【完結】監督生が二人いる?!
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仮病のジェイドはさておいて。
本日もモストロ・ラウンジは営業があった。
仕方がないので、今日ばかりはアズールがフロアの指示を、それからフロイドがキッチンの指示を出すことに役割変更だ。
「ゆうさん、ラウンジが開いている間はこちらにいてもらって、いつもの通り」
「はい!わかりました!カウンターで似顔絵業しますね」
「はい、よろしくお願いしますね。最近校内で情報が回り始めたようで、徐々に顧客も増えてきていますから」
「そうですね!がんばります!」
シャープペンに消しゴム、それから油性ペンに水彩色鉛筆一色とスケッチブック。最近作った料金一覧表に、それをコピーしたお渡し用の宣伝ペーパーもある。
これがゆうの仕事道具一式だ。
「今日はどのくらいきてくれるかな〜?」
ここで行われているのは、例の似顔絵事業だった。入り口で販売されているドリンクまたはフードと似顔絵券のセットを買うと、先着順にゆうに似顔絵を描いてもらえるというシステム。それを始めて、早一週間。
先の同人誌の一件、それからモストロ・ラウンジ通信を描いているおかげもあってか、その営業はオクタヴィネルのみに留まらず、常連客、果ては一見様の増加にまで及んだ。
似顔絵の売り上げは、もちろん似顔絵を描きあげるゆうのものになるが、場所賃としてその三割がアズールの懐に入るようになっている。ここのところ、アズールの機嫌が最高潮なのはそのためだった。
本日も、開店と同時にチケットが売れた合図のベルが鳴る。その音を聞いて、大方何人くらいの相手をするか目星をつけるのもゆうの仕事のうちだ。
ただ今日はそれも、少しだけ違った。
ゆうの方に誰かが近づいてくる。一人目のお客様だ、と顔をあげれば。
「よろしくお願いしますね」
「はい、どうぞよろ…ってっ!?学園長!?」
「えぇ、私ですよ〜!」
「いや、えぇって言われましても…え?どうしたんですか?もしかしてこのバイトを差し押さえに」
「何を言っているんですか。違いますよ」
「え…?じゃあ、何をしに?」
「何を!貴女こそ何をおっしゃっているのですか!」
いつもながらに大袈裟なパフォーマンスをしながら、学園長はその手に持っていたチケットをゆうに差し出した。
「私がお客です!似顔絵をよろしくお願いしますよ!」
「おきゃ…え…えーーーー!?」
「何を驚いているのですか。教師が来てはいけない制約はないでしょう」
「え、いえ、描くのは、構わないのですが、その、驚いて…。あ、仮面は被ったままでいいんですか?」
「もちろんですよ!」
あぁそうなんだ。そういう装飾を描くのは時間もかかるし大変なんだけどなぁ、とはゆうの心の呟きである。
それでも依頼は依頼。しっかり取り組ませてもらわなくては、と気合い十分、似顔絵作成に取り掛かる。
そうして30分が経過した。
「ここのところもう少しなんとかならないでしょうか!」
「だーかーらー!学園長!お直しは三回までですってば!後ろもつかえているので、お互いに譲歩をしよう、ということなんです。それに私はプロの似顔絵書きではないので、それを加味した値段になってるって、何度も言いました!」
「それは承知ですよ、しかしですねぇ」
「あーもー!ほら?見てください!この料金ではここまでが精一杯ですってば!」
予想外にも、クロウリーからの注文が多岐に渡ったせいで、予定が後ろ倒しになっていた。もちろんお金を貰う以上、最低限のことはしているつもりだったし、できる限り相手の注文も聞き入れようとしてはいた。だが、何度修正しても、ここはこうだ、そっちはこうしてくれ、など、細かく指定が入るので、対応しきれなくなっていたのだ。
通常は30分もあれば一人は楽に対応できるのだが、クロウリーの場合はそうはいかなかった。そのため仕方なく料金のことを引き合いに出して無理だと断ろうとしたのだが、料金表を見たクロウリーは、ふむ、と一声発してから、いい笑顔を見せた。
「では、この二倍のお値段を、追加でお支払いしましょう!」
「はぁ?!」
「そうすれば料金面では問題ありませんね。あと1時間でこことここを直してください!」
「そ、そんな横暴な…!」
なんとしてでもここで終わらせたいゆう vs自分の理想を形にしたいクロウリーの戦いの火蓋は、切って落とされようとしていたが、クローリーの背後で、アズールがとてもいい笑顔を称えながら、両手で大きく「丸」を作ったところですでに勝敗はついていた。
『支配人には逆らわない。』
それは、モストロ・ラウンジで雇ってもらっているゆうの、一つの決め事であった。
「はぁ〜…もう…今回だけですからね…?」
「いいでしょう!私、優しいので!」
「どこが優しいのだか…で、えぇっと…こことここでしたっけ…?」
「違います!ここと、ここと、それからこっちです!」
「嘘!増えてますって!!」
そんなわけで、その日から、似顔絵金額一覧にはフルオーダープランが増えたということである。
*
なんとか乗り切った一日の終わりに、賄いをいただきながら、今後の事業の話し合いも欠かさない。
「ゆうさん!貴女なかなか才能がおありだ!このままいけば儲けもうなぎ上りですよ!」
「んむ、それはよかったです…あ、そういえば、今日雑談しながら思ったのですが、SNS用のアイコンにしたいって言う人も多いみたいです。デジタル機器も導入してもらえたら、もう少し幅を広げられるかと…」
「!!良いでしょう!必要経費から落とします!」
「やったっ!」
「物は試しです!このまま金儲けしますよっ!」
