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私の国には「桜」っていう木があってね。春になると、みんなその木の下で食べたり飲んだりどんちゃん騒ぎするんだよ!楽しい、よ、とっても…。
そう言った監督生の顔は、笑っているのに、どこか悲しそうだった。
「あなた!」
「おはようデュース!どうしたの?」
「明日はっ、休みだなっ!」
「ん?うん、そだね、土曜日だからね」
「っ、」
「…えっと、どこか、行く?」
「!!」
あなたと付き合うようになってしばらく経つ。
けれど、出発がマブダチだったせいか「二人で何かをしよう」と誘うとき、僕の口からはどうにもうまく言葉が発せないことがよくあった。そんな時でもあなたは僕の一挙一動から言いたいことを読み取ってくれて、それは情けなくもありこの上なく嬉しいことだった。
「あのさ、今夜!」
「今夜?」
「明日は休みだから、今夜少しだけ僕に付いてきてくれないか?」
「う、ん、いいけど、どこか行くなら教えて欲しいなーなんて」
「あ…それ、は、…内緒じゃダメかな」
「えっと、行き先は言いたくないってこと?」
「…できれば、今は」
変に思われただろうか。勘ぐられただろうか。
そんなことを考えるくらいなら言えばいいのだろうけど、これだけは譲れない。
僕はあなたを喜ばせたいから、喜ばせるなら、最高の形でプレゼントしたいから。
男は黙って態度で示せ
とは、ワルをしてた頃に教えてもらったことではあっても、今でもかっこいいと思える言葉の一つだ。
「…」
「だめ、か?」
「デュースの頼みを私が断ると思う?もちろんいいよ!でも、外に出るのか中にいるのかでは服装がね、若干変わるから、できたらそれだけでも教えてもらえないかな」
「ぼ、僕としたことがそんなことにも気づかないなんて、すまない!外に出る。マジカルホイールを借りれたから、少しだけ散歩に付き合って欲しいんだ、あ。」
「ご、ごめん、言わせちゃったね…?」
「あ、ああ、気に、するな」
少しネタバレをしてしまって、凹んだが、自爆というものは仕方がない。
全くこれだから抜けてるだの何だのと言われてからかわれてしまうんだ。
一生懸命やったって空回りするのが僕ということらしい。
「デュース、ごめんね、私が余計なこと聞いたから。でも、マジカルホイールに乗せてくれるんだね!とっても楽しみ!秘密のお誘いじゃなくても、とっても楽しみだよ。ありがとう。手配、大変だったんじゃない?」
「大変なわけない!あなたが前に乗りたいと言ってから随分時間がかかってしまったから、むしろごめんな」
「覚えててくれてありがとうね。明日…じゃなくて、今夜、か!楽しみにしてるね?」
「おう!夜風を切って走るのは最高に気持ちがいいから!あ、少し寒いかもしれないから、厚着してきてくれ」
「了解!」
にこ、と笑ったその笑顔を見るだけでこんなにも幸せな気持ちになれるようになったのはいつからだったかな、と考えた矢先に、エースが追いついてきて、ジャックの背中も見えて。
いつも通りの日常が始まる。
日常でない夜に、想いを馳せながら。
*
健全なお付き合いをしている男女が出かけられるギリギリのラインといえば、19時が限界じゃないかと言ったら、エースに大爆笑されたが、その19時。あなたを迎えてマジカルホイールにまたがった。
久しぶりに乗るそれだったが、身体は風を切る感覚を覚えていて、胸の高鳴りが収まらない。
「あなた、大丈夫か!?」
「うん!!全然大丈夫!!すんごい気持ちいい!!それに夜景が綺麗!!」
「よかった!!しっかり掴まっててくれよ!!」
「わかったー!!」
けれどそれ以上に胸を踊らせるのは、ピタリと背中にくっついているあなたの存在だ。
一人でもなければ、あの頃の僕とも違って制限速度は守っているとはいえ、歩くのとも箒とも違うスピードで走るマジカルホイールに乗っている以上、僕たちの距離がゼロになることは避けられない。
ちょっとの緊張も表に出さないように声をかければ、メットで表情が見えないけれど、楽しんでいてくれているような声色が返ってきて、とりあえずはホッとした。
このまま何も考えずに目的地まで行ってしまおう。そうでなければ僕がキャパオーバーしてしまう。
