未入力の場合は、あなた、が設定されます
Jade
名前変換設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
NRCを卒業してからマブたちはみな立派な職業についた。グリムは宣言通りの大魔法士にはまだなれていない。でも、NRC初のモンスター卒業生…と呼べばいいのかはわからないけれど、立派なモンスターになってとある企業に就職した。それが決まった日は夜通しパーティをしたものだ。
そして私とジェイドさんは、一緒に住むようになった。
少し、昔話をしよう。
三年時のある日、私はとても困っていた。
それはひとえに、四年になったら企業に出向いて研修を受けなくてはならないからだった。
行く宛もなく、もちろん帰る場所もなく。魔力もないから職にもつけない。そんな私を研修生として迎え入れてくれる企業などあるのかと、困っていたのだ。
そもそも卒業したらどうしたらいいのだろう。迷った挙句、すでに事業を成功させていたアズール先輩に「卒業したら先輩のリストランテで雇ってもらえませんか」と相談しに行ったら、「貴女はジェイドと一緒に住むと伺っていますが、働かなければならない事情でもあるんですか?」と、逆に質問されて、なぜそんなことに?と首を傾げたのだが、ジェイド先輩は至極当たり前のように私にこう言ったのだ。
「やはり貴女、まだ僕を信じていませんね?」と。
そして連れてこられたのはジェイド先輩の部屋。フロイド先輩は今は研修先にいるようで部屋は整然と片付けられており、その生活感のなさは恐怖となって私を襲った。
ジェイド先輩も最近は毎日こちらにいるわけではない。だからこそ、いつか私は一人になるかもしれないと、思わざるを得なかったのだ。
一人は怖い。
支えてもらっていたんだなと、痛いほど思い知らされる。
先輩の膝の上に横抱きにされた私はどうやら腹を割らないといけないようだけど、これ以上負担になりたくなくて少し抵抗を試みた。
「私がジェイド先輩を信じて…ない?そんな、ことあるわけ、」
「ないとは言わせませんよ。僕はあなたさんを番とした気でいましたが、何度捕まえたと思っても、すぐにこの腕から逃げ出してしまいますから」
世界一安心できるジェイド先輩の腕の中で、頭を撫でられながらそんなことを告げられる。とくんとくんと響く鼓動は、果たして私のものか、ジェイド先輩のものか。
「目は口ほどにものを言う、とはよく言ったものです」
「へ、」
「貴女は僕をこんなにも欲してくれていますが、まだまだ信じてもらえていません。不安は拭えていませんね?だから逃げてしまうのでしょう」
「ち、違うんです、そんな、」
「鏡を割ったあの日、貴女をあちらの世界と隔絶できたと思ったのですが…それとこれとはまた別なのでしょう。…するとそうですね…やはりこちらに繋ぎ止める何かを…」
抵抗は最も簡単に突破され。
私の指を「いかにも」恭しく取ったその仕草に、いけない、と警鐘が鳴った。
「ジェイド先輩、あのっ!」
「言う前に断らせはしませんよ。あなたさんは僕と暮らすんです」
しまった、と思った時にはもう遅かった。
私の指には細いリングが嵌っており、先輩は私が言葉を発する前に唇を塞いだ。
「ンッ…!」
「んん、っは…、そろそろ観念して、僕に捕らわれてください」
「ッ…!で、でも、だって!」
「僕は、告白した日から…初めから、貴女を番と決めていました。貴女以外とどうこうなる気は毛頭ありません。貴女の卒業を待とうかと思いましたが、どうやら先約は必要なようですね」
ああ、もう。
聴いてはいけない言葉は、いとも簡単に私の鼓膜を震わせて。
そうすれば私はそれを断ることなどできるはずもない。
「結婚しましょう」
「っ…ごめ、なさい…ごめんなさいっ…」
「…ええ」
「私、わたしには、ジェイド先輩しか、いないからっ」
「そうですね」
「ほんとは、私なんかが先輩を縛ってはだめだって…一人で生きなきゃって…思ってたんです、でも…でもっ…この手を、取っていいんですか?私…わたしっ…信じさせて、くださいっ…結婚、したいっ…ずっと一緒にいたいっ…ごめんなさ…っ…ごめんなさいっ…」
「ありがとうございます、僕の手を取ってくださって」
「ごめんなさいっ…でもっ…ありがとうございますっ…!」
「これであなたさんの就職先は決まりましたね」
私の懺悔すら受け入れた先輩は、これほど困難なハントは初めてでした、と続けて、それからジェイド先輩はいつもとは違って、朗らかに笑った。
……こうして私たちの結婚は決まり、卒業と同時に一緒に住むことになった。
先に新居で暮らしていたジェイド先輩のところに、トランク一つだけを持って行った私を暖かく出迎えてくれた先輩は、ふわりと私を抱き上げて、言った。
「今日からは先輩ではありませんね」
「は、はい…。不束者ですが、よろしくお願いします…」
「こちらこそ、末長くよろしくお願いしますね。それで…あなたさんは僕をどう呼んでくださるんでしょう?もう三年も待たされましたから、とても楽しみにしていたんですよ?」
今度はニコニコと少し意地悪な笑顔。
その耳に、唇を寄せて呼んだのは、こんな世界で、一番愛おしい、彼の名前。
「ジェイド、さん…」
「ふふ、擽ったいものですね。それから、とても幸せです。貴女も今日からリーチです。あなた・リーチ」
その言葉には、微笑み以外返すことができなかった。
ジェイドさん、大好きです。
私が命を終えるまで、ずっとずっと、この手を離さないで。
私は、気づくとすぐに深淵を覗きに行ってしまうから。
その度に手を引いて、一緒に深く沈んでほしいの。
二人で行けば
きっと深淵も怖くないでしょう?
