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Azul
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『あー…降ってきちゃいましたね』
「道理で貴女の体調も悪いはずですよ。飲まないに越したことはないですが、念のためもう少し強い効き目のものも作っておいてもいいかもしれませんね。」
小さなカフェで、窓際のローソファーに座って二人。
久しぶりに買い出しがあるというアズール先輩について街へ出た。ある意味デートだ!と楽しみにしていたのに、思わぬ体調不良に見舞われて、仕方なく休憩をしていたところだった。
暖かい紅茶が身に沁みる。さすがアズール先輩御用達のカフェだけあって、この紅茶は、一口飲むたび良い香りが鼻を抜けていく。
クラシックの曲だろうか。優しいトリルが耳くすぐる。と、分厚い雲の向こう側で、ピカ、と黄色い光が見えた。
『あっ、光った』
「え?」
『あ、また。ほら、あっちの方…雷ですかね』
「本当ですね…」
低くゴロゴロという音も聞こえた気がする。割と激しく降るようだと肩をすくめた。
「そういえば貴女は、雷が怖くないんですか?」
『そうですね、雷はあまり怖いとは思いません…でも目の前で見たことがないからかも…』
「なるほど」
『アズール先輩はどうなんですか?海の中から雷って見えたりするんですか?』
「いえ、流石に海の中からは雷が見えることはありませんね。ただ、海に直接雷が落ちると、落ちた地点から近い範囲にいた場合は感電してしまうので、注意しなさいとは言われます。そうだな…プライマリースクールくらいに口を酸っぱくして教えられた気がしますね」
『へぇ…じゃあ、人魚姫が海から顔を出すだけで怒られていたのも、もしかしたら。』
「命を守るための教訓を含んでいた可能性もありますね」
雨の日の海が静かなのは、そういう言われがあるからなのかな、と漠然と考えていたら、ぽつ、ぽつと降り出した雨粒があっと言う間にガラスを叩き始めた。
雨の音は、街の喧騒を飲み込むようにして、タシタシ、と道路に、窓に、跡を残す。
『通り雨でしょうか…』
「そうだと思います…。ですが買い出しは一通り終わっていますし、少しくらいゆっくりしてもバチは当たりませんよ」
『本当にすみません…』
「何を言っているんですか。貴女の身体以上に大切なものなんてないでしょう。そんなことは気にする必要はありません。少し雨宿りした、くらいに思っておけばいいんですよ」
膝の上に置いていた手を、キュ、と握られて微笑まれてしまった。
あまり人から見えない位置にいるとはいえ、なんとなく恥ずかしくて頬が熱くなる。
『あっ…ありがとう…ございます…お気遣い…嬉しいです…』
「気遣い?本心ですよ。貴女以上に大事なものなど、僕には思いつかない」
少し身体をずらして、私の方を向いたアズール先輩は、小首を傾けて、ね、と私に同意を求めた。
アイスブルーの瞳が私を見つめる。
『っ…先輩…だから…そういうことは、外では言っちゃダメですッ…』
「おや、まだ恥ずかしいのですか?そろそろ慣れて欲しいものですが」
『こんなのいつまで経っても慣れませんよ…!』
「はじめの頃と比べたら、随分といろんなことをシてきましたがそれでもまだ慣れないと?」
『っ〜!!だっから…!外でそういう話はしないでください…っ』
言っている傍から、重ねた手が不穏な動きをし始めたと思えば、私がゆるく握っていた掌がこじ開けられて指を弄ばれた。
スリスリと擦られて、くすぐったいのだけれど、その触り方がどうにもなまめかしいのはなぜだろう。
指が一本ずつ絡め取られていくその様を見ていられなくなって、ついには目を瞑ってしまった。
『んぅ…!っ、ほんと、に、もう、やめて、くだ、さぃ…ッ』
我慢できなくなって声をあげて、おそらく真っ赤であろう顔のままに薄めを開けると。
「っ…」
『…な、なんでっ、先輩が、そ、な、真っ赤…!?』
「それはっ、貴女が変な声を出すから……あ〜もう!」
触れていた手が離れて、刹那、その腕で、グィと頭を引かれた。
ぽすり。
私の頭は、そのまま素直にアズール先輩の肩口へと埋まった。
「戻ったら、覚えておいてください」
『?!』
「僕の部屋に直行ですからね」
『っ…』
近くなった距離に大きくなる心臓の音。
離れるのも忘れ、そのまま二人、ソファーに体重を預けた。
