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Azul
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あなたは疲れると少しおかしくなる。
初めてその状態のあなたに対峙したとき、僕は大層驚いたものだった。
今日は少し、その時のことを思い出してみようと思う。
*
「アズール先輩、私、とっても疲れました。」
「はい?」
誰もいないモストロ・ラウンジのカウンター席に並んで二人。
僕の作業が終わるまで静かにブラッドオレンジを飲んでいたあなたが、へたり、机に突っ伏したと思ったら、突然そんな言葉をはいた。
普段は一切そう言った様子を見せず、学業やラウンジの仕事に精を出しているので、その反応には少なからず驚かされた。もちろん体調が悪そうな日などは率先して休ませるようにしていたし、顔色から察することはあったし、彼女が、忙しい、と愚痴をこぼす事もあった。
それでも、「疲れた」と口に出すことは一度もなかったように思う。
その言葉に反応して、あなたの方を向けば、ゆるりと身体を起こして、そのまま僕の腕に身体を寄せて、きゅ、と身体を沿わせてくる。僕の腕に合わせてふにゅと彼女の胸の形が変わるのがわかって気恥ずかしい。
「ど、どうしたんですか」
このように日常的な空間であなたから甘えられることは初めてで、知らず声が上ずった。
「アズール先輩…、お仕事は終わりました…?」
「え、あ、あぁ、えぇ。今日はもうこれで終わりですよ。お疲れでしたら、寮までお送りしましょう」
「…先輩のばか」
「へ、」
「どうして私が今まで残っていたか、わからないんですか…?」
「それは、えっと、どうして、でしょう?」
僕の腕を捉えている手とは別の手が、首を這って、頬に触れて。
それからその指が唇をなぞったことで、ゾワ、と背筋を何かが通り抜けていく。
熱を燻らせたあなたの瞳が、うるりと揺れた。
「抱いて、」
「っ?!」
「…って言ったら、アズール先輩は、応えてくれますか…?」
「な…なに、を」
「蕩けさせて…癒して欲しいな…なんて、はしたないですかね…ごめんなさい」
あまりに大人びたその様子に脳の処理がついて行かず、煮え切らない返事しかできない僕の反応を見て、NOだと受け取ったらしいあなたは、するりと潔く僕から距離を取ろうとした。が、それを力ずくでもう一度引き寄せて、唇を合わせた。
非日常なシチュエーションには、ひとつのきっかけが必要なほどに、僕はまだ子供のままなのかもしれない。
「んっ、ふ、ぅ」
「ン、は…ッんん…」
初めは合わせるだけ。そのまま舌を捻じ込んで咥内を荒らして味わって。
勢いでそのままボタンを外しそうになったが、ここは、いつ誰がくるともしれないラウンジだ。
こんな情熱的なキスをしていることですら、本来であれば寮長の立場としては良くない状況だった。
脳内に残った最後の理性の糸が切れる前に、ちゅ、とわざとらしいリップノイズを残して、少しだけ距離を取る。
「んっ…はぁ…ぁ、」
「積極的なあなたも、嫌いじゃないですよ」
「ふ、…よかった…です…嫌われてなくって…」
「あまりにも可愛いので、少し、驚いてしまいました」
「も…よく回る口ですね」
「本心ですよ。ただ…ここでは、続きはできませんから…僕の部屋までご案内しても?」
もう一度、ちゅぅ、とキスを贈れば、恥ずかしそうに身悶えした華奢な身体を、今日はもう逃す気は無いけれど、形だけでも了承は取っておかないと。
「アズール先輩となら、どこへでも…」
「良い返事をいただけて嬉しいです。では、行きましょうか」
逸る心を抑えつつ、廊下という海中トンネルを二人きり。
今日はどれだけ乱れてくれるのだろうと想像しながら、コートの裾を翻した。
*
パタン。
日記帳を閉じて、はぁ、とため息をひとつ。
昔、と言ってもそれは本当に最近のこと。けれど全ての思い出はかなり前のことに感じるほどに、傍にいることが普通になってしまったな。
まるで渦の中に引き込まれていくように、ずぶずぶと二人、甘い時間に溺れて抜け出せなくなって。
いつしかこの手が離れてしまったら、自分はどうなってしまうのだろうか。
幸せと不安は表裏一体で僕に絡みついてくるが、離すわけにはいかないと、想い新たに。
起こした上半身を再び布団の中に戻して彼女の身体を抱きしめ直せば、無意識に擦り寄ってくる熱に愛しさがこみ上げた。
