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『いない、ねぇ』
三人で来たるは真冬の屋上庭園。
雪が積もって綺麗、とか言う前に、寒い…さむいっ!!
「絶対ここだと思ったんですがね」
「ぬぬっ…!ぬいぬいは意外と隠れ上手なのだ~」
『どうする?他に思い当たるところ、あったりする?』
「残念ながら、すぐには…」
『じゃあそうだなぁ…早く見つけないとだから、ばらばらになろうか。』
「ぬぁ!誰が一番にぬいぬいを見つけるか勝負だな?よーっしっ!オレが名探偵になってやるぞーっ!」
「あっ!待ってください翼く…」
『…行っちゃった、ねぇ。ふふっ』
「仕方がないですね…僕も、思いつく限り、会長のサボり場所を探してみます。あなたも、見つけたらすぐに僕に連絡をください。」
『わかった!また後でね』
たたっと、颯斗君も駆け出した。
*
そもそもの始まりは、会議の時間になっても一樹会長が姿を見せなかったことにある。
会長専用の机の上に残された一枚の紙。
そこには、私たちを試すような文章が綴られていた。
----------------------------------------
生徒会の諸君へ
今から三人の力で俺を探し出してくれたまえ。
期限は日没。
俺を探し出せたら、お前らの勝ちだ。
ただのゲームだと思うな?
オレが勝ったら今日の仕事はお前らだけでやってもらう!
しかしながら、優しい俺が一つだけ、ヒントを与えよう。
【我が頭には太陽に酷似する輝き。
頂点に位置する者は相応しき玉座に。
学び舎を一望できるこの場所で、君を待つ】
では。
楽しみに待っている。
星月学園会長 不知火一樹
----------------------------------------
『…だそうだよ?』
「ぬはは~!ぬいぬいは面白いことするなぁ!!」
「…仕事が多いから、逃げましたね…姑息な手を…」
『颯斗君…ちょっと、怖い、よ…はは…』
「とりあえず、ぬいぬい探し隊発足だなっ!」
「そう…ですね。見つけたらどうしましょうね…ふふふふふ…」
*
ということがあったのが、30分前のこと。
少し話し合った結果、とりあえず学園を見渡せる屋上庭園に来たんだけど、一樹会長はいなかった。
冬とあって、日没までの残り時間はあまりない。
だから三人一緒にではなく、ばらばらに探すことにしたんだけれど…
『うーん…わかんなーい…』
トッ、とベンチに腰をおろして、そのヒントの紙を空に向ける。
『なーんかひらめきそうなんだけどなー…』
推理小説は大好きだ。
で、も。
自分が名探偵になれるとは思ってない。
一樹会長のことは、一番近くで見てきたし、大好きだから、知っていることも多いはず。
まったく関係のないことをヒントにするとも思えない。
だからさっきからヒントとにらめっこ。
その紙を通して思い浮かぶのは、勝ち誇ったように笑う会長の顔。
『だめだっ…!なんかむかついてきた!ヒントヒント…!』
またきちんとヒントに焦点を合わせたときだった。
~♪~~♪~~
颯斗君見つけたのかな?そう期待をしつつ、携帯のディスプレイを見ると
『え?一樹会長?』
今の今、探している会長からの電話。
ドキドキしつつ、携帯を耳に押し当てる。
《おー出た出た。》
『一樹会長?何してるんですかっ!颯斗君、すごい形相で会長のこと探してますよ?』
《……そ、そうか…》
『怯えるならこんなことしなければいいじゃないですか』
《いいじゃないか!ここのところ、仕事ばっかだったろ?残り少ない学生生活なんだ。ちょっとしたスリルは必要だと思わないか?》
『まぁ…私はこういうの、好きですけど。』
《ならよかった!で?謎は解けたか?名探偵》
『ま~ったく。だから暇してるんですよー』
《ははっ!そうか…お前なら、すぐわかると思ってたんだけどな、実は》
『え?』
‘私ならわかる’?どういうこと?
