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「うっ…らかららめっていった、でしょぉ…」
呂律が回らないのに必死で言い訳している膝の上のこの人は、まごうことなき私の旦那様。彼を膝の上に乗せながら、私は悶絶している。
身体の大きさ的にも、いつも膝に乗せられるのは私に決まっているのだけど、今日に限っては逆だった。
(…っ…か、かわいい…!)
頬を桃色に染めて、私に跨って首筋でだだっこのようにぐりぐりと顔を動かしているのが、モストログループを仕切る支配人、アズール・アーシェングロット。
普段の様子からは、想像もできないだろう。
本日も定時きっかりにあがってきたアズールさんとは、軽いディナーとしゃれこんでいた。
事業内容的にもワインの差し入れをもらうことが多いので、夜のお供には大抵それをいただく習慣がついている。
ワインは苦手、という人も多いと聞くが、本当に美味しいワインを飲むと虜になってしまうもの。この一杯のために一日を頑張っているといっても過言ではない。
たまに本当に口に合うものに出会うと、もう一杯、となることもあるのだが、そんなときでもアズールさんは絶対に次を注ぐことを許さない。その横で私だけもう一杯というのも気がひけるので、自然と一日一杯で終了となっていた。
ただ、その「一杯だけ」がこのような形で破られて、このような結果を招くなんて、本当に想定外だったのだ。
ちなみに、無理矢理飲ませたりなんて、アズールさんに誓って絶対にしていないことは、先に告げておく。
発端は本当に些細な一言だった。
「アズールさん、今日ね、また新しいワインをいただいたんだけど、今飲んでいるのと似ているようで全然違った味なんですって。せっかくだから今後のためにもテイスティングしてみませんか?」
「あ…いえ、僕は今日はもう、」
「そうですか?差異を味わうなんてあまりできることじゃないと思ったんですけど、」
「あなたがしたいなら、開けたらいいですよ。僕は今日はもう十分飲んだので」
「でも私よりも詳しく知っておくべきはアズールさんですよ?私、グラスに注ぐので、香りくらい嗅いでみたらどうですか?」
その言葉にグッと顔を強張らせたアズールさんを見て、そんなにも嫌がる理由があったかなと考えるも、思いつかないままにもう一杯を準備した私は、先にグラスをアズールさんに差し出した。
「はい。もし飲めそうだったら、飲んで大丈夫ですよ」
「別に飲めないわけじゃない。ふん、そこまで言うならいただきましょう」
その台詞を聞いて、始めて思い当たることがあったがもう遅い。
だって本当に知らなかったのだ。「弱かったから」一日一杯の制限をしていたなんて。
アズールさんのことだから、カロリーでも気にして飲んでいないだけだと思っていた。
それから、いくらお酒に弱いと言っても、こんな、たかが一口のテイスティングで許容量を越え、突然ここまで酔ってしまう人がいるなんてことも知らなかった。
言っておいてくれればよかったのに、と思ったけれど、このアズールさんが、下手をしたら弱みとも取られるようなことを口にするわけがないことは少し考えればわかることだから小言を言うのはやめた。
ぐだぐだとぐずるアズールさんをなんとか食卓からソファーまで連れ出せば、私を座らせ、その上を跨いでこの通りだ。
「ごめんなさい、アズールさん。二度と試しませんか、なんて言いませんから許してもらえませんか?」
「うぅ…いえでよかった…こんなところ、だれかにみられたら、ぼく、」
「お水飲みましょ?少しでも抜けるかもしれないです」
「だいじょうぶ、です。すぐに、戻りますから」
「本当ですか?…本人が一番よく知っているとは思いますけど…ちょっと心配です…。気分が悪いとかはないんですよね?大丈夫ですか?」
「はい…そういうのは、あまり。ちょっと、眠くなったり、顔が赤くなったり、するだけで、でも、だから、飲まないように、して」
「覚えておきますね。今後は二度と勧めたりしないように」
こんな可愛らしいところを誰かに見られてたまるものかと、自分の欲望を抑えつつもアズールさんから見えないのを良いことに、頬を緩ませてあやすように頭や背を撫でていると、ふと私の肩に埋まっていた顔が起き上がった。
その表情はムッとして、何か気に入らないことがあった様子。
「あきれてるんでしょう」
「へ?」
