名前変換は小説によってあったりなかったりします。
庭球
名前変換設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
卒業式。
朝一番。
ピリリリリリリりんっ
『くあっ…ああああああ!!!!?』
遅刻。
*
「三年C組幸村精市」
「はい」
寝坊したせいでセットしきれてていない髪を必死で押さえつけながら壇上に登っている精市を見つめる。
今日は中学生最後の日。
卒業式だ。
学校は変わらなくてもこの校舎と離れるのは感慨深いわけで。
鼻の奥がツンとした。
あ~かっこいいな贔屓目なしに。ブン太も仁王も、柳も柳生もジャッカルも。みんなみんなが見とれるテニス部員。彼らが壇上に上がるとしん…と静まり返る体育館。
厳かな儀式はだんだんと終わりに近づいていく。
なんだ…普通に終わりそうだな。よかった…この前精市に《卒業式でも俺の言ったことは絶対だから》って言われてたから心配してたんだけど…、この分なら平穏無事に終われそう!
全員への卒業証書授与も終わり、PTAや役員、校長の話も終了。
会長の答辞が始まった。
眠いところは全て心を無にして耐えた。
校歌合唱君が代斉唱、送る言葉に歌も終わり、最後は花のアーチをくぐって退場のはず。
A組から順に二人ずつ並んで真ん中の道を歩く生徒たち。
アーチを潜る順番がきて、ふぅ…と肩の力を抜いたときだった。
精市の真横を通ったら精市がくるりこちらを向き、名前を呼んだ。
「小夏」
それほど大きくないのによく通る声。
回りにいた生徒が振り向けば、注目の的になるのもすぐだった。
『……え?』
「お手をどうぞ。」
静かな体育館がにわかにざわめきはじめる。視線はあたしと精市が半分半分に集めてる。
『え?』
「そうだな…目をつぶって」
『は、え、何を』
「え?」
その瞬間、一気に空気が冷めたのを感じ取った。その場で立ち止まり、無言で手を差し出す。
あたしでなくても誰だってそうするよ!
空気読んだあたしは凄い偉いと思う。
精市は何やらしゃがんてごそごしている。
すると
「薄目も禁止。」
『なぜばれた……!』
咎められた。
もう一度ぎゅっと目を瞑った。
頭に何か乗せられて、捕まれた指にも何かがはめられる感触があった。
「はい、目を開けて?」
言われるがままに普通より時間をかけて目を開けていく。
目の前には何もかわらない精市の顔。心なしかイタズラっ子のような顔に見える。
『?』
ふとさっき違和感を覚えた指先を見る。
『っ!!!』
「予約させてよね?」
右手の薬指に花の指輪がはまっていた。
震える手で頭の上も触ってみると、こちらにも、同じ花を主として作られた冠が乗せられていた。
驚きて嬉しさとで言葉にならない気持ちを弄んでいると、あることに気がつく。
『この花………どこかで』
どこかでみた。
たくさんこの花が咲いているところ。
そんなに昔じゃなくて
薄い青色の、小さい花が咲き乱れた風景。
『あ…』
そうだあのときの…精市が花に埋もれてたあの…
「気付いた?そうだ。これは俺が埋もれてたあの花だよ。あの時は綺麗に咲いたから、って言ったけど、考えてたのはずっと小夏のことだった。」
『…精…市』
「小夏を想って育てた花だから、プレゼントにね。ワスレナグサのハナコトバは真実の愛。俺たちにぴったりだと思わない?」
『………』
「今までありがとう。そしてこれからもよろしく。」
それが合図であったかのように音楽が流れ始める。
心がはち切れそうなくらい音を立てて、声がでない。
こんなときにやらなくても、とか…幸せとか、言いたいことはたくさんあるのにな。
ただただ、幸せと嬉しさが込み上げて、涙が頬を伝う。
「泣かないでよね」
メロディーが変わり、知らない国の言葉が紡がれる。どこか懐かしい歌声が心をさらに震わせる。
『だっ…て…っく…!』
「めでたいことなんだから。卒業式。」
『卒業式…じゃっ!…なくって……!ありが…とっ…っく』
「あ~あ寝坊した上に泣いてさらに顔を汚くするなんて」
『うっるさっ…!』
