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Azul
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オクタヴィネル寮にはカフェがある。
寮生は割とそこで働くやつも多い。
賄いも出るし、学内バイトで懐が潤う、それに何より、従業員優待で苦手科目一つに限って過去問がもらえる!ということがあるからだ。
頭があまり良くないオレは、入学後、すぐさまそのお誘いに乗ってモストロ・ラウンジで働くことに決めた。
バイトはなかなか楽しい。
少し前に来た学内唯一の女の子である監督生のあなたさんとも仲良くなれたし、いいこと尽くめだ。
ただ、やらかしがあると大変なので…今日は少し焦っている。
「うーわ…今日、皿片付けずにバイト上がった気がする」
寮長が中途半端な仕事を嫌うのは有名な話。
この間も同級生が怒られていた。
だから見つかる前に片付けてしまおうと、スタッフ用の入り口から厨房へ忍び込んだところ、なのだが。
「あれ…?灯りがついてる」
ラウンジが閉まってから随分時間が経ったはずだけど、と不思議に思いながらそっと中を覗き込むと、そこには寮長とあなたさんがいた。
「あの二人の組み合わせ、珍しいな」
あなたさんはどちらかというと副寮長に叱られている、というか、よくいじられているイメージがある。
そこにフロイド先輩が混じったり、別の寮生が混じったりしてワイワイしていることが多く、寮内であの二人が二人きりで話しているのはほとんど見たことがない。
二人は鍋の中を覗き込んで、あーでもないこーでもないと、何やら話をしているが、ここからでは声が聞き取れない。
焦って前のめりになったら、キッ、と小さな音が立ってしまった。
「っ…!」
「…!?誰かいるんですか?」
「へ?何か聞こえました?」
「……」
「…すみません、勘違いのようです」
「アズール先輩、気を張りすぎですよ。こんな時間に厨房に誰かいるなんて」
「それもそうですね…」
(ほっ…。ナイスアシストあなたさん!明日お礼言っとかないとな)
そんなことを考えていると、こちらを向いたまま二人が会話し始めた。声が聞こえやすくなったので、オレはそのまま黙ってそこに立ち尽くす。
「アズール先輩に直接料理を教えてもらえるなんて光栄です」
「貴女があまりにもヘマをするから仕方なく、ですよ」
「あは…それについては本当にすみません…。マニュアル通りちゃんとやってるつもりなんですが、なんででしょうねぇ」
「雑なんですよ。野菜の切り方一つとっても。フロイドでもあれだけ綺麗にやるというのに」
話を聞く限り、あなたさんはお小言を言われるために居残りさせられていることが窺える。
たしかに彼女は少し大雑把なところがあるけど、そこもまた可愛いとポイントがついていたりするのだが、寮長の目は騙されないようだ。
しかし、続いた言葉にオレの目が飛び出してしまった。
「いつか、僕の家庭の味も知ってもらわなければなりませんから」
(は?)
「そのためにはある程度は作れないと難しいでしょう?」
「や…私だって少しくらいはできるんですよ?ただ人に振る舞うような綺麗なものが中々作れないだけで」
「おや。言い訳をするのはこの口ですか」
(え…ッエーーッ!?!?!?)
「言い訳なんかじゃ、ッン、」
寮長がとんでもないことを言い出したと思ったら、今度はなんの躊躇いもなくあなたさんにき、き、き、キスするもんだからオレはたまげて心の中で大声をあげた。
(えっ!?なんで!?あの二人ってそういう?)
すぐに二人は離れたけれど、ニヤリとした寮長があなたさんの唇をなぞると、惚けたようなあなたさんが寮長の名前を呼ぶ。
「…アズール…せんぱい」
「どうかしましたか」
「っ…わかってるくせに…」
「何をでしょう?」
「…足りない、です…もっと、」
(!?!?!?)
あなたさんが少し背伸びして、寮長の首に腕を回して……そのまままたくっついた。
「ん、ンゥ…は、ン、」
「…っふ…ンン、ハァ…」
今度はすぐに離れることもなく、ずっとひっついている二人。あの様子だと相当慣れてる感じかと覗きながら思う。音こそ聞こえないものの随分と長い間キスしているところからも、きっとあれでそれまでシている関係なのかもしれない。
そんなことを考えていると、あなたさんの身体がここからでもわかるほどビクンと跳ねたので、こちらまでびっくりして一センチは飛び上がってしまった。
「ッハ…!ゃ…!あ、ずーる、せんぱいっ…だめ…そんな風に触らないでっ…!」
「ここまでしておいて?今更だめ、とは…本当に?」
「っ…だ、ってこんな、ところで…っ、だめ、ですよ…」
「では、場所が変われば良い、と」
「…そ、そんな、ことは…その、…」
「ふぅ…仕方ありませんね…」
渋るあなたさんの耳に徐に口を寄せた寮長がボソボソとなにかを吹き込んだら、あなたさんの態度があからさまに変わって、こくりと頷いたのが見え、そのタイミングで鍋の火は止まり寮長が軽々とあなたさんを抱えあげる。
(寮長、意外と力あるんだな…ってそうじゃない!こっちに来る!逃げないとっ!)
