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ハーツラビュルにはクロッケー場やバラ庭園がある。サバナクローにはマジフト場がある。スカラビアに至っては、砂漠の先に寒冷の地まである。が、ここ、オクタヴィネル寮は、周りを海に囲まれており、寮内から外へ出ることはできないことは、ずっと不思議に思っていた。
「オクタヴィネル寮って他の寮よりも敷地が狭いってことは、寮生も少なめなんですか?」
「どうして小さいと思ったのですか?」
「え?」
「横に小さければ、縦に大きい可能性、というものです。地下には洞窟もありますし、ここから海上にも出られますよ。この真上にヘリポートのようなものがあるのです。今から行ってみましょうか」
そう言うが早いか、ジェイド先輩は私の手を掴むと寮の奥へと誘った。
ついて行った先は、ちょうど寮の入り口から真反対に位置する場所であろうか。そこには分厚いカーテンが掛かっていたが、それが捲られると小型のエレベーターのようなものがお目見えした。全面ガラス張りのそれに、手を引かれるままに乗り込めば、ポーンと小さな音がしたのち、スゥ、と静かに上へと昇っていく。移動するその透明な箱の中からみる海は、魚や水泡や、珊瑚や何かがたくさん見える。青、赤、緑、それから黄色。思い描いていた海よりも煌めいていて、思わず「ほぁー」と吐息が漏れた。
「お気に召しましたか?」
「すごく綺麗…です…!こんな体験ができるなんて思ってもいませんでした!」
「それはよかったです」
「あっ、でもこれ水圧っ」
「そのあたりは魔法で制御されていますので、心配いりませんよ」
「なるほど…!さすがですね!」
そんな他愛もない話をしているうちに、シュパン!と音がした。音につられて外を見れば、目に飛び込んできたのは海ではなく一面の星空。
「うわ…あ…!」
「さぁ、海上に到着です。外に出ましょう。足元にお気をつけてくださいね、あなたさん」
「ありがとうございます!」
差し出された手を取って出たそこは、小さな島のようになっていた。ジェイド先輩はヘリポートみたいなもの、と言っていたけれど、そこは思った以上に綺麗だ。芝は人工なのだろうけど、木や花も咲いていて、おまけに小さな休憩所のような場所まで備え付けてある。いくつかのランタンは、星の光を邪魔しないとでも言いたげな優しいオレンジの光を放ちながら、宙に浮いている。度肝を抜かれ、ただただ目を見開いていると、それを見守っていたジェイド先輩が思い出したように私に声を掛けた。
「それではあなたさん、着替えましょうか」
「へ?」
「せっかくですから、泳ぎましょう」
「!」
その言葉に合わせて、先輩がマジカルペンを一振りした。と思えば、私の制服はフレアビキニに変化していて、驚いて叫んでしまった。「突然何を!」とジェイド先輩をみやれば珍しく先輩も水着姿になっており、あれ?と毒気を抜かれてしまう。
「先輩、人魚の姿じゃないんですか?」
「えぇ、今日は陸のしきたりに倣ってみようかと思いまして」
「そうなんですね、たまには違う楽しみ方もできるかもしれませんものね!」
「はい。なのであなたさん、一緒にこの、浮き輪とやらを使いましょう」
「用意周到だ…」
「ふふ、割となんでも揃っているんですよ、ここには」
「なんのために使っているのですか?」
「主にリフレッシュ、ですかね…たまに手入れに来るくらいで、寮生からの利用申請もほとんどありませんが」
「勿体無いですね〜!こんなに素敵なのに!」
小島の淵まで歩いて行くと、ビーチのように砂浜があり、そこから夜の海へチャプンと足をつけてみた。
一歩、二歩、三…と踏み出した足は、もう陸を踏むことはなかった。深い。当たり前だけれど、私が知っている砂浜のように、陸が続いていることはなく、この先は深い深い海のようだ。
