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Azul
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ふるり
空気が揺れた気がして瞼を開けた早朝。
ぼんやりと瞬きをすると、ああ、まだ起きるには早い時間かと気がつく。
賢者の島にも冬はくるようで、ここ数日の間にグンと冷え込んだ気がする。
いつもならグリムに頬擦りして暖を取るところだけれど、今日隣にいるのは人間だからそんなことはできない。
その寝顔を見て、私の顔はだらしなく緩む。
何度見ても飽きることのない麗しい寝顔を見せるアズール先輩。
横髪が顔にかかってしまっているので耳に掛けてあげようかとも思ったけれど、起こしてしまいそうなのですんでのところで手を止めた。
反対側に目を向ければ、カーテンの隙間から差し込む淡い光。
なんとなく空を見たくなって、私に緩く巻き付く彼の手をそっとのけてベッドから這い出た。
「ぁぅ、」
床に足をついた瞬間へたりとそのまま座り込んでしまう。昨晩散々抱いてもらったおかげで、うまく力が入らないみたいだ。
キャミソールとショーツだけでは床の冷たさが身体に染みるけれど、そのままぺたりぺたりと床を這ってテラスドアまで移動した。
緩くカーテンを開けると、朝焼けが目一杯に広がる。
この時間独特の、オレンジと赤と、それから紺色と白と。混ざりようがなさそうに思えるのに、自然とは不思議なものだ。
グラデーションが美しくて思わず感嘆の声が漏れた。
世界中の空は繋がっている、なんてよく言われるけれど、繋がっているからといっても同じ空など一つもないことを、私は異世界に来て知った。
同じに見えても違うのだ。
雲の様子、空の雰囲気、それから肌に感じる空気。
全部全部全然違う。
だから、空を見上げると少しだけ寂しくなるのは仕方のないことでもある。
寒さからか哀しさからか鼻の奥がツンとして、すん、と啜ったと同時、ふわりと何かに包まれた。
それが先輩の身体だと気づくまで、僅か一秒しか要さない。
「これほど寒いのに、そんなに薄着でなにをしているんですか、あなた」
「先輩も寒い?」
「陸は海の中より寒く感じます。変身薬のおかげで恒温動物になった上に痛覚もできましたからね、仕方ありません」
そう言いながら素肌を私の背中にギュッと押し付けるので、私の背中はだんだん暖かくなってきた。
「見て、先輩。空が、綺麗」
「空?ああ…朝焼け」
「はい。この色、とても好き」
「陸にいるとたくさんのことに気付けますね。…例えば、朝起きてあなたの体温がなかったときの寂しさとか」
「あ…ごめんなさい、起こすつもりはなかったので…少ししたら戻ろうかと。でも、」
「おおかた、立てないんでしょう?昨日は無理をさせましたから」
バレている、と恥ずかしさで耳まで熱くなってしまう。そんなことはお見通しだと、先輩は私を抱き上げた。
意外と力持ちだなぁ、といつも思うけど、先輩は『貴女が軽すぎるんです』と言うからよくわからない。
そっと下ろされたのはベッドの上。
先輩は、脱ぎ散らかした衣服を拾い上げてから、もう一度私の隣に入り込んできて、私をぎゅうと抱きしめた。
「冷えてしまったな…責任をとってください」
「くすくす…私の体温で間に合いますか?」
「もっとあなたに抱きしめてもらえたら、きっと」
こういう時は本当に素直だなと微笑みながら、私の方も彼の広い背中に腕を回してみれば、隙間なくぴったりとくっつく身体。
心音が混じり、体温が移り、生きていることを実感する。
「ずーっとこうして、アズール先輩と朝を迎えたい」
「可愛らしいことを」
「たまにはロマンチックなこと言わせてください」
「僕の前だけでなら、いつでも構いませんよ」
「でも、毎日激しいと、疲れちゃいます」
「昨日はあなたが欲しがったから応えたまでです」
「ふふ、そうでしたっけ」
「そうですよ」
「そっかぁ、」
ぐりぐりと先輩の胸板に顔を押し付けると、くすぐったいと笑われた。
「ところでグリムさんは?」
「ツナ缶一つで悟ってくれる相棒は、今日はそのままマジフトの練習に行くらしいです。だから夕方まで帰らないと思います」
「そうですか…では、」
「えっ、」
ごろんと反転した身体はとてもスムーズにベッドに縫い付けられた。
「もう少し、身体でも動かして暖を取りましょうか」
「…運動、嫌いなんじゃなかったんですか」
「グラウンドで行う運動は嫌いですが、困ったことにあなたとする運動は嫌いじゃありません」
「都合良すぎませんかぁ…」
「今更。そんな僕のことが好きなくせに」
「む」
『でしょう』と不敵に笑われてしまっては返す言葉もないから、照れ隠しもあって先輩の首に腕を回して引き寄せた。
「お見通しされてるから言いますけど…どんな先輩も好きです。だから冬だって、アズール先輩がいてくれれば、平気」
「そうでしょう?僕も今年の冬は凍えなくて済みそうです」
「よかったです」
「本当に。さ、おしゃべりはここまでですよ」
「…寮長、お仕事は?」
「今日はオフだからここに来ているんです。当たり前でしょう」
「用意周到!」
「なんとでも言ってください」
