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NRCにきて二年目のホリデー。
今年もみんなは帰省するらしいので、私はオンボロ寮に籠ってクリスマスと年越しの準備だ。
「オマエほんとにオクタヴィネルに行かなくてよかったんだゾ?」
「私の家族はグリムとゴーストたちだよ!こっちのホリデーの文化にならって家族で過ごさないとね!」
こんな日にグリムを一人きりにできるほど、私は人間として腐ってはいない。そりゃあもちろん恋人と…アズール先輩と過ごしたい気持ちはある。
オクタヴィネルに来ませんか、と誘われもしたけど、グリムと二人でお邪魔して、しかしそのあとどうするのかという問題が出てくるので丁重にお断りした。
郷に入っては郷に従えと言うやつだ。
私の家は、ここ、オンボロ寮なのだから、ホリデーもここで過ごすのが正しいのだと思う。
去年に引き続き、ケーキと、それからツナをふんだんに使ったメニューをたくさん用意したら準備完了。
でも今年はもう一つ。
「グリム、ご馳走の前に、ちょっと待っててね!」
「?わかったんだゾ!でもオレ様お預けくらいたくないからなるはやだゾ!」
「ふふっ、わかってる!」
セッティングされた談話室を抜け出して自室へ。隠しておいたとあるものを引っ張り出して一人ニヤリと悪い顔。
去年のグリムの様子を見ると、クリスマス自体もよく知らないようだったから、もちろんサンタクロースというものも概念から教えたのだけれど、やっぱり見せてあげたいよなと思ったのだ。
今年はそれを実行すべく、サムさんのお店でコスプレ衣装を仕入れておいた。割としっかりしたコスチュームが届いて驚いたのは言うまでもない。
早速着替えてみればサイズはもちろんピッタリ。真っ赤なベルベットに真っ白のモコモコが映えるサンタガールのできあがり。
ニーハイブーツはヒールが高い割に足に負担がかからなくて、どんな作りをしているんだと頭を捻った。
鏡の前でくるりと回って身嗜みの最終チェック。うん、衣装が可愛いから大丈夫!最後に帽子を被ればバッチリだ。
毎年同じだけどグリムが喜んでくれるといいなと、高級ツナ缶セットを手に部屋を後にする。
「グーリム!」
「待ちくたびれたんだゾ…ってオマエそれ、」
「じゃーん!サンタだよっ!」
「サンタクロース!オマエ、サンタクロースだったのか?!」
「今年はね、サンタさんが忙しいみたいで私もお手伝いなんだよ。だから、はいこれ、プレゼント!」
子供騙しの嘘かもしれない。
それでもグリムの驚いた顔や喜ぶ顔がみれるなら、それでいいの。
「本当は、ハッピーホリデーっていうところなんだけど、ここはあえて。メリークリスマス!グリム!」
「メリークリスマスなんだゾ!」
「はい、グリムにも帽子だよ。」
「オレ様もサンタなんだゾー!」
「さぁ、パーティのはじまりだぁっ!」
いっただきまーす!、と大きな声が響く頃、外では雪が降り始めたようだったけど、この暖かい空気には寒さも負けてしまったようだ。
* * *
カタン、
小さな音が耳に響いて、暗闇の中ふと瞼を開けた。
「ん…、」
働かない頭で考えるのは、昨晩のこと。
グリムと一緒にクリスマスパーティーをして盛り上がって…それからゴーストたちも集めてそのまま談話室でゲームをして…。
「あれ?グリム…?」
「ああ、目が覚めましたか、あなた。」
「へ、?」
およそグリムの発するような声ではない音が耳に届いて、ぱちりと覚醒した私は、そちらを見て驚いた。
「え…えっ?!!アズール先輩?!」
「はい。僕ですよ。」
「えっ、あれっ、なんで…?」
「グリムさんは貴女の部屋に運びましたよ。いくら暖炉がついているだの魔法で暖かいだのといっても、こんなところで眠っていたら風邪をひいてしまいますからね。」
「あ…グリムのこと、ありがとうございます、一緒に部屋に戻ろうと思ってそのまま寝ちゃってたみたいで。助かりました。でも、アズール先輩は、なんでここに…?」
居るはずのない人がそこに存在する意味が理解できず質問を繰り返すと、はぁ、と大袈裟な溜め息が返ってきた。
「野暮なことを聞きますね。あなたの世界ではホリデーは家族で過ごす日ではなく恋人の日…なのでしょう?そう言ったのは誰でした?」
「っ…」