『一樹かいちょ』
《おっと、少し話すぎたか。じゃあまたな!そうだな…あと30分くらいで日が落ちるんじゃないか?がんばってくれたまえよ!》
『あっ、ちょ!』
ツーッツーッ
『あぁ!切られたっ!』
無機質な機械音が聞こえ、会話は途切れた。
でも、ヒントを得られた気もする。
『よーっし!やる気ふっかーつっ!もう一回考えてみよう!』
そしてまた、考えに耽る私。
「我が頭」っていうのは、一樹会長の頭ってこと、かな……でも「頂点に位置する者」っていうのの方が会長自身についてのような気がする。
「太陽に~」っていうのもなんかひっかかるよね…あ、もしかして、太陽に似てるってことは、宇宙、つまり星のこと?
だとすると、我が頭っていうのは会長の星座のことかも。たしかおひつじ座の頭の部分にあたる2等星のハマルは、白羊宮の原点と言われていて、例えれば地球の原点の太陽みたいなものだ・って授業で習ったような覚えがあるし。
『うーん…そうなると、一行目は、おひつじ座っていうヒントになるのかな?』
むむっ!なんか解ける気がしてきたーっ!!
次っ!そしたらたぶん、「頂点に位置する者」は学園の頂点ってことで、一樹会長自身のことで間違いないよね。でも「相応しき王座」ってなんだろう。もしかして、生徒会室…なわけないか。だってこの紙を見つけたのが会長の机なんだもん。
そういえば、三行目、まったく見てなかったけど、「学び舎を一望できる場所」…かぁ。
ん?でもなんか変だこの表現。
だって学び舎、とか普通言わない。一樹会長はいつもこの「学園」を見渡しているはずだ。
学び舎に限定するってことは、私が今いる、この学舎が見やすいってことで…つまりそれが意味するところ、は
『もしかして、ここと反対側の、学生寮側に、』
そこまで口に出してハッと気がつく。
「会長権限で、今日だけ許す。誰にも文句なんて言わせないよ」
「誰にも言ってない。もともと寮の屋上は立ち入り禁止だからな。」
あの夜のことが鮮明に頭によみがえる。
その途端、私の頭で点と点が線でつながり、まるで星座が出来上がるかのように、一つの答えが導き出される。
あぁ、だから
だから私にならわかる、と
《君を、待つ》と―
私は答えに向かって、駆け出していた。
カチャリ
思っていた通り、その扉はいとも簡単に私を入れてくれた。そして私の目線の先には、追い求めていた背中があった。
『一樹、会長―』
「きたか」
くるり、こちらを向いて、にかっと笑う会長は、いつも以上に意地悪で、しかし楽しそうだった。
自分の隣をぽんぽんとたたき、私に言う。
「ほら、こっちこいよ。」
『…』
無言のままうなずき、すとんとソファーに腰をおろす。
それは以前、一樹会長が生徒会室から担いできたという。
すこし煌びやかで、古くなった感じが。
そこに堂々と座る一樹会長が。
まるで王座に相応しくて。
空を見上げながら、一樹会長が静かに口を開いた。
「結構、時間かかったな?」
『む…じゃあもっとわかりやすくしてくれればよかったじゃないですか』
「ははっ…そしたら颯斗や翼も気づくだろ?お前だけが気づくようにするにはこれしかなかったんだ。」
『私だけに?』
「そうだ。2人っきりに、なりたくなかったのか?」
『…―っ!!』
「恋に危険はつきものだぞ?危険を乗り越えて愛を確かめ合う。ロマン、だなぁ…」
一樹会長、気づいてたんだ…最近ばたばたしているせいで、2人の時間がとれなくて、私が寂しがってたこと。
お見通しだ、という勝ち誇った顔をこちらに向けられて私の顔は少しだけ赤らむ。
それが余計に会長のいたずら心をくすぐったのか、今度はひょい、と私の身体を持ち上げ、自分の足の間へと移動させた。
『かいちょ・・・!?』
