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Azul
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オンボロ寮にはグリムとゴーストがいる。クラスにはマブがいる。
図書館には高確率で先輩たちがいるし、かといってそのほかの場所でも知り合いがいる確率は高い。
私が一人になれる場所ってどこなんだろう、と考えたとき、一人で行ける場所は限られていて、それはオンボロ寮の裏手くらいなものだ。
故郷に戻りたい、なんて思うことこそ減ったが、なんだかんだ言っても私も人間なので、たまに感傷に浸りたい時もあり、そんな時はほろほろと思うままに涙を流すのが一番心に良い。
今日のこれは何がきっかけだったかとうに忘れてしまったけれど、そんなこんなで私は今日もこのオンボロ寮の裏で涙を流していた。
時刻はすでに夕暮れ時。今日はとっても天気が良かったので、落ちる夕陽もとても綺麗だ。
一頻り泣いたあと、ぼーっと沈みゆく赤色を見つめている私。それでもずっとこのままでいるわけにもいかず。
「はぁ…スッキリした…。このまま戻ったらグリムたちに心配されるかなぁ…。そのままお風呂に直行すればちょっとはマシな顔に戻るかな…?」
重い腰を持ち上げて、パンパンとお尻を払ったその時。
「あぁもう。こんなところにい…」
よもやこんなところにいるはずもないのに、あろうことかアズール先輩が顔を覗かせて、一瞬、時が止まった。
「な……!?あなた、どうしたんですか?」
「え…あっ!?こ、これは、その」
「目が真っ赤じゃないか!何があったんです?どうして一人でこんなところにいるんだ!」
「っ!?」
すごい勢いで詰め寄ってきたアズール先輩は、それでも私の目尻をそっと撫でた。
グローブをはめていても、先輩の優しさがその手つきから伝わってきて、止まったはずの涙がまたホロリと落ちた。
「また…!そんなに辛いことがあるんだったら僕に言えと、」
「っちが、違うんです、これは、ッその」
「何が違うんです!泣いているのは事実じゃないか!」
「あ、あの、これ、は、その、天気予報が、嘘つきで、きっと、雨のせいで」
「そんなわけあるか!」
「っひ、」
「…ッ…失礼、取り乱しました…ですが、そんなわけないでしょう。あまり一人で悩まないでください。何のために僕がいるかわからなくなる…」
ぎゅっと抱きしめられて、アズール先輩のコロンの香りが私の鼻腔を満たす。スゥ、と深い呼吸を一つ。だんだんと落ち着いた頭で考えるのは、どう説明したらいいのかということ。必死で記憶を探れば、ああ、思い出した。今日のこの涙のきっかけは。
「しゃ、しゃしん、」
「写真?」
「ゴースト、カメラで、撮影するんですけど…みんなのことを」
「ああ、あなたは学園長に監督するよう頼まれていましたものね」
「でも、怖くて、」
「?」
「自分が、写るのは、怖くて」
私の存在が、この世界からいつか消えることは当然わかり切っていた。だからこそ、それに写ってしまったら、私が戻った後は一体、どんな風にそれが残るのか、怖かった。誰かは覚えてくれていて、写真にも姿が残るのだろうか。または、誰の記憶に残らず、写真にもぽっかり空間があくのだろうか。そんな『いつか』に想いを馳せていたら、とてつもなく寂しくなって、泣いて忘れようと思ったんだ。
ポツリ、ポツリと話しをすれば、先輩の腕から力が抜けていくのが背中に回った手が緩んだことで感じられた。
「何だ…そんなことか」
「そんな言い方、」
「ああ、すみません、言葉が悪かったですね。いえ、そんなことと言ったのは、怖がった理由の方です」
少し身体を離して、先輩は私と視線を絡めた。
「あなたの番 は、外でもないこの僕です。僕のことを信じるなら、もっと自信を持ちなさい」
「…?」
「あなたがここに戻りたいと望むなら、必ず、どこにいたってあなたを見つけて、連れ戻します」
「!」
先輩は、映画俳優が浮かべるような、完璧な笑顔を口元に浮かべて、自信たっぷりにそう言い切った。
アズール先輩は、ずるい。いつだってそんな風に、私の悩みを一瞬で溶かしてしまうんだから。
「それは、慈悲、ですか?」
「いいえ、これは慈悲でも、約束ではありません。真実、ですよ」
