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「みんな、いいっ?!今日からニ日間、戦争だから!!」
おーっ!!と、拳を上げたのは、あなたとオクタヴィネル寮生たちだ。
そう、今日から幕を開けるのは学園祭。外からの客も増える、格好の儲け時だ。
掲げられた目標は普段の三倍。
この日に備えてホームページには女性向けのデザート、カップル向けメニュー、大人数用のランチセット、果てはヴィルのマジカメにオリジナルドリンクを載せるところまで、完璧に整えてきた。
売り上げ目標など簡単に越えられるだろう。
しかしながら、従業員の人数はさほど変わらないのだから、気合は必要なのだ。
それから一呼吸置いて、あなたはもう一度気合を入れた。
「アズール先輩を守るんだよッ!」
あなたの悩み。
それは、この男子校に女性客がくるということだった。
同じクラスの野郎どもも、この日ばかりは楽しみだと湧いていたくらいだ。
きっとーーこのモストロ・ラウンジにはたくさんの客がくるに違いない。
中には、きっと、アズール先輩狙いの人だって。
先日、学祭メニューの復習をしようとホームページを開いて驚愕したのは記憶に新しい。
なんと、アズール先輩、ジェイド先輩、フロイド先輩を筆頭に、給仕に携わる全員の顔写真がここぞとばかりに公開されていた。
これもパフォーマンスの一環なんだろうが、こんなことをしたら自分が霞んでしまって捨てられてしまうんじゃないか。
そんな心配まで頭をかすめる始末。
けれど考えを改めるのにそう時間はかからなかった。
あの純粋な人を守れるのは私しかいない!!と。
そうと決まれば話は早い。
とにかくまずはVIPルームにアズール先輩を閉じ込めるところから始める。
それしかない。
「おや、皆さん気合十分ですね。報告が楽しみで」
「アズール先輩!少しいいですか!!」
「はい?」
「アズール先輩は、今日はっ、VIPルームにいてください!」
「え?でも僕は今日は客層をみ」
「報告はイデア先輩に借りた小型カメラを通してしますのでご自分のお仕事なさってください!」
「そうそう〜今日はオレたちもいるからさ〜ぁ」
「僕らの手腕を拝見してもらえませんか、アズール」
「あ、あぁ…まぁ、」
「それではアズール先輩!また後で!出てきちゃダメですからね!」
ガチャンバタン!
別に鍵をかけたわけでもなんでもないが、あの真面目なアズール先輩のことだから、こう言ってしまえば仕事が終わるまでは出てこないだろう。
「これでいーの?小エビちゃん」
「はい!」
「ふふ…貴女も悩みがつきませんねぇ」
「いいんです!私が蹴散らしますから!頑張ります!」
「小エビちゃんおもしれー!」
「さぁ、開店ですよ」
「イエッサー!」
気合十分、モストロ・ラウンジ学園祭編、スタートだ。
開店と同時にパラパラとお客が入ってくるあたり、宣伝の効果は抜群だろう。
ドリンクだけ買って出て行く人もいれば、店内で早めのランチにありつこうとしている男子のグループもあるが、あなたが目をつけたのは奥の席でキャァキャァしている四人の女性たちだった。
先ほどから、無駄にウエイターを呼んでは、一つずつ勿体振るように飲み物を注文している姿は目に余る。
間違いなく、狙いの人間がいる感じだ。
『いやだなぁ、早く帰らないかなぁ』とあなたが願うも、そんなものが叶うわけもなく、無謀にも次に近くを通りかかって呼ばれたのはそんな自分自身だった。
「ねぇねぇ貴女!どうして女の子が働いてるの!?」
「守秘義務がありますので」
「えー?!だってここ男子校でしょぉ?男子しかいないって専ら噂だったけど」
「部外者には言えませんので」
「態度わるーい!」
「なんとでも言ってください。オーダーはされないのですか?申し訳ありませんが、これでも仕事中ですので失礼したいのですが」
「顔も悪けりゃ態度も悪いのね」
「何かいいました?」
「ううん!なぁんにもっ」
だめだ、こういうタイプとは合わない。
怒りが頂点に達する前に他の寮生に代わってもらう、それが売り上げに響かない得策だろう。
