未入力の場合は、あなた、が設定されます
other
名前変換設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「今日はこれをクルーウェル先生に届けるだけで一日分の業務としましょう!私、優しいので」
そんな学園長の一言で、本日のアルバイトはクルーウェル先生への書類お届けなった。
NRCの雑用係とは私に付けられた役職名であるが、この「雑用」の幅はとても広い。
掃除、植物園の管理、届け物、果ては各先生への言伝まで。決してお給料に見合っているわけではないけれど、金銭が厳しいので仕方なくお断りせずに請け負っているところだ。しかし今日は、そんな仕事を嫌々でも賜ったおかげで、良いものに巡り合えてしまった。
「あ、デュースだー!」
「あれ、あなたじゃないか。どうしたこんなところで」
「私はアルバイト中だよ!ていうかねぇ!その格好!!」
目指したクルーウェル先生の教官室から出てきたのは、デュースだった。が、彼がまとっているのは、いつも着ている制服や寮服、体操着とは違って、何やら青色でキラキラのひらひらした布だ。
「とっても綺麗だねその服!」
「これか?これはな、星送りの時に着る衣装だ」
「星送り?」
「そうだ。毎年やってる行事らしいぞ。なんかこう…詳しいことはわからないんだが、今回はイグニハイドのシュラウド先輩と僕と、後何人かが中心で色々やるみたいだ」
「よくわからないけど色々って…デュースらしいや」
「あっ、バカにしたな?いいぞ、待ってろ…さっき資料をもらったからそれを見れば、」
「ああ!ダメダメ!そういうのはちゃんと秘密にしておかなくっちゃ!」
ね!と悪戯に告げれば、「そ、そうか」とドギマギした返事が返ってきた。
全く。自分のことになると秘密主義なくせに、頼まれごとなんかはすぐに人に話そうとするんだから。今はデュースがこんな素敵な衣装を着て、この行事の代表で何かを大役を任されているということの方が大事だというのに。
「今日はクルーウェル先生と衣装合わせでもしてるの?」
「そうだ。衣装合わせのついでに、センザイシャシン?の撮影をしている」
「宣材写真!え!?デュースどこかのオーディションに出るの?!」
「オーディション?いや、違う。写真は、次年度の新入生に渡すパンフレットに使うらしい」
「あっ、そういうことかぁ…!でもすごい!!じゃあ来年の入学生はみんなデュースの虜だ!!かっこいいね!!」
「俺の、トリコ…?」
「そうだよ、こんなに似合ってるんだもん!下級生の憧れの先輩になれるね!前に見せてもらった免許の写真とは大違いだよっ」
「っ…あれは、忘れてくれ…というか、みんなあんな感じになるんだ…ああいう写真は」
「え〜?本当に〜?」
おどけて見せれば、本当だ、と、少し膨れるデュースの顔が可愛かった。
「でもさ、その、星送り?の行事、楽しみだな!どんなことをするのかも楽しみだけど、それよりもデュースが頑張る姿が観れるのが楽しみ!たくさん写真やムービー撮ってもらってさ、お母さんに見せれるといいねっ」
「あぁ…優等生だからってことではないけど、せっかくこうやって選ばれたからにはな。しっかりこなそうと思う。母さんが喜んでくれるといいんだが」
「絶対喜んでくれるよ!…うーん、でも行事内容か…星送り…星を送るってことは…見送るってことでいいのかなぁ。そうすると、もしかしたらたくさんお星様を降るのかもしれないね!」
「星を降らせる?」
「うん!流れ星を降らせる行事だったら、お願い事だってなんだって叶うよ、きっと!そんな素敵な行事だったらいいな〜。小さい頃は流れ星を掴もうとして必死に追いかけたりしたなぁ…。星を掴むなんて、そんなことできるわけないのにね」
しみじみと昔を思い出せば、小さな頃はよく星を追いかけて走っては転んで…そんなことを繰り返していたなぁ。
デュースが星を降らせてくれるなら、なんだって叶うような気がするのはなんでだろう。
流れた星たちを星たちの国に返す、とかそういうファンタジックな行事だったら、テンションが上がるなぁ、と一人妄想に耽っていると、ふと、デュースが言った。