そんなわけで、新しい事業は成功への道を進み始めたのであった。
本日もモストロ・ラウンジは営業があった。
仕方がないので、今日ばかりはアズールがフロアの指示を、それからフロイドがキッチンの指示を出すことに役割変更だ。
「ゆうさん、ラウンジが開いている間はこちらにいてもらって、いつもの通り」
「はい!わかりました!カウンターで似顔絵業しますね」
「はい、よろしくお願いしますね。最近校内で情報が回り始めたようで、徐々に顧客も増えてきていますから」
「そうですね!がんばります!」
シャープペンに消しゴム、それから油性ペンに水彩色鉛筆一色とスケッチブック。最近作った料金一覧表に、それをコピーしたお渡し用の宣伝ペーパーもある。
これがゆうの仕事道具一式だ。
「今日はどのくらいきてくれるかな〜?」
ここで行われているのは、例の似顔絵事業だった。入り口で販売されているドリンクまたはフードと似顔絵券のセットを買うと、先着順にゆうに似顔絵を描いてもらえるというシステム。それを始めて、早一週間。
先の同人誌の一件、それからモストロ・ラウンジ通信を描いているおかげもあってか、その営業はオクタヴィネルのみに留まらず、常連客、果ては一見様の増加にまで及んだ。
似顔絵の売り上げは、もちろん似顔絵を描きあげるゆうのものになるが、場所賃としてその三割がアズールの懐に入るようになっている。ここのところ、アズールの機嫌が最高潮なのはそのためだった。
本日も、開店と同時にチケットが売れた合図のベルが鳴る。その音を聞いて、大方何人くらいの相手をするか目星をつけるのもゆうの仕事のうちだ。
ただ今日はそれも、少しだけ違った。
ゆうの方に誰かが近づいてくる。一人目のお客様だ、と顔をあげれば。
「よろしくお願いしますね」
「はい、どうぞよろ…ってっ!?学園長!?」
「えぇ、私ですよ〜!」
「いや、えぇって言われましても…え?どうしたんですか?もしかしてこのバイトを差し押さえに」
「何を言っているんですか。違いますよ」
「え…?じゃあ、何をしに?」
「何を!貴女こそ何をおっしゃっているのですか!」
いつもながらに大袈裟なパフォーマンスをしながら、学園長はその手に持っていたチケットをゆうに差し出した。
「私がお客です!似顔絵をよろしくお願いしますよ!」
「おきゃ…え…えーーーー!?」
「何を驚いているのですか。教師が来てはいけない制約はないでしょう」
「え、いえ、描くのは、構わないのですが、その、驚いて…。あ、仮面は被ったままでいいんですか?」
「もちろんですよ!」
あぁそうなんだ。そういう装飾を描くのは時間もかかるし大変なんだけどなぁ、とはゆうの心の呟きである。
それでも依頼は依頼。しっかり取り組ませてもらわなくては、と気合い十分、似顔絵作成に取り掛かる。
そうして30分が経過した。
「ここのところもう少しなんとかならないでしょうか!」
「だーかーらー!学園長!お直しは三回までですってば!後ろもつかえているので、お互いに譲歩をしよう、ということなんです。それに私はプロの似顔絵書きではないので、それを加味した値段になってるって、何度も言いました!」
「それは承知ですよ、しかしですねぇ」
「あーもー!ほら?見てください!この料金ではここまでが精一杯ですってば!」
予想外にも、クロウリーからの注文が多岐に渡ったせいで、予定が後ろ倒しになっていた。もちろんお金を貰う以上、最低限のことはしているつもりだったし、できる限り相手の注文も聞き入れようとしてはいた。だが、何度修正しても、ここはこうだ、そっちはこうしてくれ、など、細かく指定が入るので、対応しきれなくなっていたのだ。
通常は30分もあれば一人は楽に対応できるのだが、クロウリーの場合はそうはいかなかった。そのため仕方なく料金のことを引き合いに出して無理だと断ろうとしたのだが、料金表を見たクロウリーは、ふむ、と一声発してから、いい笑顔を見せた。
「では、この二倍のお値段を、追加でお支払いしましょう!」
「はぁ?!」
「そうすれば料金面では問題ありませんね。あと1時間でこことここを直してください!」
「そ、そんな横暴な…!」
なんとしてでもここで終わらせたいゆう vs自分の理想を形にしたいクロウリーの戦いの火蓋は、切って落とされようとしていたが、クローリーの背後で、アズールがとてもいい笑顔を称えながら、両手で大きく「丸」を作ったところですでに勝敗はついていた。
『支配人には逆らわない。』
それは、モストロ・ラウンジで雇ってもらっているゆうの、一つの決め事であった。
「はぁ〜…もう…今回だけですからね…?」
「いいでしょう!私、優しいので!」
「どこが優しいのだか…で、えぇっと…こことここでしたっけ…?」
「違います!ここと、ここと、それからこっちです!」
「嘘!増えてますって!!」
そんなわけで、その日から、似顔絵金額一覧にはフルオーダープランが増えたということである。
*
なんとか乗り切った一日の終わりに、賄いをいただきながら、今後の事業の話し合いも欠かさない。
「ゆうさん!貴女なかなか才能がおありだ!このままいけば儲けもうなぎ上りですよ!」
「んむ、それはよかったです…あ、そういえば、今日雑談しながら思ったのですが、SNS用のアイコンにしたいって言う人も多いみたいです。デジタル機器も導入してもらえたら、もう少し幅を広げられるかと…」
「!!良いでしょう!必要経費から落とします!」
「やったっ!」
「物は試しです!このまま金儲けしますよっ!」
そんなわけで、新しい事業は成功への道を進み始めたのであった。