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庭球
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本気で恋できない俺がいた。
人を好きになれない私がいた。
ずっと傍で見ていた俺がいた。
前奏が、今鳴り響く。
*小さな恋の三重奏*
『……別に、いいけど。』
「じゃあ、決まりだ。」
『負けた方が』
「――――だから」
こうして始まったあたしたちの賭け。
はたして勝敗はどちらに。
残りはあと、6ヶ月を切った。
はじめましてこんにちは。
私、一応この物語のヒロイン、小夏。
生徒会役員ときどきテニス部マネージャー。
ときどきってつくのは、大会前とか、合宿中とか、本気で忙しいときだけの臨時マネージャーだから。
腐れ縁の幸村精市の脅…頼みでやらさせて頂いてます。
普段の練習のときはマネージャーなんか必要ないらしくて(ほら、参謀がいるしね?ドリンクとか球拾いは新入生の仕事なんだってさ)、雑務に手が回らないようなときだけの助っ人ってわけ。
……んで、賭けの相手はその幸村精市。
賭けの内容は簡単。
卒業までにどちらが本気の恋に堕ちられるか。
話はこの前のテスト勉強会に遡る。
*
「そうえばもうあと半年で中学三年間も終りだよ。」
『何、いきなり。そんなんわかってる。それよりこの問題。わからない。』
「別に?俺は小夏が心配でね。これはこの解法を参考にして。」
『ハ?あたし、精市に心配されるほど成績は悪くないつもりだよ?』
「そうじゃなくて。…気づかないほどなんだね…」
あたしが頭をあげれば、精市はポムッと肩に手を置いた。
その上やれやれな顔をされてムカつかないほど、あたしはできた人間ではない。
『っとにイライラするヤツね!!ハッキリ言え!』
「へぇ?それが俺にものを頼む態度?」
『人にじゃないのかよ!』
ギリギリギリ
肩に置かれた手にいつのまにか力が入れられる。
『ハイッ。スミマセンデシタセイイチサマ。オシエテクダサイマセ……!』
「ふふっ!やればできるじゃないか!素直になりなよね。だからモテないんだよ?」
『……あぁそれ系の話か。』
いい加減ウザくなってくる。
この時期にこの手の話題は聞きあきるほど聞いているから。
『精市だって人のこと言えないでしょ?』
別に私はモテないわけでも、ましてレズなわけでもない。
かっこいいと思う人はたくさんいるし、友達も男子のほうが多いくらいだ。
――ただ。
ただ人を好きになれないだけ。
好意と好きの違いがわからない。
なんで告白したいのかわからない。
口癖は「めんどくさい」。
品位は悪質。
行動パターンは男寄り。
加えて仲がいい女子は見た目美人な男前、いつも一緒にいる男子は精市繋がりで男子テニス部員ときた。
これじゃあ男子も女子も近づいてこないという話で。
私は基本メンクイだから、男子テニス部員は逆ハーレム一直線だったけど、精市が一緒にいることにより、甘ズッパイ青春妄想は崩れらることとなった。
とにかく残念な中学三年間。
全国大会が終わって、悲しみに明け暮れたのもつかの間、今週のテストが終われば、体育大会、文化祭、修学旅行、受験(まぁうちはエスカレーターだけどね。あまりに成績が悪いと、上がれないから)…そして卒業式で中学生活は終了を迎える。
そんな中で出る話題なんていつも同じだった。
「俺はいいんだ。選びたい放題だから。」
『さいですか…!じゃああたしのこともほかっておいてくれますかね!?』
「いやだ。……ほっとけないんだ…」
『な…なにいきなり……』
顔は誰にも負けないレベルなんだから突然真剣にならないでよ…!ドキッとするでしょ!とくにあたしみたいなメンクイはっ!
「だって小夏からかうの面白いし!」
『その口を縫い付けてやりたいわ!』
はいはい!こんなことだろうと予測立ったけどね――?!何回騙されたら気づくのかな…あたしの可哀想な脳ミソよ……!!
『ていうか精市だってテニスが恋人のくせに!』
「そうだよ?でも別に付き合ったことがないわけじゃない。」
『……………は?!!』
「そんなに驚くこと?俺の顔がいいのは小夏が一番よく知ってるだろ?メンクイさん?」
『なんで精市が言うとなんでも神経を逆撫でされるのかな?』
「一言多いよね本当に。口には気を付けなよ?お口にチャック!」
そこでかわいく口に人差し指でもあててみろっての!
どこから取り出したんだよその針と糸ッッ!!
