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Azul
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『雨かぁ…』
どことなく体調が悪いと思えば、空がすでに泣いていた。
気圧の上がり下がりに体調を左右されがちな私にとっての鬼門の天気だ。
『ううん…頭がズキズキする…』
こちらの世界は割と天気の良い日が続いていたので心配はしていなかったのだが、当たり前のように雨は降るようだ。
体調が良くないからといって、学校を休むわけにも、モストロラウンジのシフトがなくなるわけでもなく。
私は、いつも通りオクタヴィネル寮へと足を進めた。
早めについたオクタヴィネル寮。ここは、寮自体が水の中にあるせいか、開店前であれば、とても静かで気圧の影響も緩やかな気がする。
他寮で勝手に申し訳ないとも思ったが、少しだけ休ませてもらおうと、奥のボックス席に腰を掛けて目を閉じた。
アズール先輩に会えるなら、私は今日もがんばれる。
*
「何度あっても、こういう日は浮き足立ちますね」
新メニューのお披露目の日とあって、いつもより早くラウンジに出てきた僕は、支配人の鏡と言えるだろう。
売り上げ見込みはこの程度。
今後の見通しはこうなるだろう。
戦略を考え、手を打っていくこの感覚は、僕を楽しませてくれるゲームのようなものだ。
「もちろん、勝ちしかないのですけれどね」
勝てるゲームメイクをするのは己の力を確認する作業として、とても気分が良いので、自然と笑顔になるのも仕方のないことだ。
そんなことを考えながら、VIPルームへと歩を進める途中。いるはずのない人がそこに座っているのが視界に入って、少なからず驚いた。
「あなた...?」
近寄ってみれば、どことなく顔色の悪いあなたがボックス席で目を閉じている。
声をかけても反応がないということは、眠っているのだろうか。
いつ見ても可愛らしいあなたが、僕の彼女だなんて、いまだに信じられないが、その細い腕にこうして触れられるまでの関係性なのだから、そろそろ自信を持たなければならないだろう。
「…あなた?大丈夫ですか?こんなところにいたら冷えますよ?」
膝をついてかがみ込み、目線を合わせてからトントンと腕を叩いてやると、薄らと目を開いて、僕の姿を捉えた。
『...あず…る、せんぱぃ?』
「あなた、どこか悪いのですか?もしそうなら僕の部屋で休んでいてもらっても構いませんが」
『ん…だいじょぶ、』
「そうは見えませんが?ラウンジのために頑張ってくださるのは嬉しいことですが、ご自分の体調を一番にしてください?」
仕方ない。時間ギリギリまで様子を見て、それでもこんな状況であったら無理矢理休ませよう。そう思って、とりあえず膝掛けか何かをと、立ち上がろうとした刹那。
くんっと、寮服の裾を掴まれて、思わず背もたれに腕をついて身体を支えたせいで、不覚にもあなたを囲うような体勢になってしまった。
瞬時に体温が上昇する。
「っ!?あなた、危ないでしょう!」
『…ラウンジ…の、ためじゃ、ない、です』
「はい?」
『アズール先輩に、会いたかったから、きてるんですよ…』
とろんと熱っぽい目を向けられて冷静でいられるほど、できた人間でなかった僕は、そのまま身を屈めて彼女の唇に触れるだけのキスを落とした。
「ッ、あんまり可愛らしいことを言わないでください…」
『だって…ほんと、だから…。アズール先輩は…私に会えなくても、寂しくないかもですけど…』
「そんなことあるわけないでしょう、じゃないとラウンジで働かせたりしませんよ」
頬に添えた手を、サラリとした髪が抜けていく。
そんなことを言われては困ってしまうと、口の端を歪めれば、離れたはずの唇が、今度は彼女から求められてしまって、どうにも堪らない。
『ん…ふ、』
「!」
触れただけでは飽き足らず、吸い付くようなそれに、男らしくなくビクリと肩を揺らす僕にもお構いなし。
どうやら今日のあなたは積極的な様子だ。
ちゅ、と意図してかせずか、唇を離した際のリップノイズが耳に届いて、ここがどこであるかすらどうでも良くなってしまう。
