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毎年この時期になると頭を悩ます。
それはもちろん、大切な人の大切な日。
4月19日。
誕生日だ。
去年は何を渡した?
その前は?
何年前のことだって覚えてる。
私って相当気持ち悪いなーって思わなくもないけど、それだけ一樹のころを想ってるのだ。
何度も何度も見たプレゼント候補リストとまたにらめっこして、溜息を一つ。
『あーん…どれもしっくりこないぃぃっ!』
ぐてんと机に突っ伏して目を瞑る。
浮かぶのは一樹の笑顔。
にかっと、本当に幸せそうに笑ういつもの笑顔。
『きっと何を渡しても喜んでくれるんだろうなぁ…』
だからって考えるのを放棄するわけじゃないんだけど、とそこまで考えて、それから目を通すのが何度目かの雑誌をぺらりめくったところで。
『…っいやいやいやいや!!これはできないでしょう!!無理でしょう!!』
同じく何度目かのセリフを吐いたところで。
ピンポーン
チャイムが鳴ったため、急いで玄関へ向かった。
机に残された雑誌に書かれたのは。
<<一度くらいはやってみたい!恋人同士の誕生日…プレゼントは、わ・た・し★>>
*
当日。
準備万端とばかりに、ご飯とケーキのセッティングも終わり、今日も帰りの遅い一樹を待つ。
まだ婚姻届けは出していないものの、結婚しているような半同棲生活。
この中途半端感がちょっとくすぐったい。
手にしたクラッカーと膝の上のプレゼント。
プレゼントは結局、お風呂セットにした。
ここ数年、形に残るものばかり渡していたし、ここ最近、以前よりも帰るのが遅い日が増えたから、身体を休めてって気持ちを込めて。
私の大好きな入浴剤屋さんに足を運び、慣れ親しんだ店内で、彼氏へのプレゼントを選ぶなんて、そわそわしながらも楽しい時間。
男性に香りがきつすぎるのもよくないかなーとか、自分用には買えないけど、でも使ってみたかったシェービングクリームとか。
喜んでもらえたらいいな、と一樹の笑顔が頭をよぎる度、にへらとだらしない笑みがこぼれる。
そんなとき、ガチャリ、と玄関で音がした。
慌てて椅子から立ち上がってクラッカーを構えたら、膝の上のプレゼントが床に落ちて派手な音がして軽くパニック。
『あわあああああああ?!』
「んぁ?!どうし…なんだこのパーティーセットは」
『あわあああああああ!!!!おめっ、おめでとおおおお!!』
・・・・・・。
『あれ?』
クラッカーだけでも!、と紐引っ張ったのだが、あろうことか、紐だけ抜けて
『?!!!!!!』
「・・・・ど、どうした?」
『ちょっ…このタイミングで不発とかぁぁぁぁ…!?』
けれどこのタイミングの悪さが私なのだ。
クラッカーは不発に終わり、自分が慌てただけで、一樹は何がなんだかわからず立ち尽くしているようだった。
うわああああああああああんと床に崩れて、今更なんと声をかければよいやらと頭を絞れば。
「あぁっ!誕生日か!俺の!」
『うぁい…』
ケーキのプレートを見たのだろう、合点がいったような声を出して、毎年ありがとうなーと嬉しそうな声をあげてくれたから、もうどうでもよくなった。
『…えへ…っなんかもういーやっ…!おめでとうございます!今年も素敵な一年になるように願ってます!で、はい、プレゼント!』
「おー!悪いな、さんきゅ!開けてもいいか?」
『もちろんだよー!気に入ってもらえるといいんだけど…』
「お前がくれるもので気に入らないものなんかないさ!」
さっきまで私が座っていた椅子を譲って、一樹を座らせて、私はその横でそわそわもじもじ。
ほどかれたリボンが机に置かれ、がさがさと包装が丁寧にめくられる。
そうしながらも、最後の一つの課題が頭をめぐる。
やるのか、やらないのか
二つに一つの選択肢。
でも、それを考えてる時点で答えは決まっているのが私なの。
いつだって、やって後悔するほうが、私の性にあってるんだもの。
一樹はあまり見慣れないプレゼントに集中しているのか、中に入っていたものを面白そうに眺めては説明を読んで笑っている。
そっと机の上のリボンをとって、自分の首に緩く巻きつけてリボン結び。
『あっ、あのっ、』
「んー?ほんとありがとなー!これで風呂がまた楽しくな…え?」
