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Azul
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「ふんふーん♪」
私は今、上機嫌でオンボロ寮のバルコニーにいた。目の前にはグリーントイという栽培キットが十個。
サムさんのお店に寄った時にオススメされて、癒しになるかと手を出した。
園芸はこれまでやったことがないので、初心者でも無理なく育てられそうなものを見繕ってもらった結果だ。
ペットボトルでお花や野菜やハーブが育てられるということで、ワクワクしながら説明書を読む。
自分の力量にあまり期待はしていないけれど、まずは芽を出すところからだなと気合を入れた。
「えーっと…まずはペットボトルにお水を入れて…」
「何をなさっているのですか?」
「!?」
「おや、驚かせてしまいましたね」
「び…っくりしたぁ…、アズール先輩に、ジェイド先輩、フロイド先輩も。こんにちは」
「はい、こんにちは」
「ちわー小エビちゃん」
「こんにちは」
この人たちは、人を驚かせることが趣味なのだろうか。
空を飛ぶのが苦手だからといって、壁を伝ってバルコニーまで登ってこられると、こちらの心臓が爆ぜてしまう。
当の本人たちは何の悪びれもなくバルコニーに降り立った。玄関から来るときは割と気をつかって入ってくるのに、そうじゃなければいいとでも思っているのかなんなのか。
「三人揃ってオンボロ寮まできてくださるなんて、何か御用ですか?」
「少しお手伝いいただきたいことがありまして、僕がこちらに出向くと言ったら、二人が…」
「だってー暇だったからさぁー」
「面白いことがありそうだったので着いてきました」
「面白いって…」
「すでにそれがもう、僕の目を引いていますから…なんですか?」
「それ…あぁ!これですか?さすがジェイド先輩ですね!よくぞ気づいてくださいました!」
手に持ったグリーントイを指差して『?』という表情を見せるジェイド先輩に、ズイッとペットボトルを差し出した。
「これで野菜とお花を育てるんです!」
「ほぅ…?」
「えっ小エビちゃんそんなに困窮してんの!?食い物育てるって…」
「ちょっ…違いますよフロイド先輩!息抜きですよ息抜き。ちょっと疲れたときとかに、緑があると癒されるっていうじゃないですか」
「癒しがほしいならオクタヴィネルにいらしてくださればいい」
「オクタヴィネルはもちろん癒し空間ですけど、自分で育てるのもまたいいんですよ」
これがトマトで、こっちはオクラ、それからこっちはコスモス、あとはサボテンとえんどう豆と苺と…と説明をする。
自分でもわかるほどに嬉しそうなトーンで話す私の傍で、アズール先輩がポソリと一言爆弾を落としたのを聴き逃せるはずはない。
「そんなもの、育つんですか?」
「はぁ!?」
「えっ、いえ、あの」
「育ちますよ!!だって説明書に書いてある通りにやってるんですもん!!一〜二週間で芽が出てそのあと肥料をあげて発芽させるんです!!そうしたら…っちゃんと…」
「こんな小さいの、枯れません?」
「枯らさないです!!」
心ないご意見だけれど、私も危惧しているポイントを的確に突かれたので、噛みつく勢いで反応してしまった。
まだ始めてもいないのに、枯れるだのなんだのとは、現実主義者のアズール先輩らしいご意見であってもさすがに酷すぎる。
「でもさぁ、こーゆーのってやってみねぇとわかんなくない?」
「そうですね…。僕もキノコを栽培し始めたころは四苦八苦しましたが、今ではなかなかの収穫率ですよ」
「ですよね!?フロイド先輩もジェイド先輩も優しい!」
「そ、そういう、もの、なんですか…?」
「そうなんですっ!」
キーッ!!と言い返すと、ウッと詰まる顔は普段見られない表情でキュンと心が鳴くけれど、これだけは許せなくて、プンッと顔を背ける。そんな私に向かって、今度はジェイド先輩が声をかけた。
「あぁでも、これは外に置くよりも部屋の中…日光が当たりやすくて涼しい場所に置いた方がよろしいのでは?」
「!そうなんですか?」
「えぇ、花の種類にもよりますが、こういうタイプのものは直射日光でない方が」
「ジェイド先輩、いえ、師匠!!ご指導お願いします!!」
「おやおや…これはまた…」
クスクスといつもの困り笑顔を作るジェイド先輩の後ろで、ぽかんとするアズール先輩と大爆笑するフロイド先輩がいることを、私が見る余裕はなかった。
「絶対咲かせて、アズール先輩を…ギャフンと言わせてやるんだから…!!」