「お前な、そろそろ慣れろよなー?」
『こっ、こんなこと、慣れるわけ、ないでしょうっ!』
「まぁそんなトコロも可愛いんだけどなっ!」
『―っぅ・・!』
「ははっ!それよりも、お前、来るの遅すぎ。ちょっと心配だったぞ?」
『さっきも言ったじゃないですか…ヒントが難しすぎるんですよっ』
「そういうことじゃなくて、」
そこで会長は言葉を切った。
一樹会長が尻切れな言葉を発するのは、酷く不自然で、とても珍しいこと。
だから気になって、心配で、後ろを振り返った瞬間、唇を奪われた。
『んっ…』
少し乱暴な舌の動き。縋るような、それはどこか悲しみを帯びていた。
唇は、わざとらしく ちゅ と音を鳴らしたあと、離れたけれど、まだキスをしているかと思えるほどに、顔を近づけたまま、一樹会長は呟いた。
「お前が、俺との思い出を、忘れてしまったんじゃないかって…心配になった…」
『…一樹会長…?』
「お前が誰よりも俺の近くにいるようになってから、俺はお前がいないとダメになっちまったみたいだ。ははっ…」
自虐的に笑って、抱きしめた腕にさらに力がこもる。会長は、何を、そんなに
『私は、ここにいます。ずっと。私の居場所は、一樹会長の腕の中だけです。…そうじゃなきゃ、私の全てが嘘になる』
「お前…」
『だから一樹会長。怖がらなくていいんですよ?恋には危険が必要なわけじゃないんです。愛を育むのに必要なのは、お互いを思う気持ち、ただそれだけです。』
ね?と微笑んで見せれば、いつもの自信満々な笑顔を返してくれたから。
『翼君と颯斗君には悪いけど、報告はもうちょっと後にさせてもらいましょうか』
「そうしてくれると助かる。もう少し、お前と二人の、甘い時間を堪能したいからな」
そういって、またキスを一つ。
日没まであと少し。
そうすれば、星が瞬き初め―
危険がなくったって、王子様と一緒に、ロマンチックな旅に出かけられる。
一樹会長。あなたがいれば、私はそれで。
-恋とロマンに危険は付き物-
ピリリ…ッ
ん?電話だ…
誰からだ?
!!!
ま、まさか、
かちゃ
ぎいぃぃ…
ひっ…!
二人して、何をいちゃついているのですか?
は、颯斗!落ち着け!
颯斗くっ…?!
会長はもとより、あなたも覚悟はお済みですか?ふふ…
訂正…
やっぱり恋には危険が付き物みたいです!
2010.01
企画「おひるねひつじぐも」様へ
三人で来たるは真冬の屋上庭園。
雪が積もって綺麗、とか言う前に、寒い…さむいっ!!
「絶対ここだと思ったんですがね」
「ぬぬっ…!ぬいぬいは意外と隠れ上手なのだ~」
『どうする?他に思い当たるところ、あったりする?』
「残念ながら、すぐには…」
『じゃあそうだなぁ…早く見つけないとだから、ばらばらになろうか。』
「ぬぁ!誰が一番にぬいぬいを見つけるか勝負だな?よーっしっ!オレが名探偵になってやるぞーっ!」
「あっ!待ってください翼く…」
『…行っちゃった、ねぇ。ふふっ』
「仕方がないですね…僕も、思いつく限り、会長のサボり場所を探してみます。あなたも、見つけたらすぐに僕に連絡をください。」
『わかった!また後でね』
たたっと、颯斗君も駆け出した。
*
そもそもの始まりは、会議の時間になっても一樹会長が姿を見せなかったことにある。
会長専用の机の上に残された一枚の紙。
そこには、私たちを試すような文章が綴られていた。
----------------------------------------
生徒会の諸君へ
今から三人の力で俺を探し出してくれたまえ。
期限は日没。
俺を探し出せたら、お前らの勝ちだ。
ただのゲームだと思うな?
オレが勝ったら今日の仕事はお前らだけでやってもらう!