エプロンと、カーディガンを取り払ったら、その下には準備だけとしておいた初お披露目のベビードール。
呆気にとられたような一樹の視線が恥ずかしくて、ぎゅっと目を瞑って。
『ついでに、あの、ぷ、プレゼント、わたっ、し…も、もらって、もらえませんかっ!?』
付き合ってすぐでもないのに、我ながらありえないくらいに恥ずかしいセリフを言ったと思う。
けど
言ってしまったものは取り消せないから、羞恥に耐えつつ、一樹の言葉を待つ。
笑われるだろうな、きっと。でもいいんだ。楽しくなればそれで―…
『っ、?』
聞こえてくるはずの笑い声は聞こえず、無言のままに腕を引かれてその先は一樹の膝の上。
そっと目を開けると、しかめっ面に上気した頬の一樹の顔。
『…ぇ』
「……そういうの、反則だからっ…」
『かずっ、ンッ…!』
何が、と聞き返した言葉は一樹の喉の奥に落ちた。
苦しいくらいに貪られた唇が離れるころ、ピピッ、と次の日になってしまったことを知らせる腕時計の音が小さく、しかし大きな音で脳に響く。
名残惜しいと舌が言うも音に反応して、ちゅぅ、と強く吸い付いてから隙間が空いた。
『っは、ァっ…ん、っ…』
「はッ…ン…、っ、で、このかわいいプレゼントは、俺にナニシてくれるんですかね?」
『、っ!』
にやりと歪んだ唇の端を見て、ボッと上昇する私の体温。
軽く抱き上げられた身体。
向かう先はベッドの上だ。
『っ、だめっ、ケーキ、とけちゃ』
「夏じゃねーし、とけねぇよ。それよりも先にいただかないとな、こっちのプレゼントをっ。」
『んなっ?!』
「だってそうだろ?日付変わったからナシ!なんて言われたらたまったもんじゃねぇからなっ!」
『はっ…!そ、そうだよもう日付変わったから誕生日じゃな』
「もう黙ってろ」
再び塞がれた唇に、あぁ、今日は日曜日で。
じゃあもう一日中ベッドから出られなくたって問題はないか、なんてイケナイことを考えてしまったのは内緒だ。
それならば、
それならば。
愛しい人の誕生日。
最高に幸せにしてあげようじゃありませんか。
軋むベッドのスプリングをお供に、星降る夜はロマンチックに更けてゆく。
2014.04.19
それはもちろん、大切な人の大切な日。
4月19日。
誕生日だ。
去年は何を渡した?
その前は?
何年前のことだって覚えてる。
私って相当気持ち悪いなーって思わなくもないけど、それだけ一樹のころを想ってるのだ。
何度も何度も見たプレゼント候補リストとまたにらめっこして、溜息を一つ。
『あーん…どれもしっくりこないぃぃっ!』
ぐてんと机に突っ伏して目を瞑る。
浮かぶのは一樹の笑顔。
にかっと、本当に幸せそうに笑ういつもの笑顔。
『きっと何を渡しても喜んでくれるんだろうなぁ…』
だからって考えるのを放棄するわけじゃないんだけど、とそこまで考えて、それから目を通すのが何度目かの雑誌をぺらりめくったところで。
『…っいやいやいやいや!!これはできないでしょう!!無理でしょう!!』
同じく何度目かのセリフを吐いたところで。
ピンポーン
チャイムが鳴ったため、急いで玄関へ向かった。
机に残された雑誌に書かれたのは。
<<一度くらいはやってみたい!恋人同士の誕生日…プレゼントは、わ・た・し★>>
*
当日。
準備万端とばかりに、ご飯とケーキのセッティングも終わり、今日も帰りの遅い一樹を待つ。
まだ婚姻届けは出していないものの、結婚しているような半同棲生活。
この中途半端感がちょっとくすぐったい。
手にしたクラッカーと膝の上のプレゼント。
プレゼントは結局、お風呂セットにした。
ここ数年、形に残るものばかり渡していたし、ここ最近、以前よりも帰るのが遅い日が増えたから、身体を休めてって気持ちを込めて。
私の大好きな入浴剤屋さんに足を運び、慣れ親しんだ店内で、彼氏へのプレゼントを選ぶなんて、そわそわしながらも楽しい時間。
男性に香りがきつすぎるのもよくないかなーとか、自分用には買えないけど、でも使ってみたかったシェービングクリームとか。
喜んでもらえたらいいな、と一樹の笑顔が頭をよぎる度、にへらとだらしない笑みがこぼれる。
そんなとき、ガチャリ、と玄関で音がした。