「砂浜はありますが、ここは海のど真ん中なので一歩先には突然深くなります。しっかり浮き輪につかまって」
「わかりました…」
わかっていても怖いものは怖いのでどうしようかと足踏みをしていると、頭の上から苦笑が降ってきて、その次の瞬間、失礼しますね、との言葉とともに、私の身体は宙に浮いた。
「!!」
抱き上げられたと気づいた時にはすでに海の上に浮いており、びっくりする暇もない。
浮き輪を椅子のようにして、真ん中にお尻を落としてプカリプカリ。
私を囲うようにして腕を伸ばしたジェイド先輩は、それにつかまって浮いていた。
「ジェ、イド、先輩っ!?い、いきなり、何、をっ」
「いえ、あなたさん一人で夜の海に身を投げ出すのは勇気がいるかと思いまして」
「っそれでも!!言ってからしてくださいよっ!!」
「ふふっ、それは申し訳ありませんでした。でも、少しくらいスリルがあっても良いでしょう?」
「んもう!!」
「怒らないでください、可愛い顔が台無しですよ」
「っ…!」
クスクス、と楽しそうな声で笑った先輩の顔は、暗くてよく見えないけれど、いつものハの字型の笑い方ではなさそうだ。
そのことに少しだけ安心する。呆れられたり、困らせたりしたわけじゃない。楽しんでくれているのだ、と。
しかしながら、浮き輪を隔てている、水着をきている、とはいえ、この近さ、この暗さで二人きり。
驚きや恐怖が薄れてくると、なんだか恥ずかしい気持ちがむくむくと育ってきて、狭い浮き輪の中もぞもぞと腰の位置を変えたら、それにつられてジェイド先輩の顔はさらに私に近づいてくる。
なぜ?少しだけ離れたいだけなのに。これでは心臓の音が聞こえてしまう。これ以上近づくのはやめて。
そう思った時、自分の水着に違和感を覚える。正確には、お尻を隠している薄い布の、紐に。
何かたるんでいるような。さっきまでぴっちりと私のヒップラインを隠していてくれたはずなのに。
それに心なしか、ジェイド先輩の顔つきが。いつもよりも楽しそう?
「どうかしましたか?」
「い、いえ、何も」
「そうですか。ならばもう少し星を眺めながら波に揺られてみましょうか」
「え?!」
「何か不都合でも?」
「あっ、いえ、その」
そう言っている間にも、違和感は大きくなってくる。
もはや水着が。
「っ!!」
解けた。これは完全に解けた。
そう感じて、お尻に手を伸ばそうとした時にはすでに遅かった。
私の指は、水着をつかむことはなかった。
真っ暗な海に消えていった私の水着。真っ暗な水の中に隠れたままの私のお尻。
この状況で、さぁそろそろ上がりましょうか、なんて言われたら一巻の終わりーーー
「さぁ、そろそろ上がりましょうか。あまり海の中にいると疲れてしまいますしね」
「やっぱり!!」
「あなたさん、先ほどからどうしたのですか?やはり早めに」
「い、いえ!!ちょっと待って、待ってくださ…!!」
ざぱ。
慈悲の心も何もなく、海から一思いに上がったジェイド先輩と私。
「ダメーーーっ!!」
ジェイド先輩の顔を隠すことしか対応策を思いつかず、私は必死でその瞳を覆う。
唯一の救いはお姫様抱っこをされていたために手が届いたことだろう。
「ジェイド先輩!!ダメです!!わ、私、私っ、水着がっ」
「ふ」
「!?」
「ふふ…ふふっ…!!」
「ジェ、イド、せんぱ、い?」
「あなたさんの探し物はこちらですか?」
目隠しされたまま、先輩に差し出されたのは、私の水着であった。
なんで?なんでこれがジェイド先輩の手に?だって私は。私が履いていて。
そこまで考えて、あの時の「楽しそう」な顔が目に浮かぶ。
「ま、さか」
「さぁ、どうでしょう?」
「うそ…!!先輩の変態!!ばか!!えっち!!」
「心外ですね。僕はあなたさんの水着を『拾った』だけですよ?よかったです、流されてしまう前に手に取れて」
