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<唐突に箱に閉じ込められたシリーズ1>
「あ、アズール先輩…これは、なんなんでしょう」
「…嫌がらせ、でしょうね…」
これ、というのは、突然閉じ込められた小さな箱のような空間のことである。
監督生とアズール。二人はお付き合いをしている身であった。
男子校のNRCではその二人の状況自体をよくないと感じる者も少なくない。
直接その場で魔法をかけられたのならば、アズールが気づかないはずがなかったが、大方、嫉妬した生徒がなんらかの罠を仕掛けたのだろう。
アズールはこんなことにも気付けなかった自分に辟易していた。
「僕としたことがお恥ずかしい限りです。こんなものに気づかなかったなんて」
「そんな!先輩が謝ることなんて何もありませんよ!それよりも…どうしましょうね…」
「この手の魔法は、どこかに歪みを作れば簡単に解けるとは思うのですけれど」
「歪み…うーん…」
監督生が、コンコン、と手をついていた床部分を叩くが、大理石のような音がして、全く持って穴を作れるような気がしなかった。
それから、ちょっと失礼します、と他の部分に手をつこうとして、無謀にも身体を動かした結果。
当たり前だがこの狭い空間だ。意図せず頭をぶつけた監督生は、そのままアズールの上に倒れ込んでしまった。
「ッ?!」
「わぁ!?す、すみません!!」
「いっいえ?!!」
監督生の柔らかい身体が、アズールの上にまたがる。
アズールの吐息が、監督生の耳を掠める。
お互い、心臓が止まりそうと思いながらも、二人きりで密着しているというこのシチュエーション。
中から開かないのであれば、外からも開かないのでは。
それならば、この時、何を気にする必要があるのか。
「あずーる、せん、ぱい」
「っ貴女…そんな声を出すのは、卑怯ですよ」
「ンっ…、」
耳に直接吹き込まれた言葉に身をよじった監督生は、そのせいで、アズールの薄いブルーの瞳を見つめてしまい、カッと体温が急上昇した。
触れられた頬。手袋を通してでも伝わる低い体温。近づいてくる端正な顔。高鳴る胸に瞳をゆっくりと閉じーーー
「あは~開いたぁ」
「?!」
「フロイド?!」
「あのさ~ぁ、もしかしてと思ったけど、アズールも小エビちゃんも、中からは外見えてなかった系?」
「なっ、えっ」
「ま、まさか…お前」
「うん、こっちからは、丸見えだった~」
一部始終を結構な生徒に見られていたなんて。
二人して声にならない叫び声を上げたことは言うまでもない。
それからしばらく、アズールの姿は学園内で見ることができなかったという。
ーーー
<唐突に箱に閉じ込められたシリーズ2>
ジェイド・リーチは困っていた。
思いもよらず閉じ込められたこの魔法の箱は、とても小さかった。
190cmの男が一人で閉じ込められるにしても小さい箱なのに、あろうことかもう一人、自分の2/3程度しかないとはいえ、もう一人。監督生という存在も一緒にいるというのは、あまりよくない状態であった。
そもそもこの人間の姿の体躯は、折り曲げられるようにはできていない。
無理なものは無理だ。これ以上スペースを減らせることはない。
「じぇいどせんぱい」
「…申し訳ありません。今は黙って、いただけますか」
「は、はい、すみません…」
このジェイド、普段いくら涼しい顔をしているとはいっても、中身は健全な17歳だった。
監督生と付き合い始めてからというもの、時に優しく甘く、時に勢いよく、事を進めてきたつもりであったが、他人に愛しいこの子の痴態を見せるなどしたいはずもない。
監督生の可愛いところは自分だけが知っていればいいし、人に知られる必要はないのだから、誰がどう介入してくるかわからないこの場所で欲情するわけにはいかなかった。
しかしこの状況、ジェイドのジェイドを立ち上がらせるには十分。
どうしたものかと目を閉じて精神統一しながら、自分の上に乗っかっている監督生の背を撫でていた。
が、なかなかどうして。
こんな状況であれど、ジェイドの体温と鼓動、そして背中を行ったり来たりする大きな手の優しいリズムにふわふわと意識が混濁し始めたのは監督生。