「こんな、さけに弱くて、一杯いじょうは付き合えない、ぼくなんて、本当は、ぼくのことなんてもう嫌いになってるんでしょうっ」
「!?そんなわけないですよ!」
「でも僕がさわるといやって言うじゃないですか」
「そんなこと言いません!今だって全然、」
「うそだ!ベッドのうえでたまに言う!」
「っ!?」
「僕はあなたにいつも聞いてるのに。どうしてほしいかって…。なのにその通りにしてもいやって」
「そ、それは…」
普段見ることのない本心を覗いたようで、私はごくりと嚥下した。
そして一時のあと、なんとか言葉をひねり出す。
「あれ、は、その」
「『その』…なんですか?」
「あの、いや、は、ちがうんですっ」
「…どう違うんですか…言ってくれないと、わかりません!」
「っ、だ、から、裏返しの気持ちですってば!!」
「うらがえし?」
「だって、っ…もっと、とか、気持ちいい、とか、そんなことばかり言えないでしょう!?」
「なぜですか?」
「恥ずかしいんですよ!?アズールさんはいつでもかっこいいけど私は見た目も中身も普通なんだから喘いだって大してかわいくもないのにそんなはしたないことばかり言っていたら嫌われちゃうかもしれないじゃないですか!!必死なんですよこちらも!!…そりゃあ、我慢できないときも、あるけど…」
ハッキリ告げれば、こてんと傾いていた首はしゃんと縦を向いて、トロンとしていた瞳が覚醒し、それからすでに桃色に色づいていた頬は、別の意味でもう少し濃く、赤く、染まった。
「…じゃあ、あなたが『いや』っていうときは、もっとしてほしいとき、と、そう認識すれば良いということですか?」
「…ぅ…そう、です…!」
見つめ返すなんてできやしない。
今度は逆に、私がアズールさんに抱き着いて顔を隠す番。
可愛かったアズールさんはいつのまにか酔いも冷めてきていて、なぜか私が辱めにあっている。
「な、んでこんなことにっ…!」
「かわいいですね」
「っ、かわいいのは、アズールさんでっ、」
「しー…それは二人だけの秘密にしておいてください。あなたにしか、見せません。だから貴女も、僕だけに見せてくださいね」
ソファーは狭いのでベッドまでお連れしましょうか、などともっともなことを言われて手を引かれたら、もう今日という日は終わったも同然。
甘やかすどころか溶けてしまうくらいに甘やかされて、この身を愛してもらうんだ。
呂律が回らないのに必死で言い訳している膝の上のこの人は、まごうことなき私の旦那様。彼を膝の上に乗せながら、私は悶絶している。
身体の大きさ的にも、いつも膝に乗せられるのは私に決まっているのだけど、今日に限っては逆だった。
(…っ…か、かわいい…!)
頬を桃色に染めて、私に跨って首筋でだだっこのようにぐりぐりと顔を動かしているのが、モストログループを仕切る支配人、アズール・アーシェングロット。
普段の様子からは、想像もできないだろう。
本日も定時きっかりにあがってきたアズールさんとは、軽いディナーとしゃれこんでいた。
事業内容的にもワインの差し入れをもらうことが多いので、夜のお供には大抵それをいただく習慣がついている。
ワインは苦手、という人も多いと聞くが、本当に美味しいワインを飲むと虜になってしまうもの。この一杯のために一日を頑張っているといっても過言ではない。
たまに本当に口に合うものに出会うと、もう一杯、となることもあるのだが、そんなときでもアズールさんは絶対に次を注ぐことを許さない。その横で私だけもう一杯というのも気がひけるので、自然と一日一杯で終了となっていた。
ただ、その「一杯だけ」がこのような形で破られて、このような結果を招くなんて、本当に想定外だったのだ。
ちなみに、無理矢理飲ませたりなんて、アズールさんに誓って絶対にしていないことは、先に告げておく。
発端は本当に些細な一言だった。
「アズールさん、今日ね、また新しいワインをいただいたんだけど、今飲んでいるのと似ているようで全然違った味なんですって。せっかくだから今後のためにもテイスティングしてみませんか?」
「あ…いえ、僕は今日はもう、」
「そうですか?差異を味わうなんてあまりできることじゃないと思ったんですけど、」
「あなたがしたいなら、開けたらいいですよ。僕は今日はもう十分飲んだので」
「でも私よりも詳しく知っておくべきはアズールさんですよ?私、グラスに注ぐので、香りくらい嗅いでみたらどうですか?」
その言葉にグッと顔を強張らせたアズールさんを見て、そんなにも嫌がる理由があったかなと考えるも、思いつかないままにもう一杯を準備した私は、先にグラスをアズールさんに差し出した。