あなたがそう考えて、テーブルを離れようとした時だった。
「あのね〜私たちぃ、ホームページ見てきたんだけどぉ」
その一言を聞いて、振り返ろうとした身体が固まった。
「TOPページに載ってた『支配人』の人どこにいますぅ?」
「…いません」
「えぇ?支配人って書いてあったからいるでしょう?VIPルームってどこにあるんですかぁ?」
「VIPルームは爆発しました」
真顔で、しかし思った以上に大きな声だったのだろう。
あなたの後ろでブフッ!と誰かが吹き出した。
「爆…っ!?…で、でもご本人はいるんでしょ?会わせ」
「残念ながらもう…この世にはいないんです」
今度こそ、フロア全体にひそやかな笑い声が蔓延し始めた。
事を聞きつけたジェイドとフロイドも近づいてきて、様子を見守ると同時にクスクスと肩を揺らしている。
「そんなの来た意味ないじゃないの!!冗談はいいから出しなさいよ!!」
「無理です、爆ぜてしまったので」
うつむき、ふるふると頭を振るも、目の前の女性集団はイマイチ納得していない様子だ。
うむ。私の演技力はまだまだの様子。どうしようか。
そう頭を悩ませた時だった。
「ジェイド、フロイド、少しいいか」
「?!」
奥の通路からアズール本人が顔を覗かせたので、喉から変な声を出したのは他でもないあなただった。
「きゃー!!やっぱりいるじゃない!!嘘つきウエイター!」
「っ…!」
「ヤダヤダ!本物ちょーーーかっこいい!!」
「…どうしたんだこれは?」
独り言のようにつぶやくその姿ですら麗しいのだから、惚れた弱みというのが怖いのか、はたまたアズールの綺麗な顔が歪んだのが悪いのか。
誤魔化すのはもう無理。
そう思われて、ジェイドとフロイドが動こうとしたその刹那。
ザッと、アズールの前に立ちはだかったあなたは一言、こう言った。
「支配人のコスプレなんてやりますね!!」
「?!」
「は?」
「ブッハ…!!」
「…ッくふ…!」
あなたは、アズールに向かって『支配人のコスプレ』と連呼しながら、タイを直すフリをし、帽子を少し斜めにかぶせ直し、それからストールをピンっと引っ張った。
それはあくまでもパフォーマンスのようで、しかしながら本当のところ、気の動転の現れだ。
「コスプレの方は戻ってください!出番はまだですよ!ショーはもう少し後って言ったじゃないですか!」
「え…いや僕は」
「ちょっと!!その女邪魔よ!!」
「邪魔で結構!!私はアズ…コスプレの人を見張るのも私の仕事ですから!!さようなら!!あと本日は忙しいのでお席は一時間制ですから貴女たちは後15分でそこ出ていってくださいね!!」
「はぁ!?待ちなさいよあ」
「小エビちゃんになんかよ〜〜〜ぉ?」
「へっ?」
「申し訳ありませんお客様。店内ではお静かにお願いいたします」
「っ、は、はひ…!」
どす黒いオーラをまとった双子に見下ろされては、かっこいいという言葉を失う恐怖だろう。
女性客はテーブルの上の食べ物をほかって、そのまま立ち去ってしまったそうな。
さて。VIPルームにとんぼ返りしたあなたとアズールといえば。
「ちょっと落ち着いてくださいよ貴女ねぇ」
「っアズール先輩のばか!」
「?!」
「出てきちゃダメって言ったのに!」
「で、ですが僕もっ、」
ぎゅぅ、とアズールの、華奢ではあるがしっかりした身体に思い切り抱きついたのはあなた。
戸惑いを隠せないアズールは、手を不自然に上げたままやっとの事で声を発する。
「…え、と…?」
「アズール…先輩の、ばか…私の気持ちなんて、わからないでしょうけど」
「す、みません…」
「もっと自覚、持ってください…アズール先輩は、めちゃくちゃかっこよくて、素敵な紳士です」
「?!!!僕はっ」
「言い訳しないでくださいね!?私がどれだけ心配してるか…知らないでしょ!」
アズールには皆目見当がつかない理由だろうと、あなたは渋々その続きを口にした。
「す…捨てられるのは、嫌です。ここまで好きにさせといて…っ!」
「捨てる?僕が?貴女を?」
「です…文化祭でっ…いっぱい女性がきたら…絶対、アズール先輩に言い寄る人もいるって、思って…だから、店に立って欲しくなくて…」
