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ナイトレイブンカレッジは、割とイベントが多い学校という印象を受けた。
様々なイベントが行われるが、このフェアリーガラだけは、自分に白羽の矢が立つのはやめて欲しかった、と思わずにはいられない。
「やーっと終わったッス」
いつもならレオナさんがいるだろう温室で一人、長い息を吐き出した。
何度見ても、自分が着るような服じゃない、真っ白なひらひらと、それから花冠。
嫌でも感じさせられる、出身の違い。
「こんなのに金使うくらいなら、ばーちゃんやチビ達に何か買ってやりたいくらいッスねぇ」
背中いっぱいに背負った食べ物やらなんやらに、目を輝かせていた地元のみんな。
ここはあまりにも眩しい世界だな、と、極たまに気分が落ち込むこともあるのだ。
この衣装だって靴だって、今日が終わればどこかの焼却炉行きなんだろうなと思うとやるせない。
「なーんて考えたところで、なんもかわんないッスから」
割り切ったつもりでも首をもたげてくる、そんな考えを振り払うように頭をガリガリと掻き毟って自分が知る限りで一番暖かくて一番静かな場所へと足を進めた。
ただ。
普段は誰もいるはずのないその場所から、ヒトの気配がして、ふと立ち止まった。
スンと鼻をヒクつかせればすぐに誰だか予想はついたので、特別問題はなかったが。
「なーんでアンタがここにいるんスか〜?」
『!っ、ぁ…なんだ…ラギー先輩かぁ』
「なんだ、とはなんスか。ここ、立ち入り禁止区域っスよ?」
『じゃあラギー先輩も同罪じゃないですか』
「俺はいーんスよ。ってそれ、マンドラゴラじゃないスか!」
『そうですよ?この間、エースがラギー先輩にいいアルバイト聞いたって』
「あんのやろ…!」
『オンボロ寮に素敵な情報ありがとうございまーす!』
問題ありすぎだった。
自分の稼ぎぶちが減っては困る。頭を抱えてしまう。
「あーあ!アンタがそんな卑怯な子だなんて知らなかったっすよぉー」
『でも、ラギー先輩にはレオナさんがついてるし、うちよりは裕福じゃないですか』
「酷い言い方ッスねぇ。レオナさんの財布から金拝借するほど落ちぶれてないッスよ俺は」
『個人的には私とラギー先輩の金銭状況は同じってことですか』
「ッスね。なんで、俺のバイトかっさらわないでもらえると助かるッス」
『そういうことなら、仕方ないですね』
採ったマンドラゴラの袋をずい、と俺に渡す監督生くんは、欲があるのか無いのかよくわからない。
別に、今ここで、それを渡せと言ったわけでもないのだけれど、もらえるものはもらっておこうか。
「本当、お人好しというかなんというか」
『あっでも待ってください、ラギー先輩、真っ白だからやめたほうがいいかもです』
「真っ白?…あ〜そうだった」
『そっか、今日、フェアリーガラでしたもんね』
こんな袋持ったら汚れちゃうから、と躊躇われた上で、「すごく綺麗な衣装で見ほれちゃいましたよ」、なんて言われても、あまり嬉しくないってものだ。
「だいたい、男がこんな着飾ったって、意味ないと思わないッスか?」
『そんなことないですよ、顔がいい人は何を着ても似合うんですって。ラギー先輩、自分の顔面よく眺めてみてくださいよもったいない』
「シシ、アンタ、面白いこというッスねぇ」
『あっ!信じてないでしょ!』
「っ、っと、あ!?」
ぐい、と突然顔を近づけられ仰け反った瞬間、らしくもなく尻餅をついて倒れ込んでしまう。
「ってて…ったく、いきなり近づくのはよくないッス…」
『うわ!ごめんなさい、衣装がっ土!!』
「え?」
見れば、運悪く湿った土の上に倒れこんだらしく、真っ白の衣装に茶色くシミができ始めていた。
どうせ今後着る予定もない服なので特段問題はないのだが、目の前のこの子をいじめてみたくなったというだけの理由で、大げさに驚いてみせる。
「あーあ!どうしてくれんスかぁ!」
『ど、どど、うしたらっ、あぁあああごめんなさいごめんなさい…!』
「この衣装、世界に一枚なんスよ〜あ〜どうしてくれるんスかぁ?」
『えっ!えっ…!?や、やば…ちょ、あの、洗濯、洗濯します!!』
「真っ白の服からこの泥が退くか見ものッスねぇ〜」
『ひぃ…!』
あわあわ、と顔を青くして慌てる姿は、ちょっと憂鬱になっていた気持ちを引き上げる。
「っ…シシシ…」
『へ?』
「シシシッ!!ジョーダンっスよ!」
『で、でも』