「はい。もし飲めそうだったら、飲んで大丈夫ですよ」
「別に飲めないわけじゃない。ふん、そこまで言うならいただきましょう」
その台詞を聞いて、始めて思い当たることがあったがもう遅い。
だって本当に知らなかったのだ。「弱かったから」一日一杯の制限をしていたなんて。
アズールさんのことだから、カロリーでも気にして飲んでいないだけだと思っていた。
それから、いくらお酒に弱いと言っても、こんな、たかが一口のテイスティングで許容量を越え、突然ここまで酔ってしまう人がいるなんてことも知らなかった。
言っておいてくれればよかったのに、と思ったけれど、このアズールさんが、下手をしたら弱みとも取られるようなことを口にするわけがないことは少し考えればわかることだから小言を言うのはやめた。
ぐだぐだとぐずるアズールさんをなんとか食卓からソファーまで連れ出せば、私を座らせ、その上を跨いでこの通りだ。
「ごめんなさい、アズールさん。二度と試しませんか、なんて言いませんから許してもらえませんか?」
「うぅ…いえでよかった…こんなところ、だれかにみられたら、ぼく、」
「お水飲みましょ?少しでも抜けるかもしれないです」
「だいじょうぶ、です。すぐに、戻りますから」
「本当ですか?…本人が一番よく知っているとは思いますけど…ちょっと心配です…。気分が悪いとかはないんですよね?大丈夫ですか?」
「はい…そういうのは、あまり。ちょっと、眠くなったり、顔が赤くなったり、するだけで、でも、だから、飲まないように、して」
「覚えておきますね。今後は二度と勧めたりしないように」
こんな可愛らしいところを誰かに見られてたまるものかと、自分の欲望を抑えつつもアズールさんから見えないのを良いことに、頬を緩ませてあやすように頭や背を撫でていると、ふと私の肩に埋まっていた顔が起き上がった。
その表情はムッとして、何か気に入らないことがあった様子。
「あきれてるんでしょう」
「へ?」
「こんな、さけに弱くて、一杯いじょうは付き合えない、ぼくなんて、本当は、ぼくのことなんてもう嫌いになってるんでしょうっ」
「!?そんなわけないですよ!」
「でも僕がさわるといやって言うじゃないですか」
「そんなこと言いません!今だって全然、」
「うそだ!ベッドのうえでたまに言う!」
「っ!?」
「僕はあなたにいつも聞いてるのに。どうしてほしいかって…。なのにその通りにしてもいやって」
「そ、それは…」
普段見ることのない本心を覗いたようで、私はごくりと嚥下した。
そして一時のあと、なんとか言葉をひねり出す。
「あれ、は、その」
「『その』…なんですか?」
「あの、いや、は、ちがうんですっ」
「…どう違うんですか…言ってくれないと、わかりません!」
「っ、だ、から、裏返しの気持ちですってば!!」
「うらがえし?」
「だって、っ…もっと、とか、気持ちいい、とか、そんなことばかり言えないでしょう!?」
「なぜですか?」
「恥ずかしいんですよ!?アズールさんはいつでもかっこいいけど私は見た目も中身も普通なんだから喘いだって大してかわいくもないのにそんなはしたないことばかり言っていたら嫌われちゃうかもしれないじゃないですか!!必死なんですよこちらも!!…そりゃあ、我慢できないときも、あるけど…」
ハッキリ告げれば、こてんと傾いていた首はしゃんと縦を向いて、トロンとしていた瞳が覚醒し、それからすでに桃色に色づいていた頬は、別の意味でもう少し濃く、赤く、染まった。
「…じゃあ、あなたが『いや』っていうときは、もっとしてほしいとき、と、そう認識すれば良いということですか?」
「…ぅ…そう、です…!」
見つめ返すなんてできやしない。
今度は逆に、私がアズールさんに抱き着いて顔を隠す番。
可愛かったアズールさんはいつのまにか酔いも冷めてきていて、なぜか私が辱めにあっている。
「な、んでこんなことにっ…!」
「かわいいですね」
「っ、かわいいのは、アズールさんでっ、」
「しー…それは二人だけの秘密にしておいてください。あなたにしか、見せません。だから貴女も、僕だけに見せてくださいね」
ソファーは狭いのでベッドまでお連れしましょうか、などともっともなことを言われて手を引かれたら、もう今日という日は終わったも同然。
甘やかすどころか溶けてしまうくらいに甘やかされて、この身を愛してもらうんだ。