あぁ、この箱を抜け出せないのならば、いっそ寝てしまってもよいのではないか。
そうだ、こんなにも気持ちがいいのだから、それが得策だ。こういうときはいつだって、焦ったってしようがない。
「…」
「?監督生さん?」
「………」
「…おやおや…これは、どうしたものか…」
ジェイドの苦悩などつゆ知らず。
監督生はすやすやと眠り始めてしまった。
その吐息を聞いていると、ジェイドまで気分がよくなってくるのは惚れた弱みかなんなのか。
「全く…この状況で、僕の上で眠れるのなんて、貴女くらいのものですよ」
「むにゃ…じぇいどせんぱい……」
「!」
「…ふふ…だぁいすき…」
「…ほんとうに…くくっ……」
腕の中のこの子はどんな夢を見ているのだろうか。
確かに狭い箱の中だけれど、完全密室に二人きり。
少しばかり、夢の中を揺蕩うのも、たまにはいいかもしれないな、なんて。
助けが入ったのは、その数十分後。
ぱちんと弾けるようにして、箱がなくなって。
寝ぼける二人の姿が、アズールとフロイドによって発見されたとかなんとか。
ーーー
<唐突に箱に閉じ込められたシリーズ 3>
「はぁ!?ナニコレー!」
「あっちょ!フロイド先輩、動かないでください!痛い痛い!」
「小エビちゃんと二人きりになれるんならもっと広くて綺麗な場所がいいっつーの!」
「どさくさに紛れて何言ってるんですか」
御伽話の類かと思っていた、この、箱に閉じ込められるというシチュエーション。実際にこういう目に合うのが自分たちだったとは想定外だ。
「フロイド先輩だったら中から壊せたりしませんか」
「これは無理みたい。さっきから力加えてるけどびくともしねーもん」
「先輩にも壊せないものがあるんですね」
「小エビちゃん、オレのことなんだと思ってんの」
「何でもできちゃうかっこいい彼氏、ですけど?」
「…もー!小エビちゃん〜すき〜!」
この狭い中で、更にくっつこうとするなんてどれだけ身体が柔らかいのだろう。人型をとったところで、人魚の何かが残っているのだろうか、とぼんやりと考えた。
フロイド先輩にこうして抱きしめられるのは、好きだ。最初こそすごい力で締められていたのが今ではこんなにも優しいのだから、心から幸せに思う。
「あー。オレもうこっから出らんなくてもいいかも〜」
「え?どうしてですか?」
「だってさーこの中にいれば、こうやってずっと小エビちゃんを独り占めできるわけでしょ?」
「なるほど!そういう意味では私もずっと、ここにいたいかもしれません!」
フロイド先輩の長い脚の間に挟まって、背中から抱きしめてもらっていれば、とくんとくんと心臓の音が直接身体に響いて、なんだかとてもいい気分だ。でも。
「でも、一つだけ問題があります」
「?なにー」
「この状態では、キスができません」
「は!!ちゅーできないのはいや!やっぱり出よ」
たったの一言で、考えが180度変わるのもフロイド先輩ならではだ。
ひたすらガッガッと壁を蹴ったり、体で目一杯壁を押し返してみるも、やはり箱は壊れない。
もう諦めませんか、誰か助けにきてくれますよ
そう言おうとしたとき。
コンコン、と外から音がした。
「!」
「あ?誰だよ!」
「おや、中にいるのはフロイドですか」
「ジェイド!」
「珍しいですね、フロイドがこんなものに引っかかるなんて」
「喧嘩売ってんのかよ」
「滅相もない。一人ですか?今開けますから待ってくださいね」
ジェイド先輩の言葉の通りなら、外からなら開くのだろうか。待っていろ、なんて至極簡単な言葉が返ってきた。
「ジェイド、簡単に言うな…なんか負けた気分〜」
「あはは…なにを言っているんですか…出してもらえるなら、よかったと思うべきですよ」
「なーんか、癪だなぁ」
「ふふ、じゃあ、がんばってくれたフロイド先輩には、外に出たら私からのハグをプレゼントします!」
「ほんと?…でもそれだけじゃ割に合わないかな〜」
そんなことを言うものだから、彼に対して甘い私は、おねだりの意図を汲み取って、追加プレゼントの進呈を告げた。
「では、リクエストにお応えして、ちゅーもたくさん、追加しますから」
