未入力の場合は、あなた、が設定されます
other
名前変換設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
一目見て、とても可愛い水着だな、と目を惹かれた。
その理由はひとえに、リドル先輩の真っ赤な髪色とハーツラビュル寮を想起させるそのデザインにあったのだと思う。
赤と白のチェック柄のチューブトップ。胸元には大きなリボンがついている。しかしてそれはいやらしさは微塵もなくて、可愛らしいデザイン。
けれどリドル先輩の目にはそう映らなかったようだ。
「ダメだ」
「…理由を教えてください。そんなに似合いませんか?」
「理由は言えない。でもダメだ。着替えて」
「それじゃあみんなでプールに来た意味がないじゃないですか」
押し問答を続けることどのくらいになるだろう。
今日はハーツラビュルの皆さんに街に新しくできたと言うプールに連れてきてもらっていた。
着替えたらここに集合だよ、と言われて別れたのが数十分前。更衣室から出た私を待っていたのは、リドル先輩一人だった。
そうして、私の姿を認めた先輩と一悶着というわけだ。
『プール』という場所柄、人通りも多く言い合いをするには少し恥ずかしいので、休憩スペースのようなところまで移動した。
さすが魔法界とでも言えばいいのか、休憩スペースは個室というか個々の空間になっているようで、全く誰の声も聞こえない。
シン…と静まり返っていて感心してしまう。
パタンと扉が閉まれば、この世界に二人きりだ。
「…どうして君はそんなに強情なんだい?」
「強情ってなんですか!?」
「だってそうじゃないか。別にプールに入るなとは言っていないよ僕は。別の水着を買ってあげるから着替えてと言っているだけだ」
「でもせっかく買ったのに!理由くらい」
「だからさっきも言ったろう?」
「納得できません!」
こんな思い出を作りたくて来たわけでも、着たわけでもないのに、こんな言葉しか出てこない自分に対してだんだん腹が立ってきて、知らず口調が荒くなる。
じわ、と滲んだ視界。でもここで泣いてもなんの解決にもならない。泣くな私。リドル先輩を困らせるのはもっと嫌だから。
「わ、たしは、この水着、リドル先輩、みたいだなって思って選びました。それで、可愛いって、言ってもらえたらなって」
「…!」
「でも、わかりました。そうですね。肝心の、先輩が、嫌なら、仕方ない、です」
「っちが…!そういうわけじゃ!」
「私、か、帰ります」
「待って!」
「、あ、!」
雰囲気に我慢できず、部屋から出て行こうと背中を向けたその時だった。
リドル先輩が私を引き止めようと、背中に伸ばした、手。それが背中で結ばれていたリボンに引っかかったと感じたのは一瞬のこと。
頼りないリボンは解けてしまい、はらりと素肌が顕になった。
「へ、…あ」
「!?」
「キャァ?!!!」
落ちていった水着を追いかけるようにしてしゃがみこんだ私の後ろには、どんな顔をしたリドル先輩がいるのか。
怖かった。けれどその場で着直すことはおろか動くことすらできずに、私は自分の手で胸を覆ったまま固まるしかない。
もう踏んだり蹴ったりだ。一番褒めて欲しかった相手には着替えろと言われ、さらにこんなことになるなんて。
せっかくいい関係を築いて来たというのに。我慢していた涙が溢れるのも時間の問題だった。
「っ…も…いや…なんでこんなことにっ…」
独り言のように呟いた言葉は、リドル先輩に聞こえてしまっただろうか。
できれば聞かれてないといいのだけれど。
「ごめん!!」
「す…すみませ、ん!先に出ていってもらえませんか!?私は水着を着なおしてから、一人でも帰れるので!」
「そんなことはしないっ」
「だって!!…っ!?」
そう言った瞬間背中に人肌を感じてびっくりしてしまった。
大げさに跳ねた私の身体はしかし、リドル先輩の腕に抑え込まれて寸分も動かない。
あぁこの人もこんな綺麗な顔をしているけど男の人なんだと実感してしまってさっきよりもさらに恥ずかしくなる。
もしかするとこの身まで燃やされてるのかもしれないくらいには、カカカと頬が熱くなる。
「リ、リドル先輩、ッ…離して…くださいっ、」
「ごめん、違うんだ、僕は…」
「…?」
「僕は、その、そんな可愛い水着を着た君をみんなに見せたくなくて」
「えっ…」
「独り占め、したかったんだ」
『あんな言い方しかできなくて、本当にごめん』なんて小さく謝られたら、ずるい。
許す以外の選択肢はなくなってしまう。
でも、本意でなくてもこんなに意地悪されたんだもの。私だって何か仕返ししたっていいと思わない?