「…ッハ、どう、したんですか、」
『…ン…もっと』
「は、」
『して、くださ…』
「っ…?!」
『アズール先輩のこと、だけ、考えてたら、頭痛おさまりそ、です』
そんなことあるわけないだろうと、やっぱり体調不良じゃないかと、思ったけれど、そんな誘いに乗らないほどの仲でもないわけで。
あなたが僕のメガネをカシャリと取り去ったのを合図に、また唇を合わせた。
「ハ…、そうですか、では、お望みどおりにっ、ん。」
『んぅ、』
さっきと同じかそれ以上か。
舌を絡めて隙間なくくっついて互いを貪る。唇から一つになる。
ズルズルと背もたれを伝って、ソファーにあなたを押し倒す形になってもなお、濃厚なキスは留まるところをしらない。
あなたの細腕が僕の首筋に当たって、ひんやりと気持ちがいい。もしかしたら冷えからくる緊張型頭痛なのか、とは一瞬だけ過った冷静な考えだ。
『う、ン、ふぁ、っ』
「…っハ、ぁ、ンッ」
巻きついた腕の拘束が弱まったところで、やっと離れた僕たちは、仕事が始まる前だというのに二人して息があがってしまっていた。
「はぁ…もぅ、あなたって人は…やはり今日は休んでください。あとで薬を持っていきましょう」
『...アズール先輩、』
「なんですか?」
返してもらったメガネを掛け直しながら、あなたの頬を撫でてやれば、生理的に潤んだその目から涙が一筋溢れた。
『ずっと、一緒にいてくださいね、』
こんなに近くにいても、何かの拍子に思い出されるあなたの運命は、あなたを囲って逃がさないのかもしれない。
それならば僕は。
僕の持てる力をもって、あなたに応えるだけなのだ。
「当たり前ですよ。任せてください。僕が誰だかわかっているでしょう?」
そのままあなたを抱き上げて、自室へと向かった。
やっぱり無理をしていたと見えるあなたは、そのまま腕の中で眠りに落ちてしまったので、僕のベッドに寝かせて部屋を後にする。
弱っていると、甘えたになるのか?などと不埒な考えが過ぎったが、頭を振って追い払い、薬の調合をすることを脳内のメモに加えた。
ラウンジに戻ると同時にジェイドとフロイドからの制裁を受けることなど露知らず。
どことなく体調が悪いと思えば、空がすでに泣いていた。
気圧の上がり下がりに体調を左右されがちな私にとっての鬼門の天気だ。
『ううん…頭がズキズキする…』
こちらの世界は割と天気の良い日が続いていたので心配はしていなかったのだが、当たり前のように雨は降るようだ。
体調が良くないからといって、学校を休むわけにも、モストロラウンジのシフトがなくなるわけでもなく。
私は、いつも通りオクタヴィネル寮へと足を進めた。
早めについたオクタヴィネル寮。ここは、寮自体が水の中にあるせいか、開店前であれば、とても静かで気圧の影響も緩やかな気がする。
他寮で勝手に申し訳ないとも思ったが、少しだけ休ませてもらおうと、奥のボックス席に腰を掛けて目を閉じた。
アズール先輩に会えるなら、私は今日もがんばれる。
*
「何度あっても、こういう日は浮き足立ちますね」
新メニューのお披露目の日とあって、いつもより早くラウンジに出てきた僕は、支配人の鏡と言えるだろう。
売り上げ見込みはこの程度。
今後の見通しはこうなるだろう。
戦略を考え、手を打っていくこの感覚は、僕を楽しませてくれるゲームのようなものだ。
「もちろん、勝ちしかないのですけれどね」
勝てるゲームメイクをするのは己の力を確認する作業として、とても気分が良いので、自然と笑顔になるのも仕方のないことだ。
そんなことを考えながら、VIPルームへと歩を進める途中。いるはずのない人がそこに座っているのが視界に入って、少なからず驚いた。
「あなた...?」
近寄ってみれば、どことなく顔色の悪いあなたがボックス席で目を閉じている。
声をかけても反応がないということは、眠っているのだろうか。
いつ見ても可愛らしいあなたが、僕の彼女だなんて、いまだに信じられないが、その細い腕にこうして触れられるまでの関係性なのだから、そろそろ自信を持たなければならないだろう。
