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Jade
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ここ数日、彼女がずっとソワソワしていたことには勘づいていた。
僕のことを注意深く観察する二つの瞳。
時に何か欲しいものはありますか、なんて聞いてきたりして。ああ可愛い。
ほしいものなんてとっくに手に入れていると言えば
「参考までに、それは何ですか?」
と純粋な瞳を向けるので
「貴女に決まってるじゃないですか」
とほほ笑んで見せる。
瞬時に染まる頬はとてもおいしそうに熟れているが、いだたくにはまだ早い。
珍しく彼女から「11月4日のシフトに入れてほしい」と言われてしまえばもう間違いはなかった。いつ、誰から聞いたのか。フロイドあたりなら自分から言っていそうではあるので、そんなことは大した問題ではない。
そうして迎える11月4日の22時。
仕事が終わり、いつものように彼女専用の更衣室の前で帰宅の準備が整うのを待つ。
何をしてくれるんだろうか。僕のために考えてくれたその何かは、何であっても愛おしいのだけれど。
「お待たせしました」
そう言って出てきた彼女は、やっぱりどこか浮き足立っている。普段は一瞥もしないスマートフォンをちらちら見ては困った表情。恐らく日付けが変わるまでどう時間を潰そうかと考えているんだろう。
あまりにもかわいらしいので、つい突っ込みをいれてしまう。
「何か、気になることがあるんですか?」
「え?!」
「いえ、今日はとても…ディスプレイを気にしていらっしゃるので」
「あ、え!?そうでしょうか!?」
「無自覚ですか?」
彼女の手を取って鏡を通り抜ければ、外は月明かりが優しい夜だった。
なお慌てる彼女にクスクスと笑いかける。
「す、すみません!ジェイド先輩といるのにスマフォなんて見て」
「いえいえ。お気になさらず。ですが何をそれほど気にしていらっしゃるのですか?」
思わせぶりな問いかけをしている間にも植物園横を通り過ぎ、オンボロ寮はすぐそこだ。さて、ここで僕に残されたルートは二つ。このまま素直にオンボロ寮へ彼女をエスコートするか、はたまた、彼女を連れ去るかのいずれかだ。
ここでカマかけをしなければ、恐らく彼女は僕の手を離してしまうだろう。こういう時こそ言って欲しい我儘だけれど、性格というものは無理強いしたところですぐに変わるものではないですからね。
「貴女が気にしているのは、時間、でしょう」
「じ、じかん?!どうして、そう思うんです!?」
「スマートフォンの画面をちょっと見ただけで確認できることなど限られていますし、それに」
そこでとまった不自然な言葉に反応して僕の顔を見上げてくる彼女。
ああほら、そんな顔は僕にしか向けてはいけませんよ?
小さな身体をそっと抱き上げて自分と同じ高さにし、その瞳をのぞき込む。
彼女には、齧り取る歯 を使う必要は全くない。
「僕は、貴女のことは全部わかっています」
「ふふっ!ジェイド先輩はいつもそう言いますね」
「当ててみせましょうか?」
「んー……絶対当たってるから、できれば今は、言わないでほしいです」
「おや、それは残念」
「でも…あと一時間とちょっと一緒に居てくれるなら、そのときは答え合わせをしてもいいですよ」
それを聞いてキョトンとしてしまったが、そう言った彼女の顔が真っ赤なのを見て、お誘いを受けたんだと悟る。
柄にもなく破顔しそうになり顔を逸らした。
「ジェイド先輩?」
「…こちらを、見ないでくださいますか…」
「見ないでと言われたら見たくなりますけど…でもジェイド先輩がそういうなら我慢します」
だから、お願いを聞いてくれませんか
なんて、言われてもいないはずのその言葉が耳に届いた気がしたので、彼女をギュッと抱きしめたままオンボロ寮の門を跨いだ。
「一緒にいるのは、日付けが変わるまででよいのでしょうか?」
「…できるなら、夜が明けても、一緒にいてほしい、です」
あと一時間と少しでやってくるのは、僕の誕生日。その日付けになった瞬間に、何がもらえるのでしょうね。
僕と彼女の答え合わせの時間は刻一刻と近づいてくるのに、待ちきれないなんて。