「な…っ、そ、なそんな、まさか、だって、」
「まさか、僕が、解いた、なんて、疑っているのですか?」
にこり、三日月のような口だけが私の位置からは見える。
きっとこの目隠しをとったら、ジェイド先輩はそれは嬉しそうに瞳を細めているんだろう。
「そろそろこの目隠しをとっていただけませんか?水着はお返ししますから」
「だ、だ、だって、見えちゃう、から、ダメ、です!!」
「何を今更」
「い、今更って、それとこれとは話が別で!!」
「そもそも、ここには僕たち二人だけなのですから」
もとより、そういうつもりで連れてきたのですから、と、つぶやいた先輩は、目隠しをされているにも関わらず、的確に休憩所の方へ歩を進めた。そちらを見やれば、ご丁寧に、寝転がれるような簡易マットレスも敷いてあり、一気に身体の熱が上昇する。あまりの用意周到さに、つい手が自分の口を覆ってしまった。もちろん、ジェイド先輩の目隠しはなくなって。
「ジェイド先輩、まさか、」
「そうです、そのまさかですよ。脱ぐ、という手間も省けましたから」
そのまま休憩所に乗り上げて、マットレスに転がされた私。その上に跨る、ジェイド先輩。
そよそよと吹いた海風が、薄手のカーテンと先輩の髪を揺らす。
月明かりとランタンの灯りは、私たちを優しく照らした。
「あなたさんは、男性が女性に着る物を贈る意味をご存知ですか?」
「…?」
「脱がせたいから贈る、ということだそうですよ」
「っ!?」
「あなたさんに似合う水着を探して着せたのはいいのですが、やはり脱がせるのは僕でないと」
「やっぱり、紐を解いたのは、先輩、ですね?!信じられない!!う、海の、中で、もう見つからないかと、」
「ご心配なく。もしも本当になくなってしまったら、また新しい物を贈って、脱がせるまでですので。…言いたいことはそれだけですか?」
近づいてくる先輩のオッドアイは、私に、瞳を閉じろと囁いた。
魔法なんか使われなくたって、私はジェイド先輩の思うがまま。
「さぁ、怖がらず、僕を受け入れてください」
「っ…怖くなんて、ありません…ッ」
漣の音を聞きながら、私は今日も、先輩に溺れる。
「オクタヴィネル寮って他の寮よりも敷地が狭いってことは、寮生も少なめなんですか?」
「どうして小さいと思ったのですか?」
「え?」
「横に小さければ、縦に大きい可能性、というものです。地下には洞窟もありますし、ここから海上にも出られますよ。この真上にヘリポートのようなものがあるのです。今から行ってみましょうか」
そう言うが早いか、ジェイド先輩は私の手を掴むと寮の奥へと誘った。
ついて行った先は、ちょうど寮の入り口から真反対に位置する場所であろうか。そこには分厚いカーテンが掛かっていたが、それが捲られると小型のエレベーターのようなものがお目見えした。全面ガラス張りのそれに、手を引かれるままに乗り込めば、ポーンと小さな音がしたのち、スゥ、と静かに上へと昇っていく。移動するその透明な箱の中からみる海は、魚や水泡や、珊瑚や何かがたくさん見える。青、赤、緑、それから黄色。思い描いていた海よりも煌めいていて、思わず「ほぁー」と吐息が漏れた。
「お気に召しましたか?」
「すごく綺麗…です…!こんな体験ができるなんて思ってもいませんでした!」
「それはよかったです」
「あっ、でもこれ水圧っ」
「そのあたりは魔法で制御されていますので、心配いりませんよ」
「なるほど…!さすがですね!」
そんな他愛もない話をしているうちに、シュパン!と音がした。音につられて外を見れば、目に飛び込んできたのは海ではなく一面の星空。
「うわ…あ…!」
「さぁ、海上に到着です。外に出ましょう。足元にお気をつけてくださいね、あなたさん」
「ありがとうございます!」
