【完結】監督生が二人いる?!
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次の日。どうにも眠りが浅く、早朝から目が覚めてしまったユウは、そっと布団を抜け出して、まだ暗い外へと足を踏み出した。
知っているようで知らないこの土地。
少しくらい歩いてみてもいいだろう。
彼女は好奇心旺盛だった。
「わ…もう結構明るいんだ」
「完全に太陽が昇るまでにはまだ時間がかかるでしょうけどね」
「でも朝日はきれ、え?」
オンボロ寮から少し歩いたところで、朝日が昇ってくるのが地平線の向こうに見えて、ぽか、と口を開けてそれを見て独り言を言ったユウに、応える声が一つ。
バッと振り返ると、そこには愛しい人がいた。
「あ、ずーるせんぱい、」
「はい。おはようございます。あちらの世界の監督生さんですね?ジェイドから話は聞いています。いらっしゃいませ、と言えばいいのでしょうかね。」
声も、容貌も、その瞳に称える光も。
ユウの知っているアズールと何一つ変わらない、こちらの世界のアズールがそこには立っていて、いつもの調子で伸ばしそうになった手をすんでのところで引っ込めた。
こちらの世界のアズールは、割とピュアだと聞いていたし、そもそも相手からしたら実質初対面の自分が、突然親しくしてはいけないと思ったからだ。
「なんだか、とても変な感じです。私はあなたを知っているのに、あなたは私を知らないんですよね。」
「そうですね、…えぇと、なんとお呼びすれば?」
「あっ、失礼しました。私はユウといいます。よろしくお願いします。えっと…アーシェングロット先輩」
ユウがそう返事をすると、アズールは少し眉間にシワを寄せてから、質問ですが、と言う。
「…ご自身の世界でも、僕のことをそう呼ぶのですか」
「?アーシェングロット先輩、ですか?」
「えぇ」
「いいえ、アズール先輩、とお呼びしています。けれど、自分の世界と混同してしまうとよくないかと思ったので。住み分け、みたいなやつです」
「なるほど」
ふむ、と顎に手を当てて熟考する彼は、当たり前だがどこからどうみても自分の彼氏そのもので、来たばかりなのに自分の世界に戻りたくなってしまう。「心配性の彼の心は、私がこちらにいる24時間ももつのだろうか。」と。
「私」
「?はい?」
「私、アズール先輩になにも言わずにこちらに来てしまいました」
「僕?…あぁ、ご自分の世界の僕ですか」
「心配です。アーシェングロット先輩の顔をみたら、余計に心配になりました。」
「あは、なんか、すみません。」と、サラリと滑り落ちる髪を耳にすくって、ユウは控えめに笑った。自分から来たのに女々しいや、と。
それを目の当たりにしたからだろうか。意識せず伸びたアズールの手が、ユウの髪に触れたが、びく、とユウの肩が跳ねたことによってすぐに離れた。
「っ!」
「あっ、す、すみません」
「ぁ、い、え。その、ちょっと驚いただけ、です」
気まずい沈黙が流れたが、すぐにアズールがこほんと咳払いをして場をつなぎ、改めて掌を差し出した。
「失礼しました。初対面の方は、こちらの方が良さそうです。」
オンボロ寮までエスコートしましょう、とやんわりと細められる瞳。
ぱちぱち、と瞬きをしたユウはその表情を見て、やっぱりアズール先輩はアズール先輩だな、と微笑みを浮かべた。
「やっぱりアズール先輩は、こっちの世界でも紳士です」
「向こうの僕も紳士なんですか。それは良かった」
「はい。とっても優しくて、なんでもできて、かっこよくて…私にはもったいないくらい」
「おや。おかしなことをおっしゃる。僕が、貴女を、選んだんでしょう。それならば自信をもってもらわなくては困りますね」
「それは、そうですね…、アズール先輩のためにも」
「よろしくお願いしますね?」
お互い顔を合わせて吹き出して、朝日をバックにしてオンボロ寮へと戻れば、朝食の準備をしていたジェイドと鉢合わせ。
聞けば、ゆうはまだ夢の中だそうだ。朝食が出来上がり次第起こすのが常なんだとか。どこまでも甲斐甲斐しい男である。
「アズール、どうですか。ユウさんが別次元で自分と付き合っていると言うのは」
「難しいことを聞く。そんなの、わかるわけがない。彼女が僕の何を知っているのかわからないが、僕は彼女のことを知らないのだから」
「それもそうですね」
「ただまぁ、」
「?」
「悪い人ではないらしいことは、わかります」
「…なるほど?」
「ずっと一緒にいたら、そんな気持ちも芽生えるのかもしれませんね」
何か眩しいものを見るかのように、目を細めたアズールは、珍しく柔和に笑った。
