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Azul
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side. あなた
「あ!あれ!」
「ふな?」
「グリムの瞳の色みっけ!」
とあるなんでもない日。
なんでもない日というくらいだから、久しぶりのオフ、というやつだ。
モストロ・ラウンジの手伝いも、学園長からのパシリも、グリムのマジフト練習も、宿題も、なーんにもない素敵な日。
けれど、突然そんな素敵な日ができたって、残念ながら面白いことは簡単に思いつかない。
私とグリムは久しぶりに学園内を散歩しながら、束の間の休息を楽しむことにした。
いつも一緒にいるのに、話すことは案外尽きなくて。ふらふらするだけでも笑顔になる。そんな中で始まった色探し。
ルールは簡単。誰かを彷彿とさせる色を見つけて伝え合う。ただ、それだけ。
同じ色が目に写っているはずだ、そんな固定観念が塗り替えられる場面も結構あって、なかなか興味深い。
「お!あれはオマエが好きな色じゃねーのか?」
「ん?どれ?」
「あれだ!あの雲のふちっこ!あれはタコ野郎の色なんだゾ。」
「えー?うーん、アズール先輩の色はもう少し…」
ああでも。
「…とても、綺麗ね。アズール先輩みたい。」
「そうなんだゾ!」
雲の淵を彩る、青と白が混ざった絶妙な色合いは、とても美しかった。
『好きだなぁ。』と、ポツリ、呟いた言葉は誰に届くものでもないけれど。
強いて言えば、私の中にジワリと染み込んで、柔らかに溶けた。
「オマエ、本当にタコ野郎のこと好きなんだな!」
「…!や、やだ!聞こえてたの?!アズール先輩には言っちゃダメだからね!」
「素直じゃねーんだゾ。」
そんな事あるごとに好き好き言ってたらドン引きじゃないかと、グリムを嗜めながら、中庭のベンチに腰掛けた。
「じゃーん!実はここに…サムさんのお店で買った新作のお菓子がありまーす!」
「オヤツか!?」
「お散歩にはオヤツが必要でしょ?一緒に食べよ!」
「ヤッタゾ!」
あの空のあの雲にはもうすぐ夕日が差し込んで、それから静かな夜がやってくる。
それまでは、秘めた気持ちに素直になって遊ぶのも、悪くないでしょう?
*
Side.Azul
今日はボードゲーム部の活動日だ。
なので僕はラウンジのシフトを入れていなかったのだが、あろうことかイデアさんが「拙者が作ったシステムで深刻なエラーが出たとかぬかす輩がいるので今日はパス!」などというので、何もやることがなくなって手持無沙汰だ。
やるべきことはたくさんあるのだが、スケジューリングを完璧にしているところにポカンと穴が開くと、どうにもやる気を持ち直すことが難しい。
『…図書室でも行くか。』と、踵を返したときに見えたのは、中庭に座る人。
それがあなただと脳が判断すれば、自然とそちらに足が向いた。
あと数歩というところで聞こえたのは『アズール先輩、好きだなぁ。』という呟き。
なんの話だ?と思うと同時に、なんで自分に直接言ってくれないんだというちょっとした寂しさ。そんな感情が沸き上がる。
続いて、『アズール先輩の一部になれたらいいのに』という言葉が聞こえてきて、苦笑が隠せなくなってしまった。
恥ずかしいというよりも、愛おしいと感じるようになったのは、きっとよい変化なんだろう。
何を掴みたかったのかわからないが、宙に伸ばされたあなたの手を、ベンチの後ろから近寄った僕が掴んだ。
「っ!?」
「そんなに驚かなくとも。」
「あ、あず…!?なんで!?」
「どうしてでしょう。…貴女が呼んだんじゃないんですか?」
「!?き、聞いてたんですか!?」
器用に上体だけ振り向いたあなたは、『こ、これはその、違うんです!』と言い訳しようとするので、掴んでいた手を離して髪を撫でた。
「何が違うんですか?」
「えっ、」
「僕のことを想って声を出したんでしょう?顔を合わせていないときも僕のことを思い浮かべてくれるなんて…思いを馳せてもらえるなんて、嬉しい限りです。」
「…ほん、とに?」
「ええ。もちろん。貴女からもらえる好意や気持ちに嬉しくないものはありません。それから。」
言いながらベンチを回り込み、あなたの隣に腰掛ける。顔を覗きこみあなたを捉えた。
「…それでも、僕は。」
『こうして触れ合えたほうが、ずっと、いい。』
その言葉が届くと同時に、あなたの瞳が揺れる。
徐々に朱色が指した互いの頬。
その色はきっと、夕日が映った、それだけのこと。
