未入力の場合は、あなた、が設定されます
Azul
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
それはアズール先輩と付き合い始めて間もなくたったころの思い出。
その頃、私の中でほんの少し。ほんの少しだけど、欲が擡げる時があった。
それは「キスをしたいなぁ」という、お付き合いを始めた女としての可愛らしい、ごく当たり前の欲望だったと思う。
「お望みならば、いつまでも。貴女との永遠を誓いましょう。」
付き合うきっかけとなった告白の時は、そんな甘いことを言っておきながら、以後、そんなそぶりは全然ないアズール先輩。
必要以上にベタベタすることももちろんなく、至って普段通り。
あれからモストロ・ラウンジでバイトすることもなかったので、先輩と会う機会自体が少なくて、それもヤキモキを助長する事実の一つになっていた。
移動教室の途中、たまに姿を見て話しかけようとしても、パッと目をそらされる。
もちろんその表情を見れば、この関係やらなんやらが「恥ずかしい」だけなんだろうとは容易に想像ができるのだけれど、それにしたってあまりにもだ。
こんな風になるくらいなら、話し掛けれる程度の距離にいた方が良かったし、付き合うことなく、傍で笑い合える関係の方が良かった。
キスどころか、まともに会話すらできないのは、逆に悲しくなる。
『はぁ…』
「またタコ野郎と話せなかったのか?」
『グリム…私、もうダメかも〜』
「俺様、タコ野郎にガツンといってやろうか?俺様の子分にそういう態度は良くないんだゾ!」
『…ありがとう…でも、その気持ちだけで十分だよ。これは、私の問題だから…私が話をしなくっちゃ』
「お前、さすが俺様の子分なんだゾ!でもどうしようもなくなったら俺様を頼るんだゾ!子分を守るのも俺様の役目なんだゾ!」
『ふふ、優しいねグリム。頼りにしてるよ。私…ちょっとアズール先輩と話してみる。』
「わかったんだゾ!俺様はエースとデュースのところにいるから、頑張るんだゾ!」
そういって笑った相棒は、とても心強かった。
アズール先輩の背中を追って、できる限りの早歩き、否、小走りをする。
珍しく、途中でリーチ先輩方と別れたアズール先輩。
今しかない!と、スキを狙って背中に突撃し、そこにあった教室へアズール先輩を押し込んだ。
申し訳ないとは思ったけれど、私に残された方法はこれしかない。
「な…って、あなた?!」
突然の衝撃に、二、三歩ふらふらとして教室内に入った先輩は、それでも男女の力の差は歴然で、特に倒れることもなく体制を立て直してこちらを向いた。
それから私を視界に留めて、驚いた顔をする。
「どうしたんですかこんな、突然!」
『っ…!!』
こんな時しか、目が。視線が合わないなんて。
こんなにも苦しいことがあるだろうか。
私を見て欲しかったのに。なんでか悲しいよ、先輩。
「あなた?」
『…っ…なん、でもないです…』
「なんでもない?そんな顔をしてその言い訳が通じるとお思いですか?」
『だって、なんでもないから』
「嘘をつかないでください。何かあったんですか?僕でよければ聞きますよ」
『…いや』
「え?」
『いやです、言いません』
こんなことを言うために先輩に会いにきたんじゃないのに、口が思うように言葉を発してくれない。
「…はぁ、本当にどうしたんですか?」
『…』
「何もないようには、見えませんが?僕が何かしてしまいましたか?」
『…してません』
「ではどうしたんですか」
『何もしてないから怒ってるんです!!』
「はい?」
『先輩!!私とキスしてください!!』
「き、!?????!??!?!」
当時は、そんな子供みたいなやりとりをするのも精一杯のことだったんだ。
それが今となっては。
ちゅ、ちゅ、と触れるだけのキスを繰り返しているここは、VIPルーム内の扉前。
先ほど、出て行こうとした私の身体を抱きとめてアズール先輩が私の首筋に吸い付いたのをきっかけに、暫しの甘い時間を堪能している。