「確かに郷に入っては郷に従え、ですけれど、別に全てをこちらに合わせる必要はないでしょう?今日は一日『家族』の時間を楽しんだ…そうしたら、次は恋人の時間。あなたの恋人は誰ですか?」
「あずーる、せんぱい?」
「ふは…!どうしてそこで疑問形なんですか?僕、もしかして彼氏ポジションをお役御免にでもなりました?」
「そ、そんなわけ!!それをされることがあるなら、私がポジションを下ろされる側であって、逆はありえませんから!」
必死で捲し立てたせいで先輩に詰め寄っていたことに気付いて、アッと顔を赤くした私は、しおしおと元の場所に戻る。
クスクスと控えめな笑い声が聞こえて、恥ずかしいことこの上ない。すると今度はこんな質問が飛んでくる。
「ところで、この衣装はどうしたんですか?」
「衣装?…あ!」
パーティを終えたあと、そのままで眠っていた私は言われるまでそれに気づかなかった。寝相の悪い自分の諸行のせいで、ミニスカートの裾からはショーツが見えそうになっている。
はしたない!と怒られるかと思ったが、そうではなく、少しだけ言いにくそうに『あまり無防備にされると困ります』と告げられて、変に意識してしまう。
「っ、こ、これは、グリムにクリスマス気分を味わってもらおうと思って!決してやましい気持ちで着たわけではなくて!」
「やましい気持ちで着たのであれば怒るじゃすまされませんよ?誰に見せるつもりだったのか…とね。」
ものすごい苦笑とともに、ちょっとした嫉妬が垣間見えて、こんな時なのに少し嬉しくなってしまった。
スキの気持ちは、静かにどんどん積もっていく。この気持ちがこの身体からあふれてしまったらどうなるんだろう。
…まぁ実際は、あふれる直前に移してしまうから大丈夫なのかもしれないけれど…と考えると、隣に腰かけた先輩の顔を見ることもできず、自分のスカートの裾をキュと引っ張るにとどめた。
「本当は、先輩に、見せに行きたかった…です、」
「でも来てくださいませんでした。」
「それは、だって…」
「だから僕が、来たんですけどね。」
言葉に反応して、ハッと顔を上げると、暗がりでも瞳の奥の気持ちが伝わってきて、身体がぽぽぽと温度を上げた。
「あ、あの…、ぷれぜんと、」
「おや、あなたからいただけるんですか?それは嬉しいですね。」
「…っ…その顔、だいたい何か予想がついているんでしょう…?」
「いいえ?まったくわかりませんが?」
何か企んでいるとき特有の口角の上り方くらい、もうわかってるんですよ…なんて言い返すことはできない。
だって絶対あってるから。
でも、そのままそれに乗るのも癪なので。
「ちょっとだけ、目を瞑ってもらえますか?」
「プレゼントの準備、なら仕方がありませんね。」
意図をくみ取ってか、くすくす笑いながら瞼を閉じた先輩を確認してから、私は自分の被っていた帽子を外して、先輩の頭に乗せた。
そして、ぐっと力を入れてしっかりと被せると同時に。
ちゅ、とほっぺに唇を押し当てる。
「…っ、ぷれ、ぜんと、でした。」
「…ずいぶん可愛らしいプレゼントですね。」
「想定外、でした?」
「そうですね。あなたにしては控えめかなと。ですが嬉しいですよ。ありがとうございます。」
「…だって、ここじゃ…」
あげたいものも、あげれないんだもの。
とは口には出せない。
もじ、と膝を擦り合わせてお行儀良く手をその上に並べたら、そっと肩を引き寄せられて、あっという間に先輩の腕の中。
「ではここじゃなければ、本心を聞かせていただけますか?」
「え?」
「ですから、例えば、ここが別の空間になれば、あなたがくれるはずだった本物のプレゼントをいただけるのか、と伺っているんですよ。」
「…っ、」
「よもや魔法士の僕を見くびっているわけではないでしょう?あなたがYESと言えば、それが合図に魔法がかかる、かもしれませんよ?」
「そ、んな、」
ずるい。
アズール先輩はずるすぎる。
全部私に選ばせて、そうして私からのプレゼントを、逆にアズール先輩からのプレゼントに替えてしまうんだ。
それでも私は。
そんな先輩に、心底惚れてしまっているのだから。
「連れて行ってくださいっ…私を、先輩と、二人きりにしてっ…」
「素直な貴女も、嫌いじゃありませんよ。」
そうして月明りに二人の影は重なった。
しんしんと雪が降り積もる寒い夜には。
貴方の身体で暖めて。