空のグラデーションがすっかりなくなって、青一色に染まる頃になっても、私たちはシーツの狭間で幸せに浸っていたのだった。
空気が揺れた気がして瞼を開けた早朝。
ぼんやりと瞬きをすると、ああ、まだ起きるには早い時間かと気がつく。
賢者の島にも冬はくるようで、ここ数日の間にグンと冷え込んだ気がする。
いつもならグリムに頬擦りして暖を取るところだけれど、今日隣にいるのは人間だからそんなことはできない。
その寝顔を見て、私の顔はだらしなく緩む。
何度見ても飽きることのない麗しい寝顔を見せるアズール先輩。
横髪が顔にかかってしまっているので耳に掛けてあげようかとも思ったけれど、起こしてしまいそうなのですんでのところで手を止めた。
反対側に目を向ければ、カーテンの隙間から差し込む淡い光。
なんとなく空を見たくなって、私に緩く巻き付く彼の手をそっとのけてベッドから這い出た。
「ぁぅ、」
床に足をついた瞬間へたりとそのまま座り込んでしまう。昨晩散々抱いてもらったおかげで、うまく力が入らないみたいだ。
キャミソールとショーツだけでは床の冷たさが身体に染みるけれど、そのままぺたりぺたりと床を這ってテラスドアまで移動した。
緩くカーテンを開けると、朝焼けが目一杯に広がる。
この時間独特の、オレンジと赤と、それから紺色と白と。混ざりようがなさそうに思えるのに、自然とは不思議なものだ。
グラデーションが美しくて思わず感嘆の声が漏れた。
世界中の空は繋がっている、なんてよく言われるけれど、繋がっているからといっても同じ空など一つもないことを、私は異世界に来て知った。
同じに見えても違うのだ。
雲の様子、空の雰囲気、それから肌に感じる空気。
全部全部全然違う。
だから、空を見上げると少しだけ寂しくなるのは仕方のないことでもある。
寒さからか哀しさからか鼻の奥がツンとして、すん、と啜ったと同時、ふわりと何かに包まれた。
それが先輩の身体だと気づくまで、僅か一秒しか要さない。
「これほど寒いのに、そんなに薄着でなにをしているんですか、あなた」
「先輩も寒い?」
「陸は海の中より寒く感じます。変身薬のおかげで恒温動物になった上に痛覚もできましたからね、仕方ありません」
そう言いながら素肌を私の背中にギュッと押し付けるので、私の背中はだんだん暖かくなってきた。
「見て、先輩。空が、綺麗」
「空?ああ…朝焼け」
「はい。この色、とても好き」
「陸にいるとたくさんのことに気付けますね。…例えば、朝起きてあなたの体温がなかったときの寂しさとか」
「あ…ごめんなさい、起こすつもりはなかったので…少ししたら戻ろうかと。でも、」
「おおかた、立てないんでしょう?昨日は無理をさせましたから」
バレている、と恥ずかしさで耳まで熱くなってしまう。そんなことはお見通しだと、先輩は私を抱き上げた。
意外と力持ちだなぁ、といつも思うけど、先輩は『貴女が軽すぎるんです』と言うからよくわからない。
そっと下ろされたのはベッドの上。
先輩は、脱ぎ散らかした衣服を拾い上げてから、もう一度私の隣に入り込んできて、私をぎゅうと抱きしめた。
「冷えてしまったな…責任をとってください」
「くすくす…私の体温で間に合いますか?」
「もっとあなたに抱きしめてもらえたら、きっと」
こういう時は本当に素直だなと微笑みながら、私の方も彼の広い背中に腕を回してみれば、隙間なくぴったりとくっつく身体。
心音が混じり、体温が移り、生きていることを実感する。
「ずーっとこうして、アズール先輩と朝を迎えたい」
「可愛らしいことを」
「たまにはロマンチックなこと言わせてください」
「僕の前だけでなら、いつでも構いませんよ」
「でも、毎日激しいと、疲れちゃいます」
「昨日はあなたが欲しがったから応えたまでです」
「ふふ、そうでしたっけ」
「そうですよ」
「そっかぁ、」
ぐりぐりと先輩の胸板に顔を押し付けると、くすぐったいと笑われた。
「ところでグリムさんは?」
「ツナ缶一つで悟ってくれる相棒は、今日はそのままマジフトの練習に行くらしいです。だから夕方まで帰らないと思います」
「そうですか…では、」
「えっ、」
ごろんと反転した身体はとてもスムーズにベッドに縫い付けられた。
「もう少し、身体でも動かして暖を取りましょうか」
「…運動、嫌いなんじゃなかったんですか」
「グラウンドで行う運動は嫌いですが、困ったことにあなたとする運動は嫌いじゃありません」
「都合良すぎませんかぁ…」
「今更。そんな僕のことが好きなくせに」
「む」
『でしょう』と不敵に笑われてしまっては返す言葉もないから、照れ隠しもあって先輩の首に腕を回して引き寄せた。
「お見通しされてるから言いますけど…どんな先輩も好きです。だから冬だって、アズール先輩がいてくれれば、平気」
「そうでしょう?僕も今年の冬は凍えなくて済みそうです」
「よかったです」
「本当に。さ、おしゃべりはここまでですよ」
「…寮長、お仕事は?」
「今日はオフだからここに来ているんです。当たり前でしょう」
「用意周到!」
「なんとでも言ってください」
空のグラデーションがすっかりなくなって、青一色に染まる頃になっても、私たちはシーツの狭間で幸せに浸っていたのだった。