本人はおそらく無意識で気付いていないだろうけれど、その行動は、アズール先輩がお疲れで甘えたい時のサインだったから、素直に彼の方を向いた。少しだけ顎を上げて、こちらから先輩の眼鏡を取り去れば、そのまま惹かれあう唇。
首に腕を絡めて、先輩は私の腰を抱く。
角度を変えて何度も繰り返されるキスは、それだけでもとろけるように甘く、私の心を満たす。
息継ぎのために少し離れた刹那、突然思い出された記憶。
あの頃のヤキモキは不必要だったなぁと微笑みがこぼれた。
『くすくす…』
「ん…なんですか突然」
『いえ…付き合いたての頃は、こんなに求めてもらえるなんて思ってもいなかったので…嬉しいな、って』
「…あぁ…あの頃は…少し…というか、僕、今、そんなにべったりしていますか、そうだったら、その…自重しますが…」
『ああ、違うんです!あの頃は私の方が、もっとしたいなって思っていたから、なんだか嬉しくて』
先輩に眼鏡をかけ直してあげてから、その首筋に、スリ、と甘えてみた。
嗅ぎ慣れたコロンの香りが鼻をくすぐる。
『だって、あの頃の先輩、私の方を全然みてくれなかったから。』
「そ、それは、きちんと謝ったじゃないですか」
『ふふ、怒ってるんじゃないんです。ただ、今のこの状況をあの頃の私が見たら、びっくりしちゃうだろうなって』
「そうですね、僕もこんなに…貴女がいないとダメになるなんて、思ってもいませんでした」
『…アズール先輩はきっと、一人でも大丈夫ですよ…今は、たまたまそういう時期なだけです』
自信がなくなったような声を出す先輩を勇気付けてみる。
動揺したのか、腰を抱く腕から力が抜けたので、するりと腕から逃げ出した。
『でも、一人でどうにもならない時は、いつでも頼ってください?』
それでは、まだフロアの片付けが残っているので、と外へ出ようとすると。
また肩を掴まれて、その腕の中に逆戻りだった。
先ほどよりも強い力で抱きしめられて、少し戸惑ってしまう。
『えっと…アズール先輩?』
「そんなこと、言わないでください」
『…』
「僕は、力を手に入れた。確かになんでもできるほど強くなった。」
『ほら…ね』
「でも、それとこれとは話が別だ。あなたがいなかったら、もう」
『…でも』
「昔の僕は、初めての感情にどうしたらわからず貴女を避けてしまったけれど、今は違う。こうして抱きしめて、気持ちを伝える術を知った」
『そうですね…先輩は、変わりました』
「あなたがいたから、変われたんだ。これからも力の限り愛します。だから、そんなことを言わないでください」
あの頃とはまるで逆のように見えて、そうじゃない。
気持ちが向かい合った分、求めて、求められて、溺れていく。
離れたくないと思えば思うほど、不安だって大きくなるのだ。
でも、そうですね。
『アズール先輩には私がいないといけないなら、私にもアズール先輩が必要ですよ』
「お互いさま、ですか?」
『そうですよ?ただでも、オンボロ寮のたかが人間にこんな風に甘いだなんて誰かにバレたら、弱み握られたどころじゃないですからね。だから、これは二人だけの秘密です。』
「秘密、ね…ですが、そんなことが起こったとしたら、どんな手を使ってでも助けに行きますのでご心配なく」
『ふふ、確かに…なんの心配もないかも』
くす、と下を向いて笑っていると、私の頬に真っ白の手袋が触れた。
そのまま、つい、と上を向かされて。目を合わせられた。
先輩の目はとても綺麗だ。
ただ、昔はあんなに合わせて欲しかった視線が、今こうして合わせられるようになると恥ずかしくて仕方がなく、自然とそらしてしまうことも多い。
「あなたは、あの頃よりも恥ずかしがり屋になりましたね」
『…っ…アズール先輩が、積極的になりすぎたんですよ』
「なんとでも言ってください。」
『…アズール先輩、先輩、大好きです』
「僕はあなたのこと、愛していますよ」
ここがVIPルームなのがもどかしい。
このまま夜が明けるまで、触れ合って、溶けてしまいたいね。