視線の先では、起きてきたゆうと、それからユウが、グリムと戯れている。
これはこれで面白いことになりそうだな、と、ジェイドはお皿を並べながら思ったのであった。
知っているようで知らないこの土地。
少しくらい歩いてみてもいいだろう。
彼女は好奇心旺盛だった。
「わ…もう結構明るいんだ」
「完全に太陽が昇るまでにはまだ時間がかかるでしょうけどね」
「でも朝日はきれ、え?」
オンボロ寮から少し歩いたところで、朝日が昇ってくるのが地平線の向こうに見えて、ぽか、と口を開けてそれを見て独り言を言ったユウに、応える声が一つ。
バッと振り返ると、そこには愛しい人がいた。
「あ、ずーるせんぱい、」
「はい。おはようございます。あちらの世界の監督生さんですね?ジェイドから話は聞いています。いらっしゃいませ、と言えばいいのでしょうかね。」
声も、容貌も、その瞳に称える光も。
ユウの知っているアズールと何一つ変わらない、こちらの世界のアズールがそこには立っていて、いつもの調子で伸ばしそうになった手をすんでのところで引っ込めた。
こちらの世界のアズールは、割とピュアだと聞いていたし、そもそも相手からしたら実質初対面の自分が、突然親しくしてはいけないと思ったからだ。
「なんだか、とても変な感じです。私はあなたを知っているのに、あなたは私を知らないんですよね。」
「そうですね、…えぇと、なんとお呼びすれば?」
「あっ、失礼しました。私はユウといいます。よろしくお願いします。えっと…アーシェングロット先輩」
ユウがそう返事をすると、アズールは少し眉間にシワを寄せてから、質問ですが、と言う。
「…ご自身の世界でも、僕のことをそう呼ぶのですか」
「?アーシェングロット先輩、ですか?」
「えぇ」
「いいえ、アズール先輩、とお呼びしています。けれど、自分の世界と混同してしまうとよくないかと思ったので。住み分け、みたいなやつです」
「なるほど」
ふむ、と顎に手を当てて熟考する彼は、当たり前だがどこからどうみても自分の彼氏そのもので、来たばかりなのに自分の世界に戻りたくなってしまう。「心配性の彼の心は、私がこちらにいる24時間ももつのだろうか。」と。
「私」
「?はい?」
「私、アズール先輩になにも言わずにこちらに来てしまいました」
「僕?…あぁ、ご自分の世界の僕ですか」
「心配です。アーシェングロット先輩の顔をみたら、余計に心配になりました。」
「あは、なんか、すみません。」と、サラリと滑り落ちる髪を耳にすくって、ユウは控えめに笑った。自分から来たのに女々しいや、と。
それを目の当たりにしたからだろうか。意識せず伸びたアズールの手が、ユウの髪に触れたが、びく、とユウの肩が跳ねたことによってすぐに離れた。
「っ!」
「あっ、す、すみません」
「ぁ、い、え。その、ちょっと驚いただけ、です」
気まずい沈黙が流れたが、すぐにアズールがこほんと咳払いをして場をつなぎ、改めて掌を差し出した。
「失礼しました。初対面の方は、こちらの方が良さそうです。」
オンボロ寮までエスコートしましょう、とやんわりと細められる瞳。
ぱちぱち、と瞬きをしたユウはその表情を見て、やっぱりアズール先輩はアズール先輩だな、と微笑みを浮かべた。
「やっぱりアズール先輩は、こっちの世界でも紳士です」
「向こうの僕も紳士なんですか。それは良かった」
「はい。とっても優しくて、なんでもできて、かっこよくて…私にはもったいないくらい」
「おや。おかしなことをおっしゃる。僕が、貴女を、選んだんでしょう。それならば自信をもってもらわなくては困りますね」
「それは、そうですね…、アズール先輩のためにも」
「よろしくお願いしますね?」
お互い顔を合わせて吹き出して、朝日をバックにしてオンボロ寮へと戻れば、朝食の準備をしていたジェイドと鉢合わせ。
聞けば、ゆうはまだ夢の中だそうだ。朝食が出来上がり次第起こすのが常なんだとか。どこまでも甲斐甲斐しい男である。
「アズール、どうですか。ユウさんが別次元で自分と付き合っていると言うのは」
「難しいことを聞く。そんなの、わかるわけがない。彼女が僕の何を知っているのかわからないが、僕は彼女のことを知らないのだから」
「それもそうですね」
「ただまぁ、」
「?」
「悪い人ではないらしいことは、わかります」
「…なるほど?」
「ずっと一緒にいたら、そんな気持ちも芽生えるのかもしれませんね」
何か眩しいものを見るかのように、目を細めたアズールは、珍しく柔和に笑った。
視線の先では、起きてきたゆうと、それからユウが、グリムと戯れている。
これはこれで面白いことになりそうだな、と、ジェイドはお皿を並べながら思ったのであった。