obm V!
なんで俺はこんな日に、好きな女の子と攻防戦を繰り広げなくちゃならないんだろ?
そんな疑問をもちながら、メゾン煉獄は俺の部屋の扉の前。引っ張り引っ張られの戦い中。扉はびくともしない。俺が本当に力を入れれば彼女には簡単に勝てるのだけど、扉を壊すわけにも、彼女を怪我させるわけにもいかなくて、この状態でいる。
「あのね、君からのプレゼント、とても嬉しいんだ。だから少し部屋で話さない?って、俺の誘い、そんなに嫌だったかな?」
「っ、ま、まさか!シメオンからのお誘いが嬉しくないわけない!」
「じゃあさ、その手、離さない?それでお茶でもしようよ」
「っ、だ、だめっ!今日はだめ!」
ずっとこの調子なのだ。何が原因なんだろう。わからない。わからなくて、もちろん乱暴なこともできなくて、困り果てている。ただ、こんな風にされるのでは俺の心も少し傷ついてきてどうしても理由が知りたい方に天秤が傾いてしまった。いっそのこと力を抜いて引っ張ってーーなんて考えたその時。なんの天啓か、彼女のD.D.D.が音を立てる。瞬間、びくっとした彼女の力が緩んだのを見計らって腕を取り、部屋の中へ引き入れた。
抱き留めてクスクス笑うと、一瞬の間を置いて、ワァッ!?っと上がる声がなんとも彼女らしい。
「ねぇ、本当にどうしたの?もしよかったら理由を教えてもらえないかな」
「っ……み、みないでっ……」
「え?」
必死で顔を隠している彼女に、違和感。いくらなんでもちょっとおかしい。
嫌がることをしたくはないのだけれど、ここは引くべきじゃないと判断してその手を引っぺがす。
「んー……ごめんねっ!そこ、見せてもらってもいいかな!」
「っやだぁ!やめて!ニキビがぁっ……!」
「え?」
「シメオンにこんなの見せられないいい!」
手を退けると見えた顔。そう叫んだ彼女のほっぺたには、今しがた飛び出てきた言葉の通り、赤く腫れたぽっちが一つ。涙目の彼女は続けてこう言った。
「最近、チョコレート作りのために夜更かしして、味見のために甘いものばかり食べてたからっ……超特大のニキビができちゃったの!しかも顔に!」
「にきび……」
「こんなのシメオンに見せられないよぉっ!だから会いたくなかったのにぃっ!」
「ふ……」
「へ、」
「ふふっ……あははっ!」
なんとも可愛い理由に俺は大笑いしてしまったけれど、対する彼女はぷくっと頬を膨らませている。でもそれは可愛さを倍増させるだけだ。彼女は何もわかっていない。
「どうして笑うのっ!?私、わたしっ、ほんとにっ」
「違う、ごめん、ごめんっ!あんまりにも可愛いからっ」
「可愛い!?なんで!?どこが!こんなの」
「にきびひとつくらい、できる時は誰でもできるよ。隠さなくてもいいのに」
「だ、だって……シメオンみたいにカッコよくて綺麗な顔の人に、こんな無様なの……」
「無様なんてそんなことないよ、俺は別に顔だけで君のこと好きになったんじゃないんだから」
「そんなのわかってるよ!シメオンがそんな人じゃないってわかってるけど、でも」
「じゃあ君は俺の顔に何か出来物があったら嫌いになるの?」
「っ!?そんなわけないでしょ!?」
食ってかかるように俺に顔を近づけて怒る。反射でその唇に自分のそれを近づけて。
チュッとリップノイズが一つ鳴った。
「き!わっ!?」
「ほらね、一緒だ」
「な、なっ、」
手で口を覆いたかったのだろうけど、残念。腕は俺がさっきから掴んでいるからそうはいかない。『離さないよ』と囁いて、ぎゅっともう一度抱きしめる。
「俺の愛情、伝わってない?」
「っ……違うよっ……」
「じゃあなんで」
「す、好きだから!大好きだから、こんな、ちょっとしたことでも気になるの!」
「!」
「シメオンのこと、好きじゃなかったら、こんなのみられたって、なんとも思わないよっ!シメオンだから見られたくなかったの!シメオンの前では一番可愛い自分でいたいから!!」
あまりにも嬉しいその回答は、俺の予想の斜め上だった。じわじわと沁みてくる嬉しさに、ああ、この子が大好きだなって、そう思ったら、我慢できそうにない。
今度はちゃんと目を見て、視線で促す。キスするよ、目を閉じて、と。そうすれば、観念したのか、頬を染めてぎゅっと瞼を落としてくれる彼女。愛おしくてたまらない。
そっと重ねた唇に乗せた愛、伝わるといいんだけど。
リップノイズすら鳴らさない静かなキスは、まるで結婚式でするような誓いに似ていた。
「ねぇ、一緒にこのチョコレート食べたいんだけど、いいかな?」
「っ……もう、バレちゃったから……いい……」
「それと……今日も夜更かしになっちゃうかも」
「え……」
「帰してあげられそうにないから、嘆きの館に連絡入れといてほしいな」
「そ、それって」
「うん、そういうこと!」
部屋の鍵をカチャンと閉める。これで今夜、君は俺のもの。誰にも邪魔なんてさせないから。
天使だってなんだって、据え膳食わねばなんとやら、ってね!
