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庭球
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現実と非現実が被さるような変な感覚。
なんでここに精市がいるの?
なんか焦ってるし。
精市らしくない顔。
こんなにも静かな場所で、あたしの心は、激しいリズムを奏でていた。
「小夏」
たっぷり時間をかけて、精市はこちらに歩いてきた。
「小夏」
あたしの近くにきて、顔に手をふれ、また名前を呼ばれる。
あぁ、その声が仕草が、いとおしい。
いつからあたしは精市をこんな風に見るようになったんだろう。
本当戸惑う。
心臓が、壊れる。
「小夏?」
『ふぇあ!』
「ふっ…また変な声出して…」
『だだだって!』
「だって?」
『っ…!』
撫でられた耳がくすぐったくて顔をよじったけど、精市の手はそれを許さなかった。
ガッチリ顔を固定される。改めて見とれていただなんて、今更言えないです。
『なんでここに精市がいるの?今授業…』
「丸井からメールが来てね。小夏が俺に伝えたいことを言えなくて泣き叫んで飛び降りようとしてるって。」
『んなぁっ!!?』
「朝から元気なさそうだったし、ありえないとは思ったけど一応来てみたってわけ。」
『うそつけ!明らかに心配で走ってきた感じだったじゃん!』
「……ふーんそんなこと言って…随分余裕の立場じゃないか。」
ギュムといい音を立てて頬っぺたが延びる。
『あだだだだ!』
「何か俺に言わなきゃいけないことがあるんじゃないの?」
『な、ない!』
「へぇ?まだしらばっくれるつもり。」
声のトーンが一つ落ち、怒っていることが伝わる。
『えぇ!?ちっ違うよ!違う!まだ、その…心の準備がっ』
「心の…ねぇ…じゃぁ準備が早まるように手助けしようか。」
トンッ
うしろの壁に背中が当たる感覚がした。
少しずつ動いているのは初めから気がついていた。
けどまさかもうすでに
籠の中の鳥だったなんて
『はっ!』
「さて逃げ場がなくなったね小夏。どうしようか。」
くすくす、と上品な笑い声を漏らす精市。上品なら上品らしくなんで大人しくしていられないの!
「大人しく?十分大人しいじゃないか。」
『しゃべってないことに反応するなっっ!!!!』
「あぁ、ごめんね?」
『ふはぁっ!』
突然耳に息を吹きかけられて、足から力が抜ける。それを見越してか、顔の隣にあった精市の手はいつの間にか腰を支えてくれていた。
『ふぉ!触るな変態!』
「小夏が言わないとずっとこのままってことくらい、わかってるだろう?」
『……わかりたくなんかないけど、わかってしまうよね?付き合い長すぎ…泣ける……!』
「そう!じゃあ言え」
『最早脅迫!』
「まだ言えないの?仕方ないな…」
精市の顔が近づいたと思ったら、唇が私の唇に触れた。
軽く押し当てられた唇を離しても、微動も許されない状態のまま、しゃべりかけてくる。
「早く言わないと、ずっとこのままだよ?」
『―っっ!!!こんなんしゃべれる状態じゃなっんんっ!』
またもや唇を塞がれ、言葉が続けられない。
「別にこのままだって俺は構わないけどね?」
『…こん…の…ドSっ!』
「まだ足りないって言うの?大胆だね小夏」
『ちがっ…ふぅっ!』
「違わないだろう?」
このままじゃ本当に危険だと判断し、あたしはチョコを目の前に差し出した。
本当はまだ、自分の想いに自信がないし、よくわからない気持ちだったけど、それすらも伝えてしまおう。
『コレっ!あげる!精市に!だから離れてっっ!!』
「……チョコ?」
『バレンタイン!』
「…こんなことで悩んでたの?毎年くれてるじゃないか。」
『今年、のは…いっいつもとは違う…』
「違う?」
