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「フロイド先輩、私ね、もうすぐテストなんです。」
「小エビちゃん、知ってる?オレもNRCの生徒だからさ一応。同じスケジュールで試験あるんだよね。」
「ですよね、同じですね。テストってどうしてあるんでしょう?勉強ってそんなに重要なんでしょうか…?」
「あはは!それアズールの前で言ったら怒られるってか、イソギンチャクはやされそ~!」
オンボロ寮じゃ勉強に集中できないので、図書室に来てはみたものの、それはそれで独特の静けさによる眠気が我慢できずに陥落しそう。
そんな頃合いに、やってきたのはフロイド先輩だった。
フロイド先輩は見た目に反して「きちんと受験した」テストの点数は良いらしい。
やればできるのにやらないというのは天才だからできることで、私はその天才ではないので、勉強が必要なわけだ。
「やりたくないです。勉強。」
「まぁ小エビちゃんは余計にでしょ。なんもわかんないだろうし。」
「わかってたころもやりたくなかったですけど。今はもっとやりたくないです。」
「わぁかる。オレもやりたくない勉強いっぱいあるよ。」
私の席の隣にストンと腰を掛けて、その長い脚を利用してギッと椅子を斜めに傾けた。
ぎっ、ぎっ、と前後に揺れながら、顔を天井に向けて何やら思案…と思えば、突然『あ!』と声を上げる。
すると今度はマジカルペンを取り出して、目の前に置かれていた「私の」教科書に何かを書き込み始める。
…待ってください。マジカルペンって鉛筆じゃないから、消えないのでは。
「フロイド先輩、それ、私の、」
「はい。」
「え?」
書かれたそれを見てみると何やら式が書かれていて、『これ覚えたら一発』という吹き出しとともにウツボのイラストがあった。
「フロイド先輩、絵、上手〜っ!」
「でしょ~。これは、オレ。ついでにジェイドも書くね。」
「はい、っじゃなくて!ヒント!ありがとうございます!」
「ここ、去年やったときわかりにくかったから、イシダイ先生に突っ込み入れたら覚え方のコツ教えてくれたんだよね。」
「え!?クルーウェル先生、こんなこと一言も…」
「あは。そのときさ、めーっちゃ怒ってたから。こんなのは自分で導き出してこそだぞリーチ!っつって。似てた?」
「似ては…なかったです、けどそれよりも、うわ〜!本当に、これならできそう!」
「こういうヒントってさぁ、早く教えてもらったほうがいいもんねぇ。そうすればテストも結構楽かもしんねぇし。」
『それはそうですね…』とは独り言のような小さな音となって、図書室の静寂に溶けた。
「知ってるのと知らないのとじゃ、勉強のはかどり具合が大違いです。」
「世の中ってさぁ、そういうことなんじゃね?」
「へ?」
「知ってたら、楽。知らなかったら、損。そんな感じ。」
「なるほど…?」
「あんま重く考えないでさ、いいと思うけど。でも、」
そこで言葉を切って、フロイド先輩は私のほうをじっと見つめる。
綺麗なオッドアイに捕らわれて、私は息をするのも忘れてしまった。
「小エビちゃんが困ってんなら、オレがコツ、教えてあげてもいーよ。」
「…!ほ、ほんとに、ですか?」
「対価は、そうだねぇ…」
ニイっと笑って、先輩は言った。
「オレと一緒に、いつでもお菓子食ってくれる?いつでも、オレの好きな時に。」
「…へ?そんなことでいいんですか?」
「だってさぁ、アズールに見つかると怒られるし、部屋で食っててジェイドに見つかると汚すなって言われるし。外で食べるしかねぇじゃん?だから食うとこなくて困ってたんだよね。オンボロ寮提供してよ。」
