくなっちゃうんだよね」
「考えるだけ、無駄なんだけどね」、と笑って、ゆうは線香花火に火を点けた。
ユウもゆうも、この日常をいくら楽しく、幸せなものに感じても、この世界において異質なものであることには変わりない。その意識は、いつだって抜けないもので。
ふとした瞬間に恐怖に足を掬われそうになるのだ。
「ジェイド先輩のことも、心配だし」
「私も。アズール先輩のこと、心配」
「自分のこともわからないのにね」
「でも、相手のことのが心配になっちゃうの」
「恋だね」
「ふふっ、愛かもよ?」
夜空を滑る星に願いをかけたところで、叶わないことは誰もが知っている。
けれどそれをやめられないのもまた、仕方のないことだろう。
「ゆうちゃんは、帰りたいの?」
「…ユウちゃんこそ…」
「…私…私は…」
「ストップ」
「「え?」」
気持ちを口にしようとしたところで、後ろから伸びてきた手によって、口を塞がれてしまったユウ。
んっ!?とそちらの方向を見れば、いつの間にこちらにきたのか、アズールが複雑な表情で立っていた。
「今はまだ、聞きません」
「ユウちゃんだったら、帰るって言わないと思いますけど」
「それでも…何れにせよ、選択をさせるというのは、酷なことです。言葉は、呪いですよ?」
「それをアズール・アーシェングロットが言うとなんだかなぁ」
「貴女ねぇ…」
「まぁでも。その手、いい加減に離してあげたほうがいいんじゃないですか?」
「!!すみません!!」
「っぷは!い、いえ…大丈夫ですっ…」
「ふふっ…ユウちゃん、やっぱり、愛、かもね」
「っ!」
暗闇に紛れてユウの顔はよくは見えなかったけれど、きっと朱が差していたことだろう。
そうして、煌めく思い出を胸に抱いて、ゆうはあちらの世界へ帰っていった。