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庭球
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新学期も始まって落ち着いてきたころ。
一年のときの担任で産休を取っている先生が、遊びに来た。
うちのクラスのみんなが先生の回りに集まって話してるときに言われた一言。
『先生お久しぶりですっ!』
「あら~小夏さんじゃないの!…あら?ちょっと丸くなったわね?ふふ」
私は絶望を原動力に、コートに走った。
ぼーっと、本当にその言い方が正しいと思う。
あたしはぼーっと、コートの中の赤也を見ていた。
‘切原部長’
そう呼ばれる度に、知らない赤也がそこに……じゃねぇっ!
赤也、なんで毎日外にいるのにあんなに白いんだろ。
赤也、あたしより絶対食べてるのになんであんな細いんだろ。
っ…ムカつく。
そんなことを考えながら傍へ歩み寄る。
『赤也!』
「ん?あ!小夏先輩!」
ぴょんぴょん跳ねながら近づいてくれ赤也はやっぱり赤也だ。心配ない。
『突然ですがインタビューです!』
「はい?」
『切原部長はどうしてそんなに肌が白いんですか?』
「へ?あ~それは…って、そんなんわかんないスよ!でもそういやうちのねーちゃんも肌は白いッス。家系のせいかな。」
『うらやましいた』
「なんでやんす?」
『あ、呼んでないよ』
しい太を軽く受け流し、話をつづける。
『んじゃあその細さの秘訣は?』
「ん?俺細くな…イデデデ!!!」
『この口が悪いのか?!それとも赤也くんの頭が悪いのかなっ?!』
ムカッチーンときたので、口の端っこをビョーと引っ張ってやった。弾力がある。
…女の子が欲しい三大条件を備えてるなんてなんてエンジェルっ!
「ひでぇっ!頭は関係ないッス!それに男は単純に細いって言われても嬉しくないんスよ!?毎日トレーニングしてんスから!」
『え?そういうもんなの?』
「ッス!」
ふむ…
だけどそんなこと…
『たるんどるあたしから見れば細いに代わりはないのだぁぁぁぁ!』
「真田副部長ッスかァァア!」
『はっ!ごめん赤也!や、でもやっぱり運動かな…たしかに「確かに部活手伝いにきてたときよりやらかそうッス!」
ぷにっ
お腹を触られるかと縮こまったら、頬っぺたをつつかれていた。
ぷにぷにぷに
「やっぱ気持ちいいッス!」
めちゃめちゃいい笑顔で言われたら、言い返す言葉もなくなってしまった。
「せ~んぱ~い。機嫌直してくださいよ~」
『赤也のばかたれ。もじゃっとしとけもじゃもじゃ!』
「あっひでぇっっ!これはセットしてこうなってんだ・って何回言ったらわかるんスか!」
『知らん!知らん!女の子に向かってそんなこと言うのが悪い!反省しとけ!』
「…先輩…気にしすぎっス」
『気にするわバカっ!』
「丸井先輩はこんくらいじゃへこたれないッスよ」
『ブン太と一緒にすんな!』
そろそろ涙目になるのを堪えて赤也を睨み付けるあたし。でもあんまり効果はないみたい。
どうしてこう乙女心をわかってくれないのかな。
赤也も仁王もブン太も……ってあの三人だけか!
「つか丸井先輩に付き合って食べてたらそりゃあ太りますって。丸井先輩はそんだけ消費してるからいいみたいだけど、小夏先輩は動き回るわけじゃねぇし」
『たしかに…』
ブン太と付き合い始めてから前よりもケーキを食べにいく回数が増えた。
お弁当を食べたあとには必ず、ポッキーとかチョコが待っていた。
よく思い出せばカロリーは軽く二倍は摂ってた…のかも…
「幸村部長みたいに和食たべれば痩せるんじゃないスか?」
『………』
「部長も細いじゃないすか。まぁあれは病気のせいもあるとは思うけど…」
『そうだね……入院中は差し入れだけが楽しみだもんね!』
「………も、いいっす…」
『え!!なんで!』
「いや…別にιあ、俺、そろそろ自主練の時間終わるんで戻るッス!じゃあね小夏先輩!」
そう言って赤也はコートに戻っていった。
その後ろ姿を見送って、あたしはコートを後にした。
『なんなのさ』
ぶつぶつ呟きながら、校舎裏をショートカットしたら、ふと強い香りがする。
香りに誘われて覗き込んだ先は、綺麗な花壇…というか一面花だらけの…
『え?どこここ』
三年通ったこの校舎。
知らない場所なんかないと思っていた。
だけどこんな景色、初めて見る光景だ。
ふと、その花だらけの花壇(って呼ぶには広すぎるけど)の中に人の足を……
『て……え!!!!?』
明らか倒れてる!!!!大変!
