【完結】監督生が二人いる?!
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次の日も、その次の日も、0時になったからといって、あの時のように鏡が揺らぐことはなかった。
0時になると鏡を撫でてはため息をつくユウの背を、グリムが支えていたことは、本人たち以外に知るものはいない。
ジェイドはといえば、こちらも表立って態度に現さないものの、ふとした瞬間に意気消沈しているところが見て取れた。
二人が少しだけ活気付くのは、お互いに毒を吐きあっているときだけだった。
*
さて、元の世界に戻ったゆうはと言えば、事あるごとにジェイドに捕まっては宝物のように扱われていた。
「ジェイド先輩ー。もう大丈夫ですってばぁ」
「ダメです。安心できません」
「だって、今は0時でもなければここには鏡もないんですよ」
「そう言ってまたいなくなってしまっては大変なので」
ジェイド・リーチは過保護だった。
ことゆうに対してはそれはもう度を超えた世話の焼き様だった。
ゆうはツイステッド・ワンダーランドに飛ばされてきた当初は、一人で何でもやろうとして、それこそ倒れてしまう様な人柄だったし、この世界に馴染んではいけないと周りに一線を引くタイプだった。今となっては信じられないが、一時期はこのジェイドをすら遠ざけてひとりぼっちで頑張っていた頃があった。
それが紆余曲折を経てジェイドを骨抜きにした上、尽くされることに違和感を覚えることもなくなってしまったわけだから、時の経過とは恐ろしいものだ。
実は土曜日の0時に突如消えたゆうを目の前で見送ったのも、そのジェイドだったのだが、その時の悲壮感たるや相当なものだったと、のちにフロイドが語っていた。
そんなこともあって、日曜日の0時に戻ってきたゆうを一番に迎えたジェイドが、不安でゆうから離れようとしないのも仕方ないことだったのだ。
二度と帰ってこないかと思った、と眉をハの字にして笑っていたが、相当に心配したのだろう。その目の下に薄っすら隈ができていたことをゆうは見逃さなかった。
「ゆうさんは僕のことが好きなんですよね?」
「もちろんです、大好きじゃないとこんな風にベタベタしませんよ私は!」
「なら問題ないじゃないですか」
その理論でいけば、確かに問題ないなと、うんうん納得させられたゆうは、まぁいっか!とその膝に抱かれてモストロラウンジのVIPルームにいた。
ジェイドの上にゆう。
その隣にフロイド。
そして机を挟んで目の前にアズール。
暖かい紅茶とクッキーを話の肴に、嘘みたいな本当の話を聞かせた。
「でもさぁ、小エビちゃんの話聞いてっと、結構、その、パラレルワールド?も楽しかったんだねぇ」
「はい!とっても!」
「オレ的にはぁ、アズールに彼女がいる世界線っての、見てみたい」
「ね〜。うちのアズール先輩とは大違いでしたよ?なんていうか…いけすかなさが2割り増し!」
「ゆうさん、貴女いつからそんな口を聞く様になりましたか」
「こっちのアズール先輩は性格が柔らかいです」
「そうですよ。そういう言い方なら許します」
VIPルームには四人しかおらず、防音性も高いので秘密の話をするにはもってこいだ。
「ただ、です。ゆうさん、今回は運よく戻ってこられたのかもしれません。二度と危ないことはしない方がいいと、僕は思いますよ」
「そうですかねぇ…。まぁ確かにあれから毎日0時に鏡を確認してますけど、同じ様なことにはならないので、本当に偶然だったのかもしれないですよね」
「毎日?!やめてください!僕の部屋に閉じ込めてもいいのですよ?!」
「ジェイド落ち着け。それ、世間では監禁っていうやつだから、ダメなやつ〜」
「いいえ。ゆうさんを守るためなら、自分は悪く言われたって構いません」
「何言ってんのオレは身内に犯罪者がいるなんて嫌なんだけど」
「0時ってだけじゃなくて、他にも何か条件があるのかもしれないですね…?もうちょっと探ってみようと思います!」
「貴女ねぇ…。好奇心は時に身を滅ぼしますよ。これは忠告です。ここは魔法が存在する世界ですよ。貴女、自分の世界に帰りたいんでしょう。これ以上他の世界に首を突っ込んでどうするんですか」