慌てて椅子から立ち上がってクラッカーを構えたら、膝の上のプレゼントが床に落ちて派手な音がして軽くパニック。
『あわあああああああ?!』
「んぁ?!どうし…なんだこのパーティーセットは」
『あわあああああああ!!!!おめっ、おめでとおおおお!!』
・・・・・・。
『あれ?』
クラッカーだけでも!、と紐引っ張ったのだが、あろうことか、紐だけ抜けて
『?!!!!!!』
「・・・・ど、どうした?」
『ちょっ…このタイミングで不発とかぁぁぁぁ…!?』
けれどこのタイミングの悪さが私なのだ。
クラッカーは不発に終わり、自分が慌てただけで、一樹は何がなんだかわからず立ち尽くしているようだった。
うわああああああああああんと床に崩れて、今更なんと声をかければよいやらと頭を絞れば。
「あぁっ!誕生日か!俺の!」
『うぁい…』
ケーキのプレートを見たのだろう、合点がいったような声を出して、毎年ありがとうなーと嬉しそうな声をあげてくれたから、もうどうでもよくなった。
『…えへ…っなんかもういーやっ…!おめでとうございます!今年も素敵な一年になるように願ってます!で、はい、プレゼント!』
「おー!悪いな、さんきゅ!開けてもいいか?」
『もちろんだよー!気に入ってもらえるといいんだけど…』
「お前がくれるもので気に入らないものなんかないさ!」
さっきまで私が座っていた椅子を譲って、一樹を座らせて、私はその横でそわそわもじもじ。
ほどかれたリボンが机に置かれ、がさがさと包装が丁寧にめくられる。
そうしながらも、最後の一つの課題が頭をめぐる。
やるのか、やらないのか
二つに一つの選択肢。
でも、それを考えてる時点で答えは決まっているのが私なの。
いつだって、やって後悔するほうが、私の性にあってるんだもの。
一樹はあまり見慣れないプレゼントに集中しているのか、中に入っていたものを面白そうに眺めては説明を読んで笑っている。
そっと机の上のリボンをとって、自分の首に緩く巻きつけてリボン結び。
『あっ、あのっ、』
「んー?ほんとありがとなー!これで風呂がまた楽しくな…え?」
エプロンと、カーディガンを取り払ったら、その下には準備だけとしておいた初お披露目のベビードール。
呆気にとられたような一樹の視線が恥ずかしくて、ぎゅっと目を瞑って。
『ついでに、あの、ぷ、プレゼント、わたっ、し…も、もらって、もらえませんかっ!?』
付き合ってすぐでもないのに、我ながらありえないくらいに恥ずかしいセリフを言ったと思う。
けど
言ってしまったものは取り消せないから、羞恥に耐えつつ、一樹の言葉を待つ。
笑われるだろうな、きっと。でもいいんだ。楽しくなればそれで―…
『っ、?』
聞こえてくるはずの笑い声は聞こえず、無言のままに腕を引かれてその先は一樹の膝の上。
そっと目を開けると、しかめっ面に上気した頬の一樹の顔。
『…ぇ』
「……そういうの、反則だからっ…」
『かずっ、ンッ…!』
何が、と聞き返した言葉は一樹の喉の奥に落ちた。
苦しいくらいに貪られた唇が離れるころ、ピピッ、と次の日になってしまったことを知らせる腕時計の音が小さく、しかし大きな音で脳に響く。
名残惜しいと舌が言うも音に反応して、ちゅぅ、と強く吸い付いてから隙間が空いた。
『っは、ァっ…ん、っ…』
「はッ…ン…、っ、で、このかわいいプレゼントは、俺にナニシてくれるんですかね?」
『、っ!』
にやりと歪んだ唇の端を見て、ボッと上昇する私の体温。
軽く抱き上げられた身体。
向かう先はベッドの上だ。
『っ、だめっ、ケーキ、とけちゃ』
「夏じゃねーし、とけねぇよ。それよりも先にいただかないとな、こっちのプレゼントをっ。」
『んなっ?!』
「だってそうだろ?日付変わったからナシ!なんて言われたらたまったもんじゃねぇからなっ!」
『はっ…!そ、そうだよもう日付変わったから誕生日じゃな』
「もう黙ってろ」
再び塞がれた唇に、あぁ、今日は日曜日で。
じゃあもう一日中ベッドから出られなくたって問題はないか、なんてイケナイことを考えてしまったのは内緒だ。
それならば、
それならば。
愛しい人の誕生日。
最高に幸せにしてあげようじゃありませんか。
軋むベッドのスプリングをお供に、星降る夜はロマンチックに更けてゆく。
2014.04.19