「リドル先輩」
「なんだい」
「こんな法律があった気がしたんですが…ご存知ですか?」
「僕が知らない法律はないよ」
「本当ですか?…私には、第何条かはわからないのですが」
『女の子を不安にさせた場合、寮長は責任をとってその子のご機嫌取りをしなくちゃいけないんですよ?だから、たくさん愛の言葉を囁いてください。』そこまで言って、恥ずかしすぎることを口にしたなと思ってももう遅い。戻ってくる言葉がないことが恥ずかしさに拍車をかけたので、冗談です!と言おうと横ざまに先輩に目線を向けると、こっちを見ないでと牽制された。
「君は本当に困ったお姫様だね…でも、その法律は確かに聞いた覚えがあるよ」
「…!」
「だから、たくさん、伝えようじゃないか」
可愛い、好き、誰にも取られたくない、どうしたら君を繋ぎ止めておける?
そんな甘い言葉は、お砂糖をいくつも溶かし続けるハートの女王様だから出てくるのかな。
耳を擽るたくさんの言葉に身も心も捧げましょうか。
「私も、大好きですよ、リドル先輩」
新しい水着に着替えて皆のところへ戻ったら、遅すぎる!、と勘ぐられてしまったのは仕方のないことだった。
その理由はひとえに、リドル先輩の真っ赤な髪色とハーツラビュル寮を想起させるそのデザインにあったのだと思う。
赤と白のチェック柄のチューブトップ。胸元には大きなリボンがついている。しかしてそれはいやらしさは微塵もなくて、可愛らしいデザイン。
けれどリドル先輩の目にはそう映らなかったようだ。
「ダメだ」
「…理由を教えてください。そんなに似合いませんか?」
「理由は言えない。でもダメだ。着替えて」
「それじゃあみんなでプールに来た意味がないじゃないですか」
押し問答を続けることどのくらいになるだろう。
今日はハーツラビュルの皆さんに街に新しくできたと言うプールに連れてきてもらっていた。
着替えたらここに集合だよ、と言われて別れたのが数十分前。更衣室から出た私を待っていたのは、リドル先輩一人だった。
そうして、私の姿を認めた先輩と一悶着というわけだ。
『プール』という場所柄、人通りも多く言い合いをするには少し恥ずかしいので、休憩スペースのようなところまで移動した。
さすが魔法界とでも言えばいいのか、休憩スペースは個室というか個々の空間になっているようで、全く誰の声も聞こえない。
シン…と静まり返っていて感心してしまう。
パタンと扉が閉まれば、この世界に二人きりだ。
「…どうして君はそんなに強情なんだい?」
「強情ってなんですか!?」
「だってそうじゃないか。別にプールに入るなとは言っていないよ僕は。別の水着を買ってあげるから着替えてと言っているだけだ」
「でもせっかく買ったのに!理由くらい」
「だからさっきも言ったろう?」
「納得できません!」
こんな思い出を作りたくて来たわけでも、着たわけでもないのに、こんな言葉しか出てこない自分に対してだんだん腹が立ってきて、知らず口調が荒くなる。
じわ、と滲んだ視界。でもここで泣いてもなんの解決にもならない。泣くな私。リドル先輩を困らせるのはもっと嫌だから。
「わ、たしは、この水着、リドル先輩、みたいだなって思って選びました。それで、可愛いって、言ってもらえたらなって」
「…!」
「でも、わかりました。そうですね。肝心の、先輩が、嫌なら、仕方ない、です」