そうしてマジカルホイールを走らせること数十分。
着いたそこにあったのは、一本の大きな木。それは薄く色付いたの小さな花をたくさんつけていた。
マジカメ好きのケイト先輩に頼った甲斐があったというものだ。
その木を目に止めたあなたは、大きな目をさらにくるりと見開いて、嘘…、と小さく呟いた。
「あなたから、サクラ?の話を聞いたときに、そういえば似たようなものがこっちにもあったなと思ってさ。多分全く同じものじゃないかもしれないんだが、少しでも…って、え?!」
「っ…」
「ど、どうした、あなた、ごめん、えっと、何か」
「ち、ちが、ごめ、ごめんね…ッまさか、こっちで見れると、思ってなくてっ」
「…!」
「デュース、あ、ありがとうっ、私、覚えていて、くれただけでも、嬉しいっ…のにっ、こんな」
何を言っても止まりそうにないあなたの涙を見るのが辛くて、そっとその肩を引き寄せて、抱きしめて。
その目尻に唇を寄せて。それから鼻先にも一度キスをした。そうしてぎゅっとあなたを抱きしめる。
いつもはこんなこと恥ずかしくてできたものじゃないのに、今日はなぜか素直に身体が動いた。
「な、泣くな、ごめん、泣かせるつもりはなかったんだっ、笑ってくれると、思って、」
「!」
「寂しかったら、言ってくれ、嫌なことがあっても、教えて欲しい。僕は、あなたを幸せにしたい」
「…ふ、ふふっ…」
「え?」
「ふはっ…あははっ!」
今度は楽しそうな笑い声が聞こえて、訳が分からず身体を離してあなたの顔を覗き込めば「また、プロポーズ」と囁くように言われて、言葉の意味を理解した途端、ボッと顔が火をふいた。
「ぼ、僕は、またッ」
「デュース、リドル先輩の髪の毛みたい」
「っ、み、見ないでくれっ、また間違えた…ごめんっ」
顔を腕で隠そうとした刹那、今度はあなたから抱きつかれて、びくりと硬直するしかない。
「何度でも、言ってよ。言ってもらえたらそれだけで、幸せになれるから、ね」
目の端にひらひらと舞い落ちてきた薄桃色の花弁がやけに鮮明に脳裏に焼き付く。
幻想的な空気に誘われて、このまま一歩先へ進んでもいいか、なんて思いもしたが。
そんな野暮なことでも聞いた方がいいのか悪いのか、僕にはまだ分からなかった。
そう言った監督生の顔は、笑っているのに、どこか悲しそうだった。
「あなた!」
「おはようデュース!どうしたの?」
「明日はっ、休みだなっ!」
「ん?うん、そだね、土曜日だからね」
「っ、」
「…えっと、どこか、行く?」
「!!」
あなたと付き合うようになってしばらく経つ。
けれど、出発がマブダチだったせいか「二人で何かをしよう」と誘うとき、僕の口からはどうにもうまく言葉が発せないことがよくあった。そんな時でもあなたは僕の一挙一動から言いたいことを読み取ってくれて、それは情けなくもありこの上なく嬉しいことだった。
「あのさ、今夜!」
「今夜?」
「明日は休みだから、今夜少しだけ僕に付いてきてくれないか?」
「う、ん、いいけど、どこか行くなら教えて欲しいなーなんて」
「あ…それ、は、…内緒じゃダメかな」
「えっと、行き先は言いたくないってこと?」
「…できれば、今は」
変に思われただろうか。勘ぐられただろうか。
そんなことを考えるくらいなら言えばいいのだろうけど、これだけは譲れない。
僕はあなたを喜ばせたいから、喜ばせるなら、最高の形でプレゼントしたいから。
男は黙って態度で示せ
とは、ワルをしてた頃に教えてもらったことではあっても、今でもかっこいいと思える言葉の一つだ。
「…」
「だめ、か?」
「デュースの頼みを私が断ると思う?もちろんいいよ!でも、外に出るのか中にいるのかでは服装がね、若干変わるから、できたらそれだけでも教えてもらえないかな」
「ぼ、僕としたことがそんなことにも気づかないなんて、すまない!外に出る。マジカルホイールを借りれたから、少しだけ散歩に付き合って欲しいんだ、あ。」
「ご、ごめん、言わせちゃったね…?」
「あ、ああ、気に、するな」
少しネタバレをしてしまって、凹んだが、自爆というものは仕方がない。
全くこれだから抜けてるだの何だのと言われてからかわれてしまうんだ。
一生懸命やったって空回りするのが僕ということらしい。