闘志を燃やす私だったが、二週間後、植えたうちの半分は種が腐っていることが判明して、ふふんと笑われてしまったことは言うまでもない。
「でも半分は生えたんですからね!!」
私は今、上機嫌でオンボロ寮のバルコニーにいた。目の前にはグリーントイという栽培キットが十個。
サムさんのお店に寄った時にオススメされて、癒しになるかと手を出した。
園芸はこれまでやったことがないので、初心者でも無理なく育てられそうなものを見繕ってもらった結果だ。
ペットボトルでお花や野菜やハーブが育てられるということで、ワクワクしながら説明書を読む。
自分の力量にあまり期待はしていないけれど、まずは芽を出すところからだなと気合を入れた。
「えーっと…まずはペットボトルにお水を入れて…」
「何をなさっているのですか?」
「!?」
「おや、驚かせてしまいましたね」
「び…っくりしたぁ…、アズール先輩に、ジェイド先輩、フロイド先輩も。こんにちは」
「はい、こんにちは」
「ちわー小エビちゃん」
「こんにちは」
この人たちは、人を驚かせることが趣味なのだろうか。
空を飛ぶのが苦手だからといって、壁を伝ってバルコニーまで登ってこられると、こちらの心臓が爆ぜてしまう。
当の本人たちは何の悪びれもなくバルコニーに降り立った。玄関から来るときは割と気をつかって入ってくるのに、そうじゃなければいいとでも思っているのかなんなのか。
「三人揃ってオンボロ寮まできてくださるなんて、何か御用ですか?」
「少しお手伝いいただきたいことがありまして、僕がこちらに出向くと言ったら、二人が…」
「だってー暇だったからさぁー」
「面白いことがありそうだったので着いてきました」
「面白いって…」
「すでにそれがもう、僕の目を引いていますから…なんですか?」
「それ…あぁ!これですか?さすがジェイド先輩ですね!よくぞ気づいてくださいました!」
手に持ったグリーントイを指差して『?』という表情を見せるジェイド先輩に、ズイッとペットボトルを差し出した。
「これで野菜とお花を育てるんです!」
「ほぅ…?」
「えっ小エビちゃんそんなに困窮してんの!?食い物育てるって…」
「ちょっ…違いますよフロイド先輩!息抜きですよ息抜き。ちょっと疲れたときとかに、緑があると癒されるっていうじゃないですか」
「癒しがほしいならオクタヴィネルにいらしてくださればいい」
「オクタヴィネルはもちろん癒し空間ですけど、自分で育てるのもまたいいんですよ」
これがトマトで、こっちはオクラ、それからこっちはコスモス、あとはサボテンとえんどう豆と苺と…と説明をする。
自分でもわかるほどに嬉しそうなトーンで話す私の傍で、アズール先輩がポソリと一言爆弾を落としたのを聴き逃せるはずはない。
「そんなもの、育つんですか?」
「はぁ!?」
「えっ、いえ、あの」
「育ちますよ!!だって説明書に書いてある通りにやってるんですもん!!一〜二週間で芽が出てそのあと肥料をあげて発芽させるんです!!そうしたら…っちゃんと…」
「こんな小さいの、枯れません?」
「枯らさないです!!」
心ないご意見だけれど、私も危惧しているポイントを的確に突かれたので、噛みつく勢いで反応してしまった。
まだ始めてもいないのに、枯れるだのなんだのとは、現実主義者のアズール先輩らしいご意見であってもさすがに酷すぎる。
「でもさぁ、こーゆーのってやってみねぇとわかんなくない?」
「そうですね…。僕もキノコを栽培し始めたころは四苦八苦しましたが、今ではなかなかの収穫率ですよ」
「ですよね!?フロイド先輩もジェイド先輩も優しい!」
「そ、そういう、もの、なんですか…?」
「そうなんですっ!」
キーッ!!と言い返すと、ウッと詰まる顔は普段見られない表情でキュンと心が鳴くけれど、これだけは許せなくて、プンッと顔を背ける。そんな私に向かって、今度はジェイド先輩が声をかけた。
「あぁでも、これは外に置くよりも部屋の中…日光が当たりやすくて涼しい場所に置いた方がよろしいのでは?」
「!そうなんですか?」
「えぇ、花の種類にもよりますが、こういうタイプのものは直射日光でない方が」
「ジェイド先輩、いえ、師匠!!ご指導お願いします!!」
「おやおや…これはまた…」
クスクスといつもの困り笑顔を作るジェイド先輩の後ろで、ぽかんとするアズール先輩と大爆笑するフロイド先輩がいることを、私が見る余裕はなかった。
「絶対咲かせて、アズール先輩を…ギャフンと言わせてやるんだから…!!」
闘志を燃やす私だったが、二週間後、植えたうちの半分は種が腐っていることが判明して、ふふんと笑われてしまったことは言うまでもない。
「でも半分は生えたんですからね!!」