そしてまた戻ってきたら、こうして抱きしめて下さいね。
【ワードパレット】落ち着く腕の中
捕まえた/目は口ほどに/鼓動
そして私とジェイドさんは、一緒に住むようになった。
少し、昔話をしよう。
三年時のある日、私はとても困っていた。
それはひとえに、四年になったら企業に出向いて研修を受けなくてはならないからだった。
行く宛もなく、もちろん帰る場所もなく。魔力もないから職にもつけない。そんな私を研修生として迎え入れてくれる企業などあるのかと、困っていたのだ。
そもそも卒業したらどうしたらいいのだろう。迷った挙句、すでに事業を成功させていたアズール先輩に「卒業したら先輩のリストランテで雇ってもらえませんか」と相談しに行ったら、「貴女はジェイドと一緒に住むと伺っていますが、働かなければならない事情でもあるんですか?」と、逆に質問されて、なぜそんなことに?と首を傾げたのだが、ジェイド先輩は至極当たり前のように私にこう言ったのだ。
「やはり貴女、まだ僕を信じていませんね?」と。
そして連れてこられたのはジェイド先輩の部屋。フロイド先輩は今は研修先にいるようで部屋は整然と片付けられており、その生活感のなさは恐怖となって私を襲った。
ジェイド先輩も最近は毎日こちらにいるわけではない。だからこそ、いつか私は一人になるかもしれないと、思わざるを得なかったのだ。
一人は怖い。
支えてもらっていたんだなと、痛いほど思い知らされる。
先輩の膝の上に横抱きにされた私はどうやら腹を割らないといけないようだけど、これ以上負担になりたくなくて少し抵抗を試みた。
「私がジェイド先輩を信じて…ない?そんな、ことあるわけ、」
「ないとは言わせませんよ。僕はあなたさんを番とした気でいましたが、何度捕まえたと思っても、すぐにこの腕から逃げ出してしまいますから」
世界一安心できるジェイド先輩の腕の中で、頭を撫でられながらそんなことを告げられる。とくんとくんと響く鼓動は、果たして私のものか、ジェイド先輩のものか。
「目は口ほどにものを言う、とはよく言ったものです」
「へ、」
「貴女は僕をこんなにも欲してくれていますが、まだまだ信じてもらえていません。不安は拭えていませんね?だから逃げてしまうのでしょう」
「ち、違うんです、そんな、」
「鏡を割ったあの日、貴女をあちらの世界と隔絶できたと思ったのですが…それとこれとはまた別なのでしょう。…するとそうですね…やはりこちらに繋ぎ止める何かを…」
抵抗は最も簡単に突破され。
私の指を「いかにも」恭しく取ったその仕草に、いけない、と警鐘が鳴った。
「ジェイド先輩、あのっ!」
「言う前に断らせはしませんよ。あなたさんは僕と暮らすんです」
しまった、と思った時にはもう遅かった。
私の指には細いリングが嵌っており、先輩は私が言葉を発する前に唇を塞いだ。
「ンッ…!」
「んん、っは…、そろそろ観念して、僕に捕らわれてください」
「ッ…!で、でも、だって!」
「僕は、告白した日から…初めから、貴女を番と決めていました。貴女以外とどうこうなる気は毛頭ありません。貴女の卒業を待とうかと思いましたが、どうやら先約は必要なようですね」
ああ、もう。
聴いてはいけない言葉は、いとも簡単に私の鼓膜を震わせて。
そうすれば私はそれを断ることなどできるはずもない。
「結婚しましょう」
「っ…ごめ、なさい…ごめんなさいっ…」
「…ええ」
「私、わたしには、ジェイド先輩しか、いないからっ」
「そうですね」
「ほんとは、私なんかが先輩を縛ってはだめだって…一人で生きなきゃって…思ってたんです、でも…でもっ…この手を、取っていいんですか?私…わたしっ…信じさせて、くださいっ…結婚、したいっ…ずっと一緒にいたいっ…ごめんなさ…っ…ごめんなさいっ…」
「ありがとうございます、僕の手を取ってくださって」
「ごめんなさいっ…でもっ…ありがとうございますっ…!」
「これであなたさんの就職先は決まりましたね」
私の懺悔すら受け入れた先輩は、これほど困難なハントは初めてでした、と続けて、それからジェイド先輩はいつもとは違って、朗らかに笑った。
……こうして私たちの結婚は決まり、卒業と同時に一緒に住むことになった。
先に新居で暮らしていたジェイド先輩のところに、トランク一つだけを持って行った私を暖かく出迎えてくれた先輩は、ふわりと私を抱き上げて、言った。
「今日からは先輩ではありませんね」
「は、はい…。不束者ですが、よろしくお願いします…」
「こちらこそ、末長くよろしくお願いしますね。それで…あなたさんは僕をどう呼んでくださるんでしょう?もう三年も待たされましたから、とても楽しみにしていたんですよ?」
今度はニコニコと少し意地悪な笑顔。
その耳に、唇を寄せて呼んだのは、こんな世界で、一番愛おしい、彼の名前。
「ジェイド、さん…」
「ふふ、擽ったいものですね。それから、とても幸せです。貴女も今日からリーチです。あなた・リーチ」
その言葉には、微笑み以外返すことができなかった。
ジェイドさん、大好きです。
私が命を終えるまで、ずっとずっと、この手を離さないで。
私は、気づくとすぐに深淵を覗きに行ってしまうから。
その度に手を引いて、一緒に深く沈んでほしいの。
二人で行けば
きっと深淵も怖くないでしょう?
そしてまた戻ってきたら、こうして抱きしめて下さいね。
【ワードパレット】落ち着く腕の中
捕まえた/目は口ほどに/鼓動