「デュース、ごめんね、私が余計なこと聞いたから。でも、マジカルホイールに乗せてくれるんだね!とっても楽しみ!秘密のお誘いじゃなくても、とっても楽しみだよ。ありがとう。手配、大変だったんじゃない?」
「大変なわけない!あなたが前に乗りたいと言ってから随分時間がかかってしまったから、むしろごめんな」
「覚えててくれてありがとうね。明日…じゃなくて、今夜、か!楽しみにしてるね?」
「おう!夜風を切って走るのは最高に気持ちがいいから!あ、少し寒いかもしれないから、厚着してきてくれ」
「了解!」
にこ、と笑ったその笑顔を見るだけでこんなにも幸せな気持ちになれるようになったのはいつからだったかな、と考えた矢先に、エースが追いついてきて、ジャックの背中も見えて。
いつも通りの日常が始まる。
日常でない夜に、想いを馳せながら。
*
健全なお付き合いをしている男女が出かけられるギリギリのラインといえば、19時が限界じゃないかと言ったら、エースに大爆笑されたが、その19時。あなたを迎えてマジカルホイールにまたがった。
久しぶりに乗るそれだったが、身体は風を切る感覚を覚えていて、胸の高鳴りが収まらない。
「あなた、大丈夫か!?」
「うん!!全然大丈夫!!すんごい気持ちいい!!それに夜景が綺麗!!」
「よかった!!しっかり掴まっててくれよ!!」
「わかったー!!」
けれどそれ以上に胸を踊らせるのは、ピタリと背中にくっついているあなたの存在だ。
一人でもなければ、あの頃の僕とも違って制限速度は守っているとはいえ、歩くのとも箒とも違うスピードで走るマジカルホイールに乗っている以上、僕たちの距離がゼロになることは避けられない。
ちょっとの緊張も表に出さないように声をかければ、メットで表情が見えないけれど、楽しんでいてくれているような声色が返ってきて、とりあえずはホッとした。
このまま何も考えずに目的地まで行ってしまおう。そうでなければ僕がキャパオーバーしてしまう。
そうしてマジカルホイールを走らせること数十分。
着いたそこにあったのは、一本の大きな木。それは薄く色付いたの小さな花をたくさんつけていた。
マジカメ好きのケイト先輩に頼った甲斐があったというものだ。
その木を目に止めたあなたは、大きな目をさらにくるりと見開いて、嘘…、と小さく呟いた。
「あなたから、サクラ?の話を聞いたときに、そういえば似たようなものがこっちにもあったなと思ってさ。多分全く同じものじゃないかもしれないんだが、少しでも…って、え?!」
「っ…」
「ど、どうした、あなた、ごめん、えっと、何か」
「ち、ちが、ごめ、ごめんね…ッまさか、こっちで見れると、思ってなくてっ」
「…!」
「デュース、あ、ありがとうっ、私、覚えていて、くれただけでも、嬉しいっ…のにっ、こんな」
何を言っても止まりそうにないあなたの涙を見るのが辛くて、そっとその肩を引き寄せて、抱きしめて。
その目尻に唇を寄せて。それから鼻先にも一度キスをした。そうしてぎゅっとあなたを抱きしめる。
いつもはこんなこと恥ずかしくてできたものじゃないのに、今日はなぜか素直に身体が動いた。
「な、泣くな、ごめん、泣かせるつもりはなかったんだっ、笑ってくれると、思って、」
「!」
「寂しかったら、言ってくれ、嫌なことがあっても、教えて欲しい。僕は、あなたを幸せにしたい」
「…ふ、ふふっ…」
「え?」
「ふはっ…あははっ!」
今度は楽しそうな笑い声が聞こえて、訳が分からず身体を離してあなたの顔を覗き込めば「また、プロポーズ」と囁くように言われて、言葉の意味を理解した途端、ボッと顔が火をふいた。
「ぼ、僕は、またッ」
「デュース、リドル先輩の髪の毛みたい」
「っ、み、見ないでくれっ、また間違えた…ごめんっ」
顔を腕で隠そうとした刹那、今度はあなたから抱きつかれて、びくりと硬直するしかない。
「何度でも、言ってよ。言ってもらえたらそれだけで、幸せになれるから、ね」
目の端にひらひらと舞い落ちてきた薄桃色の花弁がやけに鮮明に脳裏に焼き付く。
幻想的な空気に誘われて、このまま一歩先へ進んでもいいか、なんて思いもしたが。
そんな野暮なことでも聞いた方がいいのか悪いのか、僕にはまだ分からなかった。