そんな申し出は卑怯だ。対価なんかになり得ない。
だって私は、いつでもフロイド先輩の傍にいたいんだから。
「喜んで、」
「いーの?マジで?いつでも好きな時に行くよオレ。アザラシちゃんとかいいの?」
「グリムは…グリムは、嫌がるかもしれないけど、お部屋も余ってるので…」
「やっぱりなし、とかだめだかんね?」
「そんなことしませんよ。私も、お菓子用意して待ってますね。」
「は?小エビちゃん優しいね。」
「あ…、だってほら、対価、ですから…」
「オレ…たぶん、」
そこでまた不自然に切られた言葉に、私は顔をあげてフロイド先輩を見つめた。
すると先輩の瞳もこちらを向いていて。
さらにその手が私の髪を撫でた。
「せん、ぱい?」
「小エビちゃんなら、ぜってー断らないだろうなって、思ったから。」
「え、」
「だから、会いに行く口実にー…」
そこまで言ってボッと顔から火を噴いたフロイド先輩は、そっぽをむいて黙り込んだ。
「フロイド先輩、あの…」
「ちょ、ちょっと待って!なんでもねぇから!ッアーもー…!」
「でも先輩、それは。」
「だってさあ!オレたち付き合ってんじゃねぇの?!なのに小エビちゃん、あんまりオレに寄ってこねぇし!」
「な、」
「もっと一緒にいたいっつってんの!」
フロイド先輩、ここは図書室なんですが。人の目が少し気になります。
…なんて野暮なこと、このタイミングには似合わないんだろうな。
でも先輩、私ね。
「私も、」
「?」
「私も、もっと、一緒にいたい、です。フロイド先輩と、一緒に。」
「っ~~~~!」
『そういうことは早く言ってよ!』との言葉は、先ほどとは打って変わって小さく耳元で呟かれた。
フロイド先輩に抱きしめられた私からも、そっとその背に手を回してみれば、もっとぎゅっと締まる腕。
胸のドキドキのせいで、今後の勉強は捗らなくなるかもしれないな、なんて思いながらも、この優しい腕の中からは逃げられるはずもない。
「小エビちゃん、知ってる?オレもNRCの生徒だからさ一応。同じスケジュールで試験あるんだよね。」
「ですよね、同じですね。テストってどうしてあるんでしょう?勉強ってそんなに重要なんでしょうか…?」
「あはは!それアズールの前で言ったら怒られるってか、イソギンチャクはやされそ~!」
オンボロ寮じゃ勉強に集中できないので、図書室に来てはみたものの、それはそれで独特の静けさによる眠気が我慢できずに陥落しそう。
そんな頃合いに、やってきたのはフロイド先輩だった。
フロイド先輩は見た目に反して「きちんと受験した」テストの点数は良いらしい。
やればできるのにやらないというのは天才だからできることで、私はその天才ではないので、勉強が必要なわけだ。
「やりたくないです。勉強。」
「まぁ小エビちゃんは余計にでしょ。なんもわかんないだろうし。」
「わかってたころもやりたくなかったですけど。今はもっとやりたくないです。」
「わぁかる。オレもやりたくない勉強いっぱいあるよ。」
私の席の隣にストンと腰を掛けて、その長い脚を利用してギッと椅子を斜めに傾けた。
ぎっ、ぎっ、と前後に揺れながら、顔を天井に向けて何やら思案…と思えば、突然『あ!』と声を上げる。
すると今度はマジカルペンを取り出して、目の前に置かれていた「私の」教科書に何かを書き込み始める。
…待ってください。マジカルペンって鉛筆じゃないから、消えないのでは。
「フロイド先輩、それ、私の、」
「はい。」
「え?」
書かれたそれを見てみると何やら式が書かれていて、『これ覚えたら一発』という吹き出しとともにウツボのイラストがあった。
「フロイド先輩、絵、上手〜っ!」
「でしょ~。これは、オレ。ついでにジェイドも書くね。」
