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Azul
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ふと意識が引き上げられた紺碧の中。
身体がふわふわと波間を漂っている、小さな頃にもよく味わった浮遊感に見舞われた。
海で遊んだ後は、必ずこんな風に布団の中でも浮かんだり沈んだり、身体が波に揺らぐ不思議な感覚を味わったものだった。
もう一度目蓋を閉じて、柔らかい波の緒を感じる。いや、感じようとしたはずだった。
しかしながら、思い出されたのは、海にまつわるような音ではなくて、艶のある息遣いと、それから熱い吐息。
ハッと覚醒した意識で、ゆっくりと視線を横に向けると、そこには気持ち良さそうに眠る端正な顔があった。
波に、揺られたのではなかった。
今宵私を揺さぶっていたのは、この麗しの君である。
普段は真っ白な肌を薄く紅に染めて。甘く切なく私の名を呼ぶその声がまだ耳の奥に燻っている。
身体を反転させてから、キュ、と小さく丸まった。
彼の、アズール先輩の顔を見つめていれば、むくむくと湧き上がるのはイタズラ心。
夜はあれだけいいようにされるのだから、彼が寝ている今、少しくらいやり返したってバチは当たらないだろう。
でも念のため。
「あずーるせんぱーい…?」
本当に眠っているかの最終確認は怠らない。最後まで手を抜かずに。詰めが肝心。
私に甘い先輩のことだから、呼んだらきっと起きてくれるはず。それでも返事がないと言うことは、深く眠っているに違いない。
「よし」
まずは無防備に投げ出されているその手。私の身体に優しく触れて、安心させてくれる細い指に自分の指を重ねてみる。
私より一回りほど大きな手を取るだけで、トクトクと心臓の音が早くなるのだから、私も大概恋する乙女なのかもしれない。
す、と、今度は空いている方の手で、腕から鎖骨までをなぞってみる。
本当に運動が苦手なのか?と疑問を抱くほど、具合よく引き締まって薄っすら筋肉がついた身体に思わず感嘆の声が漏れた。
「はぁ、すごい」
胸筋だってしっかりあるし、一対一で向き合えば、背だって高いし肩幅も割とある。
いつもそばにリーチ兄弟やイデア先輩などなど背の高い人が控えているから分かりにくいが、アズール先輩はしっかりと男の人なのだ。
ととと、と指を鎖骨に戻せば、左側に流れている長めの髪が手首を掠めてくすぐったかった。
髪へ仕返し、と言うのも変な話だが、柔らかいグレーをクルンと指に巻きつけて遊んでみる。
どこもかしこも完璧なんて、ずるい。努力の人とはよく言ったものだけれど、素材自体を最高に仕上げてくるのも努力の一部なんだろうか。
それだったら、魔法なんてこの人には必要ないのになぁ、努力でなんでもできちゃうんだから。
ずるいな、と、すごいな、の気持ちを指先に託して、滑らかな頬をぷにと突いた次の瞬間だった。
重ねていた掌をぎゅっと握り返されて、それから、横向きになっていた身体はまた元の位置に反転させられる。
「!」
「貴女ね…」
「えっ、アレッ」
少ししかめっ面で、それでいて朱色の頬で私を見下ろすのは、先ほどまで私にいいように触られていたアズール先輩で間違いない。
「い、いつから、起きて?」
「…名前を呼ばれた時から、と言ったら?」
「うそ!」
そんなアズール先輩は、はぁああと大げさなため息をついてから、キ、とブルーグレーの瞳で私を捉えた。
「逆に聞きますけれど、どうして僕が起きていないと思ったのですか」
「だって…起きてたら、いつもの調子で…抱きしめてくれたり…ちゃんと反応してくれるかなって…」
「僕だって…たまには、甘えたり、甘えられたり、いたずらしたりも、したいです、よ?」
「!」
「いつもは皆の手前、そういったことはしませんけれど」
こうして二人きりの時くらい、と、ポソポソと本当に小さく呟かれた声ですらも、私の都合の良い耳は一言も逃さず捉えてしまう。
なんて可愛い独白なの。私の胸はいとも簡単にキュンッと鷲掴みにされてしまった。
衝動に任せて伸ばした腕でアズール先輩を引き寄せて、その首筋にすり、と鼻先を擦り付ける。
「ッ!」
「アズール先輩、今日はどんな気分ですか」
「は?」
「甘えたり、甘えられたり、いたずらしたり、って、今日はどんなことをしたいですか」
「、え?」
「教えてください、今日は、私が。先輩のお願い事、叶えます」
「何を」
「対価は、そうですね、アズール先輩からの目一杯の愛で、どうでしょうか」
そこまで言って、少しだけ力を緩めたら、額と額がくっつくくらいの近さで、視線が絡まった。
「はぁ…僕に、貴女からの契約を受けろ、と?」
「たまにはこう言うのも、よくないですか?」
「ふは…ッ」
「契約書は、私には出せませんけど…。この身体のどこにでも、サインしてもらって構いませんよ」
「そんな大口叩いていられるのも、今のうちですよ?お願い叶えます、なんて大雑把な内容では、契約する側に有利な内容だ」
「もとより、そのつもりですから」
ふふ、と私が口元を緩めたら、アズール先輩はニヤリ、シニカルに笑った。