「貴女ねぇ…」
はぁ、とため息を頭の上に感じて、いよいようっとおしがられたかと、知らず涙が目に溜まる。
しかしながら、そのあとにかけられた声はひどく優しく、あなたの心を満たした。
「それは僕のセリフだ…僕こそ、可憐な貴女を店に立たせるのを、どれだけ毎日危惧しているか」
「!」
「男子校で、給仕服とは言え。可愛らしいスカートを履いて」
「で、でもこれは、先輩が支給してくれてっ」
「えぇそうです。貴女に最も似合うものを仕立てたつもりですよ。けれどそれとこれとは話が別です」
「でも!!前に私がフロアにいると少しだけ売上も上がるからってどんどん出てほしいって!!」
「建前に、決まっているでしょう。支配人が自分の欲に負けて売上を落とすなど、できるはずもない」
あなたは、目を見開いてアズールから距離を取る。
すると、その目尻に溜まった涙を舐めとるかのごとく、アズールの唇があなたの目に触れた。
「!!」
「こんな嫉妬、貴女に見せて、嫌われたらたまりませんから」
「…ご、ごめ、なさ…ッ!」
「でも、嫉妬される、というのは、案外嬉しいものですね?僕のことをそんなにも想っていてもらえているなんて」
「ぁ…」
ぽぽぽ、と一気に体温上昇。
アズールの端正な顔に至近距離で見つめられては、もうなんの言葉も発せられない。
しかしながら、それに反してクスリ。
年相応の笑顔を漏らして、アズールはいった。
「仕方ありませんから、二人で一日、ここにいましょうか」
「え、」
「お互い嫉妬にまみれていては、商売にもなりませんからね」
「…ッ!は、い…!」
ジェイドとフロイド、それから手慣れた寮生たちがいれば、きっとラウンジはうまくいくはずだ。
売上目標には少しだけ、届かないかもしれないけれど。
そこは、ね。
VIPルームで育まれた愛でトントンということで。
おーっ!!と、拳を上げたのは、あなたとオクタヴィネル寮生たちだ。
そう、今日から幕を開けるのは学園祭。外からの客も増える、格好の儲け時だ。
掲げられた目標は普段の三倍。
この日に備えてホームページには女性向けのデザート、カップル向けメニュー、大人数用のランチセット、果てはヴィルのマジカメにオリジナルドリンクを載せるところまで、完璧に整えてきた。
売り上げ目標など簡単に越えられるだろう。
しかしながら、従業員の人数はさほど変わらないのだから、気合は必要なのだ。
それから一呼吸置いて、あなたはもう一度気合を入れた。
「アズール先輩を守るんだよッ!」
あなたの悩み。
それは、この男子校に女性客がくるということだった。
同じクラスの野郎どもも、この日ばかりは楽しみだと湧いていたくらいだ。
きっとーーこのモストロ・ラウンジにはたくさんの客がくるに違いない。
中には、きっと、アズール先輩狙いの人だって。
先日、学祭メニューの復習をしようとホームページを開いて驚愕したのは記憶に新しい。
なんと、アズール先輩、ジェイド先輩、フロイド先輩を筆頭に、給仕に携わる全員の顔写真がここぞとばかりに公開されていた。
これもパフォーマンスの一環なんだろうが、こんなことをしたら自分が霞んでしまって捨てられてしまうんじゃないか。
そんな心配まで頭をかすめる始末。
けれど考えを改めるのにそう時間はかからなかった。
あの純粋な人を守れるのは私しかいない!!と。
そうと決まれば話は早い。
とにかくまずはVIPルームにアズール先輩を閉じ込めるところから始める。
それしかない。
「おや、皆さん気合十分ですね。報告が楽しみで」
「アズール先輩!少しいいですか!!」
「はい?」
「アズール先輩は、今日はっ、VIPルームにいてください!」
「え?でも僕は今日は客層をみ」
「報告はイデア先輩に借りた小型カメラを通してしますのでご自分のお仕事なさってください!」
「そうそう〜今日はオレたちもいるからさ〜ぁ」
「僕らの手腕を拝見してもらえませんか、アズール」
「あ、あぁ…まぁ、」
「それではアズール先輩!また後で!出てきちゃダメですからね!」
ガチャンバタン!