「オマエラら、俺様がいること忘れてるんだぞ?」
グリムさんからのツッコミが入るまで、この世界には僕とあなた、二人きりだった。
「あ!あれ!」
「ふな?」
「グリムの瞳の色みっけ!」
とあるなんでもない日。
なんでもない日というくらいだから、久しぶりのオフ、というやつだ。
モストロ・ラウンジの手伝いも、学園長からのパシリも、グリムのマジフト練習も、宿題も、なーんにもない素敵な日。
けれど、突然そんな素敵な日ができたって、残念ながら面白いことは簡単に思いつかない。
私とグリムは久しぶりに学園内を散歩しながら、束の間の休息を楽しむことにした。
いつも一緒にいるのに、話すことは案外尽きなくて。ふらふらするだけでも笑顔になる。そんな中で始まった色探し。
ルールは簡単。誰かを彷彿とさせる色を見つけて伝え合う。ただ、それだけ。
同じ色が目に写っているはずだ、そんな固定観念が塗り替えられる場面も結構あって、なかなか興味深い。
「お!あれはオマエが好きな色じゃねーのか?」
「ん?どれ?」
「あれだ!あの雲のふちっこ!あれはタコ野郎の色なんだゾ。」
「えー?うーん、アズール先輩の色はもう少し…」
ああでも。
「…とても、綺麗ね。アズール先輩みたい。」
「そうなんだゾ!」
雲の淵を彩る、青と白が混ざった絶妙な色合いは、とても美しかった。
『好きだなぁ。』と、ポツリ、呟いた言葉は誰に届くものでもないけれど。
強いて言えば、私の中にジワリと染み込んで、柔らかに溶けた。
「オマエ、本当にタコ野郎のこと好きなんだな!」
「…!や、やだ!聞こえてたの?!アズール先輩には言っちゃダメだからね!」
「素直じゃねーんだゾ。」
そんな事あるごとに好き好き言ってたらドン引きじゃないかと、グリムを嗜めながら、中庭のベンチに腰掛けた。
「じゃーん!実はここに…サムさんのお店で買った新作のお菓子がありまーす!」
「オヤツか!?」
「お散歩にはオヤツが必要でしょ?一緒に食べよ!」
「ヤッタゾ!」
あの空のあの雲にはもうすぐ夕日が差し込んで、それから静かな夜がやってくる。
それまでは、秘めた気持ちに素直になって遊ぶのも、悪くないでしょう?
*
Side.Azul
今日はボードゲーム部の活動日だ。
なので僕はラウンジのシフトを入れていなかったのだが、あろうことかイデアさんが「拙者が作ったシステムで深刻なエラーが出たとかぬかす輩がいるので今日はパス!」などというので、何もやることがなくなって手持無沙汰だ。
やるべきことはたくさんあるのだが、スケジューリングを完璧にしているところにポカンと穴が開くと、どうにもやる気を持ち直すことが難しい。
『…図書室でも行くか。』と、踵を返したときに見えたのは、中庭に座る人。
それがあなただと脳が判断すれば、自然とそちらに足が向いた。
あと数歩というところで聞こえたのは『アズール先輩、好きだなぁ。』という呟き。
なんの話だ?と思うと同時に、なんで自分に直接言ってくれないんだというちょっとした寂しさ。そんな感情が沸き上がる。
続いて、『アズール先輩の一部になれたらいいのに』という言葉が聞こえてきて、苦笑が隠せなくなってしまった。
恥ずかしいというよりも、愛おしいと感じるようになったのは、きっとよい変化なんだろう。
何を掴みたかったのかわからないが、宙に伸ばされたあなたの手を、ベンチの後ろから近寄った僕が掴んだ。
「っ!?」
「そんなに驚かなくとも。」
「あ、あず…!?なんで!?」
「どうしてでしょう。…貴女が呼んだんじゃないんですか?」
「!?き、聞いてたんですか!?」
器用に上体だけ振り向いたあなたは、『こ、これはその、違うんです!』と言い訳しようとするので、掴んでいた手を離して髪を撫でた。
「何が違うんですか?」
「えっ、」
「僕のことを想って声を出したんでしょう?顔を合わせていないときも僕のことを思い浮かべてくれるなんて…思いを馳せてもらえるなんて、嬉しい限りです。」
「…ほん、とに?」
「ええ。もちろん。貴女からもらえる好意や気持ちに嬉しくないものはありません。それから。」
言いながらベンチを回り込み、あなたの隣に腰掛ける。顔を覗きこみあなたを捉えた。
「…それでも、僕は。」
『こうして触れ合えたほうが、ずっと、いい。』
その言葉が届くと同時に、あなたの瞳が揺れる。
徐々に朱色が指した互いの頬。
その色はきっと、夕日が映った、それだけのこと。
「オマエラら、俺様がいること忘れてるんだぞ?」
グリムさんからのツッコミが入るまで、この世界には僕とあなた、二人きりだった。