いつの間にか雨脚はだんだん弱まって、気づけば視線の先には小さな虹ができていた。
けれどもう少し。雨が降っていることにして。
ただ寄り添っていたいな。
「道理で貴女の体調も悪いはずですよ。飲まないに越したことはないですが、念のためもう少し強い効き目のものも作っておいてもいいかもしれませんね。」
小さなカフェで、窓際のローソファーに座って二人。
久しぶりに買い出しがあるというアズール先輩について街へ出た。ある意味デートだ!と楽しみにしていたのに、思わぬ体調不良に見舞われて、仕方なく休憩をしていたところだった。
暖かい紅茶が身に沁みる。さすがアズール先輩御用達のカフェだけあって、この紅茶は、一口飲むたび良い香りが鼻を抜けていく。
クラシックの曲だろうか。優しいトリルが耳くすぐる。と、分厚い雲の向こう側で、ピカ、と黄色い光が見えた。
『あっ、光った』
「え?」
『あ、また。ほら、あっちの方…雷ですかね』
「本当ですね…」
低くゴロゴロという音も聞こえた気がする。割と激しく降るようだと肩をすくめた。
「そういえば貴女は、雷が怖くないんですか?」
『そうですね、雷はあまり怖いとは思いません…でも目の前で見たことがないからかも…』
「なるほど」
『アズール先輩はどうなんですか?海の中から雷って見えたりするんですか?』
「いえ、流石に海の中からは雷が見えることはありませんね。ただ、海に直接雷が落ちると、落ちた地点から近い範囲にいた場合は感電してしまうので、注意しなさいとは言われます。そうだな…プライマリースクールくらいに口を酸っぱくして教えられた気がしますね」
『へぇ…じゃあ、人魚姫が海から顔を出すだけで怒られていたのも、もしかしたら。』
「命を守るための教訓を含んでいた可能性もありますね」
雨の日の海が静かなのは、そういう言われがあるからなのかな、と漠然と考えていたら、ぽつ、ぽつと降り出した雨粒があっと言う間にガラスを叩き始めた。
雨の音は、街の喧騒を飲み込むようにして、タシタシ、と道路に、窓に、跡を残す。
『通り雨でしょうか…』
「そうだと思います…。ですが買い出しは一通り終わっていますし、少しくらいゆっくりしてもバチは当たりませんよ」
『本当にすみません…』
「何を言っているんですか。貴女の身体以上に大切なものなんてないでしょう。そんなことは気にする必要はありません。少し雨宿りした、くらいに思っておけばいいんですよ」
膝の上に置いていた手を、キュ、と握られて微笑まれてしまった。
あまり人から見えない位置にいるとはいえ、なんとなく恥ずかしくて頬が熱くなる。
『あっ…ありがとう…ございます…お気遣い…嬉しいです…』
「気遣い?本心ですよ。貴女以上に大事なものなど、僕には思いつかない」
少し身体をずらして、私の方を向いたアズール先輩は、小首を傾けて、ね、と私に同意を求めた。
アイスブルーの瞳が私を見つめる。
『っ…先輩…だから…そういうことは、外では言っちゃダメですッ…』
「おや、まだ恥ずかしいのですか?そろそろ慣れて欲しいものですが」
『こんなのいつまで経っても慣れませんよ…!』
「はじめの頃と比べたら、随分といろんなことをシてきましたがそれでもまだ慣れないと?」
『っ〜!!だっから…!外でそういう話はしないでください…っ』
言っている傍から、重ねた手が不穏な動きをし始めたと思えば、私がゆるく握っていた掌がこじ開けられて指を弄ばれた。
スリスリと擦られて、くすぐったいのだけれど、その触り方がどうにもなまめかしいのはなぜだろう。
指が一本ずつ絡め取られていくその様を見ていられなくなって、ついには目を瞑ってしまった。
『んぅ…!っ、ほんと、に、もう、やめて、くだ、さぃ…ッ』
我慢できなくなって声をあげて、おそらく真っ赤であろう顔のままに薄めを開けると。
「っ…」
『…な、なんでっ、先輩が、そ、な、真っ赤…!?』
「それはっ、貴女が変な声を出すから……あ〜もう!」
触れていた手が離れて、刹那、その腕で、グィと頭を引かれた。
ぽすり。
私の頭は、そのまま素直にアズール先輩の肩口へと埋まった。
「戻ったら、覚えておいてください」
『?!』
「僕の部屋に直行ですからね」
『っ…』
近くなった距離に大きくなる心臓の音。
離れるのも忘れ、そのまま二人、ソファーに体重を預けた。
いつの間にか雨脚はだんだん弱まって、気づけば視線の先には小さな虹ができていた。
けれどもう少し。雨が降っていることにして。
ただ寄り添っていたいな。