『……でもなんで別れちゃったの?あたしですらわかんないくらいだから、ほんの短い間しか付き合ってないんでしょ?』
「そうだなぁ…からかってるのに泣かれても困るんだよね。」
目に浮かぶその光景。
そうよね世の中の精市ファンのみなさん……顔に騙され告白し、いざ付き合ってみたら……泣けますよね……!
「で、一日で別れた。ていうか俺はテニスのが大切だし、毎日毎日一緒に帰ろうなんてウザさMAXだよね―。自分の立場を知れって感じ?」
『せ、精市様?その辺で止めた方がよいかと…』
「あぁ、ごめんね?」
その天使の笑顔は…だめ!
うぅ……!だからそのギャップがね……たまらんのですよ……!!!!
『でっ…でもさ、それって精市は本気になれてないってことだよね。』
「そういうことかな。俺は…本気で恋したことはない。」
『なんだ。あたしとなんらかわりませんよね。』
「経験があるかないかの差はでかいよね。」
はたからみたらニコリ笑いあった二人にしか見えないだろう。
この冷戦は二人にしかわからない。
「…小夏は今気になるヤツはいないの?」
『うちのテニス部メンバーとか他校のテニス部とか生徒会長とか先生と「空気を読め。」ハイスミマセ―ン。』
やだなぁこれだから冗談も通じないやつは…
「なんか言った?」
『思ったけど言ってはいない。』
「で?本当のところはどうなの?」
『ま、いないってのが本当かな。かっこいい人はたくさんいるけど…隣に並んでるのは想像できないし。‘キャ――――!!!!ドキドキまさか恋?!’なんて感情も抱いてないし。』
「そんな小夏、気持ち悪い」
『例えばの話!本気にするな!で?精市は?』
「俺に釣り合う女なんてそうそういないよ。」
『はいは―い。』
そう流してテキストに目を戻したら視界の中に精市のキレイな指が入ってきた。
「そんな小夏に提案があるんだけど?」
『…拒否権は?』
「あるとでも?」
『ですよね。』
――ということで、冒頭の賭けの話に戻るわけ。
精市との賭けは今のところ勝ちなし…(自分で言ってて悲しい…)
でも今回は本当の本当に勝敗は五分五分。
中学生活三年間を締めくくる最高のレクリエーションだと思わない?
人生なんかノリよノリ。
人生は楽しんでこそだよね?
俺が
私が
勝ってみせる
こうしてラウンドは幕をあけたのだった。
人を好きになれない私がいた。
ずっと傍で見ていた俺がいた。
前奏が、今鳴り響く。
*小さな恋の三重奏*
『……別に、いいけど。』
「じゃあ、決まりだ。」
『負けた方が』
「――――だから」
こうして始まったあたしたちの賭け。
はたして勝敗はどちらに。
残りはあと、6ヶ月を切った。
はじめましてこんにちは。
私、一応この物語のヒロイン、小夏。
生徒会役員ときどきテニス部マネージャー。
ときどきってつくのは、大会前とか、合宿中とか、本気で忙しいときだけの臨時マネージャーだから。
腐れ縁の幸村精市の脅…頼みでやらさせて頂いてます。
普段の練習のときはマネージャーなんか必要ないらしくて(ほら、参謀がいるしね?ドリンクとか球拾いは新入生の仕事なんだってさ)、雑務に手が回らないようなときだけの助っ人ってわけ。
……んで、賭けの相手はその幸村精市。
賭けの内容は簡単。
卒業までにどちらが本気の恋に堕ちられるか。
話はこの前のテスト勉強会に遡る。
*
「そうえばもうあと半年で中学三年間も終りだよ。」
『何、いきなり。そんなんわかってる。それよりこの問題。わからない。』
「別に?俺は小夏が心配でね。これはこの解法を参考にして。」
『ハ?あたし、精市に心配されるほど成績は悪くないつもりだよ?』
「そうじゃなくて。…気づかないほどなんだね…」
あたしが頭をあげれば、精市はポムッと肩に手を置いた。
その上やれやれな顔をされてムカつかないほど、あたしはできた人間ではない。
『っとにイライラするヤツね!!ハッキリ言え!』
「へぇ?それが俺にものを頼む態度?」
『人にじゃないのかよ!』
ギリギリギリ
肩に置かれた手にいつのまにか力が入れられる。
『ハイッ。スミマセンデシタセイイチサマ。オシエテクダサイマセ……!』
「ふふっ!やればできるじゃないか!素直になりなよね。だからモテないんだよ?」
『……あぁそれ系の話か。』
いい加減ウザくなってくる。
この時期にこの手の話題は聞きあきるほど聞いているから。
『精市だって人のこと言えないでしょ?』
