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ゲレンデ。それは一面真っ白な雪に覆われた銀世界。
そこは人魚にとって、あまり馴染みのない景色らしかった。
ゆえに、彼ーーフロイド先輩がはしゃぎまわるのは許してほしいし、思う存分目の保養にさせてほしい。
「っふっ!」
華麗にジャンプをきめたその途中でノーズグラブを楽々挟んでくるあたり、運動神経の良さはピカイチ。
雲一つない空色に、先輩の真っ白なスキーウエアが一際映えた。
緩やかなカーブを描きながらシャーっと私の前に滑ってくる長身は、滑り始めてたったの数時間でコツを掴んだ様子で、身のこなしも完璧。
音もなしにピタリと静止してから、ぷはぁ!、とゴーグルとニット帽を一思いにをかきあげてプルプルと頭を振った。
「あはー!たーのしー!」
カッコいいと可愛いのギャップをこれほどまでに上手く使いわける男がいるだろうか。
最も、当の本人は微塵もそんなつもりはないと思われる。
ガチャガチャとボードの留め具を外したフロイド先輩は、跳ねるようにしてほんの数メートルの距離を駆けてきた。
「こえびちゃ〜ん!!見てたぁ?!」
「はい!フロイド先輩さすがですね、とってもとーってもカッコよかったです!!」
「スノボってすげーたのしーね」
「先輩に楽しんでもらえてよかったです!」
「…けどさぁ」
その言葉と同時にニコニコ笑顔がスッと引いて、目が細められる。
あれ?私何か変なことを言ったかな、と、逡巡しても、思い当たる節はない。
そのオッドアイを見つめるしかできなくて固まった時間は、ものの二秒だったろうけれど、永遠にも感じられる。
ボードを抱えている手とは別の手が、私の手を取って、きゅ、と指が絡む。
「小エビちゃんと一緒に滑れないから、そこは、つまんねーかも」
「!」
「リフトだって一人だしさ。オレ、小エビちゃんと来てんのに、一人ぼっちみたいじゃん。ヤダ」
「ふ、フロイド、先輩、それは…反則です…っ」
「はぁ?どゆこと?わかんね」
いつでもストレートなこの人が愛おしい。
「私は、フロイド先輩が楽しく滑るのを見ているだけで本当に楽しいんですけど、」
「ふーん」
「でも、やっぱり、私を抱えて走り回ってくれるフロイド先輩と一緒にいる方が、楽しいかもしれません」
「こえびちゃん…」
「だから…その、私、全然滑れないし迷惑かけちゃうかもしれないんですけど、一緒に初心者コースで滑ってもらっても、いいですか?」
「もっちろん!手取り足取り一から十までぜーんぶ教えてあげる!」
周りの目など構うわけもなく、フロイド先輩は私をヒョイと抱き上げて、そのままキスを一つ。
全部雪のせい、なんて言いたくないけれど触れた唇はいつもに増して熱くて、くすぐったかった。
無造作に雪の上に落とされたスノーボードを擬人化できようものなら、きっとやれやれと苦笑していたことだろう。
そこは人魚にとって、あまり馴染みのない景色らしかった。
ゆえに、彼ーーフロイド先輩がはしゃぎまわるのは許してほしいし、思う存分目の保養にさせてほしい。
「っふっ!」
華麗にジャンプをきめたその途中でノーズグラブを楽々挟んでくるあたり、運動神経の良さはピカイチ。
雲一つない空色に、先輩の真っ白なスキーウエアが一際映えた。
緩やかなカーブを描きながらシャーっと私の前に滑ってくる長身は、滑り始めてたったの数時間でコツを掴んだ様子で、身のこなしも完璧。
音もなしにピタリと静止してから、ぷはぁ!、とゴーグルとニット帽を一思いにをかきあげてプルプルと頭を振った。
「あはー!たーのしー!」
カッコいいと可愛いのギャップをこれほどまでに上手く使いわける男がいるだろうか。
最も、当の本人は微塵もそんなつもりはないと思われる。
ガチャガチャとボードの留め具を外したフロイド先輩は、跳ねるようにしてほんの数メートルの距離を駆けてきた。
「こえびちゃ〜ん!!見てたぁ?!」
「はい!フロイド先輩さすがですね、とってもとーってもカッコよかったです!!」
「スノボってすげーたのしーね」
「先輩に楽しんでもらえてよかったです!」
「…けどさぁ」
その言葉と同時にニコニコ笑顔がスッと引いて、目が細められる。
あれ?私何か変なことを言ったかな、と、逡巡しても、思い当たる節はない。
そのオッドアイを見つめるしかできなくて固まった時間は、ものの二秒だったろうけれど、永遠にも感じられる。
ボードを抱えている手とは別の手が、私の手を取って、きゅ、と指が絡む。
「小エビちゃんと一緒に滑れないから、そこは、つまんねーかも」
「!」
「リフトだって一人だしさ。オレ、小エビちゃんと来てんのに、一人ぼっちみたいじゃん。ヤダ」
「ふ、フロイド、先輩、それは…反則です…っ」
「はぁ?どゆこと?わかんね」
いつでもストレートなこの人が愛おしい。
「私は、フロイド先輩が楽しく滑るのを見ているだけで本当に楽しいんですけど、」
「ふーん」
「でも、やっぱり、私を抱えて走り回ってくれるフロイド先輩と一緒にいる方が、楽しいかもしれません」
「こえびちゃん…」
「だから…その、私、全然滑れないし迷惑かけちゃうかもしれないんですけど、一緒に初心者コースで滑ってもらっても、いいですか?」
「もっちろん!手取り足取り一から十までぜーんぶ教えてあげる!」
周りの目など構うわけもなく、フロイド先輩は私をヒョイと抱き上げて、そのままキスを一つ。
全部雪のせい、なんて言いたくないけれど触れた唇はいつもに増して熱くて、くすぐったかった。
無造作に雪の上に落とされたスノーボードを擬人化できようものなら、きっとやれやれと苦笑していたことだろう。