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庭球
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カチャパタッ
カチャパタッ
携帯を開いては閉じる音だけが虚しく響くお正月。
メールも待ち人も、いまだ来ず。
あのクリスマス以来、外見上いつも通りに戻ったあたしとテニス部員たち。
普通に話すし、普通に遊ぶ。
けどやっぱりどこか欠けたパズルのピースははまらない。
なんとか冬休みに突入したのはいいけれど、去年みたいに一緒に祈願とかいけないかなぁ、なんてどこかで期待してる自分がいて、なんとなく情けない。
そんなことを考えて、御節を食べたら一日中ベッドの上にゴロゴロ。
だから体重がどんどん増えるのかデブデブ。
……死にたくなってきた…
『うぅ~……』
祈願と言えば―
去年は全員で精市の無事復帰と全国大会制覇を祈ったのに、半分しか叶えてもらえなかったなぁ。
奮発して100円も入れたのに!(みんなに『少なっ!』って突っ込まれたのもバッチリ覚えてるけどさ)
あたしが一番に願ったのは精市の復帰だったから、そりゃ嬉しかったけど…
今年は一人寂しく遠くまでお参りに行こうかなぁ。
そこまでしたらご利益ありそうだし!
………余計寂しくなってきた。
うん!でも行くならどこだろ…やっぱ
「京都がいいと思うけど。ついでに性格も京風美人に学んできたら?」
『うんうんそうだよね~京都だよ……って!!!?』
この声まさか
「やぁ」
『せっ精市!!!?』
「うん。俺以外の誰に見えるの?頭だけじゃなくてついに目も悪くなったの?」
『違うわぁぁ!!!!』
「じゃあ何」
『まずそこに直れぇっ!』
「え?誰に口きいてるんだい?」
『すみませんっした』
逆にあたしがベッドから降ろされ床に正座させられた。土下座!
「で、何?」
『まずっ!あんたがなんでここにいるの!どうやって入ってきた!』
「なに言ってるんだい?小夏の部屋の構造なんか10年前に把握済み。窓からが一番侵入しやすいっていうのは変わってないね。」
『とりあえず玄関から入れよ。』
なんなんだ本当。
ちょっと前のシリアス精市はどこにいった。
いや、まぁ確かにあれはちょっと調子狂うから今のがいい気もするけど…
「この口縫い付けてあげようか?」
『うにゅあっ!』
「ホント、口数減らないね」
『っああっ!つか何しに来たんだ!』
「ん?あぁ、そうそう。一緒に初詣行かない?って誘いに来たんだ。」
『え?』
「小夏~!お友達来てるわよ~!」
『あっえっ?は、はぁいっ!!』
**
最初は幸村君が歩いているところを偶々見かけただけだった。
でもなんとなくわかっちまったんだ。
小夏の家に行くんだろうって。
勘って言ったらバカにされそうだけどな。
でも直感でそう思ったんだ。
幸村君の顔が、心なしか嬉しそうに見えたから。
『ブン太!?』
「よぉ…あけおめ。」
『え?あ、あけましておめでとう…って、どうしたの?』
「いや、あ~…あぁ!なんかよ、冬休みに入ってから誰も遊んでくれねぇから、暇で…あ~…今から一緒にどっか行かねぇ?」
『!』
「あ―…イヤ…だったりす「丸井じゃないか」!?」
や~っぱり。
俺の勘、あたったな。
『……精市…』
「どうしたんだい?丸井。」
「ゆ、幸村君こそ、」
「うん?俺は小夏を初詣に誘いに来たんだけど。」
「…そっか」
そこまではっきり言われると、どうにもこうにも…
『あ、ぶ、ブン太も上がりなよ!こんなとこで話もなんだしさ!』
「いいのかよ?幸村君と話してたんだろぃ?」
『全然構わないし!ね!精市?』
「……まぁ」
明らかに不服そうな顔。
だけどそんなの気にしてやらねぇし、やるつもりもねぇ。
俺だって譲れねぇもんがあるんだって気づいちまったから。
お茶を用意してくる、といって幸村君に俺を部屋へ案内するよう頼んだ小夏。
仲良しなのを見せびらかしたいのかよぃ。
何が楽しくて…恐らく恋敵だろう幸村君と二人きりにならなきゃいけねぇんだ…
「なぁ丸井。」
「ん~」
できるだけ動揺を出さないよう応える俺。我ながらよくできました花丸だって。
初めて入る小夏の部屋に興味がいってたってのもあったけどな。
「率直に聞くけど、丸井は小夏と付き合ってたんだよね?」
「付き合ってる、だぜぃ幸村君。別れたつもりはねぇし。」
「へぇ…言うねぇ丸井。でも二人とも、全然仲良さそうには見えないけど…俺の気のせいかい?」
「それは、」
『ちょ~っと!精市!!扉開けて~!』
「あぁ」
小夏が来たことにより中断する議論。
《それは》
俺はその続き、なんて言うつもりだったんだ?