しかしながら、優しい俺が一つだけ、ヒントを与えよう。
【我が頭には太陽に酷似する輝き。
頂点に位置する者は相応しき玉座に。
学び舎を一望できるこの場所で、君を待つ】
では。
楽しみに待っている。
星月学園会長 不知火一樹
----------------------------------------
『…だそうだよ?』
「ぬはは~!ぬいぬいは面白いことするなぁ!!」
「…仕事が多いから、逃げましたね…姑息な手を…」
『颯斗君…ちょっと、怖い、よ…はは…』
「とりあえず、ぬいぬい探し隊発足だなっ!」
「そう…ですね。見つけたらどうしましょうね…ふふふふふ…」
*
ということがあったのが、30分前のこと。
少し話し合った結果、とりあえず学園を見渡せる屋上庭園に来たんだけど、一樹会長はいなかった。
冬とあって、日没までの残り時間はあまりない。
だから三人一緒にではなく、ばらばらに探すことにしたんだけれど…
『うーん…わかんなーい…』
トッ、とベンチに腰をおろして、そのヒントの紙を空に向ける。
『なーんかひらめきそうなんだけどなー…』
推理小説は大好きだ。
で、も。
自分が名探偵になれるとは思ってない。
一樹会長のことは、一番近くで見てきたし、大好きだから、知っていることも多いはず。
まったく関係のないことをヒントにするとも思えない。
だからさっきからヒントとにらめっこ。
その紙を通して思い浮かぶのは、勝ち誇ったように笑う会長の顔。
『だめだっ…!なんかむかついてきた!ヒントヒント…!』
またきちんとヒントに焦点を合わせたときだった。
~♪~~♪~~
颯斗君見つけたのかな?そう期待をしつつ、携帯のディスプレイを見ると
『え?一樹会長?』
今の今、探している会長からの電話。
ドキドキしつつ、携帯を耳に押し当てる。
《おー出た出た。》
『一樹会長?何してるんですかっ!颯斗君、すごい形相で会長のこと探してますよ?』
《……そ、そうか…》
『怯えるならこんなことしなければいいじゃないですか』
《いいじゃないか!ここのところ、仕事ばっかだったろ?残り少ない学生生活なんだ。ちょっとしたスリルは必要だと思わないか?》
『まぁ…私はこういうの、好きですけど。』
《ならよかった!で?謎は解けたか?名探偵》
『ま~ったく。だから暇してるんですよー』
《ははっ!そうか…お前なら、すぐわかると思ってたんだけどな、実は》
『え?』
‘私ならわかる’?どういうこと?
『一樹かいちょ』
《おっと、少し話すぎたか。じゃあまたな!そうだな…あと30分くらいで日が落ちるんじゃないか?がんばってくれたまえよ!》
『あっ、ちょ!』
ツーッツーッ
『あぁ!切られたっ!』
無機質な機械音が聞こえ、会話は途切れた。
でも、ヒントを得られた気もする。
『よーっし!やる気ふっかーつっ!もう一回考えてみよう!』
そしてまた、考えに耽る私。
「我が頭」っていうのは、一樹会長の頭ってこと、かな……でも「頂点に位置する者」っていうのの方が会長自身についてのような気がする。
「太陽に~」っていうのもなんかひっかかるよね…あ、もしかして、太陽に似てるってことは、宇宙、つまり星のこと?
だとすると、我が頭っていうのは会長の星座のことかも。たしかおひつじ座の頭の部分にあたる2等星のハマルは、白羊宮の原点と言われていて、例えれば地球の原点の太陽みたいなものだ・って授業で習ったような覚えがあるし。
『うーん…そうなると、一行目は、おひつじ座っていうヒントになるのかな?』
むむっ!なんか解ける気がしてきたーっ!!
