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Azul
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目が覚めると部屋の中に差し込む光は輝かしい太陽から、優しい夕陽を通り越して、すでに星明かりだけどなっていた。
「…寝てた…」
暗い部屋で一人目を覚ますのは、今となっては慣れないことで、なんだかブルリと身体が震えた。
最近なんだか身体が重い。それから眠い。思い返せば、食事もラウンジのアルバイト後に食べる賄い以外は疎かになっている気がする。
体調が悪いのか、それとも精神的に疲れているのか。
「んん…ご飯、を、作らないと」
むくりと起き上がろうとしても、身体に力が入らなくて、パタリと、またベッドに逆戻りした。
グリムはどこに行ったんだろう。私が眠っていたから気を使ってくれたんだろうか。
もう一度目を閉じてみる。
「グリムもいないなら、私だけだし…もういっか」
ポロリと漏れた言葉に、言いようのない恐怖を覚えた。
このまま消えてしまえたら、楽になれるのかな。
本音を言えば、もう疲れてしまったのかもしれない。
考えるだけで泣きそうになるのだから、心は正直だ。
諦めたくない事があっても、どうにもならない現実が目に見えて、辛い。
毎日逃げ回っているけど、いつかは向き合わないといけない。
帰りたいと強く願っていた気持ちが、帰る方法なんて見つからなければいいに変わっていく。
憎くて愛おしいこの世界で生きていきたい気持ちが強くなる。
どちらの世界も現実味がなくて、日に日に曖昧になる境界線。
それを誰かに気づいて欲しいのか、欲しくないのか、それすらもわからない。
それでもこの世界の朝は毎日やってきて、そこでの生活は止まることはない。
朝が来ればきっと、かりそめの『日常』に紛れて霧散するこの不安は。
夜になるとひょっこりと影から、壁から、天井から、顔を出して、私を襲う。
「全部…なくなっちゃえばいいのに」
このまま眠り姫にでもなれたら、王子様がキスで起こしてくれないだろうか。
それで全てハッピーエンドに…なるわけないか。
「アズール先輩に言ったら…ううん、気にかけさせたらダメだね」
アズール先輩はああ見えて…否、オクタヴィネル寮長というだけあって、慈悲深さにかけては天下一品だから、そんなことを頼もうものなら身を粉にして探してくれるだろう。
だからそんなこと、彼にだけは言ってはいけない。
「誰に、何を言ったらダメですって?」
「!?」
コツ、と磨き上げられた靴が扉の陰から現れて、驚いてしまう。
だってこんな時間にこんな場所にいるはずないんだもの。
「どう、して」
「貴女の大切な相棒が、呼びに来てくれましたよ、僕を」
「グリムが?」
「『あなたの元気がないんだぞ、見に行ってやってくれ』とね。ああお優しい相棒を持って、貴女は幸せですね」
「…っ…なんで、」
「せっかく僕が会いに来たというのに、なんて顔してるんですか…あなた」
真っ黒なシルクハットに、品の良いグレーのコート、パリッとしたスーツ…もとい寮服を来たアズール先輩は、もしかしなくてもモストロ・ラウンジを閉めたその足でオンボロ寮にきてくれたようだった。
私が横たわるベッドに近づくと、膝が汚れるのも厭わずに、しゃがみこんで私の顔を覗き込み、そしてそっと髪を掬った。
「なんでも言ってください。なんのための彼氏だと思っているんですか」
「…だって…」
「泣かせたいわけじゃありません。僕はね、あなたを笑顔にしたいんですよ」
「…でも…私は、先輩を、困らせたく、ない、です」
「僕がいつ困った、なんて言いました?あなたのお願い事なんてどれをとっても可愛いおねだりにしか聞こえませんよ」
「っ…わからないじゃ、ないですか…今度こそ、面倒になる、かも、」
我慢してもジワリと滲んでくる視界。
アズール先輩の前では、無理をしてでも笑っていたかったのに。
それでも、目元を優しく滑っていく指先の感触に、気持ちと裏腹に涙が溢れてしまった。
「では言い方を変えましょうか?僕の願いを叶えてくれませんか?僕は、あなたが望むなら何でもしたいのです。教えてください。あなたの想い、考えていること、全部僕に」
「っ…そんなの、ずるいっ…」
「ずるい?ですが、僕の願いを叶えられるのはあなたしかいないのですから、仕方ないでしょう」
くすくすと笑いながら私の頬に触れるだけのキスを落として『叶えてくれますね』なんて言うから、YES以外の選択肢は最初からないようなものだ。
先輩の頭からハットを取って、それから、頬に添えられた手に頬ずりをしてからグローブも抜き取った。
その手に私の手を絡めてキュッと握ると、先輩は、今度は嬉しそうに笑った。
「さぁ、あなたの願いを聞かせていただけますか?」
「アズール先輩、ずっと、傍に、いてっ…くださいっ…!それでっ…ハッピーエンドを、見せて…」
「仰せのままに。それから、その願い、僕以外に叶えられるはずもないので、他の人には秘密ですからね」
自信満々に口の端を持ち上げて、先輩は私を見つめる。
その視線の囁くままに、私はそっと目を閉じた。
ねぇ先輩、アズール先輩。
もしも私が眠り姫のように目覚めなくなったとしても。
先輩はずっと傍にいてくれますか?