至極もっともなことを告げられて、ウッと言葉を詰まらすゆうだったが、ポツリと「もう、元の世界になんて戻れないですよ。こんなに思い出を…大切な人たちを作ってしまったのに」と悲しい顔をする。
ジェイドは、その言葉を受けてアズールに冷たい視線を送る。
アズールとしては事実をありのままに告げただけだったのだが、とバツの悪い顔をして「今の言葉は軽率でした。申し訳ありません」とつぶやく様に言った。
「いえ、すみません、しんみりしちゃいましたね…」
「ゆうさんが謝ることではありませんよ」
「ありがとうございます、ジェイド先輩。でもアズール先輩の言うことは確かに一理あるので、今後は軽率なことはしない様に気をつけます」
「オレもそれがいいと思うよ。今のジェイドから小エビちゃんを取り上げたら、オレたちが死んじゃうしね〜」
ね、と覗き込むフロイドの視線を、ニコリと受け止めたゆうは「でも」と言う。
「でも、もしまた同じ現象が起こったとしたら、その時は相談に来てもいいですか?…ポイントカードは、ないですけど」
「当たり前です。僕はゆうさんが相談してくださるのならもちろん」
「小エビちゃんの話なら、オレはいつでもだいかんげ〜」
「まぁ、僕も人でなしではありませんから。ジェイドの彼女と言う名目で、相談に乗りましょう」
「へへっ…、ジェイド先輩、フロイド先輩、アズール先輩、本当にありがとうございます!」
よろしくお願いします!と勢いよく立ち上がったゆうには、いつもの元気が戻っていた。
それを見て、なんだかんだでつられて笑顔になった三人も、ほっと息を吐き出したのだった。
「そういえばアズール先輩」
「なんです?」
「あっちのアズール先輩には彼女がいるって言ったじゃないですか」
「あぁ、そうらしいですね。不思議な感覚です」
「あっちのアズール先輩、手が早かったです」
「は?」
「男女のあれこれ、シちゃってるみたいでしたよ。アズール先輩もファイトっ!」
「?!?!??!?!?」
「あっ、アズールが倒れた」
「全く…言葉を聞くだけで真っ赤になって倒れている様じゃ、まだまだですね」
「こっちのアズール先輩には早すぎたかぁ…」
今日の相談者が来るまで、予定ではあと30分足らずしかない。
それまでにアズールを起こすことができるのだろうか。
残された三人の悩みは目下、そちらに移ったのであった。
0時になると鏡を撫でてはため息をつくユウの背を、グリムが支えていたことは、本人たち以外に知るものはいない。
ジェイドはといえば、こちらも表立って態度に現さないものの、ふとした瞬間に意気消沈しているところが見て取れた。
二人が少しだけ活気付くのは、お互いに毒を吐きあっているときだけだった。
*
さて、元の世界に戻ったゆうはと言えば、事あるごとにジェイドに捕まっては宝物のように扱われていた。
「ジェイド先輩ー。もう大丈夫ですってばぁ」
「ダメです。安心できません」
「だって、今は0時でもなければここには鏡もないんですよ」
「そう言ってまたいなくなってしまっては大変なので」
ジェイド・リーチは過保護だった。
ことゆうに対してはそれはもう度を超えた世話の焼き様だった。
ゆうはツイステッド・ワンダーランドに飛ばされてきた当初は、一人で何でもやろうとして、それこそ倒れてしまう様な人柄だったし、この世界に馴染んではいけないと周りに一線を引くタイプだった。今となっては信じられないが、一時期はこのジェイドをすら遠ざけてひとりぼっちで頑張っていた頃があった。
それが紆余曲折を経てジェイドを骨抜きにした上、尽くされることに違和感を覚えることもなくなってしまったわけだから、時の経過とは恐ろしいものだ。
実は土曜日の0時に突如消えたゆうを目の前で見送ったのも、そのジェイドだったのだが、その時の悲壮感たるや相当なものだったと、のちにフロイドが語っていた。
そんなこともあって、日曜日の0時に戻ってきたゆうを一番に迎えたジェイドが、不安でゆうから離れようとしないのも仕方ないことだったのだ。
二度と帰ってこないかと思った、と眉をハの字にして笑っていたが、相当に心配したのだろう。その目の下に薄っすら隈ができていたことをゆうは見逃さなかった。
「ゆうさんは僕のことが好きなんですよね?」
「もちろんです、大好きじゃないとこんな風にベタベタしませんよ私は!」
「なら問題ないじゃないですか」
