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Azul
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もうすっかり馴染んでしまったオクタヴィネル寮長室。
私は今日も今日とてそこに行きたくて、緩慢な動作で皆が捌けるのを待っていたのだけど、そうは問屋が卸さない。
お疲れ、と声を掛けながら一人、また一人とラウンジから出て行く中で、同学年の寮生に捕まった。
「あ、お疲れー」
「お疲れ様ー」
「あれっ、あなたさん帰らないの?」
「ん?あー…えっと、そだね、もう少し」
「何か仕事あるんだ?手伝おっか」
「えっ!?いや!?全然大丈夫!気にしないで!」
「でも、」
彼が優しいことはクラスでも周知の事実だったけど、正直今はその優しさが辛い。
どう断ろうかと苦笑を漏らしていれば、奥から別の寮生が数人出てきて、ついでに彼の肩を引っ掴んだ。
「おっつかれー…って何してんのお前ら」
「あっ、お疲れ様です!何って…いや、あなたさんがまだ仕事あるって言うから手伝おうかと」
「あ、あは、あはは…」
出てきた先輩たちはその言葉に皆、目をパチクリさせて、それからニヤァと嫌な笑いを口元に浮かべた。
「あのな、先輩達が新人にありがた〜いこと教えてやろう」
「?なんすか」
「俺たちみたいなモブって立ち位置の人間はとにかく早めに退散するが吉だってこと」
「え、でも」
「貴方達、何をしているんです?」
「っ…!」
「あ、寮長!お疲れ様です!いえ、あなたさんを手伝ング!?」
「今から帰るとこでーす、お疲れ様でした!」
んぐ、んぐー!、と叫びながらも連れ去られた同級生には、ごめんね、と心の中で謝って。
皆がいなくなってから、アズール先輩に向き合うと、お疲れ様です、と私も挨拶を返した。
「…貴女は人気者ですね」
「そんなことはないです。みんなが優しいだけですよ。そんなことよりアズール先輩、お仕事終わりました?」
そう声を掛けるとムッとした表情が返ってきたのみで、何か変なことを言ってしまったかなと首を傾げる。
先輩は私のそんな仕草に構わず、いつもみたいな優雅さのない動きでパシッと私の腕を取ると無言のままに引っ張った。
「わ、あ!えっ、ど、したん」
手を引かれてフラフラしながら辿り着いたのは来る予定だった寮長室ではあったけれど、普段通りの甘い雰囲気でもなければ擽ったいものでもなくてちょっと不安になるも、寮長室に着くなり、私をギュッとその腕に収めたところから、怒ったりしているのではなさそうで。
それでもまだ無言を貫く先輩の態度に疑問を抱く。
「なぜ、貴女は僕以外の人の目にも映ってしまうんです」
「、へ?」
「…バカなことを言っているのは、わかっていますが…貴女が僕にしか見えなければいいのに…」
その言葉を聞く限り、アズール先輩はどうやら嫉妬してくれているようだった。
あまり耳にすることができないアズール先輩の本心に、不謹慎ながら私の気分は一気に高揚する。
「でなければ、本当に、身体中に痕を残してしまいたいくらいだ…貴女は僕の番なのに」
「痕、は、残してほしいって、前から言ってるじゃないですか…」
「少しでも痛いことはしたくありません」
「痛くなんてないですよ。むしろ気持ちいいって言うか…」
「へ、」
「その、ちょっとどころかかなり変態チックだから言わなかったんですけど…アズール先輩に吸いつかれると、身体が…心が喜んでるのが自分でわかるんです。もっとって、震えるの。だから、」
「な…、はぁ!?」
「ほ、ほら…やっぱり、引く、でしょう…?でも、ここまで言ったのでついでに言ってしまうと、身体を撫でられるのも好き、です。アズール先輩の指先には、何もしなくても魔法がかかってると、思うくらいです」
「い、あ、ちょっ、ま、あなた、待って、ちょっと」
「それから、こういう時だけしか聴けない、名前」
「…名前?」
「アズール先輩、普段私のこと、貴女って呼ぶでしょ?あなたって、呼ばれると、なんだか…ぶわっていろんな感情が、ね」
湧いてくる羞恥心を抑えきれず、悪戯にへへっと笑う私。
一方で、そうだったかと思案していた先輩は、数秒ののちに意識をここに戻した。