別に私はモテないわけでも、ましてレズなわけでもない。
かっこいいと思う人はたくさんいるし、友達も男子のほうが多いくらいだ。
――ただ。
ただ人を好きになれないだけ。
好意と好きの違いがわからない。
なんで告白したいのかわからない。
口癖は「めんどくさい」。
品位は悪質。
行動パターンは男寄り。
加えて仲がいい女子は見た目美人な男前、いつも一緒にいる男子は精市繋がりで男子テニス部員ときた。
これじゃあ男子も女子も近づいてこないという話で。
私は基本メンクイだから、男子テニス部員は逆ハーレム一直線だったけど、精市が一緒にいることにより、甘ズッパイ青春妄想は崩れらることとなった。
とにかく残念な中学三年間。
全国大会が終わって、悲しみに明け暮れたのもつかの間、今週のテストが終われば、体育大会、文化祭、修学旅行、受験(まぁうちはエスカレーターだけどね。あまりに成績が悪いと、上がれないから)…そして卒業式で中学生活は終了を迎える。
そんな中で出る話題なんていつも同じだった。
「俺はいいんだ。選びたい放題だから。」
『さいですか…!じゃああたしのこともほかっておいてくれますかね!?』
「いやだ。……ほっとけないんだ…」
『な…なにいきなり……』
顔は誰にも負けないレベルなんだから突然真剣にならないでよ…!ドキッとするでしょ!とくにあたしみたいなメンクイはっ!
「だって小夏からかうの面白いし!」
『その口を縫い付けてやりたいわ!』
はいはい!こんなことだろうと予測立ったけどね――?!何回騙されたら気づくのかな…あたしの可哀想な脳ミソよ……!!
『ていうか精市だってテニスが恋人のくせに!』
「そうだよ?でも別に付き合ったことがないわけじゃない。」
『……………は?!!』
「そんなに驚くこと?俺の顔がいいのは小夏が一番よく知ってるだろ?メンクイさん?」
『なんで精市が言うとなんでも神経を逆撫でされるのかな?』
「一言多いよね本当に。口には気を付けなよ?お口にチャック!」
そこでかわいく口に人差し指でもあててみろっての!
どこから取り出したんだよその針と糸ッッ!!
『……でもなんで別れちゃったの?あたしですらわかんないくらいだから、ほんの短い間しか付き合ってないんでしょ?』
「そうだなぁ…からかってるのに泣かれても困るんだよね。」
目に浮かぶその光景。
そうよね世の中の精市ファンのみなさん……顔に騙され告白し、いざ付き合ってみたら……泣けますよね……!
「で、一日で別れた。ていうか俺はテニスのが大切だし、毎日毎日一緒に帰ろうなんてウザさMAXだよね―。自分の立場を知れって感じ?」
『せ、精市様?その辺で止めた方がよいかと…』
「あぁ、ごめんね?」
その天使の笑顔は…だめ!
うぅ……!だからそのギャップがね……たまらんのですよ……!!!!
『でっ…でもさ、それって精市は本気になれてないってことだよね。』
「そういうことかな。俺は…本気で恋したことはない。」
『なんだ。あたしとなんらかわりませんよね。』
「経験があるかないかの差はでかいよね。」
はたからみたらニコリ笑いあった二人にしか見えないだろう。
この冷戦は二人にしかわからない。
「…小夏は今気になるヤツはいないの?」
『うちのテニス部メンバーとか他校のテニス部とか生徒会長とか先生と「空気を読め。」ハイスミマセ―ン。』
やだなぁこれだから冗談も通じないやつは…
「なんか言った?」
『思ったけど言ってはいない。』
「で?本当のところはどうなの?」
『ま、いないってのが本当かな。かっこいい人はたくさんいるけど…隣に並んでるのは想像できないし。‘キャ――――!!!!ドキドキまさか恋?!’なんて感情も抱いてないし。』
「そんな小夏、気持ち悪い」
『例えばの話!本気にするな!で?精市は?』
「俺に釣り合う女なんてそうそういないよ。」
『はいは―い。』
そう流してテキストに目を戻したら視界の中に精市のキレイな指が入ってきた。
「そんな小夏に提案があるんだけど?」
『…拒否権は?』
「あるとでも?」
『ですよね。』
――ということで、冒頭の賭けの話に戻るわけ。
精市との賭けは今のところ勝ちなし…(自分で言ってて悲しい…)
でも今回は本当の本当に勝敗は五分五分。
中学生活三年間を締めくくる最高のレクリエーションだと思わない?
人生なんかノリよノリ。
人生は楽しんでこそだよね?
俺が
私が
勝ってみせる
こうしてラウンドは幕をあけたのだった。