精市は全てわかっていようとも、言わせたいことはこちらが言うまでビクともしない。
『だ…から…今年のは本命ってやつで…や…まだその自信はないけど…精市が、好きっていうか…』
どうにもこうにも恥ずかしくて、目だけを必死に反らしたあたし。
だけど精市の目線が痛くて仕方がない。ちらり目の前に目線を戻せば、見る人みんなが惚れるような、暖かい笑顔がそこにあった。
「やっと、きけた」
『へ?』
「俺がどれだけその言葉を待ったか…小夏は気づいてないよね。」
精市はそのままあたしの肩に顔を落としてあたしを抱き締めた。
『え、いや、だって、え!?』
「小夏さ、俺を弄んで楽しかった?」
『ちょっと待ってよ!あたしそんなことしてない!』
「俺が賭けを持ち出したとき、自分が勝つつもりだった、ていうか小夏に負けるはずはなかった」
うん、まぁそれはそうだよね?精市が負け試合なんてするわけないし。
「小夏には結局彼氏ができなくて、俺が小夏を一生縛り付けておくつもりだった。だけど予想外に丸井が出てきた。」
『え!?ブン太は関係な』
「丸井が小夏に惚れてるのは知っていたよ。他の部員とは違う意味で、小夏のことを好いてた。前にも言ったかな…それでも俺は丸井が行動にでるなんて思わなかったし、まして付き合い始めるなんて考えてもみなかった。」
『あ、あれは』
「不可抗力だとしても―焦った。小夏は初めから丸井に興味をもっていたし、一番仲が良かったから。」
『ていうか精市があたしなんかを…す…好きだなんて…そんなこと…』
「近くにいすぎたんだ。気づかなかった。気づくのが遅すぎたんだと後悔した。だけど俺は…俺も好きだよ…小夏。小夏の隣を俺にくれない?」
『……拒否権は』
「あるとでも?」
『ふふ!いらないよ!』
「そう?」
4ヶ月前とは違うよ。
同じ言葉でも同じじゃない。
あたしの気持ちも、精市の気持ちも。
もともと好きだったけど、きっと本当の好きってこういうことなんだろう。
そこにいるだけでいいんだ。
その人がいれば、それで。
『精市、あたし、やっぱ精市がいないとダメみたい。苛められたって、ドSだって、そんな精市が好き…かも。ブン太と違うの。違う好きなの。』
あたしの気持ち、届いて。
そっと、あたしも精市の背中に手をまわした。
「知ってる」
『うそ!自信なかったでしょ!』
「小夏の口から聞きたかっただけ」
『またそういうこと言う!強がりはよくない!』
「口また塞がれたいの?」
『あわわああ!!!?いやいやごめっ…んんっっ…っ!』
さっきより長い間唇が不自由にされる。
息……!!息!!!!
「なんだ。もうギブアップ?」
『……っ!ッはぁっ!かっ!突然…キスと…か!つかさっきも!告白前にとか!ありえない!やっぱり精市なんか嫌いっ!』
「そんなこと言って。さっきは好きとか俺がいないとダメと『あああああ!』
ぎえあああ!言うんじゃなかったあんなことおお!
意味わからん!意味わからん!
恥ずかしくてアワアワするあたしを他所に、精市はクスクス笑い続けている。
あたしはたくさんの友達を傷つけて、たくさんの友達に支えられて、晴れて幸せを手にしたわけだけど―
教室に戻ると、授業をサボったバツとして、ブン太と二人で掃除をしろと先生におこられ、この寒い冬空の下、目下掃除に励んでいます。
始めにブン太の目が少しだけ腫れてるのを見たとき、あたしはすぐに大丈夫、と尋ねた。
ブン太はなんでもねぇ、と言ったけど、あたしのせいかと思うと心が痛む。
あたしが中途半端にブン太に寄りかかったせいで、余計に傷つけてしまって。
無理に明るく振る舞うブン太。とても大人でかっこよくて、自分がすごく小さく見えた。
『ねぇブン太』
「ん?なに?」
『あのね』
――本当に、ありがとう
end
なんでここに精市がいるの?
