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庭球
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〔本気で人を好きになる〕かぁ…
勢い余って《いい!》なんて言っちゃったけど
今までの経験上人を好きに なろう って気じゃ恋なんかには発展しないんだよね
……たぶん?
ポンポン…ポポポン!
あぁ、もう行かなくちゃ。
大嫌いなこの一日をどうすごすか考えながら、あたしは運動場へと走った。
私の嫌な行事。
それは毎年10月の終わりにやってくる。
まかり間違ってもハロウィンなんて素敵な行事ではない。
あたしの一番苦手な教科の一大イベント…
つまり
体育祭だ。
あたしは極度の運動オンチ。
それを申し出ると、絶対に嘘だと言われるけど。
一年のときにジャンケンで負けて出た400mリレー。
そこでやっとみんながびっくりした顔を見れた。
それ以来自分の競技は二人三脚って決められている。
聞いて驚け。
私の50m走の自己ベストは
12.02秒だ!
ナメんなよ
全校生徒がそろっての準備体操が終わると、あとは競技が順番に行われるだけ。
先生たちも競技を進めるのに必死だから、授業中みたいに目を光らせてるなんてことはない。
加えて二人三脚はお遊びだから、ラスト盛り上げ役として出ればいい。
とりあえずサボるために、中庭に向かった。
中庭のベンチに腰をかけると、ちょうどリレーが始まったようで,
運動場から少し聞こえる声援が心地よく耳に響いた。
眠くなってきたな…
瞼を閉じようとしたあたしだったけど、視界の端に誰かの足を捉えた。
『ん~…?』
気になってしまったものは仕方ない。
重かった瞼が開けば、腰を上げて、足の先をみにいった。
『……なぁんだ。』
すーすー寝息を立てて、日向になった校舎脇で眠っていたのは赤也だった。
『寝てる子は誰でもかわいいものね~』
おばさんみたいなセリフだけど、いつもの赤也とは大違い。
しゃがんで顔を覗き込む。起きる気配はまるでない。
突然部長になったりしたから、疲れてるのかなやっぱり…
考えてみたら赤也しか残ってないんだもんね…
精神的に疲れるよねきっと。
『お疲れ赤也』
頭を撫でていて、ふと思う。
赤也は恋の対象外なのかな、と。
赤也は後輩で。
あたしが部活に顔を出してるときはいつも「先輩~」って一番に迎えてくれた可愛い後輩で。
でも今、こうして近くで見ると
意外と
男の子だ、なぁ…
するとなんだか自分がこうしていることが恥ずかしくなってきた。
『な…んで恥ずかしがってんのあたし…』
その気持ちを紛らわすために、ほっぺをつねってやった。
むにっ
むにににっ
「……んぁ?」
『なぁにしてんのテニス部エース。』
「……なにって…サボり?……ってなんで先輩がここにいるんスか?」
眠気眼を擦って必死に整理しようとしている赤也が妙に色っぽくみえた。
『あ―…いいよいいよ起きなくて。寝てたとこ悪かった。この通り謝るから!じゃ!』
これ以上赤也といたら、変な気持ちになりそうだったから、謝るポーズをして立ちあがった。
にも関わらず
この体がにくい。
ここで立ちくらみ?