「…あなた?大丈夫ですか?こんなところにいたら冷えますよ?」
膝をついてかがみ込み、目線を合わせてからトントンと腕を叩いてやると、薄らと目を開いて、僕の姿を捉えた。
『...あず…る、せんぱぃ?』
「あなた、どこか悪いのですか?もしそうなら僕の部屋で休んでいてもらっても構いませんが」
『ん…だいじょぶ、』
「そうは見えませんが?ラウンジのために頑張ってくださるのは嬉しいことですが、ご自分の体調を一番にしてください?」
仕方ない。時間ギリギリまで様子を見て、それでもこんな状況であったら無理矢理休ませよう。そう思って、とりあえず膝掛けか何かをと、立ち上がろうとした刹那。
くんっと、寮服の裾を掴まれて、思わず背もたれに腕をついて身体を支えたせいで、不覚にもあなたを囲うような体勢になってしまった。
瞬時に体温が上昇する。
「っ!?あなた、危ないでしょう!」
『…ラウンジ…の、ためじゃ、ない、です』
「はい?」
『アズール先輩に、会いたかったから、きてるんですよ…』
とろんと熱っぽい目を向けられて冷静でいられるほど、できた人間でなかった僕は、そのまま身を屈めて彼女の唇に触れるだけのキスを落とした。
「ッ、あんまり可愛らしいことを言わないでください…」
『だって…ほんと、だから…。アズール先輩は…私に会えなくても、寂しくないかもですけど…』
「そんなことあるわけないでしょう、じゃないとラウンジで働かせたりしませんよ」
頬に添えた手を、サラリとした髪が抜けていく。
そんなことを言われては困ってしまうと、口の端を歪めれば、離れたはずの唇が、今度は彼女から求められてしまって、どうにも堪らない。
『ん…ふ、』
「!」
触れただけでは飽き足らず、吸い付くようなそれに、男らしくなくビクリと肩を揺らす僕にもお構いなし。
どうやら今日のあなたは積極的な様子だ。
ちゅ、と意図してかせずか、唇を離した際のリップノイズが耳に届いて、ここがどこであるかすらどうでも良くなってしまう。
「…ッハ、どう、したんですか、」
『…ン…もっと』
「は、」
『して、くださ…』
「っ…?!」
『アズール先輩のこと、だけ、考えてたら、頭痛おさまりそ、です』
そんなことあるわけないだろうと、やっぱり体調不良じゃないかと、思ったけれど、そんな誘いに乗らないほどの仲でもないわけで。
あなたが僕のメガネをカシャリと取り去ったのを合図に、また唇を合わせた。
「ハ…、そうですか、では、お望みどおりにっ、ん。」
『んぅ、』
さっきと同じかそれ以上か。
舌を絡めて隙間なくくっついて互いを貪る。唇から一つになる。
ズルズルと背もたれを伝って、ソファーにあなたを押し倒す形になってもなお、濃厚なキスは留まるところをしらない。
あなたの細腕が僕の首筋に当たって、ひんやりと気持ちがいい。もしかしたら冷えからくる緊張型頭痛なのか、とは一瞬だけ過った冷静な考えだ。
『う、ン、ふぁ、っ』
「…っハ、ぁ、ンッ」
巻きついた腕の拘束が弱まったところで、やっと離れた僕たちは、仕事が始まる前だというのに二人して息があがってしまっていた。
「はぁ…もぅ、あなたって人は…やはり今日は休んでください。あとで薬を持っていきましょう」
『...アズール先輩、』
「なんですか?」
返してもらったメガネを掛け直しながら、あなたの頬を撫でてやれば、生理的に潤んだその目から涙が一筋溢れた。
『ずっと、一緒にいてくださいね、』
こんなに近くにいても、何かの拍子に思い出されるあなたの運命は、あなたを囲って逃がさないのかもしれない。
それならば僕は。
僕の持てる力をもって、あなたに応えるだけなのだ。
「当たり前ですよ。任せてください。僕が誰だかわかっているでしょう?」
そのままあなたを抱き上げて、自室へと向かった。
やっぱり無理をしていたと見えるあなたは、そのまま腕の中で眠りに落ちてしまったので、僕のベッドに寝かせて部屋を後にする。
弱っていると、甘えたになるのか?などと不埒な考えが過ぎったが、頭を振って追い払い、薬の調合をすることを脳内のメモに加えた。
ラウンジに戻ると同時にジェイドとフロイドからの制裁を受けることなど露知らず。