足音を立てないようにコソコソとその場を離れたオレは、その後の二人がどうなったかは知らない。けれど多分、とオレは自室で布団を被りながら思う。
(あんな幸せそうな顔する寮長、初めて見た。大好きなんだろうな、あなたさんのこと)
見たことを言いふらす趣味もないオレは、イケナイ秘密を知ってしまったような気になって、一人「あの幸せな空間を守り隊」を発足することを決意したのだった。
寮生は割とそこで働くやつも多い。
賄いも出るし、学内バイトで懐が潤う、それに何より、従業員優待で苦手科目一つに限って過去問がもらえる!ということがあるからだ。
頭があまり良くないオレは、入学後、すぐさまそのお誘いに乗ってモストロ・ラウンジで働くことに決めた。
バイトはなかなか楽しい。
少し前に来た学内唯一の女の子である監督生のあなたさんとも仲良くなれたし、いいこと尽くめだ。
ただ、やらかしがあると大変なので…今日は少し焦っている。
「うーわ…今日、皿片付けずにバイト上がった気がする」
寮長が中途半端な仕事を嫌うのは有名な話。
この間も同級生が怒られていた。
だから見つかる前に片付けてしまおうと、スタッフ用の入り口から厨房へ忍び込んだところ、なのだが。
「あれ…?灯りがついてる」
ラウンジが閉まってから随分時間が経ったはずだけど、と不思議に思いながらそっと中を覗き込むと、そこには寮長とあなたさんがいた。
「あの二人の組み合わせ、珍しいな」
あなたさんはどちらかというと副寮長に叱られている、というか、よくいじられているイメージがある。
そこにフロイド先輩が混じったり、別の寮生が混じったりしてワイワイしていることが多く、寮内であの二人が二人きりで話しているのはほとんど見たことがない。
二人は鍋の中を覗き込んで、あーでもないこーでもないと、何やら話をしているが、ここからでは声が聞き取れない。
焦って前のめりになったら、キッ、と小さな音が立ってしまった。
「っ…!」
「…!?誰かいるんですか?」
「へ?何か聞こえました?」
「……」
「…すみません、勘違いのようです」
「アズール先輩、気を張りすぎですよ。こんな時間に厨房に誰かいるなんて」
「それもそうですね…」
(ほっ…。ナイスアシストあなたさん!明日お礼言っとかないとな)
そんなことを考えていると、こちらを向いたまま二人が会話し始めた。声が聞こえやすくなったので、オレはそのまま黙ってそこに立ち尽くす。
「アズール先輩に直接料理を教えてもらえるなんて光栄です」
「貴女があまりにもヘマをするから仕方なく、ですよ」
「あは…それについては本当にすみません…。マニュアル通りちゃんとやってるつもりなんですが、なんででしょうねぇ」
「雑なんですよ。野菜の切り方一つとっても。フロイドでもあれだけ綺麗にやるというのに」
話を聞く限り、あなたさんはお小言を言われるために居残りさせられていることが窺える。
たしかに彼女は少し大雑把なところがあるけど、そこもまた可愛いとポイントがついていたりするのだが、寮長の目は騙されないようだ。
しかし、続いた言葉にオレの目が飛び出してしまった。
「いつか、僕の家庭の味も知ってもらわなければなりませんから」
(は?)
「そのためにはある程度は作れないと難しいでしょう?」
「や…私だって少しくらいはできるんですよ?ただ人に振る舞うような綺麗なものが中々作れないだけで」
「おや。言い訳をするのはこの口ですか」
(え…ッエーーッ!?!?!?)
「言い訳なんかじゃ、ッン、」
寮長がとんでもないことを言い出したと思ったら、今度はなんの躊躇いもなくあなたさんにき、き、き、キスするもんだからオレはたまげて心の中で大声をあげた。
(えっ!?なんで!?あの二人ってそういう?)
すぐに二人は離れたけれど、ニヤリとした寮長があなたさんの唇をなぞると、惚けたようなあなたさんが寮長の名前を呼ぶ。
「…アズール…せんぱい」
「どうかしましたか」
「っ…わかってるくせに…」
「何をでしょう?」
「…足りない、です…もっと、」
(!?!?!?)
あなたさんが少し背伸びして、寮長の首に腕を回して……そのまままたくっついた。
「ん、ンゥ…は、ン、」
「…っふ…ンン、ハァ…」
今度はすぐに離れることもなく、ずっとひっついている二人。あの様子だと相当慣れてる感じかと覗きながら思う。音こそ聞こえないものの随分と長い間キスしているところからも、きっとあれでそれまでシている関係なのかもしれない。
そんなことを考えていると、あなたさんの身体がここからでもわかるほどビクンと跳ねたので、こちらまでびっくりして一センチは飛び上がってしまった。
「ッハ…!ゃ…!あ、ずーる、せんぱいっ…だめ…そんな風に触らないでっ…!」
「ここまでしておいて?今更だめ、とは…本当に?」
「っ…だ、ってこんな、ところで…っ、だめ、ですよ…」
「では、場所が変われば良い、と」
「…そ、そんな、ことは…その、…」
「ふぅ…仕方ありませんね…」
渋るあなたさんの耳に徐に口を寄せた寮長がボソボソとなにかを吹き込んだら、あなたさんの態度があからさまに変わって、こくりと頷いたのが見え、そのタイミングで鍋の火は止まり寮長が軽々とあなたさんを抱えあげる。
(寮長、意外と力あるんだな…ってそうじゃない!こっちに来る!逃げないとっ!)
足音を立てないようにコソコソとその場を離れたオレは、その後の二人がどうなったかは知らない。けれど多分、とオレは自室で布団を被りながら思う。
(あんな幸せそうな顔する寮長、初めて見た。大好きなんだろうな、あなたさんのこと)
見たことを言いふらす趣味もないオレは、イケナイ秘密を知ってしまったような気になって、一人「あの幸せな空間を守り隊」を発足することを決意したのだった。