次っ!そしたらたぶん、「頂点に位置する者」は学園の頂点ってことで、一樹会長自身のことで間違いないよね。でも「相応しき王座」ってなんだろう。もしかして、生徒会室…なわけないか。だってこの紙を見つけたのが会長の机なんだもん。
そういえば、三行目、まったく見てなかったけど、「学び舎を一望できる場所」…かぁ。
ん?でもなんか変だこの表現。
だって学び舎、とか普通言わない。一樹会長はいつもこの「学園」を見渡しているはずだ。
学び舎に限定するってことは、私が今いる、この学舎が見やすいってことで…つまりそれが意味するところ、は
『もしかして、ここと反対側の、学生寮側に、』
そこまで口に出してハッと気がつく。
「会長権限で、今日だけ許す。誰にも文句なんて言わせないよ」
「誰にも言ってない。もともと寮の屋上は立ち入り禁止だからな。」
あの夜のことが鮮明に頭によみがえる。
その途端、私の頭で点と点が線でつながり、まるで星座が出来上がるかのように、一つの答えが導き出される。
あぁ、だから
だから私にならわかる、と
《君を、待つ》と―
私は答えに向かって、駆け出していた。
カチャリ
思っていた通り、その扉はいとも簡単に私を入れてくれた。そして私の目線の先には、追い求めていた背中があった。
『一樹、会長―』
「きたか」
くるり、こちらを向いて、にかっと笑う会長は、いつも以上に意地悪で、しかし楽しそうだった。
自分の隣をぽんぽんとたたき、私に言う。
「ほら、こっちこいよ。」
『…』
無言のままうなずき、すとんとソファーに腰をおろす。
それは以前、一樹会長が生徒会室から担いできたという。
すこし煌びやかで、古くなった感じが。
そこに堂々と座る一樹会長が。
まるで王座に相応しくて。
空を見上げながら、一樹会長が静かに口を開いた。
「結構、時間かかったな?」
『む…じゃあもっとわかりやすくしてくれればよかったじゃないですか』
「ははっ…そしたら颯斗や翼も気づくだろ?お前だけが気づくようにするにはこれしかなかったんだ。」
『私だけに?』
「そうだ。2人っきりに、なりたくなかったのか?」
『…―っ!!』
「恋に危険はつきものだぞ?危険を乗り越えて愛を確かめ合う。ロマン、だなぁ…」
一樹会長、気づいてたんだ…最近ばたばたしているせいで、2人の時間がとれなくて、私が寂しがってたこと。
お見通しだ、という勝ち誇った顔をこちらに向けられて私の顔は少しだけ赤らむ。
それが余計に会長のいたずら心をくすぐったのか、今度はひょい、と私の身体を持ち上げ、自分の足の間へと移動させた。
『かいちょ・・・!?』
「お前な、そろそろ慣れろよなー?」
『こっ、こんなこと、慣れるわけ、ないでしょうっ!』
「まぁそんなトコロも可愛いんだけどなっ!」
『―っぅ・・!』
「ははっ!それよりも、お前、来るの遅すぎ。ちょっと心配だったぞ?」
『さっきも言ったじゃないですか…ヒントが難しすぎるんですよっ』
「そういうことじゃなくて、」
そこで会長は言葉を切った。
一樹会長が尻切れな言葉を発するのは、酷く不自然で、とても珍しいこと。
だから気になって、心配で、後ろを振り返った瞬間、唇を奪われた。
『んっ…』
少し乱暴な舌の動き。縋るような、それはどこか悲しみを帯びていた。
唇は、わざとらしく ちゅ と音を鳴らしたあと、離れたけれど、まだキスをしているかと思えるほどに、顔を近づけたまま、一樹会長は呟いた。
「お前が、俺との思い出を、忘れてしまったんじゃないかって…心配になった…」
『…一樹会長…?』
「お前が誰よりも俺の近くにいるようになってから、俺はお前がいないとダメになっちまったみたいだ。ははっ…」
自虐的に笑って、抱きしめた腕にさらに力がこもる。会長は、何を、そんなに
『私は、ここにいます。ずっと。私の居場所は、一樹会長の腕の中だけです。…そうじゃなきゃ、私の全てが嘘になる』
「お前…」
『だから一樹会長。怖がらなくていいんですよ?恋には危険が必要なわけじゃないんです。愛を育むのに必要なのは、お互いを思う気持ち、ただそれだけです。』
ね?と微笑んで見せれば、いつもの自信満々な笑顔を返してくれたから。
『翼君と颯斗君には悪いけど、報告はもうちょっと後にさせてもらいましょうか』
「そうしてくれると助かる。もう少し、お前と二人の、甘い時間を堪能したいからな」
そういって、またキスを一つ。
日没まであと少し。
そうすれば、星が瞬き初め―
危険がなくったって、王子様と一緒に、ロマンチックな旅に出かけられる。
一樹会長。あなたがいれば、私はそれで。
-恋とロマンに危険は付き物-
ピリリ…ッ
ん?電話だ…
誰からだ?
!!!
ま、まさか、
かちゃ
ぎいぃぃ…
ひっ…!
二人して、何をいちゃついているのですか?
は、颯斗!落ち着け!
颯斗くっ…?!
会長はもとより、あなたも覚悟はお済みですか?ふふ…
訂正…
やっぱり恋には危険が付き物みたいです!
2010.01
企画「おひるねひつじぐも」様へ