もちろん、箱から出してもらった瞬間に二人きりになれる場所まで連れ去られたのは、言うまでもない。
「あ、アズール先輩…これは、なんなんでしょう」
「…嫌がらせ、でしょうね…」
これ、というのは、突然閉じ込められた小さな箱のような空間のことである。
監督生とアズール。二人はお付き合いをしている身であった。
男子校のNRCではその二人の状況自体をよくないと感じる者も少なくない。
直接その場で魔法をかけられたのならば、アズールが気づかないはずがなかったが、大方、嫉妬した生徒がなんらかの罠を仕掛けたのだろう。
アズールはこんなことにも気付けなかった自分に辟易していた。
「僕としたことがお恥ずかしい限りです。こんなものに気づかなかったなんて」
「そんな!先輩が謝ることなんて何もありませんよ!それよりも…どうしましょうね…」
「この手の魔法は、どこかに歪みを作れば簡単に解けるとは思うのですけれど」
「歪み…うーん…」
監督生が、コンコン、と手をついていた床部分を叩くが、大理石のような音がして、全く持って穴を作れるような気がしなかった。
それから、ちょっと失礼します、と他の部分に手をつこうとして、無謀にも身体を動かした結果。
当たり前だがこの狭い空間だ。意図せず頭をぶつけた監督生は、そのままアズールの上に倒れ込んでしまった。
「ッ?!」
「わぁ!?す、すみません!!」
「いっいえ?!!」
監督生の柔らかい身体が、アズールの上にまたがる。
アズールの吐息が、監督生の耳を掠める。
お互い、心臓が止まりそうと思いながらも、二人きりで密着しているというこのシチュエーション。
中から開かないのであれば、外からも開かないのでは。
それならば、この時、何を気にする必要があるのか。
「あずーる、せん、ぱい」
「っ貴女…そんな声を出すのは、卑怯ですよ」
「ンっ…、」
耳に直接吹き込まれた言葉に身をよじった監督生は、そのせいで、アズールの薄いブルーの瞳を見つめてしまい、カッと体温が急上昇した。
触れられた頬。手袋を通してでも伝わる低い体温。近づいてくる端正な顔。高鳴る胸に瞳をゆっくりと閉じーーー
「あは~開いたぁ」
「?!」
「フロイド?!」
「あのさ~ぁ、もしかしてと思ったけど、アズールも小エビちゃんも、中からは外見えてなかった系?」
「なっ、えっ」
「ま、まさか…お前」
「うん、こっちからは、丸見えだった~」
一部始終を結構な生徒に見られていたなんて。
二人して声にならない叫び声を上げたことは言うまでもない。
それからしばらく、アズールの姿は学園内で見ることができなかったという。
ーーー
<唐突に箱に閉じ込められたシリーズ2>
ジェイド・リーチは困っていた。
思いもよらず閉じ込められたこの魔法の箱は、とても小さかった。
190cmの男が一人で閉じ込められるにしても小さい箱なのに、あろうことかもう一人、自分の2/3程度しかないとはいえ、もう一人。監督生という存在も一緒にいるというのは、あまりよくない状態であった。
そもそもこの人間の姿の体躯は、折り曲げられるようにはできていない。
無理なものは無理だ。これ以上スペースを減らせることはない。
「じぇいどせんぱい」
「…申し訳ありません。今は黙って、いただけますか」
「は、はい、すみません…」
このジェイド、普段いくら涼しい顔をしているとはいっても、中身は健全な17歳だった。
監督生と付き合い始めてからというもの、時に優しく甘く、時に勢いよく、事を進めてきたつもりであったが、他人に愛しいこの子の痴態を見せるなどしたいはずもない。
監督生の可愛いところは自分だけが知っていればいいし、人に知られる必要はないのだから、誰がどう介入してくるかわからないこの場所で欲情するわけにはいかなかった。
しかしこの状況、ジェイドのジェイドを立ち上がらせるには十分。
どうしたものかと目を閉じて精神統一しながら、自分の上に乗っかっている監督生の背を撫でていた。
が、なかなかどうして。
こんな状況であれど、ジェイドの体温と鼓動、そして背中を行ったり来たりする大きな手の優しいリズムにふわふわと意識が混濁し始めたのは監督生。
あぁ、この箱を抜け出せないのならば、いっそ寝てしまってもよいのではないか。
