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『あれっ雨だ…』
梓くんの部活が終わる頃合いを見計らって、友達にサヨナラをして校舎を出れば、ぽつりぽつりと雨が落ちてきた。
持っていた折りたたみ傘をぱんっと開け、弓道場へと道を急ぐ。
少しの間に、小さな水たまりができるほどに、雨足が強まる。
『着いた頃には、弱まればい…くしゅっ』
ふと呟いた願いはしかし、寒さのために出たくしゃみに消えた。
ぱしゃんぱしゃん
後ろで誰かがさっき見た水たまりを踏む音がして
そしたら愛しい声が耳に届いた。
「せんぱーいっ」
『え』
まさか後ろから駆けてくるとは思いもよらず、パッと振り向くと、その声を間違えるはずもなく、やっぱり梓くんがいた。
「今日は早く終わったので、飲み物買いに行ったんですが、先輩のが早く着いたみたいですね」
『あ、うん』
梓くんは、傘を持って出なかったのか、髪が濡れていた。
「はいっ、先輩、甘いココアが好きでしたよね?」
そんな言葉は耳に遠く、私はその姿に目を惹かれ
なんでだろう
いつものかわいかったり、かっこよかったりする梓くんじゃなくて、色気、が
どきどき どきどき
私の心臓がいつになく跳ねている。
どうしよう
その、全てがほしい、だなん て―
捕らえた梓くんの姿が近づくことすら、
『―あ』
ちゅ
と、微かに感じたのは唇の温もりで
「先輩に、ほしいって目をされたら、応えないわけにはいかないし」
それに
赤くなることすら忘れた、私の頬に触れて、彼は言う。
ほっぺを暖かくするなら、ココアよりもこっちのがいいですしね、と。
そして私は、また彼を羨望するんだ。
-雨、ときどき、どきどき-
つづきは、ココアのあとにします?
それとも。
2009.12.15 UP
梓くんの部活が終わる頃合いを見計らって、友達にサヨナラをして校舎を出れば、ぽつりぽつりと雨が落ちてきた。
持っていた折りたたみ傘をぱんっと開け、弓道場へと道を急ぐ。
少しの間に、小さな水たまりができるほどに、雨足が強まる。
『着いた頃には、弱まればい…くしゅっ』
ふと呟いた願いはしかし、寒さのために出たくしゃみに消えた。
ぱしゃんぱしゃん
後ろで誰かがさっき見た水たまりを踏む音がして
そしたら愛しい声が耳に届いた。
「せんぱーいっ」
『え』
まさか後ろから駆けてくるとは思いもよらず、パッと振り向くと、その声を間違えるはずもなく、やっぱり梓くんがいた。
「今日は早く終わったので、飲み物買いに行ったんですが、先輩のが早く着いたみたいですね」
『あ、うん』
梓くんは、傘を持って出なかったのか、髪が濡れていた。
「はいっ、先輩、甘いココアが好きでしたよね?」
そんな言葉は耳に遠く、私はその姿に目を惹かれ
なんでだろう
いつものかわいかったり、かっこよかったりする梓くんじゃなくて、色気、が
どきどき どきどき
私の心臓がいつになく跳ねている。
どうしよう
その、全てがほしい、だなん て―
捕らえた梓くんの姿が近づくことすら、
『―あ』
ちゅ
と、微かに感じたのは唇の温もりで
「先輩に、ほしいって目をされたら、応えないわけにはいかないし」
それに
赤くなることすら忘れた、私の頬に触れて、彼は言う。
ほっぺを暖かくするなら、ココアよりもこっちのがいいですしね、と。
そして私は、また彼を羨望するんだ。
-雨、ときどき、どきどき-
つづきは、ココアのあとにします?
それとも。
2009.12.15 UP