そんな疑問をもちながら、メゾン煉獄は俺の部屋の扉の前。引っ張り引っ張られの戦い中。扉はびくともしない。俺が本当に力を入れれば彼女には簡単に勝てるのだけど、扉を壊すわけにも、彼女を怪我させるわけにもいかなくて、この状態でいる。
「あのね、君からのプレゼント、とても嬉しいんだ。だから少し部屋で話さない?って、俺の誘い、そんなに嫌だったかな?」
「っ、ま、まさか!シメオンからのお誘いが嬉しくないわけない!」
「じゃあさ、その手、離さない?それでお茶でもしようよ」
「っ、だ、だめっ!今日はだめ!」
ずっとこの調子なのだ。何が原因なんだろう。わからない。わからなくて、もちろん乱暴なこともできなくて、困り果てている。ただ、こんな風にされるのでは俺の心も少し傷ついてきてどうしても理由が知りたい方に天秤が傾いてしまった。いっそのこと力を抜いて引っ張ってーーなんて考えたその時。なんの天啓か、彼女のD.D.D.が音を立てる。瞬間、びくっとした彼女の力が緩んだのを見計らって腕を取り、部屋の中へ引き入れた。
抱き留めてクスクス笑うと、一瞬の間を置いて、ワァッ!?っと上がる声がなんとも彼女らしい。
「ねぇ、本当にどうしたの?もしよかったら理由を教えてもらえないかな」
「っ……み、みないでっ……」
「え?」
必死で顔を隠している彼女に、違和感。いくらなんでもちょっとおかしい。
嫌がることをしたくはないのだけれど、ここは引くべきじゃないと判断してその手を引っぺがす。
「んー……ごめんねっ!そこ、見せてもらってもいいかな!」
「っやだぁ!やめて!ニキビがぁっ……!」
「え?」
「シメオンにこんなの見せられないいい!」
手を退けると見えた顔。そう叫んだ彼女のほっぺたには、今しがた飛び出てきた言葉の通り、赤く腫れたぽっちが一つ。涙目の彼女は続けてこう言った。
「最近、チョコレート作りのために夜更かしして、味見のために甘いものばかり食べてたからっ……超特大のニキビができちゃったの!しかも顔に!」
「にきび……」
「こんなのシメオンに見せられないよぉっ!だから会いたくなかったのにぃっ!」
「ふ……」
「へ、」
「ふふっ……あははっ!」
なんとも可愛い理由に俺は大笑いしてしまったけれど、対する彼女はぷくっと頬を膨らませている。でもそれは可愛さを倍増させるだけだ。彼女は何もわかっていない。
「どうして笑うのっ!?私、わたしっ、ほんとにっ」
「違う、ごめん、ごめんっ!あんまりにも可愛いからっ」
「可愛い!?なんで!?どこが!こんなの」
「にきびひとつくらい、できる時は誰でもできるよ。隠さなくてもいいのに」
「だ、だって……シメオンみたいにカッコよくて綺麗な顔の人に、こんな無様なの……」
「無様なんてそんなことないよ、俺は別に顔だけで君のこと好きになったんじゃないんだから」
「そんなのわかってるよ!シメオンがそんな人じゃないってわかってるけど、でも」
「じゃあ君は俺の顔に何か出来物があったら嫌いになるの?」
「っ!?そんなわけないでしょ!?」
食ってかかるように俺に顔を近づけて怒る。反射でその唇に自分のそれを近づけて。
チュッとリップノイズが一つ鳴った。
「き!わっ!?」
「ほらね、一緒だ」
「な、なっ、」
手で口を覆いたかったのだろうけど、残念。腕は俺がさっきから掴んでいるからそうはいかない。『離さないよ』と囁いて、ぎゅっともう一度抱きしめる。
「俺の愛情、伝わってない?」
「っ……違うよっ……」
「じゃあなんで」
「す、好きだから!大好きだから、こんな、ちょっとしたことでも気になるの!」
「!」
「シメオンのこと、好きじゃなかったら、こんなのみられたって、なんとも思わないよっ!シメオンだから見られたくなかったの!シメオンの前では一番可愛い自分でいたいから!!」
あまりにも嬉しいその回答は、俺の予想の斜め上だった。じわじわと沁みてくる嬉しさに、ああ、この子が大好きだなって、そう思ったら、我慢できそうにない。
今度はちゃんと目を見て、視線で促す。キスするよ、目を閉じて、と。そうすれば、観念したのか、頬を染めてぎゅっと瞼を落としてくれる彼女。愛おしくてたまらない。
そっと重ねた唇に乗せた愛、伝わるといいんだけど。
リップノイズすら鳴らさない静かなキスは、まるで結婚式でするような誓いに似ていた。
「ねぇ、一緒にこのチョコレート食べたいんだけど、いいかな?」
「っ……もう、バレちゃったから……いい……」
「それと……今日も夜更かしになっちゃうかも」
「え……」
「帰してあげられそうにないから、嘆きの館に連絡入れといてほしいな」
「そ、それって」
「うん、そういうこと!」
部屋の鍵をカチャンと閉める。これで今夜、君は俺のもの。誰にも邪魔なんてさせないから。
天使だってなんだって、据え膳食わねばなんとやら、ってね!