「はい、っじゃなくて!ヒント!ありがとうございます!」
「ここ、去年やったときわかりにくかったから、イシダイ先生に突っ込み入れたら覚え方のコツ教えてくれたんだよね。」
「え!?クルーウェル先生、こんなこと一言も…」
「あは。そのときさ、めーっちゃ怒ってたから。こんなのは自分で導き出してこそだぞリーチ!っつって。似てた?」
「似ては…なかったです、けどそれよりも、うわ〜!本当に、これならできそう!」
「こういうヒントってさぁ、早く教えてもらったほうがいいもんねぇ。そうすればテストも結構楽かもしんねぇし。」
『それはそうですね…』とは独り言のような小さな音となって、図書室の静寂に溶けた。
「知ってるのと知らないのとじゃ、勉強のはかどり具合が大違いです。」
「世の中ってさぁ、そういうことなんじゃね?」
「へ?」
「知ってたら、楽。知らなかったら、損。そんな感じ。」
「なるほど…?」
「あんま重く考えないでさ、いいと思うけど。でも、」
そこで言葉を切って、フロイド先輩は私のほうをじっと見つめる。
綺麗なオッドアイに捕らわれて、私は息をするのも忘れてしまった。
「小エビちゃんが困ってんなら、オレがコツ、教えてあげてもいーよ。」
「…!ほ、ほんとに、ですか?」
「対価は、そうだねぇ…」
ニイっと笑って、先輩は言った。
「オレと一緒に、いつでもお菓子食ってくれる?いつでも、オレの好きな時に。」
「…へ?そんなことでいいんですか?」
「だってさぁ、アズールに見つかると怒られるし、部屋で食っててジェイドに見つかると汚すなって言われるし。外で食べるしかねぇじゃん?だから食うとこなくて困ってたんだよね。オンボロ寮提供してよ。」
そんな申し出は卑怯だ。対価なんかになり得ない。
だって私は、いつでもフロイド先輩の傍にいたいんだから。
「喜んで、」
「いーの?マジで?いつでも好きな時に行くよオレ。アザラシちゃんとかいいの?」
「グリムは…グリムは、嫌がるかもしれないけど、お部屋も余ってるので…」
「やっぱりなし、とかだめだかんね?」
「そんなことしませんよ。私も、お菓子用意して待ってますね。」
「は?小エビちゃん優しいね。」
「あ…、だってほら、対価、ですから…」
「オレ…たぶん、」
そこでまた不自然に切られた言葉に、私は顔をあげてフロイド先輩を見つめた。
すると先輩の瞳もこちらを向いていて。
さらにその手が私の髪を撫でた。
「せん、ぱい?」
「小エビちゃんなら、ぜってー断らないだろうなって、思ったから。」
「え、」
「だから、会いに行く口実にー…」
そこまで言ってボッと顔から火を噴いたフロイド先輩は、そっぽをむいて黙り込んだ。
「フロイド先輩、あの…」
「ちょ、ちょっと待って!なんでもねぇから!ッアーもー…!」
「でも先輩、それは。」
「だってさあ!オレたち付き合ってんじゃねぇの?!なのに小エビちゃん、あんまりオレに寄ってこねぇし!」
「な、」
「もっと一緒にいたいっつってんの!」
フロイド先輩、ここは図書室なんですが。人の目が少し気になります。
…なんて野暮なこと、このタイミングには似合わないんだろうな。
でも先輩、私ね。
「私も、」
「?」
「私も、もっと、一緒にいたい、です。フロイド先輩と、一緒に。」
「っ~~~~!」
『そういうことは早く言ってよ!』との言葉は、先ほどとは打って変わって小さく耳元で呟かれた。
フロイド先輩に抱きしめられた私からも、そっとその背に手を回してみれば、もっとぎゅっと締まる腕。
胸のドキドキのせいで、今後の勉強は捗らなくなるかもしれないな、なんて思いながらも、この優しい腕の中からは逃げられるはずもない。