私が目覚めても、目覚めなくても。
こうして手を握って、そして、優しいキスを、くださいね。
「…寝てた…」
暗い部屋で一人目を覚ますのは、今となっては慣れないことで、なんだかブルリと身体が震えた。
最近なんだか身体が重い。それから眠い。思い返せば、食事もラウンジのアルバイト後に食べる賄い以外は疎かになっている気がする。
体調が悪いのか、それとも精神的に疲れているのか。
「んん…ご飯、を、作らないと」
むくりと起き上がろうとしても、身体に力が入らなくて、パタリと、またベッドに逆戻りした。
グリムはどこに行ったんだろう。私が眠っていたから気を使ってくれたんだろうか。
もう一度目を閉じてみる。
「グリムもいないなら、私だけだし…もういっか」
ポロリと漏れた言葉に、言いようのない恐怖を覚えた。
このまま消えてしまえたら、楽になれるのかな。
本音を言えば、もう疲れてしまったのかもしれない。
考えるだけで泣きそうになるのだから、心は正直だ。
諦めたくない事があっても、どうにもならない現実が目に見えて、辛い。
毎日逃げ回っているけど、いつかは向き合わないといけない。
帰りたいと強く願っていた気持ちが、帰る方法なんて見つからなければいいに変わっていく。
憎くて愛おしいこの世界で生きていきたい気持ちが強くなる。
どちらの世界も現実味がなくて、日に日に曖昧になる境界線。
それを誰かに気づいて欲しいのか、欲しくないのか、それすらもわからない。
それでもこの世界の朝は毎日やってきて、そこでの生活は止まることはない。
朝が来ればきっと、かりそめの『日常』に紛れて霧散するこの不安は。
夜になるとひょっこりと影から、壁から、天井から、顔を出して、私を襲う。
「全部…なくなっちゃえばいいのに」
このまま眠り姫にでもなれたら、王子様がキスで起こしてくれないだろうか。
それで全てハッピーエンドに…なるわけないか。
「アズール先輩に言ったら…ううん、気にかけさせたらダメだね」
アズール先輩はああ見えて…否、オクタヴィネル寮長というだけあって、慈悲深さにかけては天下一品だから、そんなことを頼もうものなら身を粉にして探してくれるだろう。
だからそんなこと、彼にだけは言ってはいけない。
「誰に、何を言ったらダメですって?」
「!?」
コツ、と磨き上げられた靴が扉の陰から現れて、驚いてしまう。
だってこんな時間にこんな場所にいるはずないんだもの。
「どう、して」
「貴女の大切な相棒が、呼びに来てくれましたよ、僕を」
「グリムが?」
「『あなたの元気がないんだぞ、見に行ってやってくれ』とね。ああお優しい相棒を持って、貴女は幸せですね」
「…っ…なんで、」
「せっかく僕が会いに来たというのに、なんて顔してるんですか…あなた」
真っ黒なシルクハットに、品の良いグレーのコート、パリッとしたスーツ…もとい寮服を来たアズール先輩は、もしかしなくてもモストロ・ラウンジを閉めたその足でオンボロ寮にきてくれたようだった。
私が横たわるベッドに近づくと、膝が汚れるのも厭わずに、しゃがみこんで私の顔を覗き込み、そしてそっと髪を掬った。
「なんでも言ってください。なんのための彼氏だと思っているんですか」
「…だって…」
「泣かせたいわけじゃありません。僕はね、あなたを笑顔にしたいんですよ」
「…でも…私は、先輩を、困らせたく、ない、です」
「僕がいつ困った、なんて言いました?あなたのお願い事なんてどれをとっても可愛いおねだりにしか聞こえませんよ」
「っ…わからないじゃ、ないですか…今度こそ、面倒になる、かも、」
我慢してもジワリと滲んでくる視界。
アズール先輩の前では、無理をしてでも笑っていたかったのに。
それでも、目元を優しく滑っていく指先の感触に、気持ちと裏腹に涙が溢れてしまった。
「では言い方を変えましょうか?僕の願いを叶えてくれませんか?僕は、あなたが望むなら何でもしたいのです。教えてください。あなたの想い、考えていること、全部僕に」
「っ…そんなの、ずるいっ…」
「ずるい?ですが、僕の願いを叶えられるのはあなたしかいないのですから、仕方ないでしょう」
くすくすと笑いながら私の頬に触れるだけのキスを落として『叶えてくれますね』なんて言うから、YES以外の選択肢は最初からないようなものだ。
先輩の頭からハットを取って、それから、頬に添えられた手に頬ずりをしてからグローブも抜き取った。
その手に私の手を絡めてキュッと握ると、先輩は、今度は嬉しそうに笑った。
「さぁ、あなたの願いを聞かせていただけますか?」
「アズール先輩、ずっと、傍に、いてっ…くださいっ…!それでっ…ハッピーエンドを、見せて…」
「仰せのままに。それから、その願い、僕以外に叶えられるはずもないので、他の人には秘密ですからね」
自信満々に口の端を持ち上げて、先輩は私を見つめる。
その視線の囁くままに、私はそっと目を閉じた。
ねぇ先輩、アズール先輩。
もしも私が眠り姫のように目覚めなくなったとしても。
先輩はずっと傍にいてくれますか?
私が目覚めても、目覚めなくても。
こうして手を握って、そして、優しいキスを、くださいね。