突然立ち上がったせいで、フラッと視界が白くなる。
必死に普通に立とうとしても、いつもより酷いようで。
《あ―赤也がこっち見てないといい…》
なんてフッと気がそれた瞬間、体重が後ろにかかってしまった。
《あ……》
背中から地面に落ちると予測して、身を固めたあたし。
しかし
あたしの体に落ちたのは痛みではなく、優しい声だった。
「大丈夫ッスか先輩!?」
『…うん?』
まだ暗転したままの視界の中で、ゆるゆると状況を考える。
この状況は…そう…
「せんぱ~い?本気ヤベェなら保健室行ったほうがいいッスよ?」
目の前が明るくなってきた。誰かの手がヒラヒラと動いているのが見えてきた。
『あかや…ごめんよ―』
「いやいや。始めに気にするとこ、そこじゃねぇし。何先輩、病気?」
『違う違う。ただの貧血。日頃肉食べないからよくなんの。』
「今度の打ち上げは焼肉で決定ね?」
『赤也のおごりね?』
「は!?じゃあ止め!」
『冗談だよ!…さて、そろそろ大丈夫そうだから、離してもらえるかな赤也?』
そう。あたしが倒れたとき、赤也がとっさに抱き止めてくれたらしく、腕の中に
すっぽり収まっている冗談だった。
『慣れない状況は恥ずかしいから。』
「先輩ってムードのムの字も持ち合わせてないんスね!」
あははと笑いながらも緩まる気配のない赤也の腕。
「先輩もど―せサボりでしょ?いいじゃないスか。一緒にサボりましょ。先輩の悩み、聞きますから!」
『サボりは当たりだけど、後輩の悩みを解決したいところだよあたしとしては。』
「あ、じゃあさ、先輩、ここにもたれて座って」
『人の話はちゃんと聞きなさいよね…こうでいい?』
「そうそう。で…失礼しまっす。」
『!!?なっな…!!?』
「さっきからコンクリが固いのが悩みだったんス!疲れた後輩を癒すってことで!」
『……上手いこと言うなぁ…』
というわけで膝枕することになった。
『…赤也はさ、普通にこういうことできちゃうくらいに恋愛してきたんだ?』
「何すか急に。」
『いや?うちのテニス部員ってみんなイケメンだから気になっただけ。』
あとは赤也とこうしながら黙ってるのに耐えられそうになかっただけ。
……言わないけどね。
「ん―俺は、告られることはあったけど」
『マセたガキね―』
「今時小学生でキスとかいってんだから普通ッスよ。」
『なんかすんごい屈辱感。』
「ま、それはいいや。んで…そうそう。告られても、断ってきたから、付き合ったことはナイッス。」
『それはなんで断っちゃったの?』
「ん~…顔の好みもあったけど…」
『所詮男は顔が命か。』
「途中で愚痴言わないでくださいよ!顔もたしかにみるけど、全く関わりないヤツとどう付き合っていいかわかんなくって、断った、て感じ。」
『ありきたりだけど、付き合ってから好きになるとは考えなかったの?』
「…ていうか、もともとテニスやってるとこが格好よくて、っていうのが多すぎ。そこしか見てないヤツと付き合っても結果は見えてるから。」
『結構ワガママだし?俺様だし?甘えん坊だし?』
「先輩マジ容赦ないッス…」
『アハハ!でも赤也、真剣に相手のこと考えてるんだね。偉い偉い。そんな赤也があたしは好きよ?』
いつもの調子で頭を撫でる。
いつもの
調子で
なのにその手は赤也に捕まった。
真剣な赤也の目が、あたしを捉えて離さない。
「先輩は、好きなヤツいるの?」
『い、いないよ。』
「ま、先輩って鈍感そうだもんな~」
ゆるりと掴んだ手を下ろして自分の顔を隠した赤也。
『赤也は、誰かを好きになったことある?』
「…はぁ…」
『あ!さてはあたしには言えないとか言うんでしょ!生意気~』
「ちげぇよ…たぶんいますよ、それも現在進行型で」
『たぶんて何?』
「憧れか、好きか、自分で区別がつかないんス。」
『へ~!!だれだれ?!』
「内緒ッス。」
『え~…じゃあさ、どんな子が好みなの?』
「さぁ…俺の好みと正反対の人…かな?」
『好みと正反対?じゃあなんで気になったの?』
「さぁ…恋って気づいたら堕ちてるものだろぃ、らしいっスよ?丸井先輩いわく。」
『あ~言ってそうだねぇブン太は。』
アハハと笑いながら、空を見上げた。
「気づかないからこのポジションね…」
ぽつりと呟かれた赤也の言葉はあたしには届かず
運動場で誰が活躍しているかを知らせる、黄色い歓声だけが響いていた。
end
ーー
ちなみに赤也は何に出るの?
俺は800mのアンカー。
さすが~
先輩、見ててくださいよ。
ん~起きてたらね。
ヒデッ!
うそうそ!もちろん見ててあげるから。あたしの胸にそのまま飛び込んできなさいよ?トップじゃなかったら…真田の鉄拳ね!
