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Azul
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少しワルが多いこの学園の生徒たちが浮き足立つのは、やっぱりイベントごとだ。
秋も深まるこの季節に催されるもの。それは、ハロウィンだった。毎年寮ごとにコンセプトを決めて装飾を行ったり、スタンプラリーを開催したりするらしい。オンボロ寮は私とグリムしかいないので参加しようか迷ったけれど、コスプレするのはシンプルに楽しいし、一応きちんとした学校行事なんだからと混ざることに決めた。
ただ、寮はディアソムニアに占領されてしまったので、私はコスプレだけをして、アルバイト先のモストロ・ラウンジに出向くことになったのだけれど。
学園外からも人が来るとのことで、色んな気合い入れもひとしおだ。
「失礼しまぁす…」
間延びしてしまった声に現れる少しの羞恥心は、着慣れないこの服のせい。当日は行事が始まる前にVIPルームに寄ってください、と言われたので足を運んだのだが。
『アルバイト特権でお菓子でも恵んでくれるんだろうか。モストロラウンジのお菓子、絶対美味しいだろうな』ゲンキンな私はそんなことを考えながらノコノコと言われた通りにここに来たのだけれど、道すがら周りの視線が痛いのを感じ取って、その気持ちもしょぼしょぼと消えてしまった。『似合わないんだろうなぁ』とか『こんなの着てこなければよかった』とかネガティブなことが頭に浮かぶ。
「…あれ?アズール先輩?…入りますよ…?」
VIPルームの扉をノック後いくら待っても返事がないので、一言声をかけてからそれを開けた。
そろりと顔を覗き入れてみるけれど、見える範囲には誰もいないようだ。
呼び寄せておいてそこに居ないなんてことは今までなかったので、不思議に思って部屋の中に足を踏み入れた。
その刹那のことだった。
扉の死角から伸びてきた腕が私の腰を捉えて、それによって崩れたバランス。
その力に引き寄せられるようにして、そちらに倒れ込んでしまう。驚きの声を上げるより先に、耳元で低い声がした。
「trick or treat…」
「っ!?」
「学祭の時はVIPルームに篭らされましたからね、仕返しをしようかと思いまして呼んでみましたよ」
「学祭って…あのときはだって、私も必死でっ…!」
「ま、あの時は僕もいい思いをしたのでお互い様でしたけど。今回ばかりは…なるほど、思った通り、とても…」
そこまで言ったアズール先輩は、私の姿を上から下まで眺めて、ン"ッと声を詰まらせた。そんな先輩を見上げると、目を見開いたままだんだんと顔を赤く染め上げているところで。
「…アズール先輩、自分から抱きしめておいて、後悔してます?」
「…っ、そ、んなことは!ええ、全く!ありません!その、なんですか、ナースとは、なかなか、…っそのスカート短すぎやしませんか?!」
ちょっと…いやかなり期待通りの反応をしてもらえて、ここにくるまでに向けられた視線がどうでも良くなる。事前に『オクタヴィネルは包帯男に扮します』と聞いていたので、それに合わせてナースを選んだわけだけれど、彼をこんな風にできるのは気分がいい。是非ともお返しをしなくてはと、小悪魔な自分が顔を覗かせた。
「trick or treat…!お菓子をくれなきゃイタズラしますよ、先輩」
そう言って、帽子から垂れ下がる包帯に手を伸ばし、指に絡めてその顔を引き寄せる。
フワリと香ったのは普段とは異なるコロンの匂い。イランイランとパチュリを混ぜたような不思議なこの香りは衣装に合わせて選んだのだろうか。なんだか気分がクラクラしてくる。期待をこめて、もう一度囁く言葉には、何という返事をもらえるでしょうか。
「ね、先輩。treat、してくれますか?」
「…treatもtrickも同じかもしれませんよ?」
「何を、くれるんですか」
「そうですね…実演をしてから決めてもらうのも悪くない」
「ふふ…っ、どっちも見てから決められるなんて、随分優しいモンスターなんですね」
「僕は慈悲深いので。それではまずは、treatから…」
そっと重なった唇は、優しく甘く。まるでお菓子を食べたときみたいに私の胸を躍らせる。
触れてすぐに離れた熱だったけれど、すぐに『次はtrick』とまた唇が合わさる。
今度は彼の舌が私の咥内に侵入してきたのでつい力が入ってしまった。
絡めていた腕でグッと首を引き寄せたのは、さながらおねだりのようで始末が悪い。
暫く絡み合っていた舌を、ちゅぱ、と離したら、んふ、と妖艶に微笑まれた。こっちは息をするので精一杯なのに、と、少し膨れてみせる。
「んは…ぁ…、ずるい…ですっ…こんなの」
「ふ…、ズルくて結構。さぁ、それでは選んでください?どちらになさいます?trick or treat」
『もう一回、どっちもしてください』との返事は、アズール先輩の口の中に飲み込まれてしまった。
ハッピーハロウィン。
お菓子をくれても、イタズラするぞ!