そっと交わしたキスの合間に、もう一粒流れた涙は、これはきっと雨のせい。
だって先輩、お天気の時も、雨は降るんですよ。
そう、お天気雨はね、幸運の予兆なんだって。
図書館には高確率で先輩たちがいるし、かといってそのほかの場所でも知り合いがいる確率は高い。
私が一人になれる場所ってどこなんだろう、と考えたとき、一人で行ける場所は限られていて、それはオンボロ寮の裏手くらいなものだ。
故郷に戻りたい、なんて思うことこそ減ったが、なんだかんだ言っても私も人間なので、たまに感傷に浸りたい時もあり、そんな時はほろほろと思うままに涙を流すのが一番心に良い。
今日のこれは何がきっかけだったかとうに忘れてしまったけれど、そんなこんなで私は今日もこのオンボロ寮の裏で涙を流していた。
時刻はすでに夕暮れ時。今日はとっても天気が良かったので、落ちる夕陽もとても綺麗だ。
一頻り泣いたあと、ぼーっと沈みゆく赤色を見つめている私。それでもずっとこのままでいるわけにもいかず。
「はぁ…スッキリした…。このまま戻ったらグリムたちに心配されるかなぁ…。そのままお風呂に直行すればちょっとはマシな顔に戻るかな…?」
重い腰を持ち上げて、パンパンとお尻を払ったその時。
「あぁもう。こんなところにい…」
よもやこんなところにいるはずもないのに、あろうことかアズール先輩が顔を覗かせて、一瞬、時が止まった。
「な……!?あなた、どうしたんですか?」
「え…あっ!?こ、これは、その」
「目が真っ赤じゃないか!何があったんです?どうして一人でこんなところにいるんだ!」
「っ!?」
すごい勢いで詰め寄ってきたアズール先輩は、それでも私の目尻をそっと撫でた。
グローブをはめていても、先輩の優しさがその手つきから伝わってきて、止まったはずの涙がまたホロリと落ちた。
「また…!そんなに辛いことがあるんだったら僕に言えと、」
「っちが、違うんです、これは、ッその」
「何が違うんです!泣いているのは事実じゃないか!」
「あ、あの、これ、は、その、天気予報が、嘘つきで、きっと、雨のせいで」
「そんなわけあるか!」
「っひ、」
「…ッ…失礼、取り乱しました…ですが、そんなわけないでしょう。あまり一人で悩まないでください。何のために僕がいるかわからなくなる…」
ぎゅっと抱きしめられて、アズール先輩のコロンの香りが私の鼻腔を満たす。スゥ、と深い呼吸を一つ。だんだんと落ち着いた頭で考えるのは、どう説明したらいいのかということ。必死で記憶を探れば、ああ、思い出した。今日のこの涙のきっかけは。
「しゃ、しゃしん、」
「写真?」
「ゴースト、カメラで、撮影するんですけど…みんなのことを」
「ああ、あなたは学園長に監督するよう頼まれていましたものね」
「でも、怖くて、」
「?」
「自分が、写るのは、怖くて」
私の存在が、この世界からいつか消えることは当然わかり切っていた。だからこそ、それに写ってしまったら、私が戻った後は一体、どんな風にそれが残るのか、怖かった。誰かは覚えてくれていて、写真にも姿が残るのだろうか。または、誰の記憶に残らず、写真にもぽっかり空間があくのだろうか。そんな『いつか』に想いを馳せていたら、とてつもなく寂しくなって、泣いて忘れようと思ったんだ。
ポツリ、ポツリと話しをすれば、先輩の腕から力が抜けていくのが背中に回った手が緩んだことで感じられた。
「何だ…そんなことか」
「そんな言い方、」
「ああ、すみません、言葉が悪かったですね。いえ、そんなことと言ったのは、怖がった理由の方です」
少し身体を離して、先輩は私と視線を絡めた。
「あなたの
「…?」
「あなたがここに戻りたいと望むなら、必ず、どこにいたってあなたを見つけて、連れ戻します」
「!」
先輩は、映画俳優が浮かべるような、完璧な笑顔を口元に浮かべて、自信たっぷりにそう言い切った。
アズール先輩は、ずるい。いつだってそんな風に、私の悩みを一瞬で溶かしてしまうんだから。
「それは、慈悲、ですか?」
「いいえ、これは慈悲でも、約束ではありません。真実、ですよ」
そっと交わしたキスの合間に、もう一粒流れた涙は、これはきっと雨のせい。
だって先輩、お天気の時も、雨は降るんですよ。
そう、お天気雨はね、幸運の予兆なんだって。