ギョッとして駆け寄ると次第に顔が見えてきて、足がすくんでしまった。
見間違えるはずはない
だってそこにいたのは
『精…市……?』
精市が倒れたあの瞬間がフラッシュバックする。
さっきは赤也にあんな軽いこと言ったけど、忘れられるはずがない。
幼なじみが倒れて、一番動揺したのは、他でもないこのあたしだ。
怖い
見たくない
だけど足はあたしの意思とは裏腹に、確実に精市の近くに向かっていた。
一歩、また一歩、
花壇を掻き分けて
ついに精市のところに着いて、顔を覗き込む。
眠っているように穏やかで……死んだように、静か。
『…せっ…精、市……?』
声をかけてみても返事はない。
それを合図に取り乱したあたし。
『精っ市っっ!!!精市!!!?しっかりして精市!死んじゃヤダ!!精市ぃっ…』
ぱたっと花壇に崩れ落ち、泣きじゃくる。
触れるのは怖い
信じてるけど、この世界に絶対なんて
ないんだから
―――と次の瞬間。
ひた
頬に思いの外暖かい何かが触れた。
『!!!!!!』
固まっていると、その手があたしの手を包んだ。
すぐ近くで何かが動く気配がする。
「…泣くとは、正直予想外。」
『……ふへ…?』
顔を上げれば、困った顔をした精市がいた。
「そこまで驚かせるつもりはなかったんだけど。」
『え…え…?』
「育ててた花が満開になったから、嬉しくて花に埋もれてたんだ。そしたら小夏の声が近づいてきたから……ちょっとからかってやろうとね。」
『っ!!!!』
「でもさすがに…ごめんね」
精市から すまない じゃなく、 ごめん を聞いたのは何年ぶりのことか。
立海に…部活に入ってから、近くにいるのに、遠い世界の人だった精市
大人びず、単純に感情を表すの…久しぶりに見た…
場違いなことを考えていると、もう片方の手で頭を撫でられた。
固まっていたあたしのタガがはずれたのはその瞬間。
勢いのまま精市に抱きついた。
『バカっ!!!!!精市のバカァァ!アホ!!!!縁起でもないことしないでよ!!!!』
止まったと思った涙だったけど、限度はなかったようだ。
「だからごめんってい『許さない!』……」
言葉をとられた精市は諦めたのか、あたしの背中をあやすようにポンポンたたいていた。
数分後、やっと涙がおさまってきて、ごめんねと小さく謝り、精市から離れたあたし。
「ま、こっちも悪かったと思ってるし。…小夏」
『…うん?』
「俺がいなくなったらどうす『変なこと言わないではっ倒すよ』
「ふふっ」
『うそでも、そんなこと言っちゃ嫌だ。どこにもいかないで。』
「……いいじゃないか。小夏にはブン太がいる。俺がいなくたって。」
世界の音が止まった。
今…なんて?
「小夏はブン太と付き合ってるんだろう?本当の恋できたほうが勝ちっていう賭けは、小夏の勝ちかな。俺が負けるなんて…正直思ってもみなかったけど。」
『あ…』
「長い間一緒にいすぎて、小夏の隣にブン太がいる図がしっくりこないけど、もう俺がいなくたって大丈夫かな。……なんか大切な愛娘をやる父親みたいなセリフだね。」
『違う……』
「え…?」
『あたしが隣にいてほしいのはせ……っ!!!!!』
ハッと我に返ったが、時は無情なもので
今度は精市が止まって、風の音が、学校の喧騒が、耳に戻ってくる。
出した言葉が、どういう意味を持つのか――
すでに遅かった
『あ…』
「……俺だって、そのポジションが誰かに渡るのなんて想像してなかった。」
『っ!!!』
「……すまない…」
一言呟き、立ち上がったと思えば、あたしのおでこに精市の唇が触れた。
辛そうな笑顔が、気持ちを表していた。
「すまない…」
もう一度、そう言って、遠退いていった足音。
とても泣きたい気分なのに、涙は止まっている。
『な…んで…?』
なにがいけなかった?
どこで歯車がくるったの?
精市は本当にどこかに行っちゃうの?