「フェアリーガラの衣装は、一日コッキリの使い捨てだから気にしなくていいッスよ!ちょっとからかっただけッス!」
『ほ、本当、ですか…?』
「ホントホント!気にしなくていッスよ!あ、でも悪いと思うんなら、今度学食奢ってもらっちゃおっかな」
『も、もちろんですそのくらい全然!!だって、そんな綺麗な衣装、ホント、ホントに、ごめんなさい…っ』
冗談と告げてもなお、今にも泣きそうな顔をするものだから、こりゃやりすぎたかなと内心舌を巻く。
人を裏切るのも騙すのも得意だが、こんなに純粋な反応が返ってきてはきまりが悪いというものだ。
どうしたら気を持ち直してくれるだろうと逡巡して、あ、といい案がひらめく。
「もういいっつってんでしょうが。ほら、これあげるッスから、落ち着いて」
自分の頭に乗っていた、花冠を、この子の頭の上にそっと置いた。
「シシッ、やっぱり、こういうのは女の子のが似合うッスね!」
『っ、』
「お姫様みたいでかわいーッスよ!」
ボッ、と音がしそうな勢いで顔を赤くして、嬉しいような困ったような複雑な表情を見せたこの子を見て、あれ?もしかして自分は相当恥ずかしいことを言ったのではないか、と気づいた。
「あ、え、と、いや!そういうことじゃなくて、えっと、俺が被るようなもんじゃないっつーか」
『っ、あの、ちが、これは』
「っ、あ〜もう!ついでにこれも被っとくッスよ!!」
お互いしどろもどろするこの状況が無性にくすぐったくて、巻いていたスカーフでぐるぐる巻きにしてやった。
『ぎゃ!くるし…ファ、ラギーせ、ぱ、ぐえ』
「アンタが悪いんスよ!大人しくそのまま巻かれといて!!じゃ、これはもらってくッスね!」
マンドラゴラの袋はちゃっかりもらって、顔をぐるぐる巻きにした監督生くんはその場に残したまま、俺は元来た道を走って戻った。
「っ…なんなんスかこれ…っ」
身体が熱いのは、走ったからじゃない。
顔が赤いのは、夕陽のせいじゃない。
「監督生くんって、あんなに可愛かったッスかね…!?」
突然に浮き彫りにされたこの気持ち。
気づいてしまったら、もう、元には戻れない。
「俺はそういうキャラじゃないッスから…」
この胸の高鳴りは、アンタから伝染した、ってこと!
ただそれだけッスからね!!
お題:twst文字書きワードパレットより
くそ!/Jesus
(浮き彫り、高鳴り、裏切り)
様々なイベントが行われるが、このフェアリーガラだけは、自分に白羽の矢が立つのはやめて欲しかった、と思わずにはいられない。
「やーっと終わったッス」
いつもならレオナさんがいるだろう温室で一人、長い息を吐き出した。
何度見ても、自分が着るような服じゃない、真っ白なひらひらと、それから花冠。
嫌でも感じさせられる、出身の違い。
「こんなのに金使うくらいなら、ばーちゃんやチビ達に何か買ってやりたいくらいッスねぇ」
背中いっぱいに背負った食べ物やらなんやらに、目を輝かせていた地元のみんな。
ここはあまりにも眩しい世界だな、と、極たまに気分が落ち込むこともあるのだ。
この衣装だって靴だって、今日が終わればどこかの焼却炉行きなんだろうなと思うとやるせない。
「なーんて考えたところで、なんもかわんないッスから」
割り切ったつもりでも首をもたげてくる、そんな考えを振り払うように頭をガリガリと掻き毟って自分が知る限りで一番暖かくて一番静かな場所へと足を進めた。
ただ。
普段は誰もいるはずのないその場所から、ヒトの気配がして、ふと立ち止まった。
スンと鼻をヒクつかせればすぐに誰だか予想はついたので、特別問題はなかったが。
「なーんでアンタがここにいるんスか〜?」
『!っ、ぁ…なんだ…ラギー先輩かぁ』
「なんだ、とはなんスか。ここ、立ち入り禁止区域っスよ?」
『じゃあラギー先輩も同罪じゃないですか』
「俺はいーんスよ。ってそれ、マンドラゴラじゃないスか!」
『そうですよ?この間、エースがラギー先輩にいいアルバイト聞いたって』
「あんのやろ…!」
『オンボロ寮に素敵な情報ありがとうございまーす!』
問題ありすぎだった。
自分の稼ぎぶちが減っては困る。頭を抱えてしまう。
「あーあ!アンタがそんな卑怯な子だなんて知らなかったっすよぉー」
『でも、ラギー先輩にはレオナさんがついてるし、うちよりは裕福じゃないですか』
「酷い言い方ッスねぇ。レオナさんの財布から金拝借するほど落ちぶれてないッスよ俺は」
『個人的には私とラギー先輩の金銭状況は同じってことですか』