その理論でいけば、確かに問題ないなと、うんうん納得させられたゆうは、まぁいっか!とその膝に抱かれてモストロラウンジのVIPルームにいた。
ジェイドの上にゆう。
その隣にフロイド。
そして机を挟んで目の前にアズール。
暖かい紅茶とクッキーを話の肴に、嘘みたいな本当の話を聞かせた。
「でもさぁ、小エビちゃんの話聞いてっと、結構、その、パラレルワールド?も楽しかったんだねぇ」
「はい!とっても!」
「オレ的にはぁ、アズールに彼女がいる世界線っての、見てみたい」
「ね〜。うちのアズール先輩とは大違いでしたよ?なんていうか…いけすかなさが2割り増し!」
「ゆうさん、貴女いつからそんな口を聞く様になりましたか」
「こっちのアズール先輩は性格が柔らかいです」
「そうですよ。そういう言い方なら許します」
VIPルームには四人しかおらず、防音性も高いので秘密の話をするにはもってこいだ。
「ただ、です。ゆうさん、今回は運よく戻ってこられたのかもしれません。二度と危ないことはしない方がいいと、僕は思いますよ」
「そうですかねぇ…。まぁ確かにあれから毎日0時に鏡を確認してますけど、同じ様なことにはならないので、本当に偶然だったのかもしれないですよね」
「毎日?!やめてください!僕の部屋に閉じ込めてもいいのですよ?!」
「ジェイド落ち着け。それ、世間では監禁っていうやつだから、ダメなやつ〜」
「いいえ。ゆうさんを守るためなら、自分は悪く言われたって構いません」
「何言ってんのオレは身内に犯罪者がいるなんて嫌なんだけど」
「0時ってだけじゃなくて、他にも何か条件があるのかもしれないですね…?もうちょっと探ってみようと思います!」
「貴女ねぇ…。好奇心は時に身を滅ぼしますよ。これは忠告です。ここは魔法が存在する世界ですよ。貴女、自分の世界に帰りたいんでしょう。これ以上他の世界に首を突っ込んでどうするんですか」
至極もっともなことを告げられて、ウッと言葉を詰まらすゆうだったが、ポツリと「もう、元の世界になんて戻れないですよ。こんなに思い出を…大切な人たちを作ってしまったのに」と悲しい顔をする。
ジェイドは、その言葉を受けてアズールに冷たい視線を送る。
アズールとしては事実をありのままに告げただけだったのだが、とバツの悪い顔をして「今の言葉は軽率でした。申し訳ありません」とつぶやく様に言った。
「いえ、すみません、しんみりしちゃいましたね…」
「ゆうさんが謝ることではありませんよ」
「ありがとうございます、ジェイド先輩。でもアズール先輩の言うことは確かに一理あるので、今後は軽率なことはしない様に気をつけます」
「オレもそれがいいと思うよ。今のジェイドから小エビちゃんを取り上げたら、オレたちが死んじゃうしね〜」
ね、と覗き込むフロイドの視線を、ニコリと受け止めたゆうは「でも」と言う。
「でも、もしまた同じ現象が起こったとしたら、その時は相談に来てもいいですか?…ポイントカードは、ないですけど」
「当たり前です。僕はゆうさんが相談してくださるのならもちろん」
「小エビちゃんの話なら、オレはいつでもだいかんげ〜」
「まぁ、僕も人でなしではありませんから。ジェイドの彼女と言う名目で、相談に乗りましょう」
「へへっ…、ジェイド先輩、フロイド先輩、アズール先輩、本当にありがとうございます!」
よろしくお願いします!と勢いよく立ち上がったゆうには、いつもの元気が戻っていた。
それを見て、なんだかんだでつられて笑顔になった三人も、ほっと息を吐き出したのだった。
「そういえばアズール先輩」
「なんです?」
「あっちのアズール先輩には彼女がいるって言ったじゃないですか」
「あぁ、そうらしいですね。不思議な感覚です」
「あっちのアズール先輩、手が早かったです」
「は?」
「男女のあれこれ、シちゃってるみたいでしたよ。アズール先輩もファイトっ!」
「?!?!??!?!?」
「あっ、アズールが倒れた」
「全く…言葉を聞くだけで真っ赤になって倒れている様じゃ、まだまだですね」
「こっちのアズール先輩には早すぎたかぁ…」
今日の相談者が来るまで、予定ではあと30分足らずしかない。
それまでにアズールを起こすことができるのだろうか。
残された三人の悩みは目下、そちらに移ったのであった。