まさに天国と地獄ッス……!
勢い余って《いい!》なんて言っちゃったけど
今までの経験上人を好きに なろう って気じゃ恋なんかには発展しないんだよね
……たぶん?
ポンポン…ポポポン!
あぁ、もう行かなくちゃ。
大嫌いなこの一日をどうすごすか考えながら、あたしは運動場へと走った。
私の嫌な行事。
それは毎年10月の終わりにやってくる。
まかり間違ってもハロウィンなんて素敵な行事ではない。
あたしの一番苦手な教科の一大イベント…
つまり
体育祭だ。
あたしは極度の運動オンチ。
それを申し出ると、絶対に嘘だと言われるけど。
一年のときにジャンケンで負けて出た400mリレー。
そこでやっとみんながびっくりした顔を見れた。
それ以来自分の競技は二人三脚って決められている。
聞いて驚け。
私の50m走の自己ベストは
12.02秒だ!
ナメんなよ
全校生徒がそろっての準備体操が終わると、あとは競技が順番に行われるだけ。
先生たちも競技を進めるのに必死だから、授業中みたいに目を光らせてるなんてことはない。
加えて二人三脚はお遊びだから、ラスト盛り上げ役として出ればいい。
とりあえずサボるために、中庭に向かった。
中庭のベンチに腰をかけると、ちょうどリレーが始まったようで,
運動場から少し聞こえる声援が心地よく耳に響いた。
眠くなってきたな…
瞼を閉じようとしたあたしだったけど、視界の端に誰かの足を捉えた。
『ん~…?』
気になってしまったものは仕方ない。
重かった瞼が開けば、腰を上げて、足の先をみにいった。
『……なぁんだ。』
すーすー寝息を立てて、日向になった校舎脇で眠っていたのは赤也だった。
『寝てる子は誰でもかわいいものね~』
おばさんみたいなセリフだけど、いつもの赤也とは大違い。
しゃがんで顔を覗き込む。起きる気配はまるでない。
突然部長になったりしたから、疲れてるのかなやっぱり…
考えてみたら赤也しか残ってないんだもんね…
精神的に疲れるよねきっと。
『お疲れ赤也』
頭を撫でていて、ふと思う。
赤也は恋の対象外なのかな、と。
赤也は後輩で。
あたしが部活に顔を出してるときはいつも「先輩~」って一番に迎えてくれた可愛い後輩で。
でも今、こうして近くで見ると
意外と
男の子だ、なぁ…
するとなんだか自分がこうしていることが恥ずかしくなってきた。
『な…んで恥ずかしがってんのあたし…』
その気持ちを紛らわすために、ほっぺをつねってやった。
むにっ
むにににっ
「……んぁ?」
『なぁにしてんのテニス部エース。』
「……なにって…サボり?……ってなんで先輩がここにいるんスか?」
眠気眼を擦って必死に整理しようとしている赤也が妙に色っぽくみえた。
『あ―…いいよいいよ起きなくて。寝てたとこ悪かった。この通り謝るから!じゃ!』
これ以上赤也といたら、変な気持ちになりそうだったから、謝るポーズをして立ちあがった。
にも関わらず
この体がにくい。
ここで立ちくらみ?
