未入力の場合は、あなた、が設定されます
Azul
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ここは閉店後のモストロ・ラウンジ。
カウンターでレモネードをいただきながら、私とアズール先輩としばし歓談をしていた。
先輩はいろんなことに詳しいので、何気ない一言からでも会話が弾む。
今日のテーマは最近気になったものだ。
「この間読んだ本は小説だったのですがオススメですよ」
「アズール先輩、小説も読むんですね。てっきり経営なんかの本ばかり読まれるのかと」
「普段はそういう本を読むことが多いですね…ただ今回読んだものは経営論も交えてると帯にあったので試しに読んでみたら…と言う感じです」
「私が読んでもわかりますかね…?」
「基本は小説形式ですし、語り口がわかりやすかったので大丈夫だと思いますよ。気になるならお貸ししましょう」
「本当ですか?ありがとうございます!」
「自分のしていることに興味を持ってもらえるのは嬉しいものです。ああ、興味といえば…先日食べた熱砂の国の料理、あれも良かった」
「あっわかります!美味しかったですよね」
「ええ。これまで口にしてきたどの料理とも違って…モストロ・ラウンジにも取り入れられたらよいのですが…、あ…それから、BGM。あなたにオススメされた曲を聴いてみたのですが、イメージにぴったりです。僕の好きな曲調でした」
アズール先輩は、日常生活であまり「好き」という言葉を使わない。
なので、たまにその言葉を聞くと、どうも心がざわついてしまう。
お付き合いしている私に対してすら言ってくれない、トクベツな言葉だから、と、少し声のトーンが下がってしまった。
「そ、ですか…」
「…なぜ拗ねてしまったのですか?」
ずるいのは、普段は割と鈍感なのに、ちょっとした態度の変化にはすぐに気づいてしまう、そういうところ。
複雑な心境ではあるし、子どもみたいでこんなこと伝えたくないのだけれど、繕ったってバレてしまうのだから仕方がない。
腹を括って言葉を吐き出した。
「…先輩が…珍しく、好き、って言うから…嫉妬しました」
「は?」
アズール先輩の目には、私だけ、映るようになればいいのに。
飲んでいたレモネードのストローを弄れば、それに合わせて、カラン、と氷が音を立てた。
暫しの沈黙。
このラウンジは、とても静かだ。
「あなた…まだわからないんですか?」
「?」
「好きなんて、誰もが知っている言葉では…到底表せないので、あまり口にしないのですが」
「え、」
「僕がそんな使い古された言葉だけを、僕の特別な人に囁くとでも?」
好き、という言葉は、ありふれていて、けれどもらうと嬉しい気持ち。
でもアズール先輩の『好き』は特別ではないの?
じゃあ一体。
「先輩の、特別な人は、どんな言葉をもらえるんですか…?」
期待と不安が入り混じる私の瞳には、アズール先輩しか映らない。
先輩の目には、今、何が見えていますか?
「言葉でもいいですが、一方的ではなく、双方の気持ちを伝える手段を、ご存知ですか?」
「…わ、かりません…と言ったら、教えて、くれますか…?」
「ふふっ…わかると言われても、改めて教えてさしあげますよ」
頬に添えられた手に引き寄せられて、私と先輩の距離はゼロになる。
合わさった唇からは、たくさんの気持ちを受け取ったので、私からは、少しのレモン味を返した。
恋とはこんなにも、甘酸っぱいものなのね。
カウンターでレモネードをいただきながら、私とアズール先輩としばし歓談をしていた。
先輩はいろんなことに詳しいので、何気ない一言からでも会話が弾む。
今日のテーマは最近気になったものだ。
「この間読んだ本は小説だったのですがオススメですよ」
「アズール先輩、小説も読むんですね。てっきり経営なんかの本ばかり読まれるのかと」
「普段はそういう本を読むことが多いですね…ただ今回読んだものは経営論も交えてると帯にあったので試しに読んでみたら…と言う感じです」
「私が読んでもわかりますかね…?」
「基本は小説形式ですし、語り口がわかりやすかったので大丈夫だと思いますよ。気になるならお貸ししましょう」
「本当ですか?ありがとうございます!」
「自分のしていることに興味を持ってもらえるのは嬉しいものです。ああ、興味といえば…先日食べた熱砂の国の料理、あれも良かった」
「あっわかります!美味しかったですよね」
「ええ。これまで口にしてきたどの料理とも違って…モストロ・ラウンジにも取り入れられたらよいのですが…、あ…それから、BGM。あなたにオススメされた曲を聴いてみたのですが、イメージにぴったりです。僕の好きな曲調でした」
アズール先輩は、日常生活であまり「好き」という言葉を使わない。
なので、たまにその言葉を聞くと、どうも心がざわついてしまう。
お付き合いしている私に対してすら言ってくれない、トクベツな言葉だから、と、少し声のトーンが下がってしまった。
「そ、ですか…」
「…なぜ拗ねてしまったのですか?」
ずるいのは、普段は割と鈍感なのに、ちょっとした態度の変化にはすぐに気づいてしまう、そういうところ。
複雑な心境ではあるし、子どもみたいでこんなこと伝えたくないのだけれど、繕ったってバレてしまうのだから仕方がない。
腹を括って言葉を吐き出した。
「…先輩が…珍しく、好き、って言うから…嫉妬しました」
「は?」
アズール先輩の目には、私だけ、映るようになればいいのに。
飲んでいたレモネードのストローを弄れば、それに合わせて、カラン、と氷が音を立てた。
暫しの沈黙。
このラウンジは、とても静かだ。
「あなた…まだわからないんですか?」
「?」
「好きなんて、誰もが知っている言葉では…到底表せないので、あまり口にしないのですが」
「え、」
「僕がそんな使い古された言葉だけを、僕の特別な人に囁くとでも?」
好き、という言葉は、ありふれていて、けれどもらうと嬉しい気持ち。
でもアズール先輩の『好き』は特別ではないの?
じゃあ一体。
「先輩の、特別な人は、どんな言葉をもらえるんですか…?」
期待と不安が入り混じる私の瞳には、アズール先輩しか映らない。
先輩の目には、今、何が見えていますか?
「言葉でもいいですが、一方的ではなく、双方の気持ちを伝える手段を、ご存知ですか?」
「…わ、かりません…と言ったら、教えて、くれますか…?」
「ふふっ…わかると言われても、改めて教えてさしあげますよ」
頬に添えられた手に引き寄せられて、私と先輩の距離はゼロになる。
合わさった唇からは、たくさんの気持ちを受け取ったので、私からは、少しのレモン味を返した。
恋とはこんなにも、甘酸っぱいものなのね。