この蕩けるような甘い逢瀬、潮時はいつなのかしら。
願わくばずっと続けばいいのに、との言葉は、パクリと食まれたアズール先輩の咥内に飲み込まれてしまった。
身体がふわふわと波間を漂っている、小さな頃にもよく味わった浮遊感に見舞われた。
海で遊んだ後は、必ずこんな風に布団の中でも浮かんだり沈んだり、身体が波に揺らぐ不思議な感覚を味わったものだった。
もう一度目蓋を閉じて、柔らかい波の緒を感じる。いや、感じようとしたはずだった。
しかしながら、思い出されたのは、海にまつわるような音ではなくて、艶のある息遣いと、それから熱い吐息。
ハッと覚醒した意識で、ゆっくりと視線を横に向けると、そこには気持ち良さそうに眠る端正な顔があった。
波に、揺られたのではなかった。
今宵私を揺さぶっていたのは、この麗しの君である。
普段は真っ白な肌を薄く紅に染めて。甘く切なく私の名を呼ぶその声がまだ耳の奥に燻っている。
身体を反転させてから、キュ、と小さく丸まった。
彼の、アズール先輩の顔を見つめていれば、むくむくと湧き上がるのはイタズラ心。
夜はあれだけいいようにされるのだから、彼が寝ている今、少しくらいやり返したってバチは当たらないだろう。
でも念のため。
「あずーるせんぱーい…?」
本当に眠っているかの最終確認は怠らない。最後まで手を抜かずに。詰めが肝心。
私に甘い先輩のことだから、呼んだらきっと起きてくれるはず。それでも返事がないと言うことは、深く眠っているに違いない。
「よし」
まずは無防備に投げ出されているその手。私の身体に優しく触れて、安心させてくれる細い指に自分の指を重ねてみる。
私より一回りほど大きな手を取るだけで、トクトクと心臓の音が早くなるのだから、私も大概恋する乙女なのかもしれない。
す、と、今度は空いている方の手で、腕から鎖骨までをなぞってみる。
本当に運動が苦手なのか?と疑問を抱くほど、具合よく引き締まって薄っすら筋肉がついた身体に思わず感嘆の声が漏れた。
「はぁ、すごい」
胸筋だってしっかりあるし、一対一で向き合えば、背だって高いし肩幅も割とある。
いつもそばにリーチ兄弟やイデア先輩などなど背の高い人が控えているから分かりにくいが、アズール先輩はしっかりと男の人なのだ。
ととと、と指を鎖骨に戻せば、左側に流れている長めの髪が手首を掠めてくすぐったかった。
髪へ仕返し、と言うのも変な話だが、柔らかいグレーをクルンと指に巻きつけて遊んでみる。
どこもかしこも完璧なんて、ずるい。努力の人とはよく言ったものだけれど、素材自体を最高に仕上げてくるのも努力の一部なんだろうか。
それだったら、魔法なんてこの人には必要ないのになぁ、努力でなんでもできちゃうんだから。
ずるいな、と、すごいな、の気持ちを指先に託して、滑らかな頬をぷにと突いた次の瞬間だった。
重ねていた掌をぎゅっと握り返されて、それから、横向きになっていた身体はまた元の位置に反転させられる。
「!」
「貴女ね…」
「えっ、アレッ」
少ししかめっ面で、それでいて朱色の頬で私を見下ろすのは、先ほどまで私にいいように触られていたアズール先輩で間違いない。
「い、いつから、起きて?」
「…名前を呼ばれた時から、と言ったら?」
「うそ!」
そんなアズール先輩は、はぁああと大げさなため息をついてから、キ、とブルーグレーの瞳で私を捉えた。
「逆に聞きますけれど、どうして僕が起きていないと思ったのですか」
「だって…起きてたら、いつもの調子で…抱きしめてくれたり…ちゃんと反応してくれるかなって…」
「僕だって…たまには、甘えたり、甘えられたり、いたずらしたりも、したいです、よ?」
「!」
「いつもは皆の手前、そういったことはしませんけれど」
こうして二人きりの時くらい、と、ポソポソと本当に小さく呟かれた声ですらも、私の都合の良い耳は一言も逃さず捉えてしまう。
なんて可愛い独白なの。私の胸はいとも簡単にキュンッと鷲掴みにされてしまった。
衝動に任せて伸ばした腕でアズール先輩を引き寄せて、その首筋にすり、と鼻先を擦り付ける。
「ッ!」
「アズール先輩、今日はどんな気分ですか」
「は?」
「甘えたり、甘えられたり、いたずらしたり、って、今日はどんなことをしたいですか」
「、え?」
「教えてください、今日は、私が。先輩のお願い事、叶えます」
「何を」
「対価は、そうですね、アズール先輩からの目一杯の愛で、どうでしょうか」
そこまで言って、少しだけ力を緩めたら、額と額がくっつくくらいの近さで、視線が絡まった。
「はぁ…僕に、貴女からの契約を受けろ、と?」
「たまにはこう言うのも、よくないですか?」
「ふは…ッ」
「契約書は、私には出せませんけど…。この身体のどこにでも、サインしてもらって構いませんよ」
「そんな大口叩いていられるのも、今のうちですよ?お願い叶えます、なんて大雑把な内容では、契約する側に有利な内容だ」
「もとより、そのつもりですから」
ふふ、と私が口元を緩めたら、アズール先輩はニヤリ、シニカルに笑った。
この蕩けるような甘い逢瀬、潮時はいつなのかしら。
願わくばずっと続けばいいのに、との言葉は、パクリと食まれたアズール先輩の咥内に飲み込まれてしまった。