突然立ち上がったせいで、フラッと視界が白くなる。
必死に普通に立とうとしても、いつもより酷いようで。
《あ―赤也がこっち見てないといい…》
なんてフッと気がそれた瞬間、体重が後ろにかかってしまった。
《あ……》
背中から地面に落ちると予測して、身を固めたあたし。
しかし
あたしの体に落ちたのは痛みではなく、優しい声だった。
「大丈夫ッスか先輩!?」
『…うん?』
まだ暗転したままの視界の中で、ゆるゆると状況を考える。
この状況は…そう…
「せんぱ~い?本気ヤベェなら保健室行ったほうがいいッスよ?」
目の前が明るくなってきた。誰かの手がヒラヒラと動いているのが見えてきた。
『あかや…ごめんよ―』
「いやいや。始めに気にするとこ、そこじゃねぇし。何先輩、病気?」
『違う違う。ただの貧血。日頃肉食べないからよくなんの。』
「今度の打ち上げは焼肉で決定ね?」
『赤也のおごりね?』
「は!?じゃあ止め!」
『冗談だよ!…さて、そろそろ大丈夫そうだから、離してもらえるかな赤也?』
そう。あたしが倒れたとき、赤也がとっさに抱き止めてくれたらしく、腕の中に
すっぽり収まっている冗談だった。
『慣れない状況は恥ずかしいから。』
「先輩ってムードのムの字も持ち合わせてないんスね!」
あははと笑いながらも緩まる気配のない赤也の腕。
「先輩もど―せサボりでしょ?いいじゃないスか。一緒にサボりましょ。先輩の悩み、聞きますから!」
『サボりは当たりだけど、後輩の悩みを解決したいところだよあたしとしては。』
「あ、じゃあさ、先輩、ここにもたれて座って」
『人の話はちゃんと聞きなさいよね…こうでいい?』
「そうそう。で…失礼しまっす。」
『!!?なっな…!!?』
「さっきからコンクリが固いのが悩みだったんス!疲れた後輩を癒すってことで!」
『……上手いこと言うなぁ…』
というわけで膝枕することになった。
『…赤也はさ、普通にこういうことできちゃうくらいに恋愛してきたんだ?』
「何すか急に。」
『いや?うちのテニス部員ってみんなイケメンだから気になっただけ。』
あとは赤也とこうしながら黙ってるのに耐えられそうになかっただけ。
……言わないけどね。
「ん―俺は、告られることはあったけど」
『マセたガキね―』
「今時小学生でキスとかいってんだから普通ッスよ。」
『なんかすんごい屈辱感。』
「ま、それはいいや。んで…そうそう。告られても、断ってきたから、付き合ったことはナイッス。」
『それはなんで断っちゃったの?』
「ん~…顔の好みもあったけど…」
『所詮男は顔が命か。』
「途中で愚痴言わないでくださいよ!顔もたしかにみるけど、全く関わりないヤツとどう付き合っていいかわかんなくって、断った、て感じ。」
『ありきたりだけど、付き合ってから好きになるとは考えなかったの?』
「…ていうか、もともとテニスやってるとこが格好よくて、っていうのが多すぎ。そこしか見てないヤツと付き合っても結果は見えてるから。」
『結構ワガママだし?俺様だし?甘えん坊だし?』
「先輩マジ容赦ないッス…」
『アハハ!でも赤也、真剣に相手のこと考えてるんだね。偉い偉い。そんな赤也があたしは好きよ?』
いつもの調子で頭を撫でる。
いつもの
調子で
なのにその手は赤也に捕まった。
真剣な赤也の目が、あたしを捉えて離さない。
「先輩は、好きなヤツいるの?」
『い、いないよ。』
「ま、先輩って鈍感そうだもんな~」
ゆるりと掴んだ手を下ろして自分の顔を隠した赤也。
『赤也は、誰かを好きになったことある?』
「…はぁ…」
『あ!さてはあたしには言えないとか言うんでしょ!生意気~』
「ちげぇよ…たぶんいますよ、それも現在進行型で」
『たぶんて何?』
「憧れか、好きか、自分で区別がつかないんス。」
『へ~!!だれだれ?!』
「内緒ッス。」
『え~…じゃあさ、どんな子が好みなの?』
「さぁ…俺の好みと正反対の人…かな?」
『好みと正反対?じゃあなんで気になったの?』
「さぁ…恋って気づいたら堕ちてるものだろぃ、らしいっスよ?丸井先輩いわく。」
『あ~言ってそうだねぇブン太は。』
アハハと笑いながら、空を見上げた。
「気づかないからこのポジションね…」
ぽつりと呟かれた赤也の言葉はあたしには届かず
運動場で誰が活躍しているかを知らせる、黄色い歓声だけが響いていた。
end
ーー
ちなみに赤也は何に出るの?
俺は800mのアンカー。
さすが~
先輩、見ててくださいよ。
ん~起きてたらね。
ヒデッ!
うそうそ!もちろん見ててあげるから。あたしの胸にそのまま飛び込んできなさいよ?トップじゃなかったら…真田の鉄拳ね!
まさに天国と地獄ッス……!