「そうえばね、この曲、柳生が歌詞を考えて、俺が歌ったんだ。」
『う…そ!』
「本当。蓮二に発音みてもらったり、バックコーラスに赤也や丸井、仁王、あと演奏にジャッカル、真田。みんなで小夏のために作ったんだ。願わくば、みんなの気持ちが小夏届くきますように」
軽くおでこにキスをされたところで、呆然としていた先生たちに卒業式の列に戻るように促された。
はっと我に返れば、回りからの痛いくらいの視線と先生の青筋、が目に入り、さらに真っ赤になった顔でそさくさ退場した。
式もクラスでの連絡も終わったあと、職員室で私たち二人がこっぴどく叱られたのは卒業式に出た生徒なら誰もが想像できただろう。
だけど説教中ずっと繋がれていた手は誰にも知られないこと。
「失礼しました」
長い説教も終わり、二人部室に向かう。
『はぁ~まさか卒業するまで怒られっぱなしだなんてなぁ…!』
「いい思い出と考えれば?」
『そんなポジティブな』
呆れて笑ったけど、確かにいい思い出だ。
花のアーチの下で、全校生徒に囲まれ、指輪と冠と、精市。
まるで
『結婚式みたいで嬉しかった』
言ってから、なんてことを!と恥ずかしくなったけど、精市からはあたしの顔は見えないハズだからいいや。
「予行演習だから。」
『へ』
「言ったよね俺。予約って。」
『そうえば』
「花嫁を予約。」
『予約なんか…しなくてもあたしは』
「小夏が大丈夫でも回りがほかっとかないからね。大々的に見せつけて虫除けしときたかったんだ。」
『…そのせいであたし、おお恥かいたけど』
「そのくらいの代償は必要だろ?」
『代償…こんなことしなくても精市ならなんとかできるじゃんブラックなくせに』
「なんか言った?」
『いいえなにも』
危な!うっかり口がすべった!
部室が見えてきた。
さっき耳に残った部分のメロディーを口ずさめば、精市も一緒にハミングする。
嬉しくなって、精市の手に触れれば、優しく指を絡ませてくれた。
変わらない日常。
変わっていった風景。
始まりも終わりもたくさんあったけれど
君が隣にいれば
なんだって出来る気がするから。
小さな小さな音で奏でられた三重奏。
いつからか心に響く音になり
耳に残って離れない。
いつまでも思い出すだろう。
この恋のメロディーを。
grand finale
朝一番。
ピリリリリリリりんっ
『くあっ…ああああああ!!!!?』
遅刻。
*
「三年C組幸村精市」
「はい」
寝坊したせいでセットしきれてていない髪を必死で押さえつけながら壇上に登っている精市を見つめる。
今日は中学生最後の日。
卒業式だ。
学校は変わらなくてもこの校舎と離れるのは感慨深いわけで。
鼻の奥がツンとした。
あ~かっこいいな贔屓目なしに。ブン太も仁王も、柳も柳生もジャッカルも。みんなみんなが見とれるテニス部員。彼らが壇上に上がるとしん…と静まり返る体育館。
厳かな儀式はだんだんと終わりに近づいていく。
なんだ…普通に終わりそうだな。よかった…この前精市に《卒業式でも俺の言ったことは絶対だから》って言われてたから心配してたんだけど…、この分なら平穏無事に終われそう!
全員への卒業証書授与も終わり、PTAや役員、校長の話も終了。
会長の答辞が始まった。
眠いところは全て心を無にして耐えた。
校歌合唱君が代斉唱、送る言葉に歌も終わり、最後は花のアーチをくぐって退場のはず。
A組から順に二人ずつ並んで真ん中の道を歩く生徒たち。
アーチを潜る順番がきて、ふぅ…と肩の力を抜いたときだった。
精市の真横を通ったら精市がくるりこちらを向き、名前を呼んだ。
「小夏」
それほど大きくないのによく通る声。
回りにいた生徒が振り向けば、注目の的になるのもすぐだった。
『……え?』
「お手をどうぞ。」
静かな体育館がにわかにざわめきはじめる。視線はあたしと精市が半分半分に集めてる。
『え?』
「そうだな…目をつぶって」
『は、え、何を』
「え?」
その瞬間、一気に空気が冷めたのを感じ取った。その場で立ち止まり、無言で手を差し出す。
あたしでなくても誰だってそうするよ!