「ッスね。なんで、俺のバイトかっさらわないでもらえると助かるッス」
『そういうことなら、仕方ないですね』
採ったマンドラゴラの袋をずい、と俺に渡す監督生くんは、欲があるのか無いのかよくわからない。
別に、今ここで、それを渡せと言ったわけでもないのだけれど、もらえるものはもらっておこうか。
「本当、お人好しというかなんというか」
『あっでも待ってください、ラギー先輩、真っ白だからやめたほうがいいかもです』
「真っ白?…あ〜そうだった」
『そっか、今日、フェアリーガラでしたもんね』
こんな袋持ったら汚れちゃうから、と躊躇われた上で、「すごく綺麗な衣装で見ほれちゃいましたよ」、なんて言われても、あまり嬉しくないってものだ。
「だいたい、男がこんな着飾ったって、意味ないと思わないッスか?」
『そんなことないですよ、顔がいい人は何を着ても似合うんですって。ラギー先輩、自分の顔面よく眺めてみてくださいよもったいない』
「シシ、アンタ、面白いこというッスねぇ」
『あっ!信じてないでしょ!』
「っ、っと、あ!?」
ぐい、と突然顔を近づけられ仰け反った瞬間、らしくもなく尻餅をついて倒れ込んでしまう。
「ってて…ったく、いきなり近づくのはよくないッス…」
『うわ!ごめんなさい、衣装がっ土!!』
「え?」
見れば、運悪く湿った土の上に倒れこんだらしく、真っ白の衣装に茶色くシミができ始めていた。
どうせ今後着る予定もない服なので特段問題はないのだが、目の前のこの子をいじめてみたくなったというだけの理由で、大げさに驚いてみせる。
「あーあ!どうしてくれんスかぁ!」
『ど、どど、うしたらっ、あぁあああごめんなさいごめんなさい…!』
「この衣装、世界に一枚なんスよ〜あ〜どうしてくれるんスかぁ?」
『えっ!えっ…!?や、やば…ちょ、あの、洗濯、洗濯します!!』
「真っ白の服からこの泥が退くか見ものッスねぇ〜」
『ひぃ…!』
あわあわ、と顔を青くして慌てる姿は、ちょっと憂鬱になっていた気持ちを引き上げる。
「っ…シシシ…」
『へ?』
「シシシッ!!ジョーダンっスよ!」
『で、でも』
「フェアリーガラの衣装は、一日コッキリの使い捨てだから気にしなくていいッスよ!ちょっとからかっただけッス!」
『ほ、本当、ですか…?』
「ホントホント!気にしなくていッスよ!あ、でも悪いと思うんなら、今度学食奢ってもらっちゃおっかな」
『も、もちろんですそのくらい全然!!だって、そんな綺麗な衣装、ホント、ホントに、ごめんなさい…っ』
冗談と告げてもなお、今にも泣きそうな顔をするものだから、こりゃやりすぎたかなと内心舌を巻く。
人を裏切るのも騙すのも得意だが、こんなに純粋な反応が返ってきてはきまりが悪いというものだ。
どうしたら気を持ち直してくれるだろうと逡巡して、あ、といい案がひらめく。
「もういいっつってんでしょうが。ほら、これあげるッスから、落ち着いて」
自分の頭に乗っていた、花冠を、この子の頭の上にそっと置いた。
「シシッ、やっぱり、こういうのは女の子のが似合うッスね!」
『っ、』
「お姫様みたいでかわいーッスよ!」
ボッ、と音がしそうな勢いで顔を赤くして、嬉しいような困ったような複雑な表情を見せたこの子を見て、あれ?もしかして自分は相当恥ずかしいことを言ったのではないか、と気づいた。
「あ、え、と、いや!そういうことじゃなくて、えっと、俺が被るようなもんじゃないっつーか」
『っ、あの、ちが、これは』
「っ、あ〜もう!ついでにこれも被っとくッスよ!!」
お互いしどろもどろするこの状況が無性にくすぐったくて、巻いていたスカーフでぐるぐる巻きにしてやった。
『ぎゃ!くるし…ファ、ラギーせ、ぱ、ぐえ』
「アンタが悪いんスよ!大人しくそのまま巻かれといて!!じゃ、これはもらってくッスね!」
マンドラゴラの袋はちゃっかりもらって、顔をぐるぐる巻きにした監督生くんはその場に残したまま、俺は元来た道を走って戻った。
「っ…なんなんスかこれ…っ」
身体が熱いのは、走ったからじゃない。
顔が赤いのは、夕陽のせいじゃない。
「監督生くんって、あんなに可愛かったッスかね…!?」
突然に浮き彫りにされたこの気持ち。
気づいてしまったら、もう、元には戻れない。
「俺はそういうキャラじゃないッスから…」
この胸の高鳴りは、アンタから伝染した、ってこと!
ただそれだけッスからね!!
お題:twst文字書きワードパレットより
くそ!/Jesus
(浮き彫り、高鳴り、裏切り)