別に鍵をかけたわけでもなんでもないが、あの真面目なアズール先輩のことだから、こう言ってしまえば仕事が終わるまでは出てこないだろう。
「これでいーの?小エビちゃん」
「はい!」
「ふふ…貴女も悩みがつきませんねぇ」
「いいんです!私が蹴散らしますから!頑張ります!」
「小エビちゃんおもしれー!」
「さぁ、開店ですよ」
「イエッサー!」
気合十分、モストロ・ラウンジ学園祭編、スタートだ。
開店と同時にパラパラとお客が入ってくるあたり、宣伝の効果は抜群だろう。
ドリンクだけ買って出て行く人もいれば、店内で早めのランチにありつこうとしている男子のグループもあるが、あなたが目をつけたのは奥の席でキャァキャァしている四人の女性たちだった。
先ほどから、無駄にウエイターを呼んでは、一つずつ勿体振るように飲み物を注文している姿は目に余る。
間違いなく、狙いの人間がいる感じだ。
『いやだなぁ、早く帰らないかなぁ』とあなたが願うも、そんなものが叶うわけもなく、無謀にも次に近くを通りかかって呼ばれたのはそんな自分自身だった。
「ねぇねぇ貴女!どうして女の子が働いてるの!?」
「守秘義務がありますので」
「えー?!だってここ男子校でしょぉ?男子しかいないって専ら噂だったけど」
「部外者には言えませんので」
「態度わるーい!」
「なんとでも言ってください。オーダーはされないのですか?申し訳ありませんが、これでも仕事中ですので失礼したいのですが」
「顔も悪けりゃ態度も悪いのね」
「何かいいました?」
「ううん!なぁんにもっ」
だめだ、こういうタイプとは合わない。
怒りが頂点に達する前に他の寮生に代わってもらう、それが売り上げに響かない得策だろう。
あなたがそう考えて、テーブルを離れようとした時だった。
「あのね〜私たちぃ、ホームページ見てきたんだけどぉ」
その一言を聞いて、振り返ろうとした身体が固まった。
「TOPページに載ってた『支配人』の人どこにいますぅ?」
「…いません」
「えぇ?支配人って書いてあったからいるでしょう?VIPルームってどこにあるんですかぁ?」
「VIPルームは爆発しました」
真顔で、しかし思った以上に大きな声だったのだろう。
あなたの後ろでブフッ!と誰かが吹き出した。
「爆…っ!?…で、でもご本人はいるんでしょ?会わせ」
「残念ながらもう…この世にはいないんです」
今度こそ、フロア全体にひそやかな笑い声が蔓延し始めた。
事を聞きつけたジェイドとフロイドも近づいてきて、様子を見守ると同時にクスクスと肩を揺らしている。
「そんなの来た意味ないじゃないの!!冗談はいいから出しなさいよ!!」
「無理です、爆ぜてしまったので」
うつむき、ふるふると頭を振るも、目の前の女性集団はイマイチ納得していない様子だ。
うむ。私の演技力はまだまだの様子。どうしようか。
そう頭を悩ませた時だった。
「ジェイド、フロイド、少しいいか」
「?!」
奥の通路からアズール本人が顔を覗かせたので、喉から変な声を出したのは他でもないあなただった。
「きゃー!!やっぱりいるじゃない!!嘘つきウエイター!」
「っ…!」
「ヤダヤダ!本物ちょーーーかっこいい!!」
「…どうしたんだこれは?」
独り言のようにつぶやくその姿ですら麗しいのだから、惚れた弱みというのが怖いのか、はたまたアズールの綺麗な顔が歪んだのが悪いのか。
誤魔化すのはもう無理。
そう思われて、ジェイドとフロイドが動こうとしたその刹那。
ザッと、アズールの前に立ちはだかったあなたは一言、こう言った。
「支配人のコスプレなんてやりますね!!」
「?!」
「は?」
「ブッハ…!!」
「…ッくふ…!」
あなたは、アズールに向かって『支配人のコスプレ』と連呼しながら、タイを直すフリをし、帽子を少し斜めにかぶせ直し、それからストールをピンっと引っ張った。