「あなたは星を掴みたいのか」
「ん?あっ、小さい頃の話だよ〜。今はできないってわかってるしそんなことはしな」
「わかった、僕があなたのために流れ星を捕まえてくる」
「え?」
「大丈夫だ、マジカルホイールで全力疾走すれば、落ちた場所くらいは特定できるはずだ」
そんなことをいって、そのまま出口の方へ歩いていくものだから、デュースの背中に半ば体当たりするように抱きついて、ぎゅうと進行方向と逆に全身全霊で引っ張った。
「待って待って待って!!そのお洋服をなびかせてマジカルホイールに乗ったら引っかかって破けるっていうかクルーウェル先生に怒られちゃうっていうか星は普通に地面に落ちてたりしないから!!」
「そうなのか!?」
「そうだよ!!流れ星は地面に落ちたりしないから!!大気中で星屑が燃え尽きてって…ってこの前習ったじゃない!!もー…」
相変わらず一直線というかなんというか。そこがデュースのいいところではあるんだけれど、先生を怒らせると後が怖いのでしっかりと止めないと。「はぁ危なかった」と一息つくと、困ったような声が私の耳に届いた。
「あ、あの、さ、あなた、ちょっと」
「ん?」
「もう、わかったから、その、離れてもらえないか、くっつきすぎ、だ」
「あっ!ごめんね!?」
デュースは私とのスキンシップがあまり得意ではないのに、つい全力で抱きついてしまった。普段は手を握る程度でも顔を真っ赤にしてしまうから気をつけていたのだけれど、こういう時は忘れがちだ。
パッと距離をとって謝れば、気にしないでくれ、と小さな声で返された。しばしの沈黙。
「あのさ」
そっと、囁くようにして呟かれた言葉は、それだけで私の心をさらっていく。
「抱きしめるっていうのは、僕から、したい。だから、その、二人きりの時に、力一杯、させて欲しいんだ。…だめ、か?」
やっぱり、私のお願いを叶えてくれるのはデュースしかいないな、と思ったことは、その星型のステッキで魔法をかけられるまで、秘密にしておこう。
だから今、私からする返事は、一つだけ。
「うん、じゃあ星送りの行事が終わったら、オンボロ寮で待ってるね」
そんな学園長の一言で、本日のアルバイトはクルーウェル先生への書類お届けなった。
NRCの雑用係とは私に付けられた役職名であるが、この「雑用」の幅はとても広い。
掃除、植物園の管理、届け物、果ては各先生への言伝まで。決してお給料に見合っているわけではないけれど、金銭が厳しいので仕方なくお断りせずに請け負っているところだ。しかし今日は、そんな仕事を嫌々でも賜ったおかげで、良いものに巡り合えてしまった。
「あ、デュースだー!」
「あれ、あなたじゃないか。どうしたこんなところで」
「私はアルバイト中だよ!ていうかねぇ!その格好!!」
目指したクルーウェル先生の教官室から出てきたのは、デュースだった。が、彼がまとっているのは、いつも着ている制服や寮服、体操着とは違って、何やら青色でキラキラのひらひらした布だ。
「とっても綺麗だねその服!」
「これか?これはな、星送りの時に着る衣装だ」
「星送り?」
「そうだ。毎年やってる行事らしいぞ。なんかこう…詳しいことはわからないんだが、今回はイグニハイドのシュラウド先輩と僕と、後何人かが中心で色々やるみたいだ」
「よくわからないけど色々って…デュースらしいや」
「あっ、バカにしたな?いいぞ、待ってろ…さっき資料をもらったからそれを見れば、」
「ああ!ダメダメ!そういうのはちゃんと秘密にしておかなくっちゃ!」
ね!と悪戯に告げれば、「そ、そうか」とドギマギした返事が返ってきた。
全く。自分のことになると秘密主義なくせに、頼まれごとなんかはすぐに人に話そうとするんだから。今はデュースがこんな素敵な衣装を着て、この行事の代表で何かを大役を任されているということの方が大事だというのに。
「今日はクルーウェル先生と衣装合わせでもしてるの?」
「そうだ。衣装合わせのついでに、センザイシャシン?の撮影をしている」