空気読んだあたしは凄い偉いと思う。
精市は何やらしゃがんてごそごしている。
すると
「薄目も禁止。」
『なぜばれた……!』
咎められた。
もう一度ぎゅっと目を瞑った。
頭に何か乗せられて、捕まれた指にも何かがはめられる感触があった。
「はい、目を開けて?」
言われるがままに普通より時間をかけて目を開けていく。
目の前には何もかわらない精市の顔。心なしかイタズラっ子のような顔に見える。
『?』
ふとさっき違和感を覚えた指先を見る。
『っ!!!』
「予約させてよね?」
右手の薬指に花の指輪がはまっていた。
震える手で頭の上も触ってみると、こちらにも、同じ花を主として作られた冠が乗せられていた。
驚きて嬉しさとで言葉にならない気持ちを弄んでいると、あることに気がつく。
『この花………どこかで』
どこかでみた。
たくさんこの花が咲いているところ。
そんなに昔じゃなくて
薄い青色の、小さい花が咲き乱れた風景。
『あ…』
そうだあのときの…精市が花に埋もれてたあの…
「気付いた?そうだ。これは俺が埋もれてたあの花だよ。あの時は綺麗に咲いたから、って言ったけど、考えてたのはずっと小夏のことだった。」
『…精…市』
「小夏を想って育てた花だから、プレゼントにね。ワスレナグサのハナコトバは真実の愛。俺たちにぴったりだと思わない?」
『………』
「今までありがとう。そしてこれからもよろしく。」
それが合図であったかのように音楽が流れ始める。
心がはち切れそうなくらい音を立てて、声がでない。
こんなときにやらなくても、とか…幸せとか、言いたいことはたくさんあるのにな。
ただただ、幸せと嬉しさが込み上げて、涙が頬を伝う。
「泣かないでよね」
メロディーが変わり、知らない国の言葉が紡がれる。どこか懐かしい歌声が心をさらに震わせる。
『だっ…て…っく…!』
「めでたいことなんだから。卒業式。」
『卒業式…じゃっ!…なくって……!ありが…とっ…っく』
「あ~あ寝坊した上に泣いてさらに顔を汚くするなんて」
『うっるさっ…!』
「そうえばね、この曲、柳生が歌詞を考えて、俺が歌ったんだ。」
『う…そ!』
「本当。蓮二に発音みてもらったり、バックコーラスに赤也や丸井、仁王、あと演奏にジャッカル、真田。みんなで小夏のために作ったんだ。願わくば、みんなの気持ちが小夏届くきますように」
軽くおでこにキスをされたところで、呆然としていた先生たちに卒業式の列に戻るように促された。
はっと我に返れば、回りからの痛いくらいの視線と先生の青筋、が目に入り、さらに真っ赤になった顔でそさくさ退場した。
式もクラスでの連絡も終わったあと、職員室で私たち二人がこっぴどく叱られたのは卒業式に出た生徒なら誰もが想像できただろう。
だけど説教中ずっと繋がれていた手は誰にも知られないこと。
「失礼しました」
長い説教も終わり、二人部室に向かう。
『はぁ~まさか卒業するまで怒られっぱなしだなんてなぁ…!』
「いい思い出と考えれば?」
『そんなポジティブな』
呆れて笑ったけど、確かにいい思い出だ。
花のアーチの下で、全校生徒に囲まれ、指輪と冠と、精市。
まるで
『結婚式みたいで嬉しかった』
言ってから、なんてことを!と恥ずかしくなったけど、精市からはあたしの顔は見えないハズだからいいや。
「予行演習だから。」
『へ』
「言ったよね俺。予約って。」
『そうえば』
「花嫁を予約。」
『予約なんか…しなくてもあたしは』
「小夏が大丈夫でも回りがほかっとかないからね。大々的に見せつけて虫除けしときたかったんだ。」
『…そのせいであたし、おお恥かいたけど』
「そのくらいの代償は必要だろ?」
『代償…こんなことしなくても精市ならなんとかできるじゃんブラックなくせに』
「なんか言った?」
『いいえなにも』
危な!うっかり口がすべった!
部室が見えてきた。
さっき耳に残った部分のメロディーを口ずさめば、精市も一緒にハミングする。
嬉しくなって、精市の手に触れれば、優しく指を絡ませてくれた。
変わらない日常。
変わっていった風景。
始まりも終わりもたくさんあったけれど
君が隣にいれば
なんだって出来る気がするから。
小さな小さな音で奏でられた三重奏。
いつからか心に響く音になり
耳に残って離れない。
いつまでも思い出すだろう。
この恋のメロディーを。
grand finale
27/27ページ