秋も深まるこの季節に催されるもの。それは、ハロウィンだった。毎年寮ごとにコンセプトを決めて装飾を行ったり、スタンプラリーを開催したりするらしい。オンボロ寮は私とグリムしかいないので参加しようか迷ったけれど、コスプレするのはシンプルに楽しいし、一応きちんとした学校行事なんだからと混ざることに決めた。
ただ、寮はディアソムニアに占領されてしまったので、私はコスプレだけをして、アルバイト先のモストロ・ラウンジに出向くことになったのだけれど。
学園外からも人が来るとのことで、色んな気合い入れもひとしおだ。
「失礼しまぁす…」
間延びしてしまった声に現れる少しの羞恥心は、着慣れないこの服のせい。当日は行事が始まる前にVIPルームに寄ってください、と言われたので足を運んだのだが。
『アルバイト特権でお菓子でも恵んでくれるんだろうか。モストロラウンジのお菓子、絶対美味しいだろうな』ゲンキンな私はそんなことを考えながらノコノコと言われた通りにここに来たのだけれど、道すがら周りの視線が痛いのを感じ取って、その気持ちもしょぼしょぼと消えてしまった。『似合わないんだろうなぁ』とか『こんなの着てこなければよかった』とかネガティブなことが頭に浮かぶ。
「…あれ?アズール先輩?…入りますよ…?」
VIPルームの扉をノック後いくら待っても返事がないので、一言声をかけてからそれを開けた。
そろりと顔を覗き入れてみるけれど、見える範囲には誰もいないようだ。
呼び寄せておいてそこに居ないなんてことは今までなかったので、不思議に思って部屋の中に足を踏み入れた。
その刹那のことだった。
扉の死角から伸びてきた腕が私の腰を捉えて、それによって崩れたバランス。
その力に引き寄せられるようにして、そちらに倒れ込んでしまう。驚きの声を上げるより先に、耳元で低い声がした。
「trick or treat…」
「っ!?」
「学祭の時はVIPルームに篭らされましたからね、仕返しをしようかと思いまして呼んでみましたよ」
「学祭って…あのときはだって、私も必死でっ…!」
「ま、あの時は僕もいい思いをしたのでお互い様でしたけど。今回ばかりは…なるほど、思った通り、とても…」
そこまで言ったアズール先輩は、私の姿を上から下まで眺めて、ン"ッと声を詰まらせた。そんな先輩を見上げると、目を見開いたままだんだんと顔を赤く染め上げているところで。
「…アズール先輩、自分から抱きしめておいて、後悔してます?」
「…っ、そ、んなことは!ええ、全く!ありません!その、なんですか、ナースとは、なかなか、…っそのスカート短すぎやしませんか?!」
ちょっと…いやかなり期待通りの反応をしてもらえて、ここにくるまでに向けられた視線がどうでも良くなる。事前に『オクタヴィネルは包帯男に扮します』と聞いていたので、それに合わせてナースを選んだわけだけれど、彼をこんな風にできるのは気分がいい。是非ともお返しをしなくてはと、小悪魔な自分が顔を覗かせた。
「trick or treat…!お菓子をくれなきゃイタズラしますよ、先輩」
そう言って、帽子から垂れ下がる包帯に手を伸ばし、指に絡めてその顔を引き寄せる。
フワリと香ったのは普段とは異なるコロンの匂い。イランイランとパチュリを混ぜたような不思議なこの香りは衣装に合わせて選んだのだろうか。なんだか気分がクラクラしてくる。期待をこめて、もう一度囁く言葉には、何という返事をもらえるでしょうか。
「ね、先輩。treat、してくれますか?」
「…treatもtrickも同じかもしれませんよ?」
「何を、くれるんですか」
「そうですね…実演をしてから決めてもらうのも悪くない」
「ふふ…っ、どっちも見てから決められるなんて、随分優しいモンスターなんですね」
「僕は慈悲深いので。それではまずは、treatから…」
そっと重なった唇は、優しく甘く。まるでお菓子を食べたときみたいに私の胸を躍らせる。
触れてすぐに離れた熱だったけれど、すぐに『次はtrick』とまた唇が合わさる。
今度は彼の舌が私の咥内に侵入してきたのでつい力が入ってしまった。
絡めていた腕でグッと首を引き寄せたのは、さながらおねだりのようで始末が悪い。
暫く絡み合っていた舌を、ちゅぱ、と離したら、んふ、と妖艶に微笑まれた。こっちは息をするので精一杯なのに、と、少し膨れてみせる。
「んは…ぁ…、ずるい…ですっ…こんなの」
「ふ…、ズルくて結構。さぁ、それでは選んでください?どちらになさいます?trick or treat」
『もう一回、どっちもしてください』との返事は、アズール先輩の口の中に飲み込まれてしまった。
ハッピーハロウィン。
お菓子をくれても、イタズラするぞ!