「もちろんです。明日だけと言わず、この先もずっと、一緒にいましょう」
この日が来るたび、ハッピーバースデー、と。
その声で聴かせてくださいね。
僕のことを注意深く観察する二つの瞳。
時に何か欲しいものはありますか、なんて聞いてきたりして。ああ可愛い。
ほしいものなんてとっくに手に入れていると言えば
「参考までに、それは何ですか?」
と純粋な瞳を向けるので
「貴女に決まってるじゃないですか」
とほほ笑んで見せる。
瞬時に染まる頬はとてもおいしそうに熟れているが、いだたくにはまだ早い。
珍しく彼女から「11月4日のシフトに入れてほしい」と言われてしまえばもう間違いはなかった。いつ、誰から聞いたのか。フロイドあたりなら自分から言っていそうではあるので、そんなことは大した問題ではない。
そうして迎える11月4日の22時。
仕事が終わり、いつものように彼女専用の更衣室の前で帰宅の準備が整うのを待つ。
何をしてくれるんだろうか。僕のために考えてくれたその何かは、何であっても愛おしいのだけれど。
「お待たせしました」
そう言って出てきた彼女は、やっぱりどこか浮き足立っている。普段は一瞥もしないスマートフォンをちらちら見ては困った表情。恐らく日付けが変わるまでどう時間を潰そうかと考えているんだろう。
あまりにもかわいらしいので、つい突っ込みをいれてしまう。
「何か、気になることがあるんですか?」
「え?!」
「いえ、今日はとても…ディスプレイを気にしていらっしゃるので」
「あ、え!?そうでしょうか!?」
「無自覚ですか?」
彼女の手を取って鏡を通り抜ければ、外は月明かりが優しい夜だった。
なお慌てる彼女にクスクスと笑いかける。
「す、すみません!ジェイド先輩といるのにスマフォなんて見て」
「いえいえ。お気になさらず。ですが何をそれほど気にしていらっしゃるのですか?」
思わせぶりな問いかけをしている間にも植物園横を通り過ぎ、オンボロ寮はすぐそこだ。さて、ここで僕に残されたルートは二つ。このまま素直にオンボロ寮へ彼女をエスコートするか、はたまた、彼女を連れ去るかのいずれかだ。
ここでカマかけをしなければ、恐らく彼女は僕の手を離してしまうだろう。こういう時こそ言って欲しい我儘だけれど、性格というものは無理強いしたところですぐに変わるものではないですからね。
「貴女が気にしているのは、時間、でしょう」
「じ、じかん?!どうして、そう思うんです!?」
「スマートフォンの画面をちょっと見ただけで確認できることなど限られていますし、それに」
そこでとまった不自然な言葉に反応して僕の顔を見上げてくる彼女。
ああほら、そんな顔は僕にしか向けてはいけませんよ?
小さな身体をそっと抱き上げて自分と同じ高さにし、その瞳をのぞき込む。
彼女には、
「僕は、貴女のことは全部わかっています」
「ふふっ!ジェイド先輩はいつもそう言いますね」
「当ててみせましょうか?」
「んー……絶対当たってるから、できれば今は、言わないでほしいです」
「おや、それは残念」
「でも…あと一時間とちょっと一緒に居てくれるなら、そのときは答え合わせをしてもいいですよ」
それを聞いてキョトンとしてしまったが、そう言った彼女の顔が真っ赤なのを見て、お誘いを受けたんだと悟る。
柄にもなく破顔しそうになり顔を逸らした。
「ジェイド先輩?」
「…こちらを、見ないでくださいますか…」
「見ないでと言われたら見たくなりますけど…でもジェイド先輩がそういうなら我慢します」
だから、お願いを聞いてくれませんか
なんて、言われてもいないはずのその言葉が耳に届いた気がしたので、彼女をギュッと抱きしめたままオンボロ寮の門を跨いだ。
「一緒にいるのは、日付けが変わるまででよいのでしょうか?」
「…できるなら、夜が明けても、一緒にいてほしい、です」
あと一時間と少しでやってくるのは、僕の誕生日。その日付けになった瞬間に、何がもらえるのでしょうね。
僕と彼女の答え合わせの時間は刻一刻と近づいてくるのに、待ちきれないなんて。
「もちろんです。明日だけと言わず、この先もずっと、一緒にいましょう」
この日が来るたび、ハッピーバースデー、と。
その声で聴かせてくださいね。