「っちが…!そういうわけじゃ!」
「私、か、帰ります」
「待って!」
「、あ、!」
雰囲気に我慢できず、部屋から出て行こうと背中を向けたその時だった。
リドル先輩が私を引き止めようと、背中に伸ばした、手。それが背中で結ばれていたリボンに引っかかったと感じたのは一瞬のこと。
頼りないリボンは解けてしまい、はらりと素肌が顕になった。
「へ、…あ」
「!?」
「キャァ?!!!」
落ちていった水着を追いかけるようにしてしゃがみこんだ私の後ろには、どんな顔をしたリドル先輩がいるのか。
怖かった。けれどその場で着直すことはおろか動くことすらできずに、私は自分の手で胸を覆ったまま固まるしかない。
もう踏んだり蹴ったりだ。一番褒めて欲しかった相手には着替えろと言われ、さらにこんなことになるなんて。
せっかくいい関係を築いて来たというのに。我慢していた涙が溢れるのも時間の問題だった。
「っ…も…いや…なんでこんなことにっ…」
独り言のように呟いた言葉は、リドル先輩に聞こえてしまっただろうか。
できれば聞かれてないといいのだけれど。
「ごめん!!」
「す…すみませ、ん!先に出ていってもらえませんか!?私は水着を着なおしてから、一人でも帰れるので!」
「そんなことはしないっ」
「だって!!…っ!?」
そう言った瞬間背中に人肌を感じてびっくりしてしまった。
大げさに跳ねた私の身体はしかし、リドル先輩の腕に抑え込まれて寸分も動かない。
あぁこの人もこんな綺麗な顔をしているけど男の人なんだと実感してしまってさっきよりもさらに恥ずかしくなる。
もしかするとこの身まで燃やされてるのかもしれないくらいには、カカカと頬が熱くなる。
「リ、リドル先輩、ッ…離して…くださいっ、」
「ごめん、違うんだ、僕は…」
「…?」
「僕は、その、そんな可愛い水着を着た君をみんなに見せたくなくて」
「えっ…」
「独り占め、したかったんだ」
『あんな言い方しかできなくて、本当にごめん』なんて小さく謝られたら、ずるい。
許す以外の選択肢はなくなってしまう。
でも、本意でなくてもこんなに意地悪されたんだもの。私だって何か仕返ししたっていいと思わない?
「リドル先輩」
「なんだい」
「こんな法律があった気がしたんですが…ご存知ですか?」
「僕が知らない法律はないよ」
「本当ですか?…私には、第何条かはわからないのですが」
『女の子を不安にさせた場合、寮長は責任をとってその子のご機嫌取りをしなくちゃいけないんですよ?だから、たくさん愛の言葉を囁いてください。』そこまで言って、恥ずかしすぎることを口にしたなと思ってももう遅い。戻ってくる言葉がないことが恥ずかしさに拍車をかけたので、冗談です!と言おうと横ざまに先輩に目線を向けると、こっちを見ないでと牽制された。
「君は本当に困ったお姫様だね…でも、その法律は確かに聞いた覚えがあるよ」
「…!」
「だから、たくさん、伝えようじゃないか」
可愛い、好き、誰にも取られたくない、どうしたら君を繋ぎ止めておける?
そんな甘い言葉は、お砂糖をいくつも溶かし続けるハートの女王様だから出てくるのかな。
耳を擽るたくさんの言葉に身も心も捧げましょうか。
「私も、大好きですよ、リドル先輩」
新しい水着に着替えて皆のところへ戻ったら、遅すぎる!、と勘ぐられてしまったのは仕方のないことだった。