小夏、小夏。
俺は――
『早くしてよねっ!動きが鈍いです―。』
「俺のセリフをとらない。」
ぴんっと額を手で弾く。
『あだっ!』
こんなことしつつも心なしか焦ってる自分。
もう本当病気だよ一種の。
小夏がいなきゃ生活している実感すらないんだから。
丸井が小夏を好きだってことには気づいてたけれど、行動を起こすとは思ってなかった。
正直、驚かされたし、すっごく気にくわなかった。
なんだ俺の計画は台無しになるのか・なんてこと、変なプライドが邪魔して、グチも言えやしない。
『相変わらず容赦ないデコピン!あたし、女の子だってこと、忘れてるでしょ!』
「あぁ、一応そうだったね。」
『ったく!まぁいいや、とりあえずお茶どうぞ。はい、ブン太』
「あ、さんきゅ。」
『お茶菓子、あたしの分のロールケーキなんだから、ありがたく食べなよ。』
「ありがたく頂くけどよ…自分で言うなよぃ」
「ハァ…どれだけがめついかこんなところで証明しなくても」
『精市はいらないか!そう!じゃああたしが食べるよそれも!』
バッチと手を出した小夏から逃げるようにケーキを奪い、逆に近づけたのは自分の顔。
『んなっ!ケーキっ!』
「食べさせてあげようか……口移しで」
『いらん』
………幼馴染みがうっとおしいと思うのはこういうときだ。
全部が全部【冗談】としか取られない悔しさ。
他の女子なんて興味ないのに。
一番見てほしい小夏の眼中に俺は入っていないのかと、嫌がおうにも思わされる。
…ま、丸井にはダメージ与えられたみたいだから、今回はよしとするか。
「はいはい…誰が小夏なんかに口移しなんて」
『ちょ!!ひどい!そこは冗談でもしたいとか言うべき!ねぇブン太!』
「おっ俺に聞くなよぃ!」
『これっ!これが正常な反応だよっっ!ちょっと恥ずかしがるとかね!だからブン太好き!』
「ちょっ離れろぃ!」
『ちょっと調子乗りすぎた!ごめんごめん!!』
ぎゅっと丸井に抱きつく小夏。
髪色と同じくらい真っ赤に染まった丸井の顔。
全てが俺をいらつかせる。
損な役回りというか…役職というか…
**
普通にいれることが嬉しくて、二人の気持ちに気づけないあたしはお子様。
『え~っと…二人ともあたしと出掛けたいってことでいいのかな?』
「その言い方が気にくわないのは俺だけかな。」
「幸村君…」
『むー。じゃあ正直に言う!二人が来てくれて本当嬉しかった!』
二人がびっくりした顔をする。
『一回しか言ーわない、けどっ!新年最初から嬉しかった!』
うん!本当だからね!
「……」
「……」
『……ちょっと!黙るとかなしでしょっ!ハズイじゃん!』
「あ、いや、なんつーか……」
「ふっ…」
『精市!!ひどい!』
もういい!精市なんか知らん!
ぷいと、違う方を向くと、ふわりと頭に暖かさが降った。
「そういう素直さが、小夏のいいところだよ。」
ぽんぽんと、撫でる手の温もりが懐かしさを覚えた。
『ふん…いっ今更遅いんだから!』
「はいはい」
「よし、小夏!腹ごしらえは済んだし、初詣行こうぜぃ!」
『うんっ!行こう!』
立ち上がり、三人そろって外にでる。
向うは学校近くの神社。
三人並んでゆっくり歩く、歩き慣れた道。
初めて一緒に歩いたあの頃と気持ちも関係も違うけど。
二人が隣にいることに今日ほど幸せを覚えたことがあっただろうか。
今年一年も幸せな日々を過ごせますように――
end.