なんか焦ってるし。
精市らしくない顔。
こんなにも静かな場所で、あたしの心は、激しいリズムを奏でていた。
「小夏」
たっぷり時間をかけて、精市はこちらに歩いてきた。
「小夏」
あたしの近くにきて、顔に手をふれ、また名前を呼ばれる。
あぁ、その声が仕草が、いとおしい。
いつからあたしは精市をこんな風に見るようになったんだろう。
本当戸惑う。
心臓が、壊れる。
「小夏?」
『ふぇあ!』
「ふっ…また変な声出して…」
『だだだって!』
「だって?」
『っ…!』
撫でられた耳がくすぐったくて顔をよじったけど、精市の手はそれを許さなかった。
ガッチリ顔を固定される。改めて見とれていただなんて、今更言えないです。
『なんでここに精市がいるの?今授業…』
「丸井からメールが来てね。小夏が俺に伝えたいことを言えなくて泣き叫んで飛び降りようとしてるって。」
『んなぁっ!!?』
「朝から元気なさそうだったし、ありえないとは思ったけど一応来てみたってわけ。」
『うそつけ!明らかに心配で走ってきた感じだったじゃん!』
「……ふーんそんなこと言って…随分余裕の立場じゃないか。」
ギュムといい音を立てて頬っぺたが延びる。
『あだだだだ!』
「何か俺に言わなきゃいけないことがあるんじゃないの?」
『な、ない!』
「へぇ?まだしらばっくれるつもり。」
声のトーンが一つ落ち、怒っていることが伝わる。
『えぇ!?ちっ違うよ!違う!まだ、その…心の準備がっ』
「心の…ねぇ…じゃぁ準備が早まるように手助けしようか。」
トンッ
うしろの壁に背中が当たる感覚がした。
少しずつ動いているのは初めから気がついていた。
けどまさかもうすでに
籠の中の鳥だったなんて
『はっ!』
「さて逃げ場がなくなったね小夏。どうしようか。」
くすくす、と上品な笑い声を漏らす精市。上品なら上品らしくなんで大人しくしていられないの!
「大人しく?十分大人しいじゃないか。」
『しゃべってないことに反応するなっっ!!!!』
「あぁ、ごめんね?」
『ふはぁっ!』
突然耳に息を吹きかけられて、足から力が抜ける。それを見越してか、顔の隣にあった精市の手はいつの間にか腰を支えてくれていた。
『ふぉ!触るな変態!』
「小夏が言わないとずっとこのままってことくらい、わかってるだろう?」
『……わかりたくなんかないけど、わかってしまうよね?付き合い長すぎ…泣ける……!』
「そう!じゃあ言え」
『最早脅迫!』
「まだ言えないの?仕方ないな…」
精市の顔が近づいたと思ったら、唇が私の唇に触れた。
軽く押し当てられた唇を離しても、微動も許されない状態のまま、しゃべりかけてくる。
「早く言わないと、ずっとこのままだよ?」
『―っっ!!!こんなんしゃべれる状態じゃなっんんっ!』
またもや唇を塞がれ、言葉が続けられない。
「別にこのままだって俺は構わないけどね?」
『…こん…の…ドSっ!』
「まだ足りないって言うの?大胆だね小夏」
『ちがっ…ふぅっ!』
「違わないだろう?」
このままじゃ本当に危険だと判断し、あたしはチョコを目の前に差し出した。
本当はまだ、自分の想いに自信がないし、よくわからない気持ちだったけど、それすらも伝えてしまおう。
『コレっ!あげる!精市に!だから離れてっっ!!』
「……チョコ?」
『バレンタイン!』
「…こんなことで悩んでたの?毎年くれてるじゃないか。」
『今年、のは…いっいつもとは違う…』
「違う?」
精市は全てわかっていようとも、言わせたいことはこちらが言うまでビクともしない。
『だ…から…今年のは本命ってやつで…や…まだその自信はないけど…精市が、好きっていうか…』