あたしは気持ちに気づいてしまった。
end.
一年のときの担任で産休を取っている先生が、遊びに来た。
うちのクラスのみんなが先生の回りに集まって話してるときに言われた一言。
『先生お久しぶりですっ!』
「あら~小夏さんじゃないの!…あら?ちょっと丸くなったわね?ふふ」
私は絶望を原動力に、コートに走った。
ぼーっと、本当にその言い方が正しいと思う。
あたしはぼーっと、コートの中の赤也を見ていた。
‘切原部長’
そう呼ばれる度に、知らない赤也がそこに……じゃねぇっ!
赤也、なんで毎日外にいるのにあんなに白いんだろ。
赤也、あたしより絶対食べてるのになんであんな細いんだろ。
っ…ムカつく。
そんなことを考えながら傍へ歩み寄る。
『赤也!』
「ん?あ!小夏先輩!」
ぴょんぴょん跳ねながら近づいてくれ赤也はやっぱり赤也だ。心配ない。
『突然ですがインタビューです!』
「はい?」
『切原部長はどうしてそんなに肌が白いんですか?』
「へ?あ~それは…って、そんなんわかんないスよ!でもそういやうちのねーちゃんも肌は白いッス。家系のせいかな。」
『うらやましいた』
「なんでやんす?」
『あ、呼んでないよ』
しい太を軽く受け流し、話をつづける。
『んじゃあその細さの秘訣は?』
「ん?俺細くな…イデデデ!!!」
『この口が悪いのか?!それとも赤也くんの頭が悪いのかなっ?!』
ムカッチーンときたので、口の端っこをビョーと引っ張ってやった。弾力がある。
…女の子が欲しい三大条件を備えてるなんてなんてエンジェルっ!
「ひでぇっ!頭は関係ないッス!それに男は単純に細いって言われても嬉しくないんスよ!?毎日トレーニングしてんスから!」
『え?そういうもんなの?』
「ッス!」
ふむ…
だけどそんなこと…
『たるんどるあたしから見れば細いに代わりはないのだぁぁぁぁ!』
「真田副部長ッスかァァア!」
『はっ!ごめん赤也!や、でもやっぱり運動かな…たしかに「確かに部活手伝いにきてたときよりやらかそうッス!」
ぷにっ
お腹を触られるかと縮こまったら、頬っぺたをつつかれていた。
ぷにぷにぷに
「やっぱ気持ちいいッス!」
めちゃめちゃいい笑顔で言われたら、言い返す言葉もなくなってしまった。
「せ~んぱ~い。機嫌直してくださいよ~」
『赤也のばかたれ。もじゃっとしとけもじゃもじゃ!』
「あっひでぇっっ!これはセットしてこうなってんだ・って何回言ったらわかるんスか!」
『知らん!知らん!女の子に向かってそんなこと言うのが悪い!反省しとけ!』
「…先輩…気にしすぎっス」
『気にするわバカっ!』
「丸井先輩はこんくらいじゃへこたれないッスよ」
『ブン太と一緒にすんな!』
そろそろ涙目になるのを堪えて赤也を睨み付けるあたし。でもあんまり効果はないみたい。
どうしてこう乙女心をわかってくれないのかな。
赤也も仁王もブン太も……ってあの三人だけか!
「つか丸井先輩に付き合って食べてたらそりゃあ太りますって。丸井先輩はそんだけ消費してるからいいみたいだけど、小夏先輩は動き回るわけじゃねぇし」
『たしかに…』
ブン太と付き合い始めてから前よりもケーキを食べにいく回数が増えた。
お弁当を食べたあとには必ず、ポッキーとかチョコが待っていた。
よく思い出せばカロリーは軽く二倍は摂ってた…のかも…
「幸村部長みたいに和食たべれば痩せるんじゃないスか?」
『………』
「部長も細いじゃないすか。まぁあれは病気のせいもあるとは思うけど…」
『そうだね……入院中は差し入れだけが楽しみだもんね!』
「………も、いいっす…」
『え!!なんで!』
「いや…別にιあ、俺、そろそろ自主練の時間終わるんで戻るッス!じゃあね小夏先輩!」
そう言って赤也はコートに戻っていった。
その後ろ姿を見送って、あたしはコートを後にした。
『なんなのさ』
ぶつぶつ呟きながら、校舎裏をショートカットしたら、ふと強い香りがする。
香りに誘われて覗き込んだ先は、綺麗な花壇…というか一面花だらけの…
『え?どこここ』
三年通ったこの校舎。
知らない場所なんかないと思っていた。
だけどこんな景色、初めて見る光景だ。
ふと、その花だらけの花壇(って呼ぶには広すぎるけど)の中に人の足を……
『て……え!!!!?』
明らか倒れてる!!!!大変!