カチャパタッ
携帯を開いては閉じる音だけが虚しく響くお正月。
メールも待ち人も、いまだ来ず。
あのクリスマス以来、外見上いつも通りに戻ったあたしとテニス部員たち。
普通に話すし、普通に遊ぶ。
けどやっぱりどこか欠けたパズルのピースははまらない。
なんとか冬休みに突入したのはいいけれど、去年みたいに一緒に祈願とかいけないかなぁ、なんてどこかで期待してる自分がいて、なんとなく情けない。
そんなことを考えて、御節を食べたら一日中ベッドの上にゴロゴロ。
だから体重がどんどん増えるのかデブデブ。
……死にたくなってきた…
『うぅ~……』
祈願と言えば―
去年は全員で精市の無事復帰と全国大会制覇を祈ったのに、半分しか叶えてもらえなかったなぁ。
奮発して100円も入れたのに!(みんなに『少なっ!』って突っ込まれたのもバッチリ覚えてるけどさ)
あたしが一番に願ったのは精市の復帰だったから、そりゃ嬉しかったけど…
今年は一人寂しく遠くまでお参りに行こうかなぁ。
そこまでしたらご利益ありそうだし!
………余計寂しくなってきた。
うん!でも行くならどこだろ…やっぱ
「京都がいいと思うけど。ついでに性格も京風美人に学んできたら?」
『うんうんそうだよね~京都だよ……って!!!?』
この声まさか
「やぁ」
『せっ精市!!!?』
「うん。俺以外の誰に見えるの?頭だけじゃなくてついに目も悪くなったの?」
『違うわぁぁ!!!!』
「じゃあ何」
『まずそこに直れぇっ!』
「え?誰に口きいてるんだい?」
『すみませんっした』
逆にあたしがベッドから降ろされ床に正座させられた。土下座!
「で、何?」
『まずっ!あんたがなんでここにいるの!どうやって入ってきた!』
「なに言ってるんだい?小夏の部屋の構造なんか10年前に把握済み。窓からが一番侵入しやすいっていうのは変わってないね。」
『とりあえず玄関から入れよ。』
なんなんだ本当。
ちょっと前のシリアス精市はどこにいった。
いや、まぁ確かにあれはちょっと調子狂うから今のがいい気もするけど…
「この口縫い付けてあげようか?」
『うにゅあっ!』
「ホント、口数減らないね」
『っああっ!つか何しに来たんだ!』
「ん?あぁ、そうそう。一緒に初詣行かない?って誘いに来たんだ。」
『え?』
「小夏~!お友達来てるわよ~!」
『あっえっ?は、はぁいっ!!』
**
最初は幸村君が歩いているところを偶々見かけただけだった。
でもなんとなくわかっちまったんだ。
小夏の家に行くんだろうって。
勘って言ったらバカにされそうだけどな。
でも直感でそう思ったんだ。
幸村君の顔が、心なしか嬉しそうに見えたから。
『ブン太!?』
「よぉ…あけおめ。」
『え?あ、あけましておめでとう…って、どうしたの?』
「いや、あ~…あぁ!なんかよ、冬休みに入ってから誰も遊んでくれねぇから、暇で…あ~…今から一緒にどっか行かねぇ?」
『!』
「あ―…イヤ…だったりす「丸井じゃないか」!?」
や~っぱり。
俺の勘、あたったな。
『……精市…』
「どうしたんだい?丸井。」
「ゆ、幸村君こそ、」
「うん?俺は小夏を初詣に誘いに来たんだけど。」
「…そっか」
そこまではっきり言われると、どうにもこうにも…
『あ、ぶ、ブン太も上がりなよ!こんなとこで話もなんだしさ!』
「いいのかよ?幸村君と話してたんだろぃ?」
『全然構わないし!ね!精市?』
「……まぁ」
明らかに不服そうな顔。
だけどそんなの気にしてやらねぇし、やるつもりもねぇ。
俺だって譲れねぇもんがあるんだって気づいちまったから。
お茶を用意してくる、といって幸村君に俺を部屋へ案内するよう頼んだ小夏。
仲良しなのを見せびらかしたいのかよぃ。
何が楽しくて…恐らく恋敵だろう幸村君と二人きりにならなきゃいけねぇんだ…
「なぁ丸井。」
「ん~」
できるだけ動揺を出さないよう応える俺。我ながらよくできました花丸だって。
初めて入る小夏の部屋に興味がいってたってのもあったけどな。
「率直に聞くけど、丸井は小夏と付き合ってたんだよね?」
「付き合ってる、だぜぃ幸村君。別れたつもりはねぇし。」
「へぇ…言うねぇ丸井。でも二人とも、全然仲良さそうには見えないけど…俺の気のせいかい?」
「それは、」
『ちょ~っと!精市!!扉開けて~!』
「あぁ」
小夏が来たことにより中断する議論。
《それは》
俺はその続き、なんて言うつもりだったんだ?