差し出された手を取って出たそこは、小さな島のようになっていた。ジェイド先輩はヘリポートみたいなもの、と言っていたけれど、そこは思った以上に綺麗だ。芝は人工なのだろうけど、木や花も咲いていて、おまけに小さな休憩所のような場所まで備え付けてある。いくつかのランタンは、星の光を邪魔しないとでも言いたげな優しいオレンジの光を放ちながら、宙に浮いている。度肝を抜かれ、ただただ目を見開いていると、それを見守っていたジェイド先輩が思い出したように私に声を掛けた。
「それではあなたさん、着替えましょうか」
「へ?」
「せっかくですから、泳ぎましょう」
「!」
その言葉に合わせて、先輩がマジカルペンを一振りした。と思えば、私の制服はフレアビキニに変化していて、驚いて叫んでしまった。「突然何を!」とジェイド先輩をみやれば珍しく先輩も水着姿になっており、あれ?と毒気を抜かれてしまう。
「先輩、人魚の姿じゃないんですか?」
「えぇ、今日は陸のしきたりに倣ってみようかと思いまして」
「そうなんですね、たまには違う楽しみ方もできるかもしれませんものね!」
「はい。なのであなたさん、一緒にこの、浮き輪とやらを使いましょう」
「用意周到だ…」
「ふふ、割となんでも揃っているんですよ、ここには」
「なんのために使っているのですか?」
「主にリフレッシュ、ですかね…たまに手入れに来るくらいで、寮生からの利用申請もほとんどありませんが」
「勿体無いですね〜!こんなに素敵なのに!」
小島の淵まで歩いて行くと、ビーチのように砂浜があり、そこから夜の海へチャプンと足をつけてみた。
一歩、二歩、三…と踏み出した足は、もう陸を踏むことはなかった。深い。当たり前だけれど、私が知っている砂浜のように、陸が続いていることはなく、この先は深い深い海のようだ。
「砂浜はありますが、ここは海のど真ん中なので一歩先には突然深くなります。しっかり浮き輪につかまって」
「わかりました…」
わかっていても怖いものは怖いのでどうしようかと足踏みをしていると、頭の上から苦笑が降ってきて、その次の瞬間、失礼しますね、との言葉とともに、私の身体は宙に浮いた。
「!!」
抱き上げられたと気づいた時にはすでに海の上に浮いており、びっくりする暇もない。
浮き輪を椅子のようにして、真ん中にお尻を落としてプカリプカリ。
私を囲うようにして腕を伸ばしたジェイド先輩は、それにつかまって浮いていた。
「ジェ、イド、先輩っ!?い、いきなり、何、をっ」
「いえ、あなたさん一人で夜の海に身を投げ出すのは勇気がいるかと思いまして」
「っそれでも!!言ってからしてくださいよっ!!」
「ふふっ、それは申し訳ありませんでした。でも、少しくらいスリルがあっても良いでしょう?」
「んもう!!」
「怒らないでください、可愛い顔が台無しですよ」
「っ…!」
クスクス、と楽しそうな声で笑った先輩の顔は、暗くてよく見えないけれど、いつものハの字型の笑い方ではなさそうだ。
そのことに少しだけ安心する。呆れられたり、困らせたりしたわけじゃない。楽しんでくれているのだ、と。
しかしながら、浮き輪を隔てている、水着をきている、とはいえ、この近さ、この暗さで二人きり。
驚きや恐怖が薄れてくると、なんだか恥ずかしい気持ちがむくむくと育ってきて、狭い浮き輪の中もぞもぞと腰の位置を変えたら、それにつられてジェイド先輩の顔はさらに私に近づいてくる。
なぜ?少しだけ離れたいだけなのに。これでは心臓の音が聞こえてしまう。これ以上近づくのはやめて。
そう思った時、自分の水着に違和感を覚える。正確には、お尻を隠している薄い布の、紐に。
何かたるんでいるような。さっきまでぴっちりと私のヒップラインを隠していてくれたはずなのに。
それに心なしか、ジェイド先輩の顔つきが。いつもよりも楽しそう?