どうにもこうにも恥ずかしくて、目だけを必死に反らしたあたし。
だけど精市の目線が痛くて仕方がない。ちらり目の前に目線を戻せば、見る人みんなが惚れるような、暖かい笑顔がそこにあった。
「やっと、きけた」
『へ?』
「俺がどれだけその言葉を待ったか…小夏は気づいてないよね。」
精市はそのままあたしの肩に顔を落としてあたしを抱き締めた。
『え、いや、だって、え!?』
「小夏さ、俺を弄んで楽しかった?」
『ちょっと待ってよ!あたしそんなことしてない!』
「俺が賭けを持ち出したとき、自分が勝つつもりだった、ていうか小夏に負けるはずはなかった」
うん、まぁそれはそうだよね?精市が負け試合なんてするわけないし。
「小夏には結局彼氏ができなくて、俺が小夏を一生縛り付けておくつもりだった。だけど予想外に丸井が出てきた。」
『え!?ブン太は関係な』
「丸井が小夏に惚れてるのは知っていたよ。他の部員とは違う意味で、小夏のことを好いてた。前にも言ったかな…それでも俺は丸井が行動にでるなんて思わなかったし、まして付き合い始めるなんて考えてもみなかった。」
『あ、あれは』
「不可抗力だとしても―焦った。小夏は初めから丸井に興味をもっていたし、一番仲が良かったから。」
『ていうか精市があたしなんかを…す…好きだなんて…そんなこと…』
「近くにいすぎたんだ。気づかなかった。気づくのが遅すぎたんだと後悔した。だけど俺は…俺も好きだよ…小夏。小夏の隣を俺にくれない?」
『……拒否権は』
「あるとでも?」
『ふふ!いらないよ!』
「そう?」
4ヶ月前とは違うよ。
同じ言葉でも同じじゃない。
あたしの気持ちも、精市の気持ちも。
もともと好きだったけど、きっと本当の好きってこういうことなんだろう。
そこにいるだけでいいんだ。
その人がいれば、それで。
『精市、あたし、やっぱ精市がいないとダメみたい。苛められたって、ドSだって、そんな精市が好き…かも。ブン太と違うの。違う好きなの。』
あたしの気持ち、届いて。
そっと、あたしも精市の背中に手をまわした。
「知ってる」
『うそ!自信なかったでしょ!』
「小夏の口から聞きたかっただけ」
『またそういうこと言う!強がりはよくない!』
「口また塞がれたいの?」
『あわわああ!!!?いやいやごめっ…んんっっ…っ!』
さっきより長い間唇が不自由にされる。
息……!!息!!!!
「なんだ。もうギブアップ?」
『……っ!ッはぁっ!かっ!突然…キスと…か!つかさっきも!告白前にとか!ありえない!やっぱり精市なんか嫌いっ!』
「そんなこと言って。さっきは好きとか俺がいないとダメと『あああああ!』
ぎえあああ!言うんじゃなかったあんなことおお!
意味わからん!意味わからん!
恥ずかしくてアワアワするあたしを他所に、精市はクスクス笑い続けている。
あたしはたくさんの友達を傷つけて、たくさんの友達に支えられて、晴れて幸せを手にしたわけだけど―
教室に戻ると、授業をサボったバツとして、ブン太と二人で掃除をしろと先生におこられ、この寒い冬空の下、目下掃除に励んでいます。
始めにブン太の目が少しだけ腫れてるのを見たとき、あたしはすぐに大丈夫、と尋ねた。
ブン太はなんでもねぇ、と言ったけど、あたしのせいかと思うと心が痛む。
あたしが中途半端にブン太に寄りかかったせいで、余計に傷つけてしまって。
無理に明るく振る舞うブン太。とても大人でかっこよくて、自分がすごく小さく見えた。
『ねぇブン太』
「ん?なに?」
『あのね』
――本当に、ありがとう
end