「宣材写真!え!?デュースどこかのオーディションに出るの?!」
「オーディション?いや、違う。写真は、次年度の新入生に渡すパンフレットに使うらしい」
「あっ、そういうことかぁ…!でもすごい!!じゃあ来年の入学生はみんなデュースの虜だ!!かっこいいね!!」
「俺の、トリコ…?」
「そうだよ、こんなに似合ってるんだもん!下級生の憧れの先輩になれるね!前に見せてもらった免許の写真とは大違いだよっ」
「っ…あれは、忘れてくれ…というか、みんなあんな感じになるんだ…ああいう写真は」
「え〜?本当に〜?」
おどけて見せれば、本当だ、と、少し膨れるデュースの顔が可愛かった。
「でもさ、その、星送り?の行事、楽しみだな!どんなことをするのかも楽しみだけど、それよりもデュースが頑張る姿が観れるのが楽しみ!たくさん写真やムービー撮ってもらってさ、お母さんに見せれるといいねっ」
「あぁ…優等生だからってことではないけど、せっかくこうやって選ばれたからにはな。しっかりこなそうと思う。母さんが喜んでくれるといいんだが」
「絶対喜んでくれるよ!…うーん、でも行事内容か…星送り…星を送るってことは…見送るってことでいいのかなぁ。そうすると、もしかしたらたくさんお星様を降るのかもしれないね!」
「星を降らせる?」
「うん!流れ星を降らせる行事だったら、お願い事だってなんだって叶うよ、きっと!そんな素敵な行事だったらいいな〜。小さい頃は流れ星を掴もうとして必死に追いかけたりしたなぁ…。星を掴むなんて、そんなことできるわけないのにね」
しみじみと昔を思い出せば、小さな頃はよく星を追いかけて走っては転んで…そんなことを繰り返していたなぁ。
デュースが星を降らせてくれるなら、なんだって叶うような気がするのはなんでだろう。
流れた星たちを星たちの国に返す、とかそういうファンタジックな行事だったら、テンションが上がるなぁ、と一人妄想に耽っていると、ふと、デュースが言った。
「あなたは星を掴みたいのか」
「ん?あっ、小さい頃の話だよ〜。今はできないってわかってるしそんなことはしな」
「わかった、僕があなたのために流れ星を捕まえてくる」
「え?」
「大丈夫だ、マジカルホイールで全力疾走すれば、落ちた場所くらいは特定できるはずだ」
そんなことをいって、そのまま出口の方へ歩いていくものだから、デュースの背中に半ば体当たりするように抱きついて、ぎゅうと進行方向と逆に全身全霊で引っ張った。
「待って待って待って!!そのお洋服をなびかせてマジカルホイールに乗ったら引っかかって破けるっていうかクルーウェル先生に怒られちゃうっていうか星は普通に地面に落ちてたりしないから!!」
「そうなのか!?」
「そうだよ!!流れ星は地面に落ちたりしないから!!大気中で星屑が燃え尽きてって…ってこの前習ったじゃない!!もー…」
相変わらず一直線というかなんというか。そこがデュースのいいところではあるんだけれど、先生を怒らせると後が怖いのでしっかりと止めないと。「はぁ危なかった」と一息つくと、困ったような声が私の耳に届いた。
「あ、あの、さ、あなた、ちょっと」
「ん?」
「もう、わかったから、その、離れてもらえないか、くっつきすぎ、だ」
「あっ!ごめんね!?」
デュースは私とのスキンシップがあまり得意ではないのに、つい全力で抱きついてしまった。普段は手を握る程度でも顔を真っ赤にしてしまうから気をつけていたのだけれど、こういう時は忘れがちだ。
パッと距離をとって謝れば、気にしないでくれ、と小さな声で返された。しばしの沈黙。
「あのさ」
そっと、囁くようにして呟かれた言葉は、それだけで私の心をさらっていく。
「抱きしめるっていうのは、僕から、したい。だから、その、二人きりの時に、力一杯、させて欲しいんだ。…だめ、か?」
やっぱり、私のお願いを叶えてくれるのはデュースしかいないな、と思ったことは、その星型のステッキで魔法をかけられるまで、秘密にしておこう。
だから今、私からする返事は、一つだけ。
「うん、じゃあ星送りの行事が終わったら、オンボロ寮で待ってるね」