「………言われてみれば…外ではあまり貴女の名前は呼ばないかもしれませんね」
「でしょう?」
「でも、貴女は僕のこと、名前で呼びますよね」
「え?だって、私が先輩のこと、『あなた』って呼んだら、夫婦みたいだから」
「は、」
「あれ?旦那さんのこと、あなたって呼びません?私の元の世界だけなのか、ンン!?」
私の言葉に固まってしまったアズール先輩を見て、何か誤ったことを口にしたかと眉を寄せたら、何故か勢いよく唇を塞がれて暫く貪られた。
ちゅ、ちゅむ、と絶妙に音を立てられて羞恥が増す。でもそれよりももう息が続かないと強く先輩の服を掴んだところでやっと離れたそれ。
「ん、ハァっ…」
「ふはぁっ…!っ、も、突然、なっ、ん、ふ、あ」
「貴女が!そんなことを言うからっ!」
「…そんなことっ…?」
「!?し、信じられません!今さっき言ったことを忘れるなんて!」
「は、ぇ?そんなこと言われてもっ、わ、!?」
人は見かけによらず、その細い体躯からは考えられないような力でもって私を抱き上げたアズール先輩は、そのままベッドへ私を運び、ポスリとそこに私を落とした。
私を見つめる瞳には、喜びだとか不満だとか羞恥だとか戸惑いだとか、とにかくいろんな感情が浮かんでいるのだけれど、そのブルーはいつだって強くて綺麗で私を惹きつけて離さない。
それでもずっと見つめているのが恥ずかしくなってついに視線を逸らしたら、頬に添えられた手が「そうはさせない」とでも言いたげに私の顔を引き戻す。
「っ…な、なん、です、か」
「僕のことを、翻弄しておいて、タダで済むと思わないでください…!」
「っ!」
「あなたが『いい』と言ってくれたこと、今日は全部して差し上げますから」
「ぜ、んぶ、って、」
「キスマークも、身体をなぞるのも、名前を呼ぶのも、全部」
「…!?」
「あなたは、ただ、感じてくれていればいいんです」
にこりと細められた瞳。
それはとても楽しそうで、嬉しそうで、それから幸せそう。
そんなアズール先輩を見たら、私は、もうどうにでもしてと瞼を閉じる以外の道はない。
夢のようなこの時間の中で信じられるのは、先輩の手と、身体と、それから唇。それだけ。
「今夜は寝かさないでほしいです」
「お望み通りに愛しましょう」
【ワードパレット】プリズム 信じられる/強くて綺麗な/イタズラ
私は今日も今日とてそこに行きたくて、緩慢な動作で皆が捌けるのを待っていたのだけど、そうは問屋が卸さない。
お疲れ、と声を掛けながら一人、また一人とラウンジから出て行く中で、同学年の寮生に捕まった。
「あ、お疲れー」
「お疲れ様ー」
「あれっ、あなたさん帰らないの?」
「ん?あー…えっと、そだね、もう少し」
「何か仕事あるんだ?手伝おっか」
「えっ!?いや!?全然大丈夫!気にしないで!」
「でも、」
彼が優しいことはクラスでも周知の事実だったけど、正直今はその優しさが辛い。
どう断ろうかと苦笑を漏らしていれば、奥から別の寮生が数人出てきて、ついでに彼の肩を引っ掴んだ。
「おっつかれー…って何してんのお前ら」
「あっ、お疲れ様です!何って…いや、あなたさんがまだ仕事あるって言うから手伝おうかと」
「あ、あは、あはは…」
出てきた先輩たちはその言葉に皆、目をパチクリさせて、それからニヤァと嫌な笑いを口元に浮かべた。
「あのな、先輩達が新人にありがた〜いこと教えてやろう」
「?なんすか」
「俺たちみたいなモブって立ち位置の人間はとにかく早めに退散するが吉だってこと」
「え、でも」
「貴方達、何をしているんです?」
「っ…!」
「あ、寮長!お疲れ様です!いえ、あなたさんを手伝ング!?」
「今から帰るとこでーす、お疲れ様でした!」
んぐ、んぐー!、と叫びながらも連れ去られた同級生には、ごめんね、と心の中で謝って。
皆がいなくなってから、アズール先輩に向き合うと、お疲れ様です、と私も挨拶を返した。
「…貴女は人気者ですね」
「そんなことはないです。みんなが優しいだけですよ。そんなことよりアズール先輩、お仕事終わりました?」
そう声を掛けるとムッとした表情が返ってきたのみで、何か変なことを言ってしまったかなと首を傾げる。
先輩は私のそんな仕草に構わず、いつもみたいな優雅さのない動きでパシッと私の腕を取ると無言のままに引っ張った。