ギョッとして駆け寄ると次第に顔が見えてきて、足がすくんでしまった。
見間違えるはずはない
だってそこにいたのは
『精…市……?』
精市が倒れたあの瞬間がフラッシュバックする。
さっきは赤也にあんな軽いこと言ったけど、忘れられるはずがない。
幼なじみが倒れて、一番動揺したのは、他でもないこのあたしだ。
怖い
見たくない
だけど足はあたしの意思とは裏腹に、確実に精市の近くに向かっていた。
一歩、また一歩、
花壇を掻き分けて
ついに精市のところに着いて、顔を覗き込む。
眠っているように穏やかで……死んだように、静か。
『…せっ…精、市……?』
声をかけてみても返事はない。
それを合図に取り乱したあたし。
『精っ市っっ!!!精市!!!?しっかりして精市!死んじゃヤダ!!精市ぃっ…』
ぱたっと花壇に崩れ落ち、泣きじゃくる。
触れるのは怖い
信じてるけど、この世界に絶対なんて
ないんだから
―――と次の瞬間。
ひた
頬に思いの外暖かい何かが触れた。
『!!!!!!』
固まっていると、その手があたしの手を包んだ。
すぐ近くで何かが動く気配がする。
「…泣くとは、正直予想外。」
『……ふへ…?』
顔を上げれば、困った顔をした精市がいた。
「そこまで驚かせるつもりはなかったんだけど。」
『え…え…?』
「育ててた花が満開になったから、嬉しくて花に埋もれてたんだ。そしたら小夏の声が近づいてきたから……ちょっとからかってやろうとね。」
『っ!!!!』
「でもさすがに…ごめんね」
精市から すまない じゃなく、 ごめん を聞いたのは何年ぶりのことか。
立海に…部活に入ってから、近くにいるのに、遠い世界の人だった精市
大人びず、単純に感情を表すの…久しぶりに見た…
場違いなことを考えていると、もう片方の手で頭を撫でられた。
固まっていたあたしのタガがはずれたのはその瞬間。
勢いのまま精市に抱きついた。
『バカっ!!!!!精市のバカァァ!アホ!!!!縁起でもないことしないでよ!!!!』
止まったと思った涙だったけど、限度はなかったようだ。
「だからごめんってい『許さない!』……」
言葉をとられた精市は諦めたのか、あたしの背中をあやすようにポンポンたたいていた。
数分後、やっと涙がおさまってきて、ごめんねと小さく謝り、精市から離れたあたし。
「ま、こっちも悪かったと思ってるし。…小夏」
『…うん?』
「俺がいなくなったらどうす『変なこと言わないではっ倒すよ』
「ふふっ」
『うそでも、そんなこと言っちゃ嫌だ。どこにもいかないで。』
「……いいじゃないか。小夏にはブン太がいる。俺がいなくたって。」
世界の音が止まった。
今…なんて?
「小夏はブン太と付き合ってるんだろう?本当の恋できたほうが勝ちっていう賭けは、小夏の勝ちかな。俺が負けるなんて…正直思ってもみなかったけど。」
『あ…』
「長い間一緒にいすぎて、小夏の隣にブン太がいる図がしっくりこないけど、もう俺がいなくたって大丈夫かな。……なんか大切な愛娘をやる父親みたいなセリフだね。」
『違う……』
「え…?」
『あたしが隣にいてほしいのはせ……っ!!!!!』
ハッと我に返ったが、時は無情なもので
今度は精市が止まって、風の音が、学校の喧騒が、耳に戻ってくる。
出した言葉が、どういう意味を持つのか――
すでに遅かった
『あ…』
「……俺だって、そのポジションが誰かに渡るのなんて想像してなかった。」
『っ!!!』
「……すまない…」
一言呟き、立ち上がったと思えば、あたしのおでこに精市の唇が触れた。
辛そうな笑顔が、気持ちを表していた。
「すまない…」
もう一度、そう言って、遠退いていった足音。
とても泣きたい気分なのに、涙は止まっている。
『な…んで…?』
なにがいけなかった?
どこで歯車がくるったの?
精市は本当にどこかに行っちゃうの?
あたしは気持ちに気づいてしまった。
end.