「どうかしましたか?」
「い、いえ、何も」
「そうですか。ならばもう少し星を眺めながら波に揺られてみましょうか」
「え?!」
「何か不都合でも?」
「あっ、いえ、その」
そう言っている間にも、違和感は大きくなってくる。
もはや水着が。
「っ!!」
解けた。これは完全に解けた。
そう感じて、お尻に手を伸ばそうとした時にはすでに遅かった。
私の指は、水着をつかむことはなかった。
真っ暗な海に消えていった私の水着。真っ暗な水の中に隠れたままの私のお尻。
この状況で、さぁそろそろ上がりましょうか、なんて言われたら一巻の終わりーーー
「さぁ、そろそろ上がりましょうか。あまり海の中にいると疲れてしまいますしね」
「やっぱり!!」
「あなたさん、先ほどからどうしたのですか?やはり早めに」
「い、いえ!!ちょっと待って、待ってくださ…!!」
ざぱ。
慈悲の心も何もなく、海から一思いに上がったジェイド先輩と私。
「ダメーーーっ!!」
ジェイド先輩の顔を隠すことしか対応策を思いつかず、私は必死でその瞳を覆う。
唯一の救いはお姫様抱っこをされていたために手が届いたことだろう。
「ジェイド先輩!!ダメです!!わ、私、私っ、水着がっ」
「ふ」
「!?」
「ふふ…ふふっ…!!」
「ジェ、イド、せんぱ、い?」
「あなたさんの探し物はこちらですか?」
目隠しされたまま、先輩に差し出されたのは、私の水着であった。
なんで?なんでこれがジェイド先輩の手に?だって私は。私が履いていて。
そこまで考えて、あの時の「楽しそう」な顔が目に浮かぶ。
「ま、さか」
「さぁ、どうでしょう?」
「うそ…!!先輩の変態!!ばか!!えっち!!」
「心外ですね。僕はあなたさんの水着を『拾った』だけですよ?よかったです、流されてしまう前に手に取れて」
「な…っ、そ、なそんな、まさか、だって、」
「まさか、僕が、解いた、なんて、疑っているのですか?」
にこり、三日月のような口だけが私の位置からは見える。
きっとこの目隠しをとったら、ジェイド先輩はそれは嬉しそうに瞳を細めているんだろう。
「そろそろこの目隠しをとっていただけませんか?水着はお返ししますから」
「だ、だ、だって、見えちゃう、から、ダメ、です!!」
「何を今更」
「い、今更って、それとこれとは話が別で!!」
「そもそも、ここには僕たち二人だけなのですから」
もとより、そういうつもりで連れてきたのですから、と、つぶやいた先輩は、目隠しをされているにも関わらず、的確に休憩所の方へ歩を進めた。そちらを見やれば、ご丁寧に、寝転がれるような簡易マットレスも敷いてあり、一気に身体の熱が上昇する。あまりの用意周到さに、つい手が自分の口を覆ってしまった。もちろん、ジェイド先輩の目隠しはなくなって。
「ジェイド先輩、まさか、」
「そうです、そのまさかですよ。脱ぐ、という手間も省けましたから」
そのまま休憩所に乗り上げて、マットレスに転がされた私。その上に跨る、ジェイド先輩。
そよそよと吹いた海風が、薄手のカーテンと先輩の髪を揺らす。
月明かりとランタンの灯りは、私たちを優しく照らした。
「あなたさんは、男性が女性に着る物を贈る意味をご存知ですか?」
「…?」
「脱がせたいから贈る、ということだそうですよ」
「っ!?」
「あなたさんに似合う水着を探して着せたのはいいのですが、やはり脱がせるのは僕でないと」
「やっぱり、紐を解いたのは、先輩、ですね?!信じられない!!う、海の、中で、もう見つからないかと、」
「ご心配なく。もしも本当になくなってしまったら、また新しい物を贈って、脱がせるまでですので。…言いたいことはそれだけですか?」
近づいてくる先輩のオッドアイは、私に、瞳を閉じろと囁いた。
魔法なんか使われなくたって、私はジェイド先輩の思うがまま。
「さぁ、怖がらず、僕を受け入れてください」
「っ…怖くなんて、ありません…ッ」
漣の音を聞きながら、私は今日も、先輩に溺れる。