【完結】僕らのフェアリーテイル
ある日寮長室に戻ると、机の上に一つ、見慣れないアクセサリーを見つけた。普段作ってもらっている販売用のものと少し様相が異なるそれは、いわゆるラペルピンだろうか。手に取ってランプに照らして確認すると、ついていた宝石はアメジストだった。
「…僕の誕生石?」
アメジスト自体は彼女が生活する中で頻繁に出来上がるので入手は難しくないはずだが、わざわざこれを選んだ理由がありそうだなと逡巡した。しかし寝ている彼女を起こすのは気がひける。さて、どうしたものか。そう思いつつもサラリと流れる髪を撫でていると、スゥッと瞼が持ち上がった。
「ん、…あずーるさん…?」
「すみません、起こしましたね」
「んん…だいじょうぶ…。お帰りなさい」
ゆるりと身体を起こした彼女は僕が手に持っているピンを見て、あ、と口を丸く開けた。
「それ、」
「ああ、ええ。今までとは随分趣が違ったので気になって見ていました。こちらは男性向けですね?」
「あ…あの、それは、その、」
歯切れが悪いその物言いに少し眉を顰めると、もじもじしながら思いもよらない言葉が飛び出した。
「アズールさんへの、プレゼント、です」
「プレゼント?」
「はい、お誕生日に、何もできなかったので…」
「誕生日って、」
だいぶ前に過ぎてますが?とは口に出してはいけないと、すんでのところで飲み込んで『そうですか、ありがとうございます』と返事をすれば、ふにゃふにゃと笑った。
「ずっと近くにいられないから、いつでも身につけてもらえるものがいいなって考えて、探していたら遅くなってしまったの。ごめんなさい…」
「僕を思ってくれていたというだけで十分ですよ。大切にしますね」
華奢な肩を抱き寄せるとくすくすと幸せそうな声が聞こえて、それから向こうからもぎゅっと抱き締められた。
嬉しい気持ちも愛しい想いも、もちろんこのプレゼントも。もらってばかりだなと思ったので、僕からも何かを返さなければと、いつかのために大切にしまってある金色の巻貝のネックレスを頭に思い浮かべたのだった。
「…僕の誕生石?」
アメジスト自体は彼女が生活する中で頻繁に出来上がるので入手は難しくないはずだが、わざわざこれを選んだ理由がありそうだなと逡巡した。しかし寝ている彼女を起こすのは気がひける。さて、どうしたものか。そう思いつつもサラリと流れる髪を撫でていると、スゥッと瞼が持ち上がった。
「ん、…あずーるさん…?」
「すみません、起こしましたね」
「んん…だいじょうぶ…。お帰りなさい」
ゆるりと身体を起こした彼女は僕が手に持っているピンを見て、あ、と口を丸く開けた。
「それ、」
「ああ、ええ。今までとは随分趣が違ったので気になって見ていました。こちらは男性向けですね?」
「あ…あの、それは、その、」
歯切れが悪いその物言いに少し眉を顰めると、もじもじしながら思いもよらない言葉が飛び出した。
「アズールさんへの、プレゼント、です」
「プレゼント?」
「はい、お誕生日に、何もできなかったので…」
「誕生日って、」
だいぶ前に過ぎてますが?とは口に出してはいけないと、すんでのところで飲み込んで『そうですか、ありがとうございます』と返事をすれば、ふにゃふにゃと笑った。
「ずっと近くにいられないから、いつでも身につけてもらえるものがいいなって考えて、探していたら遅くなってしまったの。ごめんなさい…」
「僕を思ってくれていたというだけで十分ですよ。大切にしますね」
華奢な肩を抱き寄せるとくすくすと幸せそうな声が聞こえて、それから向こうからもぎゅっと抱き締められた。
嬉しい気持ちも愛しい想いも、もちろんこのプレゼントも。もらってばかりだなと思ったので、僕からも何かを返さなければと、いつかのために大切にしまってある金色の巻貝のネックレスを頭に思い浮かべたのだった。