それはあくまでもパフォーマンスのようで、しかしながら本当のところ、気の動転の現れだ。
「コスプレの方は戻ってください!出番はまだですよ!ショーはもう少し後って言ったじゃないですか!」
「え…いや僕は」
「ちょっと!!その女邪魔よ!!」
「邪魔で結構!!私はアズ…コスプレの人を見張るのも私の仕事ですから!!さようなら!!あと本日は忙しいのでお席は一時間制ですから貴女たちは後15分でそこ出ていってくださいね!!」
「はぁ!?待ちなさいよあ」
「小エビちゃんになんかよ〜〜〜ぉ?」
「へっ?」
「申し訳ありませんお客様。店内ではお静かにお願いいたします」
「っ、は、はひ…!」
どす黒いオーラをまとった双子に見下ろされては、かっこいいという言葉を失う恐怖だろう。
女性客はテーブルの上の食べ物をほかって、そのまま立ち去ってしまったそうな。
さて。VIPルームにとんぼ返りしたあなたとアズールといえば。
「ちょっと落ち着いてくださいよ貴女ねぇ」
「っアズール先輩のばか!」
「?!」
「出てきちゃダメって言ったのに!」
「で、ですが僕もっ、」
ぎゅぅ、とアズールの、華奢ではあるがしっかりした身体に思い切り抱きついたのはあなた。
戸惑いを隠せないアズールは、手を不自然に上げたままやっとの事で声を発する。
「…え、と…?」
「アズール…先輩の、ばか…私の気持ちなんて、わからないでしょうけど」
「す、みません…」
「もっと自覚、持ってください…アズール先輩は、めちゃくちゃかっこよくて、素敵な紳士です」
「?!!!僕はっ」
「言い訳しないでくださいね!?私がどれだけ心配してるか…知らないでしょ!」
アズールには皆目見当がつかない理由だろうと、あなたは渋々その続きを口にした。
「す…捨てられるのは、嫌です。ここまで好きにさせといて…っ!」
「捨てる?僕が?貴女を?」
「です…文化祭でっ…いっぱい女性がきたら…絶対、アズール先輩に言い寄る人もいるって、思って…だから、店に立って欲しくなくて…」
「貴女ねぇ…」
はぁ、とため息を頭の上に感じて、いよいようっとおしがられたかと、知らず涙が目に溜まる。
しかしながら、そのあとにかけられた声はひどく優しく、あなたの心を満たした。
「それは僕のセリフだ…僕こそ、可憐な貴女を店に立たせるのを、どれだけ毎日危惧しているか」
「!」
「男子校で、給仕服とは言え。可愛らしいスカートを履いて」
「で、でもこれは、先輩が支給してくれてっ」
「えぇそうです。貴女に最も似合うものを仕立てたつもりですよ。けれどそれとこれとは話が別です」
「でも!!前に私がフロアにいると少しだけ売上も上がるからってどんどん出てほしいって!!」
「建前に、決まっているでしょう。支配人が自分の欲に負けて売上を落とすなど、できるはずもない」
あなたは、目を見開いてアズールから距離を取る。
すると、その目尻に溜まった涙を舐めとるかのごとく、アズールの唇があなたの目に触れた。
「!!」
「こんな嫉妬、貴女に見せて、嫌われたらたまりませんから」
「…ご、ごめ、なさ…ッ!」
「でも、嫉妬される、というのは、案外嬉しいものですね?僕のことをそんなにも想っていてもらえているなんて」
「ぁ…」
ぽぽぽ、と一気に体温上昇。
アズールの端正な顔に至近距離で見つめられては、もうなんの言葉も発せられない。
しかしながら、それに反してクスリ。
年相応の笑顔を漏らして、アズールはいった。
「仕方ありませんから、二人で一日、ここにいましょうか」
「え、」
「お互い嫉妬にまみれていては、商売にもなりませんからね」
「…ッ!は、い…!」
ジェイドとフロイド、それから手慣れた寮生たちがいれば、きっとラウンジはうまくいくはずだ。
売上目標には少しだけ、届かないかもしれないけれど。
そこは、ね。
VIPルームで育まれた愛でトントンということで。