診断メーカー「[I love you] 風に訳すと「二人だけの秘密だよ」になりました。」より。
その頃、私の中でほんの少し。ほんの少しだけど、欲が擡げる時があった。
それは「キスをしたいなぁ」という、お付き合いを始めた女としての可愛らしい、ごく当たり前の欲望だったと思う。
「お望みならば、いつまでも。貴女との永遠を誓いましょう。」
付き合うきっかけとなった告白の時は、そんな甘いことを言っておきながら、以後、そんなそぶりは全然ないアズール先輩。
必要以上にベタベタすることももちろんなく、至って普段通り。
あれからモストロ・ラウンジでバイトすることもなかったので、先輩と会う機会自体が少なくて、それもヤキモキを助長する事実の一つになっていた。
移動教室の途中、たまに姿を見て話しかけようとしても、パッと目をそらされる。
もちろんその表情を見れば、この関係やらなんやらが「恥ずかしい」だけなんだろうとは容易に想像ができるのだけれど、それにしたってあまりにもだ。
こんな風になるくらいなら、話し掛けれる程度の距離にいた方が良かったし、付き合うことなく、傍で笑い合える関係の方が良かった。
キスどころか、まともに会話すらできないのは、逆に悲しくなる。
『はぁ…』
「またタコ野郎と話せなかったのか?」
『グリム…私、もうダメかも〜』
「俺様、タコ野郎にガツンといってやろうか?俺様の子分にそういう態度は良くないんだゾ!」
『…ありがとう…でも、その気持ちだけで十分だよ。これは、私の問題だから…私が話をしなくっちゃ』
「お前、さすが俺様の子分なんだゾ!でもどうしようもなくなったら俺様を頼るんだゾ!子分を守るのも俺様の役目なんだゾ!」
『ふふ、優しいねグリム。頼りにしてるよ。私…ちょっとアズール先輩と話してみる。』
「わかったんだゾ!俺様はエースとデュースのところにいるから、頑張るんだゾ!」
そういって笑った相棒は、とても心強かった。
アズール先輩の背中を追って、できる限りの早歩き、否、小走りをする。
珍しく、途中でリーチ先輩方と別れたアズール先輩。
今しかない!と、スキを狙って背中に突撃し、そこにあった教室へアズール先輩を押し込んだ。
申し訳ないとは思ったけれど、私に残された方法はこれしかない。
「な…って、あなた?!」
突然の衝撃に、二、三歩ふらふらとして教室内に入った先輩は、それでも男女の力の差は歴然で、特に倒れることもなく体制を立て直してこちらを向いた。
それから私を視界に留めて、驚いた顔をする。
「どうしたんですかこんな、突然!」
『っ…!!』
こんな時しか、目が。視線が合わないなんて。
こんなにも苦しいことがあるだろうか。
私を見て欲しかったのに。なんでか悲しいよ、先輩。
「あなた?」
『…っ…なん、でもないです…』
「なんでもない?そんな顔をしてその言い訳が通じるとお思いですか?」
『だって、なんでもないから』
「嘘をつかないでください。何かあったんですか?僕でよければ聞きますよ」
『…いや』
「え?」
『いやです、言いません』
こんなことを言うために先輩に会いにきたんじゃないのに、口が思うように言葉を発してくれない。
「…はぁ、本当にどうしたんですか?」
『…』
「何もないようには、見えませんが?僕が何かしてしまいましたか?」
『…してません』
「ではどうしたんですか」
『何もしてないから怒ってるんです!!』
「はい?」
『先輩!!私とキスしてください!!』
「き、!?????!??!?!」
当時は、そんな子供みたいなやりとりをするのも精一杯のことだったんだ。
それが今となっては。
ちゅ、ちゅ、と触れるだけのキスを繰り返しているここは、VIPルーム内の扉前。
先ほど、出て行こうとした私の身体を抱きとめてアズール先輩が私の首筋に吸い付いたのをきっかけに、暫しの甘い時間を堪能している。