そうしたら、代わりに私の愛で。
貴方を満たしてみせるから。
今年もみんなは帰省するらしいので、私はオンボロ寮に籠ってクリスマスと年越しの準備だ。
「オマエほんとにオクタヴィネルに行かなくてよかったんだゾ?」
「私の家族はグリムとゴーストたちだよ!こっちのホリデーの文化にならって家族で過ごさないとね!」
こんな日にグリムを一人きりにできるほど、私は人間として腐ってはいない。そりゃあもちろん恋人と…アズール先輩と過ごしたい気持ちはある。
オクタヴィネルに来ませんか、と誘われもしたけど、グリムと二人でお邪魔して、しかしそのあとどうするのかという問題が出てくるので丁重にお断りした。
郷に入っては郷に従えと言うやつだ。
私の家は、ここ、オンボロ寮なのだから、ホリデーもここで過ごすのが正しいのだと思う。
去年に引き続き、ケーキと、それからツナをふんだんに使ったメニューをたくさん用意したら準備完了。
でも今年はもう一つ。
「グリム、ご馳走の前に、ちょっと待っててね!」
「?わかったんだゾ!でもオレ様お預けくらいたくないからなるはやだゾ!」
「ふふっ、わかってる!」
セッティングされた談話室を抜け出して自室へ。隠しておいたとあるものを引っ張り出して一人ニヤリと悪い顔。
去年のグリムの様子を見ると、クリスマス自体もよく知らないようだったから、もちろんサンタクロースというものも概念から教えたのだけれど、やっぱり見せてあげたいよなと思ったのだ。
今年はそれを実行すべく、サムさんのお店でコスプレ衣装を仕入れておいた。割としっかりしたコスチュームが届いて驚いたのは言うまでもない。
早速着替えてみればサイズはもちろんピッタリ。真っ赤なベルベットに真っ白のモコモコが映えるサンタガールのできあがり。
ニーハイブーツはヒールが高い割に足に負担がかからなくて、どんな作りをしているんだと頭を捻った。
鏡の前でくるりと回って身嗜みの最終チェック。うん、衣装が可愛いから大丈夫!最後に帽子を被ればバッチリだ。
毎年同じだけどグリムが喜んでくれるといいなと、高級ツナ缶セットを手に部屋を後にする。
「グーリム!」
「待ちくたびれたんだゾ…ってオマエそれ、」
「じゃーん!サンタだよっ!」
「サンタクロース!オマエ、サンタクロースだったのか?!」
「今年はね、サンタさんが忙しいみたいで私もお手伝いなんだよ。だから、はいこれ、プレゼント!」
子供騙しの嘘かもしれない。
それでもグリムの驚いた顔や喜ぶ顔がみれるなら、それでいいの。
「本当は、ハッピーホリデーっていうところなんだけど、ここはあえて。メリークリスマス!グリム!」
「メリークリスマスなんだゾ!」
「はい、グリムにも帽子だよ。」
「オレ様もサンタなんだゾー!」
「さぁ、パーティのはじまりだぁっ!」
いっただきまーす!、と大きな声が響く頃、外では雪が降り始めたようだったけど、この暖かい空気には寒さも負けてしまったようだ。
* * *
カタン、
小さな音が耳に響いて、暗闇の中ふと瞼を開けた。
「ん…、」
働かない頭で考えるのは、昨晩のこと。
グリムと一緒にクリスマスパーティーをして盛り上がって…それからゴーストたちも集めてそのまま談話室でゲームをして…。
「あれ?グリム…?」
「ああ、目が覚めましたか、あなた。」
「へ、?」
およそグリムの発するような声ではない音が耳に届いて、ぱちりと覚醒した私は、そちらを見て驚いた。
「え…えっ?!!アズール先輩?!」
「はい。僕ですよ。」
「えっ、あれっ、なんで…?」
「グリムさんは貴女の部屋に運びましたよ。いくら暖炉がついているだの魔法で暖かいだのといっても、こんなところで眠っていたら風邪をひいてしまいますからね。」
「あ…グリムのこと、ありがとうございます、一緒に部屋に戻ろうと思ってそのまま寝ちゃってたみたいで。助かりました。でも、アズール先輩は、なんでここに…?」
居るはずのない人がそこに存在する意味が理解できず質問を繰り返すと、はぁ、と大袈裟な溜め息が返ってきた。
「野暮なことを聞きますね。あなたの世界ではホリデーは家族で過ごす日ではなく恋人の日…なのでしょう?そう言ったのは誰でした?」
「っ…」