「わ、あ!えっ、ど、したん」
手を引かれてフラフラしながら辿り着いたのは来る予定だった寮長室ではあったけれど、普段通りの甘い雰囲気でもなければ擽ったいものでもなくてちょっと不安になるも、寮長室に着くなり、私をギュッとその腕に収めたところから、怒ったりしているのではなさそうで。
それでもまだ無言を貫く先輩の態度に疑問を抱く。
「なぜ、貴女は僕以外の人の目にも映ってしまうんです」
「、へ?」
「…バカなことを言っているのは、わかっていますが…貴女が僕にしか見えなければいいのに…」
その言葉を聞く限り、アズール先輩はどうやら嫉妬してくれているようだった。
あまり耳にすることができないアズール先輩の本心に、不謹慎ながら私の気分は一気に高揚する。
「でなければ、本当に、身体中に痕を残してしまいたいくらいだ…貴女は僕の番なのに」
「痕、は、残してほしいって、前から言ってるじゃないですか…」
「少しでも痛いことはしたくありません」
「痛くなんてないですよ。むしろ気持ちいいって言うか…」
「へ、」
「その、ちょっとどころかかなり変態チックだから言わなかったんですけど…アズール先輩に吸いつかれると、身体が…心が喜んでるのが自分でわかるんです。もっとって、震えるの。だから、」
「な…、はぁ!?」
「ほ、ほら…やっぱり、引く、でしょう…?でも、ここまで言ったのでついでに言ってしまうと、身体を撫でられるのも好き、です。アズール先輩の指先には、何もしなくても魔法がかかってると、思うくらいです」
「い、あ、ちょっ、ま、あなた、待って、ちょっと」
「それから、こういう時だけしか聴けない、名前」
「…名前?」
「アズール先輩、普段私のこと、貴女って呼ぶでしょ?あなたって、呼ばれると、なんだか…ぶわっていろんな感情が、ね」
湧いてくる羞恥心を抑えきれず、悪戯にへへっと笑う私。
一方で、そうだったかと思案していた先輩は、数秒ののちに意識をここに戻した。
「………言われてみれば…外ではあまり貴女の名前は呼ばないかもしれませんね」
「でしょう?」
「でも、貴女は僕のこと、名前で呼びますよね」
「え?だって、私が先輩のこと、『あなた』って呼んだら、夫婦みたいだから」
「は、」
「あれ?旦那さんのこと、あなたって呼びません?私の元の世界だけなのか、ンン!?」
私の言葉に固まってしまったアズール先輩を見て、何か誤ったことを口にしたかと眉を寄せたら、何故か勢いよく唇を塞がれて暫く貪られた。
ちゅ、ちゅむ、と絶妙に音を立てられて羞恥が増す。でもそれよりももう息が続かないと強く先輩の服を掴んだところでやっと離れたそれ。
「ん、ハァっ…」
「ふはぁっ…!っ、も、突然、なっ、ん、ふ、あ」
「貴女が!そんなことを言うからっ!」
「…そんなことっ…?」
「!?し、信じられません!今さっき言ったことを忘れるなんて!」
「は、ぇ?そんなこと言われてもっ、わ、!?」
人は見かけによらず、その細い体躯からは考えられないような力でもって私を抱き上げたアズール先輩は、そのままベッドへ私を運び、ポスリとそこに私を落とした。
私を見つめる瞳には、喜びだとか不満だとか羞恥だとか戸惑いだとか、とにかくいろんな感情が浮かんでいるのだけれど、そのブルーはいつだって強くて綺麗で私を惹きつけて離さない。
それでもずっと見つめているのが恥ずかしくなってついに視線を逸らしたら、頬に添えられた手が「そうはさせない」とでも言いたげに私の顔を引き戻す。
「っ…な、なん、です、か」
「僕のことを、翻弄しておいて、タダで済むと思わないでください…!」
「っ!」
「あなたが『いい』と言ってくれたこと、今日は全部して差し上げますから」
「ぜ、んぶ、って、」
「キスマークも、身体をなぞるのも、名前を呼ぶのも、全部」
「…!?」
「あなたは、ただ、感じてくれていればいいんです」
にこりと細められた瞳。
それはとても楽しそうで、嬉しそうで、それから幸せそう。
そんなアズール先輩を見たら、私は、もうどうにでもしてと瞼を閉じる以外の道はない。
夢のようなこの時間の中で信じられるのは、先輩の手と、身体と、それから唇。それだけ。
「今夜は寝かさないでほしいです」
「お望み通りに愛しましょう」
【ワードパレット】プリズム 信じられる/強くて綺麗な/イタズラ