「愛してます、なんて、恥ずかしくて言えたものじゃないですが…きっとこれは、そういう気持ちなのでしょうね」
一つ一つ芽生える気持ちを大切に抱いて、また一日に幕をひこう。
初めてその状態のあなたに対峙したとき、僕は大層驚いたものだった。
今日は少し、その時のことを思い出してみようと思う。
*
「アズール先輩、私、とっても疲れました。」
「はい?」
誰もいないモストロ・ラウンジのカウンター席に並んで二人。
僕の作業が終わるまで静かにブラッドオレンジを飲んでいたあなたが、へたり、机に突っ伏したと思ったら、突然そんな言葉をはいた。
普段は一切そう言った様子を見せず、学業やラウンジの仕事に精を出しているので、その反応には少なからず驚かされた。もちろん体調が悪そうな日などは率先して休ませるようにしていたし、顔色から察することはあったし、彼女が、忙しい、と愚痴をこぼす事もあった。
それでも、「疲れた」と口に出すことは一度もなかったように思う。
その言葉に反応して、あなたの方を向けば、ゆるりと身体を起こして、そのまま僕の腕に身体を寄せて、きゅ、と身体を沿わせてくる。僕の腕に合わせてふにゅと彼女の胸の形が変わるのがわかって気恥ずかしい。
「ど、どうしたんですか」
このように日常的な空間であなたから甘えられることは初めてで、知らず声が上ずった。
「アズール先輩…、お仕事は終わりました…?」
「え、あ、あぁ、えぇ。今日はもうこれで終わりですよ。お疲れでしたら、寮までお送りしましょう」
「…先輩のばか」
「へ、」
「どうして私が今まで残っていたか、わからないんですか…?」
「それは、えっと、どうして、でしょう?」
僕の腕を捉えている手とは別の手が、首を這って、頬に触れて。
それからその指が唇をなぞったことで、ゾワ、と背筋を何かが通り抜けていく。
熱を燻らせたあなたの瞳が、うるりと揺れた。
「抱いて、」
「っ?!」
「…って言ったら、アズール先輩は、応えてくれますか…?」
「な…なに、を」
「蕩けさせて…癒して欲しいな…なんて、はしたないですかね…ごめんなさい」
あまりに大人びたその様子に脳の処理がついて行かず、煮え切らない返事しかできない僕の反応を見て、NOだと受け取ったらしいあなたは、するりと潔く僕から距離を取ろうとした。が、それを力ずくでもう一度引き寄せて、唇を合わせた。
非日常なシチュエーションには、ひとつのきっかけが必要なほどに、僕はまだ子供のままなのかもしれない。
「んっ、ふ、ぅ」
「ン、は…ッんん…」
初めは合わせるだけ。そのまま舌を捻じ込んで咥内を荒らして味わって。
勢いでそのままボタンを外しそうになったが、ここは、いつ誰がくるともしれないラウンジだ。
こんな情熱的なキスをしていることですら、本来であれば寮長の立場としては良くない状況だった。
脳内に残った最後の理性の糸が切れる前に、ちゅ、とわざとらしいリップノイズを残して、少しだけ距離を取る。
「んっ…はぁ…ぁ、」
「積極的なあなたも、嫌いじゃないですよ」
「ふ、…よかった…です…嫌われてなくって…」
「あまりにも可愛いので、少し、驚いてしまいました」
「も…よく回る口ですね」
「本心ですよ。ただ…ここでは、続きはできませんから…僕の部屋までご案内しても?」
もう一度、ちゅぅ、とキスを贈れば、恥ずかしそうに身悶えした華奢な身体を、今日はもう逃す気は無いけれど、形だけでも了承は取っておかないと。
「アズール先輩となら、どこへでも…」
「良い返事をいただけて嬉しいです。では、行きましょうか」
逸る心を抑えつつ、廊下という海中トンネルを二人きり。
今日はどれだけ乱れてくれるのだろうと想像しながら、コートの裾を翻した。
*
パタン。
日記帳を閉じて、はぁ、とため息をひとつ。
昔、と言ってもそれは本当に最近のこと。けれど全ての思い出はかなり前のことに感じるほどに、傍にいることが普通になってしまったな。
まるで渦の中に引き込まれていくように、ずぶずぶと二人、甘い時間に溺れて抜け出せなくなって。
いつしかこの手が離れてしまったら、自分はどうなってしまうのだろうか。
幸せと不安は表裏一体で僕に絡みついてくるが、離すわけにはいかないと、想い新たに。
起こした上半身を再び布団の中に戻して彼女の身体を抱きしめ直せば、無意識に擦り寄ってくる熱に愛しさがこみ上げた。
「愛してます、なんて、恥ずかしくて言えたものじゃないですが…きっとこれは、そういう気持ちなのでしょうね」
一つ一つ芽生える気持ちを大切に抱いて、また一日に幕をひこう。