本人はおそらく無意識で気付いていないだろうけれど、その行動は、アズール先輩がお疲れで甘えたい時のサインだったから、素直に彼の方を向いた。少しだけ顎を上げて、こちらから先輩の眼鏡を取り去れば、そのまま惹かれあう唇。
首に腕を絡めて、先輩は私の腰を抱く。
角度を変えて何度も繰り返されるキスは、それだけでもとろけるように甘く、私の心を満たす。
息継ぎのために少し離れた刹那、突然思い出された記憶。
あの頃のヤキモキは不必要だったなぁと微笑みがこぼれた。
『くすくす…』
「ん…なんですか突然」
『いえ…付き合いたての頃は、こんなに求めてもらえるなんて思ってもいなかったので…嬉しいな、って』
「…あぁ…あの頃は…少し…というか、僕、今、そんなにべったりしていますか、そうだったら、その…自重しますが…」
『ああ、違うんです!あの頃は私の方が、もっとしたいなって思っていたから、なんだか嬉しくて』
先輩に眼鏡をかけ直してあげてから、その首筋に、スリ、と甘えてみた。
嗅ぎ慣れたコロンの香りが鼻をくすぐる。
『だって、あの頃の先輩、私の方を全然みてくれなかったから。』
「そ、それは、きちんと謝ったじゃないですか」
『ふふ、怒ってるんじゃないんです。ただ、今のこの状況をあの頃の私が見たら、びっくりしちゃうだろうなって』
「そうですね、僕もこんなに…貴女がいないとダメになるなんて、思ってもいませんでした」
『…アズール先輩はきっと、一人でも大丈夫ですよ…今は、たまたまそういう時期なだけです』
自信がなくなったような声を出す先輩を勇気付けてみる。
動揺したのか、腰を抱く腕から力が抜けたので、するりと腕から逃げ出した。
『でも、一人でどうにもならない時は、いつでも頼ってください?』
それでは、まだフロアの片付けが残っているので、と外へ出ようとすると。
また肩を掴まれて、その腕の中に逆戻りだった。
先ほどよりも強い力で抱きしめられて、少し戸惑ってしまう。
『えっと…アズール先輩?』
「そんなこと、言わないでください」
『…』
「僕は、力を手に入れた。確かになんでもできるほど強くなった。」
『ほら…ね』
「でも、それとこれとは話が別だ。あなたがいなかったら、もう」
『…でも』
「昔の僕は、初めての感情にどうしたらわからず貴女を避けてしまったけれど、今は違う。こうして抱きしめて、気持ちを伝える術を知った」
『そうですね…先輩は、変わりました』
「あなたがいたから、変われたんだ。これからも力の限り愛します。だから、そんなことを言わないでください」
あの頃とはまるで逆のように見えて、そうじゃない。
気持ちが向かい合った分、求めて、求められて、溺れていく。
離れたくないと思えば思うほど、不安だって大きくなるのだ。
でも、そうですね。
『アズール先輩には私がいないといけないなら、私にもアズール先輩が必要ですよ』
「お互いさま、ですか?」
『そうですよ?ただでも、オンボロ寮のたかが人間にこんな風に甘いだなんて誰かにバレたら、弱み握られたどころじゃないですからね。だから、これは二人だけの秘密です。』
「秘密、ね…ですが、そんなことが起こったとしたら、どんな手を使ってでも助けに行きますのでご心配なく」
『ふふ、確かに…なんの心配もないかも』
くす、と下を向いて笑っていると、私の頬に真っ白の手袋が触れた。
そのまま、つい、と上を向かされて。目を合わせられた。
先輩の目はとても綺麗だ。
ただ、昔はあんなに合わせて欲しかった視線が、今こうして合わせられるようになると恥ずかしくて仕方がなく、自然とそらしてしまうことも多い。
「あなたは、あの頃よりも恥ずかしがり屋になりましたね」
『…っ…アズール先輩が、積極的になりすぎたんですよ』
「なんとでも言ってください。」
『…アズール先輩、先輩、大好きです』
「僕はあなたのこと、愛していますよ」
ここがVIPルームなのがもどかしい。
このまま夜が明けるまで、触れ合って、溶けてしまいたいね。
診断メーカー「[I love you] 風に訳すと「二人だけの秘密だよ」になりました。」より。