「確かに郷に入っては郷に従え、ですけれど、別に全てをこちらに合わせる必要はないでしょう?今日は一日『家族』の時間を楽しんだ…そうしたら、次は恋人の時間。あなたの恋人は誰ですか?」
「あずーる、せんぱい?」
「ふは…!どうしてそこで疑問形なんですか?僕、もしかして彼氏ポジションをお役御免にでもなりました?」
「そ、そんなわけ!!それをされることがあるなら、私がポジションを下ろされる側であって、逆はありえませんから!」
必死で捲し立てたせいで先輩に詰め寄っていたことに気付いて、アッと顔を赤くした私は、しおしおと元の場所に戻る。
クスクスと控えめな笑い声が聞こえて、恥ずかしいことこの上ない。すると今度はこんな質問が飛んでくる。
「ところで、この衣装はどうしたんですか?」
「衣装?…あ!」
パーティを終えたあと、そのままで眠っていた私は言われるまでそれに気づかなかった。寝相の悪い自分の諸行のせいで、ミニスカートの裾からはショーツが見えそうになっている。
はしたない!と怒られるかと思ったが、そうではなく、少しだけ言いにくそうに『あまり無防備にされると困ります』と告げられて、変に意識してしまう。
「っ、こ、これは、グリムにクリスマス気分を味わってもらおうと思って!決してやましい気持ちで着たわけではなくて!」
「やましい気持ちで着たのであれば怒るじゃすまされませんよ?誰に見せるつもりだったのか…とね。」
ものすごい苦笑とともに、ちょっとした嫉妬が垣間見えて、こんな時なのに少し嬉しくなってしまった。
スキの気持ちは、静かにどんどん積もっていく。この気持ちがこの身体からあふれてしまったらどうなるんだろう。
…まぁ実際は、あふれる直前に移してしまうから大丈夫なのかもしれないけれど…と考えると、隣に腰かけた先輩の顔を見ることもできず、自分のスカートの裾をキュと引っ張るにとどめた。
「本当は、先輩に、見せに行きたかった…です、」
「でも来てくださいませんでした。」
「それは、だって…」
「だから僕が、来たんですけどね。」
言葉に反応して、ハッと顔を上げると、暗がりでも瞳の奥の気持ちが伝わってきて、身体がぽぽぽと温度を上げた。
「あ、あの…、ぷれぜんと、」
「おや、あなたからいただけるんですか?それは嬉しいですね。」
「…っ…その顔、だいたい何か予想がついているんでしょう…?」
「いいえ?まったくわかりませんが?」
何か企んでいるとき特有の口角の上り方くらい、もうわかってるんですよ…なんて言い返すことはできない。
だって絶対あってるから。
でも、そのままそれに乗るのも癪なので。
「ちょっとだけ、目を瞑ってもらえますか?」
「プレゼントの準備、なら仕方がありませんね。」
意図をくみ取ってか、くすくす笑いながら瞼を閉じた先輩を確認してから、私は自分の被っていた帽子を外して、先輩の頭に乗せた。
そして、ぐっと力を入れてしっかりと被せると同時に。
ちゅ、とほっぺに唇を押し当てる。
「…っ、ぷれ、ぜんと、でした。」
「…ずいぶん可愛らしいプレゼントですね。」
「想定外、でした?」
「そうですね。あなたにしては控えめかなと。ですが嬉しいですよ。ありがとうございます。」
「…だって、ここじゃ…」
あげたいものも、あげれないんだもの。
とは口には出せない。
もじ、と膝を擦り合わせてお行儀良く手をその上に並べたら、そっと肩を引き寄せられて、あっという間に先輩の腕の中。
「ではここじゃなければ、本心を聞かせていただけますか?」
「え?」
「ですから、例えば、ここが別の空間になれば、あなたがくれるはずだった本物のプレゼントをいただけるのか、と伺っているんですよ。」
「…っ、」
「よもや魔法士の僕を見くびっているわけではないでしょう?あなたがYESと言えば、それが合図に魔法がかかる、かもしれませんよ?」
「そ、んな、」
ずるい。
アズール先輩はずるすぎる。
全部私に選ばせて、そうして私からのプレゼントを、逆にアズール先輩からのプレゼントに替えてしまうんだ。
それでも私は。
そんな先輩に、心底惚れてしまっているのだから。
「連れて行ってくださいっ…私を、先輩と、二人きりにしてっ…」
「素直な貴女も、嫌いじゃありませんよ。」
そうして月明りに二人の影は重なった。
しんしんと雪が降り積もる寒い夜には。
貴方の身体で暖めて。
そうしたら、代わりに私の愛で。
貴方を満たしてみせるから。