そうだ、こんなにも気持ちがいいのだから、それが得策だ。こういうときはいつだって、焦ったってしようがない。
「…」
「?監督生さん?」
「………」
「…おやおや…これは、どうしたものか…」
ジェイドの苦悩などつゆ知らず。
監督生はすやすやと眠り始めてしまった。
その吐息を聞いていると、ジェイドまで気分がよくなってくるのは惚れた弱みかなんなのか。
「全く…この状況で、僕の上で眠れるのなんて、貴女くらいのものですよ」
「むにゃ…じぇいどせんぱい……」
「!」
「…ふふ…だぁいすき…」
「…ほんとうに…くくっ……」
腕の中のこの子はどんな夢を見ているのだろうか。
確かに狭い箱の中だけれど、完全密室に二人きり。
少しばかり、夢の中を揺蕩うのも、たまにはいいかもしれないな、なんて。
助けが入ったのは、その数十分後。
ぱちんと弾けるようにして、箱がなくなって。
寝ぼける二人の姿が、アズールとフロイドによって発見されたとかなんとか。
ーーー
<唐突に箱に閉じ込められたシリーズ 3>
「はぁ!?ナニコレー!」
「あっちょ!フロイド先輩、動かないでください!痛い痛い!」
「小エビちゃんと二人きりになれるんならもっと広くて綺麗な場所がいいっつーの!」
「どさくさに紛れて何言ってるんですか」
御伽話の類かと思っていた、この、箱に閉じ込められるというシチュエーション。実際にこういう目に合うのが自分たちだったとは想定外だ。
「フロイド先輩だったら中から壊せたりしませんか」
「これは無理みたい。さっきから力加えてるけどびくともしねーもん」
「先輩にも壊せないものがあるんですね」
「小エビちゃん、オレのことなんだと思ってんの」
「何でもできちゃうかっこいい彼氏、ですけど?」
「…もー!小エビちゃん〜すき〜!」
この狭い中で、更にくっつこうとするなんてどれだけ身体が柔らかいのだろう。人型をとったところで、人魚の何かが残っているのだろうか、とぼんやりと考えた。
フロイド先輩にこうして抱きしめられるのは、好きだ。最初こそすごい力で締められていたのが今ではこんなにも優しいのだから、心から幸せに思う。
「あー。オレもうこっから出らんなくてもいいかも〜」
「え?どうしてですか?」
「だってさーこの中にいれば、こうやってずっと小エビちゃんを独り占めできるわけでしょ?」
「なるほど!そういう意味では私もずっと、ここにいたいかもしれません!」
フロイド先輩の長い脚の間に挟まって、背中から抱きしめてもらっていれば、とくんとくんと心臓の音が直接身体に響いて、なんだかとてもいい気分だ。でも。
「でも、一つだけ問題があります」
「?なにー」
「この状態では、キスができません」
「は!!ちゅーできないのはいや!やっぱり出よ」
たったの一言で、考えが180度変わるのもフロイド先輩ならではだ。
ひたすらガッガッと壁を蹴ったり、体で目一杯壁を押し返してみるも、やはり箱は壊れない。
もう諦めませんか、誰か助けにきてくれますよ
そう言おうとしたとき。
コンコン、と外から音がした。
「!」
「あ?誰だよ!」
「おや、中にいるのはフロイドですか」
「ジェイド!」
「珍しいですね、フロイドがこんなものに引っかかるなんて」
「喧嘩売ってんのかよ」
「滅相もない。一人ですか?今開けますから待ってくださいね」
ジェイド先輩の言葉の通りなら、外からなら開くのだろうか。待っていろ、なんて至極簡単な言葉が返ってきた。
「ジェイド、簡単に言うな…なんか負けた気分〜」
「あはは…なにを言っているんですか…出してもらえるなら、よかったと思うべきですよ」
「なーんか、癪だなぁ」
「ふふ、じゃあ、がんばってくれたフロイド先輩には、外に出たら私からのハグをプレゼントします!」
「ほんと?…でもそれだけじゃ割に合わないかな〜」
そんなことを言うものだから、彼に対して甘い私は、おねだりの意図を汲み取って、追加プレゼントの進呈を告げた。
「では、リクエストにお応えして、ちゅーもたくさん、追加しますから」
もちろん、箱から出してもらった瞬間に二人きりになれる場所まで連れ去られたのは、言うまでもない。