小夏、小夏。
俺は――
『早くしてよねっ!動きが鈍いです―。』
「俺のセリフをとらない。」
ぴんっと額を手で弾く。
『あだっ!』
こんなことしつつも心なしか焦ってる自分。
もう本当病気だよ一種の。
小夏がいなきゃ生活している実感すらないんだから。
丸井が小夏を好きだってことには気づいてたけれど、行動を起こすとは思ってなかった。
正直、驚かされたし、すっごく気にくわなかった。
なんだ俺の計画は台無しになるのか・なんてこと、変なプライドが邪魔して、グチも言えやしない。
『相変わらず容赦ないデコピン!あたし、女の子だってこと、忘れてるでしょ!』
「あぁ、一応そうだったね。」
『ったく!まぁいいや、とりあえずお茶どうぞ。はい、ブン太』
「あ、さんきゅ。」
『お茶菓子、あたしの分のロールケーキなんだから、ありがたく食べなよ。』
「ありがたく頂くけどよ…自分で言うなよぃ」
「ハァ…どれだけがめついかこんなところで証明しなくても」
『精市はいらないか!そう!じゃああたしが食べるよそれも!』
バッチと手を出した小夏から逃げるようにケーキを奪い、逆に近づけたのは自分の顔。
『んなっ!ケーキっ!』
「食べさせてあげようか……口移しで」
『いらん』
………幼馴染みがうっとおしいと思うのはこういうときだ。
全部が全部【冗談】としか取られない悔しさ。
他の女子なんて興味ないのに。
一番見てほしい小夏の眼中に俺は入っていないのかと、嫌がおうにも思わされる。
…ま、丸井にはダメージ与えられたみたいだから、今回はよしとするか。
「はいはい…誰が小夏なんかに口移しなんて」
『ちょ!!ひどい!そこは冗談でもしたいとか言うべき!ねぇブン太!』
「おっ俺に聞くなよぃ!」
『これっ!これが正常な反応だよっっ!ちょっと恥ずかしがるとかね!だからブン太好き!』
「ちょっ離れろぃ!」
『ちょっと調子乗りすぎた!ごめんごめん!!』
ぎゅっと丸井に抱きつく小夏。
髪色と同じくらい真っ赤に染まった丸井の顔。
全てが俺をいらつかせる。
損な役回りというか…役職というか…
**
普通にいれることが嬉しくて、二人の気持ちに気づけないあたしはお子様。
『え~っと…二人ともあたしと出掛けたいってことでいいのかな?』
「その言い方が気にくわないのは俺だけかな。」
「幸村君…」
『むー。じゃあ正直に言う!二人が来てくれて本当嬉しかった!』
二人がびっくりした顔をする。
『一回しか言ーわない、けどっ!新年最初から嬉しかった!』
うん!本当だからね!
「……」
「……」
『……ちょっと!黙るとかなしでしょっ!ハズイじゃん!』
「あ、いや、なんつーか……」
「ふっ…」
『精市!!ひどい!』
もういい!精市なんか知らん!
ぷいと、違う方を向くと、ふわりと頭に暖かさが降った。
「そういう素直さが、小夏のいいところだよ。」
ぽんぽんと、撫でる手の温もりが懐かしさを覚えた。
『ふん…いっ今更遅いんだから!』
「はいはい」
「よし、小夏!腹ごしらえは済んだし、初詣行こうぜぃ!」
『うんっ!行こう!』
立ち上がり、三人そろって外にでる。
向うは学校近くの神社。
三人並んでゆっくり歩く、歩き慣れた道。
初めて一緒に歩いたあの頃と気持ちも関係も違うけど。
二人が隣にいることに今日ほど幸せを覚えたことがあっただろうか。
今年一年も幸せな日々を過ごせますように――
end.